腕時計の部品の中ではもっとも地味ながらも、ある意味もっとも重要かもしれない部品、それが「バネ棒」です。バネ棒は時計本体を革ベルトやブレスレットとつないでくれる、いわば時計を腕時計にしてくれる部品です。
○バネ棒の仕組み
バネ棒は他の部品同様に、外側から見ることのできない部品です。革ベルトにもブレスレットにも専用の穴が設けられており、そこにバネ棒を通す形で使用します。
バネ棒は棒状の部品ですが、その名の通り中に小さなバネが仕込まれています。取り付け時、あるいは取り外し時にバネを縮めることで長さを短くします。
取り付けると適切な長さに戻るため、革ベルトやブレスレットを固定できる、という至ってシンプルな仕組みです。
○バネ棒の構造と弱点
一般的なバネ棒はバネとケース、2本の棒で構成されています。ケースの端をかしめることで、外向きの力がかかる棒が飛び出さないようになっています。
棒部分を左右に揺らすような負荷をかけると、思ったよりも簡単に緩みが生じ、バネ棒が壊れてしまうことがあります。
腕時計を構成する部品の中では比較的大きいとは言え、小さな部品であることは間違いないので、無理な力をかけてはいけません。
○バネ棒のサイズ
腕時計のサイズに合わせて、バネ棒には沢山の種類が存在します。メンズサイズでは18mm、19mm、20mm、21mm、22mmが、ボーイズサイズでは16mm、17mmが、レディースサイズでは6mmから15mmが使われます。もちろん例外もあります。
サイズは時計本体のラグの幅に合わせます。1mmくらいであればなんとかなる場合もありますが、基本的には大きくても小さくてもダメです。
入るから、といってギリギリの長さのバネ棒を無理やり押し込んでしまうと、外すときに大変な思いをすることになるので気をつけましょう。
○バネ棒の太さ
サイズといえば、長さだけでなく直径の違いもあります。ダイバーズなど時計本体の重さが重いものは、太めのバネ棒が使用されます。
革ベルトではそうでもないですが、ブレスレットではバネ棒の径とそれを通すの穴の径とに差がありすぎると、時計本体が安定しません。選べるようであれば、ブレスレットの穴のサイズに近い径のバネ棒を選ぶようにしましょう。
○2種類のバネ棒
バネ棒は汎用性のある部品ですが、革ベルトの腕時計ではひとつの腕時計で仕様の異なるバネ棒が使われます。
ラグに取り付けるものと、尾錠につけるものとでは長さもあることながら、径が違ったり、両端の飛び出し具合が違うことがあります。これは、尾錠の穴にスマートに収めるためです。
○バネ棒の交換
バネ棒を長く使うと、中に水や汚れが混入し、サビの発生や固着の原因となります。バネ棒の不具合は、腕時計が腕から外れるなどの致命的なトラブルの原因になります。
バネ棒は、出来ればメンテナンスの都度、あるいはベルト交換の都度交換することをおすすめします。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。