[0029] 3Dなんてこわくない! 05

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0029 1998/05/15発行
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●本日のコラム『3Dなんてこわくない! 05』
 金曜日担当:上田 和浩

●柴田のコネタ
 ・「メディアの呪いを吹き飛ばせ」
●本日のニュース
 ・アップルWWDC速報
●イベント・情報
 ・モリサワ・タイポグラフィ・スペース第9回企画展
●本日のTIPS/3Dアプリケーション編


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●本日のコラム『3Dなんてこわくない! 05』
 金曜日担当:上田 和浩

今回は1週間ほど前に発表されたMetaStreamに関する記事です。すでに森川編集長や、松岡アキラ氏、神田敏晶氏から詳しく紹介されており、興味を持たれた方もたくさんいらっしゃるかと思います。

MetaStreamは、インターネットでの3Dオブジェクトデータの配信を目的としたフォーマットです。特徴としては可変サイズのポリゴン解像度をデータ内に持ち、素早いデータの発信を可能にしていることです。

MetaStreamは、高度なポリゴンリダクション技術(表示を破綻させずポリゴン数を減らす技術)を元にしています。データをダウンロードしている途中でもオブジェクトを低解像度のポリゴンで表示させることができ、ダウンロードが進むにつれてポリゴン数が徐々に増えて、なめらかな形状を描画するようになります。はじめに荒く表示されてだんだん細かく表示されるプログレッシブJPEGの3D版と考えてもいいでしょう。

ユーザーはダウンロード途中でもオブジェクトを自在に動かすことができます。気に入らない場合はダウンロードを途中でやめてしまうこともできます。また、ダウンロード終了後も表示ポリゴン数を変更することができます。マシンパワーが表示に追い付かない場合は、自分のマシンにあったポリゴン数でブラウズできるのです。

この技術はフライトシミュレーションや、3Dアクションゲーム等で良く使われる技術の応用といえます。リアルタイム性を重視するそれらのゲームでは、遠くにある物体は荒いポリゴンで表現します。細かいポリゴンで描画しても細部はつぶれてしまうのでCPUのパワーが無駄になるのです。接近した場合にのみ細かいポリゴンで詳しく描画します。そのようにしてCPUの能力を効率良く使い、レスポンスと表示品質のバランスをとっています。

また、RayDreamのモデリング画面も同様の技術を利用しています。球体を編集画面に配置した場合、球体の表示サイズによってポリゴンが増減するのが良く分かります。ワイヤーフレーム表示にするといっそう顕著です。RayDreamは表示用のデータと最終レンダリング用のデータを完全に分けて扱っているため、このように可変ポリゴン表示が可能なのです。

ちょっと話がそれてしまいましたが、3D空間軸での可変サイズのポリゴン表示技術を、ダウンロードの時間軸に応用したのがMetaStreamフォーマットの特徴だと考えてください。

Webの3Dデータの配信はすでにVRMLという国際的なフォーマットがあります。MetaCreationがVRMLを差し置いて新たな3Dフォーマットを提唱した理由は何でしょう?

VRMLは一時期騒がれた程には爆発的な広がりを感じさせません。(積極的にVRMLの普及に勤めておられる方々からは、お叱りを受けそうですが…これは個人的な感想です。)

それにはいくつかの理由を挙げることができます。
ユーザーサイドの理由として、ダウンロードの手間と、レスポンスを重視するために、2D画像に比べてチープな表示が挙げられます。

また、配信者サイドでは品質の良い3Dデータを効率良く作成するノウハウが欠如しているのではないかと思います。VRML2.0で、ダイナミックス、インタラクティブ性を持ったことも作る側にとってはむしろ敷居が高くなる方向に作用しているように思えます。(注1)

MetaStreamはその点を考慮してフォーマットを設定しているように思われます。まず、ユーザーサイドに対しては、ダウンロードの待ち時間を可能な限り短く(感じ)させる工夫があります。また、配信者サイドに対してもいくつかの重要なソリューションを提供しています。

その一つは同社の出している3DソフトのRayDreamStudioと、Infini-DからMetaStream形式で、データーを書き出せることです。おそらく廉価版のRayDream3Dでも可能でしょう。RayDreamStudioからデーターを書き出して見ましたが、特別な注意も必要とせずDXF形式で書き出す程度の気軽さで出すことができました。

もう一つは3Dスキャナでの3次元データーの取り込みをサポートしていることです。(注2)
Real3D社製の"RealScan 3D"は、中、小規模の法人向け低コスト3Dイメージスキャンシステムです。このシステム用ソフトにMetaStreamの技術が取り入れられているようです。これはCCDカメラによる非接触タイプのもので、ターンテーブルなどの特別な装置も要りません。

WindowsNTをプラットフォームにする、入力ボードとCCDカメラ、データー取り込み&加工ソフトのシステムです。このソフトはRayDreamとRayDream専用のエクステンションで構成されているようです。(別に専用の取り込みソフトもあるようです)

最低3方向以上からCCDカメラで撮影したシルエットおよび画像を元に、形状とマッピングデーターを生成することができます。専用のエクステンションには、細かくスキャンしたデータを効率良くポリゴンリダクションするMetaStreamの技術が投じられているそうです。

3Dデータをダウンロードしてぐりぐり動かしただけではユーザーサイドの利点しか見えてこないと思いますが、3Dスキャンニング技術は配信者サイドに大きな利点があります。

例えば自社の製品をWebでアピールしたくても今までは2D画像での表示しか実用的なものはなかったといって良いでしょう。3Dスキャナは、手間のかかるモデリング作業を代替し、自社製品の素早い3Dデーター化と、ユーザーの見やすいフォーマットで発信することを可能にするようです。

MetaStreamは3Dのデータ作成から発信、ブラウジングまでトータルでその運用が考えられた、非常にマーケティング的な視点を感じるフォーマットなのです。VRMLに対して、MetaStreamがどれだけの支持が寄せられるのか、これからも注目していきたいと思います。

注1
もっとも、最近はVRML2.0に対応し、簡単に操作できる低価格ソフトがでてきており状況は一変するかもしれません。

注2
フィンランド製の3Dソフト、Real3Dとは別のアメリカの会社です。リアルタイムグラフィックスの分野で40以上の特許を持つ会社で、ロッキードのシミュレーション技術や、セガのゲーム機器に提供する技術等も手がけています。REAL3D社のホームページとRealScan3Dは、以下のURLへ
http://www.real3d.com/products/realscan/realscan.html

【プロフィール】
上田 和浩
90年頃から3DCGに手を染める。RayDreamはVer.1からのユーザー
幽霊ツールと悪魔払いツールが懐かしい…(注)
StepByStepにRayDreamの記事を連載中。
RayDreamの解説本も出版予定です。

(注) 一時的にオブジェクトを隠すツールの日本語訳、当時はフォーカルポイントコンピューター(株)が扱っていました。現在はフォーチュンヒル(株)が扱っています。

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■柴田のコネタ

「メディアの呪いを吹き飛ばせ」

5月14日づけの朝日新聞朝刊(23ページ学芸欄)に「フロッピー1枚の宇宙 パソコン文化の申し子」「自主制作『フロッケ』大人気の秘密」という8段の記事が載っている。
メディア環境研究者・桝山寛氏が「逆行する時代 ナマをつたえる」とコメントしている。

きわめて好意的な記事である。これを読んでさっそく行ってみようという人もいるだろう。わたしも先日見にいった。デモマシンを占領して、延々とひとりでプレイしている怪しい会社員がいた。結局なにも買わなかったが、とても面白かった。

ただし問題は、【朝日新聞にとりあげられるころにはブームはお終い】というおそるべき《メディアの呪い》(?)があることだ。朝日新聞は忘れたころにやってくる。

東京フロッケ展は5月17日まで。
神宮前のデジタローグギャラリー(03-3408-2494)
大阪フロッケ展は8月8日から30日まで、会場は&s アンズ
大阪市西区新町1-2-6 ニュー新町ビル2F、3F(06-535-0470)12時~20時無休

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■本日のニュース

「アップルWWDC速報」

アップルWWDCの速報がアメリカ現地から届きました!
大谷和利さんからの情報です。

今年のWWDCは、内容的には地道で、派手な未来技術の発表などはありませんが、iMacをはじめとする直前の新製品発表によって、過去1、2年のものとはうってかわった参加者の熱気が感じられます。

特に、1300ドルでPentium IIの400MHz(←300MHzの間違いではありません)をしのぐ性能を発揮するiMacは、WindowsユーザーをはじめてMacの世界に引き込めるマシンとして大きな注目を集めています。

今のところiMacの本物はメインステージの上とサードパーティの展示スペースに1台ずつと、ソフトの互換性を確認するためのiMacコンパチビリティテストラボに4、5台あり、常に周囲に人が集まっているような状況です。

まだ、量産試作の段階なので、自由に触れるというわけではありません(警備の人間などから注意されつつ、ステージに上がって触る人も居ます)が、短時間操作したところでは、USBのキーボードやマウスを含めて、まぎれもなくMacでした(当たり前ですが)。

なんと、キーボードの裏側の中央にまで例の大きな白いアップルロゴがあります。
iMacの丸いマウスは、ジョブズが過去最高の出来と自画自賛。

ディスプレイも15インチの特製(一応iMacのために作った=周辺回路を構成した? というニュアンスのことを言っていました)で1024×768ドットまでサポートされますから、まず不足はありません。もちろんトリニトロンではありませんが、コンシューマーマシンとしては最高の画質とジョブズは言っています。

iMacは単なるローエンドの新製品ではなく、新しい情報インフラとなるでしょう。それは、iMacの持つI/0(EthernetやUSB)で今後の周辺機器やネットワークの構成がなされるという意味もありますが、「iMacという情報環境」自体が世界規模で広がるということです。

iMacをベースとして、さまざまな周辺機器やソフトや、あるいは使われ方が広がっていくという期待感があるわけです。一方では、「心のネットワーク」というか、たとえば見知らぬ同士でもiMacユーザーだとわかった途端に打ち解けるというか、その度合いが今のMacよりも強いですね。

ジョブズは、既存の1000ドルPCを、「旧式I/O搭載のうすのろ」とこき下ろし、iMacによってEthernet(100BASE-T)を完全に普及させると言っています。Ether機器の本体の価格が下がるのも、時間の問題でしょう。なにしろコンシューマースケールでそうした機器が作られたことは今まで無かったわけですから。家庭用のWeb「サーバー」という線も本気で狙っているようです。

また、ジョブズは新たな、そして彼の息がかかった初のOS戦略であるMac OS X(テン)計画をぶち挙げました。Rhapsodyの良いところと現在のMac OSを組み合わせた新OSであり、今あるソフトをほんの少しの改変するだけで、フルマルチタスクやメモリプロテクションを持つ真性のモダンOS(=Mac OS X)のネイティブアプリ化させるものです。

そのためにアプリがサポートすべき必須APIのコードネームをCarbon(すべての物質が炭素からできているというシャレ)と呼びますが、これは、従来8000前後あったMac OS APIから2000程度を削って、新たに1000追加したものになるとのこと。現在の主要なアプリのコードが使用するAPIの90%はCarbonと重複しているので、平均1割の改変で済むそうです。

すでにアドビが、PhotoShopをたった9日間でCarbon化したものを、開発中のMac OSX上で動かすデモなどを行いました。

また、Carbon化されたソフトは、今年のQ3にリリース予定のMac OS 8.5(Allegro)でも動くのがミソで、開発者にとってもユーザーにとっても、移行を楽なものにしています。

Mac OS Xのリリースは来年のQ3でSonata(Mac OS 9.0?)と同じ。Sonataの対応機種が全Power Macとなるのに対し、Mac OS XはG3以上になります。またYellow BoxのサポートもMac OS X以降になるようです。

Rhapsodyは、ますますWin NT的位置付けとYellow Boxの開発環境に特化していくようです。

そういうわけで、ジョブズは、ハードもソフトも優先順位をきっちり付けて、着実に開発をこなしていると見受けられます。(大谷和利)

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■イベント・情報

●モリサワ・タイポグラフィ・スペース第9回企画展

ビックリグラフ
NDC グラフィックスのインフォメーション・デザイン
会期:5月11日(月)~6月26日(金)
開館時間:10時~18時 休館:日曜祝日 入場無料
会場:モリサワ・タイポグラフィ・スペースMOTS
東京都新宿区下宮比町2-27 モリサワビル1F 03-3267-1233

「たとえば部屋の広さが、7.29平方メートルから9.72平方メートルにかぉったといわれても、だれもその大きさの変化をイメージできない。しかし同じことを「四畳半から六畳に」と言われれば、すぐにその部屋の規模の変化を理解することができる。情報は正確さだけでは伝わらない。数値情報は新しい単位に置き換えてみたり、別の数値と比較することで意味のある数値として理解される。単純なデータを、インテリジェント化するこのインフォメーション・デザインの世界に、中川憲造とNDCグラフィックスはエンターテイメント性を持ち込んで、楽しい情報デザインを展開している」(監修:勝井三雄)

モリサワMOTSホームページ
< http://www.morisawa.co.jp/graphics/MOTS/MOTS.html >

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■本日のTIPS/3Dアプリケーション編
 【日刊・デジタルクリエイターズ】では毎日クリエイティブ関連のアプリケ
 ーションのTIPSを掲載していきます。
 TIPSの難易度は、5段階で★印を文末に付けています。
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●StrataVision3D Ver.5.0編/「パス変換」

2Dオブジェクトの形状をアニメーションの経路(パス)に変換することができます。

パスにする2D形状は2D図形作成ツールで作成された物であれば自由曲線でも円や四角などでも構いません。アニメーションさせるオブジェクトはシェイプにしておく必要があります。

パスとなるオブジェクトを選択した状態で、[アニメーション]→[パスフィルター]→[パス変換]で、アニメーション対象のシェイプと、パスを移動させる開始時間、移動時間を設定させます。

手軽に正確な軌跡のアニメーションが作れるので便利です。
★★ (松岡アキラ)

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●Macromedia< http://www.macromedia.com/ >のサイトのアナウンス。
Flash3がUSで正式に出荷開始したようです。同時に "30days Trial" もDL可能に。つなさん、再度の情報書き込みありがとうございます!(濱村)

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0029 1998/05/15発行
発行社  タワーズ株式会社
     < http://www.towers-inc.com/ >
     大阪市中央区高麗橋1-5-6 東洋ビル3F
     TEL:06-231-1011 FAX:06-231-0838

編集長  森川眞行 < morikawa@siliconcafe.com >
     柴田忠男 < tdo@green.ocn.ne.jp >
     神田敏晶 < kanda@knn.com >

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           担当:濱村和恵
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