[0403] 閉ざされた「夏への扉」

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0403   1999/08/28.Sat発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 13875部
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 <DTPの前にタイムスリップしたい> 

●デジクリSPECIALコラム
 閉ざされた「夏への扉」
 十河 進

●展覧会案内
 ディジタル・イメージ・ギャラリーin 幕張

●セミナー案内
 WEBデザインデスマッチ in 名古屋



■デジクリSPECIALコラム
閉ざされた「夏への扉」

十河 進
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もう夏も終わりだ。夏の終わりは、やはりどこかさびしい。夏休みが終わるさ
みしさ、のようなものを思い出すからだろうか。通俗的だが、「今はもう秋~、
誰もいない海~」というフレーズが浮かんできたりする。

薬師丸ひろ子主演の「野蛮人のように」は、ちょっと気取った奇妙な映画だが、
一点感心したのは主人公の早熟な天才小説家の誕生日を8月31日に設定したこ
と。「子供の頃、誰も誕生日パーティにきてくれなかった」とヒロインは言う。

ところで、なぜか僕は夏になるとSFを読みたくなる。今年はJ.P.ホーガンの
「創造主」シリーズの新作が翻訳されたので読もうと思ったが果たせず、これ
で来年の夏まで読めないな、という感じである。

SFマガジンの読者が選ぶオールタイム・ベストテンで1位に輝いたのは、ロ
バート・A・ハインラインの「夏への扉」である。山下達郎作曲の同タイトル
の歌があるが、これは小説からインスパイアされたものだ。ちょっとSFらし
くないタイトルである。

昔からSFを読んできた身としては、SFの黄金時代は1950年代だと思う。ハ
インライン、アーサー・C・クラーク、アイザック・アシモフの3巨匠全盛時
代である。「夏への扉」も1957年の作品。小説中の現在は1970年の近未来で、
主人公は冷凍睡眠に入り、2000年に目覚める設定だ。1957年の時点から見ると、
43年後の未来である。

SF小説の古典(何か変だが)を読んでいるとよくあるのが、その後の現実と
のズレである。「夏への扉」の主人公は、1970年の時点でキーボードで入力で
きる製図機械を発想する。2000年に目覚めると、冷凍睡眠に入る前に自分が発
想した機械が発展し実用化されていることに驚く。その謎を探るのが後半のメ
インストーリーになる。

「夏への扉」の主人公はエンジニア。自ら発明した家庭用ロボットの特許を元
に友人と会社を起こす。秘書に雇った女性と恋をして婚約するが、友人と恋人
に裏切られて会社を乗っ取られる。絶望した彼は愛猫と共に冷凍睡眠に入り、
30年後に目覚めようとする。

30年後に目覚めた主人公は自分が発想したが具体的に設計はしなかった製品が、
自分の名前で製品化されている謎にぶつかり、タイムマシンで30年前に戻り真
相を探る。テーマはタイムパラドックスである。

タイムパラドックスを象徴的に説明する例として「タイムマシンで過去に戻り
自分の父親を殺したらどうなるか」というものがある。父親を殺せば自分は生
まれないのだから、だとしたら殺しに行く自分も存在しないことになり、そう
なると父親は殺されないのだから自分が生まれ、父親を殺しに行き、父親を殺
すと……という堂々巡りが始まるわけだ。

このタイムパラドックスを解決するために、様々なアイデアを考えられ様々な
小説が書かれてきた。前述の例にたとえれば「父親を殺したが自分は生まれて
きた。実は自分は不倫の子だった」などという解決策である。

「夏への扉」は明らかに「バック・ツー・ザ・フューチャー」に影響を与えて
いる。タイムパラドックスものというだけではなく、全体のストーリーの雰囲
気とハッピーエンディングであることに(ちょっと主人公に都合がよすぎるぞ、
という感じも)、共通性を強く感じる。

タイムパラドックス・テーマのSF小説は、歴史を変えないことを前提として、
ストーリーを展開するために苦労してきた。辻褄は合わせなければならない。
その枠の中で、どれだけ奇想天外なストーリーが展開できるか、それがSFマ
インドだった。「ドラえもん」に、そのSFマインドは生きている。特に映画
用長編は、感心することが多い。

さて、「バック・ツー・ザ・フューチャー」の斬新さは、歴史を変えちゃった
ことである。あれじゃあ、ビフがかわいそうだ、と思うが、どちらに都合よく
歴史を変えるかという戦いが2部以降(もちろんヒットしたから、2部以降の
ストーリーを考えたのだ)は中心になる。

「バック・ツー・ザ・フューチャー」でも「歴史を変えちゃいかん」とドクは
しきりに言っているし、未来で撮った写真の自分の姿が次第に消えていくサス
ペンスを生かしているが、主人公にとって都合よく変わった歴史は認めてしま
うんである。

人生をやり直したい、と一度も思わなかった人はいないだろう。まあ、6、7
歳の子供は思わないかもしれないが、中学生の頃にはそんなことを考えた記憶
が僕にはある。もっとも最近は、もう一度若い頃に戻って、とは考えなくなっ
た。せっかく長い人生を我慢してやってきて残りの年数を減らしたのに、また
やり直すんじゃたまらない、という気分だ。

どうせ、やり直したっていいことばかりじゃない、と思うようになったのはき
っと年だからだ。「夏への扉」の主人公は、11歳の少女に恋して、そのままじ
ゃロリコンと言われるところを、自らは30年の冷凍睡眠に入り、相手は21歳に
なったところで冷凍睡眠に入ることを指示して、2000年に30歳と21歳として再
会し、妊娠させてしまう。

昔、この小説を読んだときには感じなかったが、それってやっぱり変態的なん
じゃないか。それに、11歳の頃に「大きくなったらおじちゃんのお嫁さんにし
てね」などと言っていた少女が、そのままの思いを抱えて21歳になるとは思え
ないし、まして自ら冷凍睡眠に入るなんて現実感がない。

やはり長く人間をやっているとシニカルになってしまう。10代で読んだときは、
けっこう感心したのだけど……

【そごう・すすむ】DG@genkosha.co.jp
玄光社入社以来、月刊小型映画、隔月刊フォトテクニックを経て季刊ビバビデ
オ編集長、月刊コマーシャル・フォト副編集長をつとめ、現在は季刊DG(デジ
タルグラフィ)編集長。讃岐うどんは自宅で打ち、みそ汁で煮込む「打ち込み
汁」がうまい。母親に教わった田舎料理だが、自分で作る。カミサンは讃岐人
のくせに作ってくれない。

・谷口ジローといえば、そごうさんもファンの漫画家だが、「遥かな町へ」と
いうタイムスリップものがある。意識や知識は中年だが、なぜか中学時代の体
に戻ってしまうという、むちゃくちゃむしのいい、そして切ないストーリー。
人生をもう1回最初からやり直すなんて気は毛頭ないが、いまの意識や知識の
まま中学や高校時代になら戻りたいと切実に思う。思えば恥ばかりの青春であ
ったから(なんちゃって)。北村薫の「スキップ」は、17歳の女子高生が、あ
る日気がつくと42歳、17歳の娘を持つ高校教師にタイムスリップ。それからの
孤独な健気な前向きの生活が淡々と。「遥かな町へ」では、また元に戻り、洒
落たオチがつく。「スキップ」はどうなるのか? それを言ってはおしまいだ
が、女性ならまちがいなく泣ける(わたしはソンナ~と思った)。(柴田)

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■展覧会案内
ディジタル・イメージ・ギャラリーin 幕張
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ディジタル・イメージは、日本で唯一の、そして最大のディジタル・アーティ
ストの団体である。アーティストの「ゆるやかな連帯と快いライバル意識」を
キーワードに、活動を始めて10年目になる。多くのアーティストが自主的に結
集し、グループ展の開催や作品集の発行などの活動をおこなっている。

公式Webサイトも今年1月に立ち上げ、国内ばかりでなく海外まで強力なネット
ワークを築いている。1999年は、北九州、東京、柏崎、上田、大阪、パリで展
覧会を開催し、各方面から大きな評価をいただいている。

ディジタル・イメージ・ギャラリーin 幕張は、新しい会員の作品も加えて107
名、静止画を中心に、3DCGアニメーションも展示する。内容はバラエティに富
み「ディジタル・アートの現在」を知る最高レベルの展覧会となるだろう。

日時 9月8日(水)~11日(土)10時半~18時(最終日午後5時)
会場 幕張メッセ イベントホール
内容 B1サイズのプリントアウトを各作家が1点ずつ展示 3DCGアニメもある
また巨大プラズマディスプレイで静止画を上映する新企画もある。

出展作家
<静止画作品>
阿部知弘、雨宮由里子、アライ・マサト、荒木慎司、飯田HAL 、井沢洋二、石
川浩二、石原博志、市川祐司、岩井宣雄、岩渕泰治、上畠益雄、江川宜宏、扇
原康成、大賀葉子、大島宏文、小笠原たけし、岡部タカノブ、小川アリカ、加
藤俊明、叶精作、亀井一郎、上口睦人、川口吾妻、川越幸子、北岡久美子、北
古賀紀行、喜多見康、木村智博、久納ヒロシ、倉嶋正彦、桑島幸男、小泉麻友
美、小坂達哉、小澤貴也、小谷光彦、小林健三、小松修、近馬秀嘉、齋賀和彦
鷺義勝、笹原和也、柴田敏明、清水宏美、菅原明彦、杉谷泰宏、高根寿明、高
橋晋、竹久マサオ、武田瑛夢、竹田憲司、駄場寛、駄場真弓、杖村さえ子、筒
井海砂、所幸則、ドルバッキーヨウコ、中井勝郎、永井領、中川佳子、ナカノ
ヒロフミ、中村浩二、永吉克之、七水号多、橋本聡、服部幸平、服部正志、花
山由理、羽田宗春、林ノブ、早坂光平、樋口 誠、樋口陽介、一入正記、檜山
巽、福間晴耕、MASANTA 、松永順、松原英二、松本明彦、三河一郎、溝川英男
南光英、三村暢一、ミヤケシゲル、六浦丈雄、武藤修、村上佳明、目黒詔子、
望月澄人、安井千博、山田博久、山本里士、杠聡、弓田純大、横井由美子、横
山弥生、吉井宏、吉田光治、ラジカル鈴木、Rey.Hori、
<映像作品>
森野和馬、山本健介、星沢順子、富岡 聡、高橋信雄、大場康雄

後援:CG-ARTS 協会(財団法人画像情報教育振興協会)、財団法人新映像産業
推進センター、財団法人マルチメディアコンテンツ振興協会

問い合わせ先
102 東京都千代田区岩本町2-15-8 MAS-MITAビル
株式会社シフカ内 ディジタル・イメージ事務局
TEL:03-5823-7650 info@digitalimage.org
http://www.digitalimage.org/

WORLD PC EXPO
http://wpc99.nikkeibp.co.jp/

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■セミナー案内
WEBデザインデスマッチ in 名古屋
「客が倒れるか、森川が倒れるか」でおなじみの徹底セミナー
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日時 9月2日(木) 13:00~19:00
会場 愛知県芸術文化センター アートスペースA(12階)
   名古屋市東区東桜一丁目13番2号 TEL:(052)971-5511

プログラム
・挨拶 MCCJ 代表理事        行木 修
    デジタルネットワークWG  森島 巌
・WEBデザインデスマッチ(5時間ぶっ通し!)Silicon Cafe' 森川眞行
 1. Flash 4とこれからのWebデザインの方向性
 2. Dreamweaver 2を使ってローカルサイトを構築する
 3. Dreamweaver 2でリモートサイトをコントロールする
 4. Fireworks 2を使ってWebページを作成する
 5. Fireworks 2とDreamweaver 2の連係プレー
 6. Macromedia GENERATORの制作ノウハウ
・インターネットをめぐる最新技術とその方向性 マクロメディア 手嶋雅夫
・プレゼント(豪華景品)、ジャンケン大会

会費 MCCJ正会員、個人会員   2000円(正会員は3名まで)
   非会員            4000円
主催 中部マルチメディアコンソシアム
   Silicon Cafe'
協賛 デジタルクリエイターズ マクロメディア株式会社 株式会社Too

問合せ先 森島 巌 TEL 052-239-1324 Email mori@tokaido.co.jp

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■編集後記(8/28)
・昨日の朝日新聞で漫画家の松井雪子が、最近の若い子の携帯電話での挨拶に
ついて書いていた。「もしもしぇ」と、語尾を低く伸ばし消えるように「しぇ」
と発音すると言う。おお、そういえば、うちの娘も「もしもしぇ」組だった。
よく観察しているなあ。妻も爆笑大納得である。先日も「もしもしぇ」の後に、
何々が欲しいンだけどォ、といわれ余計な出費の父である。(柴田)

・J-ROCK MAGAZINE がめちゃくちゃ好きなのだが、たまたま編集の方をお見か
けして声をかけたら本誌とオンライン側にそのことが掲載されてしまった。な
んかごっつい嬉しいなぁ。なんといっても「女の子」という表現が嬉しい…わ
はは。日刊デジクリの読者さんはJ-ROCKのことご存知でしょうか。めずらしく
読者の幅広い邦楽音楽雑誌です。今月はSADSが表紙さ。(hammer.mule)

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発行   デジタルクリエイターズ
     <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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 担当:濱村和恵
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