[1911] 翼あるもの

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1911    2006/02/07.Tue.14:00発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 18133部
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         <ユーザを無視したWebに明日はない>        

■電網悠語:Ridual展開編[102] 
 翼あるもの
 三井英樹

■買い物の王子さま[117]
 そして買い物は続く
 石原 強
 
■Webサイト&イベント案内
 BroadStar、掲載点数が1,000作品を超える
 
■イベント案内
 世界が認めた「スキージャンプ・ペア」作者、真島理一郎さんに聞く



■電網悠語:Ridual展開編[102] 
翼あるもの

三井英樹
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●聖書より

聖書に、ベデスダという池のそばでの話がある。その池は、時折天の使いが舞
い降り水面が揺れる。その時、最初に水に入った人の願いが叶うという。だか
ら、病を持つものが大勢集まっている。そこに38年間、その瞬間を待ち続ける、
病気の男がいる(注1)。

イエスがそこを通りかかり、男に聞く。「よくなりたいか」。男は、直接答え
をせずに、誰も水に入れてくれないんだ、他の人が先に入ってしまうんだと、
訴える。

水面が揺れた瞬間に、水に入れたなら、確かに癒されるのかもしれない。でも、
水に入ることが目的ではない。癒されるのが目的なのだ。水に入ることは、手
段に過ぎない。

このトンチンカンな会話を時々思い出す。物事の本筋ではなく、何か別のもの
に目が囚われそうになっている時に。

●言い訳

例えば、Webサイト開発。「このサイトを良くしたいのか」と問われているの
に、あの担当者の頭が固いんです、あの同僚の開発スピードが遅いんです、そ
もそも予算が低いんです、様々な関連する「要因」を並べ挙げてしまう。

どれも恐らくは間違ってはいない。しかし本質ではない。それだけが原因で、
サイトが「良く」ならない訳ではない。ひとつがクリアされれば、サイトが大
改善される訳でもない。良くするために向ける努力を、別のやり方や手続きを
守ろうとすることに向けている。

そうしたことの未達成さを言い訳にしている自分がいる。そんな「手段」を神
格化している自分に気付いたとき、自分が滑稽だと思えて、肩の力が抜ける。
笑いがこみ上げる。怒りやイライラが収まる。どこ見てたんだ、とつぶやける。

●縄張り

例えば、部署間調整。この問題は部署間で「区画(縄張り)」を決めているん
です、だからウチだけでは決められないんです。こうしたら、もっと良くなる
とは分かっていても、それは調整できないですね。これを通すにはナントカ会
議を数回クリアしなければ無理ですね。そこにはカントカ部長が出てくるんで
すよ。彼を説得しなきゃあ。問題が、徐々にずれて行く。

問題を解決するための会議や、問題をスムーズに分業消化するための「部署」
が足かせになる。特定個人の「オトし方」も重要になる。瑣末な事柄の重要度
がますます膨れ上がり、本質を隠していく。質問は一つだけ。「よくなりたい
か」だけなのに。

だから、最近は思わずフキダしながら尋ねてしまう。「それで良いんですか」。
そんなことに気を遣って、本来の目的から遠ざかって良いんですか、と。相手
の困った顔が面白い。でも、そこで火がつかなきゃ本当には「良く」したいと
は思っていないのだと思う。

●ルール死守

例えば、セキュリティ。何のために、どんな情報を守るのかという議論を忘れ
て、守るべきルールの死守だけが命じられる時がある。議論の余地がない場合
を除いて、殆ど私は闘うことにしている。

命じる側は、余り考えていない場合が多いからだ。ルールを守ることが第一で、
セキュリティを守ることが第二になっている。あるいは、誰かが決めたルール
を守れば、必ずセキュリティが守れると信じて疑っていない。

決められた手順を踏んで、決められた申請をする。或いは自動的に、権限ある
ソフトが自動監視をして、どこまで何をやっているかのリストを出す。命令者
は、その並べられたリストが、「○」で埋まることを目的にしている。

本質的な事柄の達成ではなく、その中間生成物であるチェックシートが「正し
く」満たされることで満足してしまう。それこそが本質的なセキュリティホー
ルなのではないだろうか。

きちんと守られているはずだ、上手く行っているはずだ。様々な「はずだ」が
重なって、いざという時の判断力が低下する。実は、「はずだ」が「はずでは
なかったとしたら」と考えられることが、品質や信頼性につながるのに。

盲目的な既存ルール至上主義は、盲目的宗教的暴走に似ている。ルール自体を
疑い、様々な議論にも耐えられるように多角的に検証し、鍛え続けられたルー
ルだけが、生き残るべきものなのだと思う。信じるに足るものかどうか、それ
は常に誰もが問うべき問題だ。それが健全さを生む。大切なのはルールじゃな
い、守るべきものが守られているか。

●聖書より-2

このイエスの話には続きがある。この会話の後、イエスはその男を癒す。そし
て、その日が安息日(一切の業務・労働を停止し、休息をとる日)だったとい
うことから、ルールを破った(癒す=労働なので)として、既存勢力から怒り
を買う。そして怒りは憎しみに膨れ上がり、最終的にはイエスを十字架刑にま
で追い込んで行く。

既存ルールを守ろうとする勢力の大きさも知らされる。神であるイエスでさえ
抗し難い流れ。が、同時に二千年経っても、どちらが正しかったのかが明確な
のも知る。癒したイエスか、安息日というルールを守ろうとした勢力か。誰が
その病の男のことを本当に考えていたのか。子供にも分かる話だ。

●ユーザを無視したWebに明日はない

先日、ユーザインターフェース(UI)について、あるセッションを持った。そ
れぞれ異なる領域の専門家と意見をぶつける。スタンスは違う。手法も違う。
でも、見ている先は同じだった。そう、「ユーザ」。

ユーザにとっての最良解。それを模索しているという共通認識を感じる。本当
に大切な問いを忘れかけることがある。けれど、同じ方向を見ている人たちと
の会話が、ことの本質に立ち返らせてくれる。そして本質を言い当てる勇気を
思い出させてくれる。

セッションのテーマは、「三年後」。三年後にも第一線でいられるためには、
今なすことはなんだろうか。仮想解は「UI」。そして、その本質は「ユーザ」。
ユーザを無視したWebに明日はない。ここがブレていない限り、多分この世界
に留まっていられる。

よくなりたいか(よくしたいか)、ユーザに満足してもらいたいか、喜んでも
らいたいか。そう、本質的な問いは、いつだってシンプルだ。それを忘れなけ
れば、翼あるものを待たずとも、飛び立てるかもしれない。

注1)水面の揺れが天使によるという箇所は、「本節欠如」としている聖書も
ある。ヨハネによる福音書5章。

【みつい・ひでき】 mit_dgcr@yahoo.co.jp / ridual@nri.co.jp
「PAGE2006:UIの復権」にご参加くださった方、ありがとうございました。
・Ridual(XMLベースのWebサイト構築ツール)公式サイト
<http://www.ridual.jp/>
[ご連絡]RidualはJava5でも、1.4.2_10でも動きません。Javaのせいっす。
・超個人的育児サイト(書籍は絶版中)
<http://homepage3.nifty.com/mitmix/MilkAge/>
・2/25(土)F-siteセミナーに参加します@代々木
<http://f-site.org/articles/2004/03/25003056.html>

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■買い物の王子さま[117]
そして買い物は続く

石原 強
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買い物の情報源として雑誌を活用しています。愛読しているのは世界文化社の
雑誌「Begin」です。ファッション、デジタル機器、インテリアなど幅広く情
報が載っています。選び方のポイントから買った後の手入れ法、さりげなく自
慢するネタとしての蘊蓄もツボをついています。ぱらぱらとページをめくりな
がら、気になる商品はすかさずネットで検索するのです。

いつものようにページをめくっていて目に留まったのが「ガーメントバッグ」
です。スーツの上下と着替えが入るガーメントバッグですが、あまり使う機会
がなかったので持っていませんでした。最近、出張が増えてきたから一つ欲し
いなと思っていました。

ブランドは「ブリーフィング」アメリカ軍向けの工場で製造されている一般向
けのバッグです。ミリタリーものにありがちな重い帆布や迷彩柄などではなく、
黒のナイロン製で普段から使えるスマートなデザインです。特徴である赤いス
テッチは米国政府の認めた工場のみのディテールだとか。

---
米軍にも信頼されるYKKのジップに、扱いやすい紐状のスライダー。金属パー
ツなども完全にミルスペック。ブリーフィングらしさをそのままに、あったら
いいな! がカタチにできた大満足のガーメント。市販されているモノのアレ
ンジではなく、完全別注! ってところを強調しておきます。
---

一目で気に入ったのですが、問題が一つありました。それは店頭で売っていな
い商品だということ。雑誌の創刊18周年の企画で100個のみ作られたものなの
です。応募者から抽選でプレゼントされるとのこと。

これまで懸賞に応募しても当たったことがありません。暇があった学生の頃、
手当たり次第懸賞に応募したけれど、ハガキを書くのが面倒になってあきらめ
ました。一時期ネットの懸賞が当たりやすいと言われてやってみたけど、結果
はDMが大量に届くだけでした。

しかし、今回はどうしても欲しかったので「プレゼントでなくて通販だったと
しても必ず買いたい」とハガキに書いて応募しました。応募から4か月たって
既に忘れかけていた頃、週末に宅急便の玄関チャイムで起こされました。差出
人は「世界文化社」もしやと思って開けてみると、出てきたのは念願のガーメ
ントケースです。

嬉しくて一通りのポケットを開け閉めしてみたり、実際にスーツを入れてみた
り詳しくチェック。内側にはポケットがいくつもあって小分けに収納できるよ
うになっています。細かいところまで作りがいい。すぐに使いたいけど、今の
ところ予定がないのでクローゼットの中で出番待ちです。

使う時はきっと長期の滞在になるでしょう。それなら荷物も多くなるから車輪
のついたトロリーケースも必要です。このガーメントケースにはトロリーケー
スの取っ手の部分に取り付けられる便利なストラップもついています。一体感
のあるデザインで揃えたいから、早速ネットで検索です。

ガーメントバッグを貰った雑誌「Begin」
<http://www.e-begin.ne.jp/>

【いしはら・つよし】info@webanalyst.jp
ウェブプロデューサー、ウェブアナリスト
『人は懸賞だけで生きていけるか?』というテーマのTV番組がありました。番
組の企画のため、金額の安い食品が多いとはいえ毎日ハガキを書き続けて100
万円分の商品を当てるのに一年間かかるのですね。とても真似できない。
・進ぬ!電波少年「電波少年的懸賞生活」
<http://www.ntv.co.jp/denpa/luck/>
・ウェブアナ
<http://www.webanalyst.jp/mt/>

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■Webサイト&イベント案内
BroadStar、掲載点数が1,000作品を超える
<http://www.broadstar.jp/>
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<ニュースリリースから>
(株)デジタルスケープが運営するクリエイター発掘・支援サイトBroadStar
(ブロードスター)の、掲載点数が1,000作品を超えました。

BroadStarは、ムービー、ゲーム、ミュージッククリップなど全国から応募さ
れた映像作品をサイト上で公開。クリエイターに作品発表の場を提供すると共
に、ブロードバンドコンテンツを求める企業とクリエイターのビジネスマッチ
ングの機能を持ったサイトです。

02年11月15日のサービス開始以来コンテストへの応募作品は順調に増加し、06
年1月掲載分で、ムービー835作品、ミュージッククリップ107作品、ゲーム67
作品の合計1,009作品が掲載されました。また、06年1月における総アクセス数
を表すページビューも月間187万を超えて、前年同月のページビュー30万から
大幅に上昇し、コンテンツへの市場ニーズが高まっている様子が表れています。

・「BroadStar Award 2006」
日時:3月24日(金)14:00~18:00
会場;大阪産業創造館4F

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■イベント案内
世界が認めた「スキージャンプ・ペア」作者、真島理一郎さんに聞く
~売れっ子クリエイターのススメ~
<http://www.dhw.co.jp/tokyo/jump0212/>
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<主催者情報>
デジハリ東京本校では、現在渋谷シネマライズ他全国にて公開中の映画「スキ
ージャンプ・ペア ROAD TO TORINO 2006」の生みの親である真島理一郎さん
(デジハリ卒業生)をお招きし、スペシャルトークセミナーを開催いたします。
SJP(Ski Jump Pair)の制作者であり、映像作家でもある真島さんが、世界的
クリエイターにたどりついたその軌跡をすべて語ります。小林正樹監督もスペ
シャルゲスト出演。他では見れない豪華トークイベントです。CG/映像業界に
ご興味のある方必見! お気軽にご参加下さい。

日時:2月12日(日)13:00~16:00
定員:100名
参加費:無料(予約制)
会場:デジハリ東京本校(御茶ノ水駅徒歩2分)
<http://www.dhw.co.jp/tokyo/map>
参加/予約:サイトから
問い合わせ:デジハリ東京本校 フリーダイヤル 0120-386-810
または tokyo@dhw.co.jp
・「スキージャンプ・ペア」映画サイト 
<http://www.sjp-movie.com/>
 
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■編集後記(2/7)
・会社員時代は、「知的生産の技術」から始まる「発想法」「整理法」などの
企画や整理に類する本や、原稿の書き方の本、数字のあまり出てこないやさし
いビジネス書、サクセスストーリーなどを好んで読んだものだった。週末起業
や企業内起業に類する本もだいぶ読んだ。読んだということで満足して、ぜん
ぜん活用も応用もできなかったけど。今がその頃の若さだったら、当然ホリエ
モンの本は既に買って読んでいたと思う。今の歳でもいちおう何冊か立ち読み
はした(一昨年、昨年)。スカスカ本だから、ほとんど立ち読みで済んでしま
った。ところで、「日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー2006」(ロッキン
グ・オン)で、「IT社長本を一刀両断」という小田嶋隆のコラムがあった。い
ずれもあっさり書いているが、三木谷に19字詰め32行、孫と熊谷正寿に27行、
堀江が35行という扱い。藤田晋はわずか11行とは気の毒。堀江著「僕が伝えた
かったこと」(マガジンハウス)について、「『勤勉』や『真面目』といった
伝統的な徳目に水をぶっかけるようなことをサラっと言ってのける。記事を読
んでみると、なるほど、一理ある。が、一理だ。この『盗人にも三分の理』じ
みた、一種の背理を掲げているところがこの男の真骨頂で、もしかしたら、ビ
ジネスそのものよりも、人の裏をかくことが好きで社長をやっているんではな
いかと思わせるところがある」と、今となるとまことにうがった評なので感心
した。もちろん昨年末の本なのだ。正直言うと、見当違いの評をしてたら面白
いなという意地悪な興味で読み直したのであった。さて、一連のあれやこれや
の不祥事で、クビになる閣僚が出るのを楽しみに新聞を見ているが、全然出て
こない。恥知らずな居座りども。やはりニッポンは壊れている。  (柴田)

・「僕って、○○な人じゃないですか」を誤解していた。貴方のことなんて知
りません、と反応する人が多いと思う。他人と自分との境界が曖昧なのかと思
っていた。公共の場で、自宅と同じ行動をすると言われているし。でもこれは
謙譲語のつもりなのだそうだ。「させていただく」の多用も、従来の使い古さ
れた言葉では足りない、もっと丁寧にと考えているうちに使われ、逆に今まで
の「させてもらう」では尊大なイメージが生まれてしまい、「させていただく」
多数派になったそうだ。正しい日本語の番組や本が多いけれど結局は古い知識
で、100年前と50年前でも「正しい日本語」の認識が違うのだし、いくら正し
い日本語を使えと声高に言おうと、言っている人の方が先に死ぬからね、との
こと。もちろん言う人がいないと秩序がなくなるから必要なことなんだけれど
も、「ら抜き」もスピード化の現代では必要な変革かもしれないと。言葉は生
きているし、コミュニティの共通語。大人と子供で使われる言葉が違うのは、
お互いのコミュニティが違うから。他と違う言葉を使うことによって共通感覚
が生まれる。子供にいくら正しい日本語をと言っても、子供にとって大事なの
は子供のコミュニティ。直るはずがないんですよ、とのこと。(hammer.mule)

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発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
リニューアル  8月サンタ
アシスト    鴨田麻衣子

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