Otaku ワールドへようこそ![66]野心のままに生きてごらん撮影会/GrowHair

投稿:  著者:  読了時間:10分(本文:約4,900文字)


いつも撮らせてもらっているレイヤーさんたちからお誘いを受け、今年も和歌山のコスプレイベントへ行ってきた。1月13日(日)にテーマパーク「ポルトヨーロッパ」にて開催されたイベント「Candy Pop in ポルトヨーロッパ」である。

汐音(しおね)さんと緒海(おみ)さんとは、一昨年の夏コミで知り合った。衣装の美しさに感動して、こちらから声をかけて撮らせてもらったのである。以降、バラ園で個人撮影させてもらったりしている。二人は、(本人たちはまだまだと謙遜するかもしれないけれど、私が見る限り)熱狂的な宝塚ファンで、情熱のすべてを宝塚関係に注いでいるように見える。その思いをテコに、気の遠くなるような手間暇コストをかけて衣装を制作する。

私は、撮る側も、できるだけ深く作品を理解して、レイヤーさんたちと思いを共有することによって写真の出来ばえも違ってくるのではないかと信じているが、今回はたいへんありがたいことに、イベントに先立って、1月5日(土)、宝塚星組の東京公演に連れて行ってもらった。初めての宝塚なので、私の理解はほんの上っ面に過ぎないに違いないが、受けた印象としては、言いようもないほどすばらしいものだった。


●冬コミでは見つけやすかった

去年3月の和歌山のイベントでも、汐音さんたちを撮らせてもらっている。やはり宝塚コスで。そのイベントには汐音さんたちとのコス仲間である万鯉子さんと蝶子さんも来ていて、立ち話に混ぜてもらっていたら、万鯉子さんたちから鳥取のイベントにとお誘いを受け、春と秋に行ってきたという経緯がある。

12月29日(土)から三日間開催された冬コミの初日、万鯉子さんたち四人のサークル「チーム裏天竺」は「うらてん」と題した同人誌を売っていた。11月に鳥取の中華庭園「燕趙園」で開催されたイベントで、「西遊記」と「のだめカンタービレ」を混ぜこぜにした「のだ遊記」コスをして、あらかじめ用意しておいたシナリオに沿ったシーンを作って撮影し、その写真を漫画風にレイアウトした、同人誌。めっちゃ笑える。

そのテーブルに立ち寄ったとき、少し前に汐音さんと緒海さんが来たので、まだその辺にいるんじゃないか、と万鯉子さんが言う。いや、その辺ったって、一日に15万人以上が来場する大混雑で、はたして見つけることが可能なのか、と思いつつも、ともかくも適当に歩き回ってみたら、ほどなく見つかった。

「エル・アルコン-鷹-」「レビュー・オルキス-蘭の星-」星組大劇場公演主題歌CDいや、これなら見過ごすほうが無理だろ、ってくらい目立つ姿。11月2日(金) から12月15日(土)まで、兵庫県宝塚市の「宝塚大劇場」で星組が上演した「エル・アルコン鷹」のティリアン・パーシモンとギルダ・ラバンヌになっている。

イギリス海軍の大佐(実はスペインのスパイ)であるティリアンは、黒を基調として、金ボタンや金の刺繍などの装飾がふんだんに施されたきらびやかな軍服姿。貴族の称号を持つフランスの女海賊ギルダ・ラバンヌは、ぶわっと広がった白のドレス姿。

年明け1月2日(水)から2月11日(月)まで「東京宝塚劇場」で上演することになっているので、私も見に行ってはどうかと汐音さんからお誘いいただく。いやぁ、見たいは見たい、ものすごく見たいけど、私のようなファン未満の人間が一席埋めたら、その分、もっと強い思いで見たい人が一人はみ出すのではないかと多少のうしろめたさを感じる。でも、ぜひ。

というわけで、1月5日(土)、有楽町で汐音さんと待ち合わせ、11時からの公演に。

●野望を遂げるために、どこまで悪事を働けるか

劇場のロビーは、映画「マイフェアレディー」に出てくるアスコット競馬場のごとく、華やかに盛装した貴婦人たちでひしめき合うのかと思いきや、そんなことはなく、華美に走ることのない、品のいいおしゃれをしたお出かけスタイルの淑女たちがほとんどだった。想像通りだったのはオペラグラスだけ。勝手な先入観を反省。初老の紳士の姿もけっこう見受けられる。ネオロマの声優コンサートよりはずっと男性の姿が多い。

約2,000席がびっしりと埋まる。たまーに空席があると、本当に目立つ。その席を埋めるはずだった人は、今ごろ自宅の布団の中で体温計とにらめっこしてくやし涙にくれているであろうことまで想像がついちゃう。我々は8,000円の二階席。チケットを取るのに汐音さんがどれほど苦労したかは、私は知らない。

エル・アルコン-鷹- (秋田文庫)演目は「エル・アルコン—鷹—」と「レビュー・オルキス—蘭の星—」。「エル・アルコン—鷹—」は、青池保子の漫画が原作。また、主題歌は映画「ゲド戦記」の音楽を手がけた寺嶋民哉が作曲。このあたりでオタク領域と地続きだったりする。

「清く正しく美しく」は阪急電鉄を創業し、宝塚歌劇団を創始した小林一三(いちぞう)の遺訓であり、宝塚歌劇団はこれをモットーに掲げる。が、演目のストーリーは必ずしも清く正しいとは限らないのであった。主人公は、七つの海を制覇したいという野心のままに、とことん悪事を重ねていくティリアン・パーシモン。悪いやつが主役では、いまひとつ感情移入しづらいのだが、なかなか深いテーマだ。

16世紀後半。スペイン、イギリス、フランスが海の覇権を争い、戦いを繰り広げていた。イギリスの名門貴族の御曹司ティリアンは、24歳の若さでイギリス海軍の大佐となっていたが、それは表の顔、実はスペインに通じるスパイであった。スペインに亡命し、無敵艦隊を率いてイギリスを撃破し、世界の七つの海を制覇することが彼の夢であった。

彼の野心に火をつけたのは、ジェラード・ペルー。ティリアンの父エドリントンは母イザベラの不義を疑い、ティリアンにまでつらく当たる。そんな父親以上の情愛をもって接したのが母の従弟であるジェラード。

「野心のままに生きてごらん、ティリアン。君にはそれができる」。ある日、ティリアンはジェラードを追っ手から救い逃がす。ジェラードはスペインのスパイであり、母国に亡命する。これに激昂した父はティリアンと争いになり、ティリアンは父を刺す。その傷がもとで父は死ぬ。

港町プリマスの大商人グレゴリー・ベネディクトは、ネーデルランドをスペインから独立させようと支援する。これが面白くないティリアンは、グレゴリーの商船にスペインからの偽造の密書を忍ばせ、計画的に摘発し、グレゴリーを無実の罪に陥れ、死刑にしてしまう。グレゴリーの一人息子ルミナス・レッド・ベネディクトは父の無念を晴らす決意をする。

ティリアンのスペイン亡命の行く手を阻むのは、フランスの女海賊ギルダ・ラバンヌ。一戦交えるが、敗れたギルダをティリアンは強引に抱く。「女は抱かれていればいい」。そんな強さにギルダは心を奪われてしまう。え? それでいいのかっ?! 俺が言ったら張り飛ばされそうだけど。

ギルダの領地であったウェサン島をジェラードが占拠したという知らせが入り、ティリアンはそこへ行き、ジェラードと再会する。かつては父親のように接してくれたジェラード、ティリアンに野心のままに生きることを教えたジェラードだが、今は権力を争い合う関係。ティリアンは冷酷にもジェラードを絞首刑に処する。

スペインへの亡命を果たしたティリアンは、自ら設計した旗艦「エル・アルコン—鷹—」に乗り込み、スペインの無敵艦隊を率いて、イギリスとの決戦に向かう。

劇の間、隣りで汐音さんはぼろぼろ泣いていた(ようだ)が、悲劇的なストーリーもさることながら、舞台の美しさに感動して泣くという感性がすばらしい。私も舞台の美しさ、衣装の華やかさ、動きやポーズの美しさには感動したけれど、そこまで呼応するには至らなかった。ただ、ジェラードを絞首刑にしたティリアンの「俺の首にもすでに縄が幾重にも巻かれている。だけど、その縄を誰にも引かせはしない」には、それが徹底的に「野心のままに生きる」ってことなんだと、思いを熱くした。「野心に理由などない」が自分の中に余韻を残した。

●和歌山は今日も寒かった

というわけで、次の週末、1月13日(日)は和歌山。「女は抱かれていればいい撮影会」じゃなくて「野心のままに生きてごらん撮影会」、と勝手に呼んでみただけで、実はコスプレのイベント。

和歌山から電車で10分ほど南下したところに海南駅があり、そこからバスで15分ほど西に行った人工島内に「ポルトヨーロッパ」がある。この島は、高級リゾート地になっている。ヨットハーバーがあり、リゾートマンションがあり、一泊3万円以上する高級ホテルがあり。

9:05海南発のバスは、30人ほどの乗客でほぼ満杯。ほとんどがコスプレイヤー。男性は私のほかにもう一人しかいない。始終、ぴーちくぱーちくと大変にぎやか。東京近辺のイベントでも、バスで行く会場だとよくこういう雰囲気になることがあった。和歌山のイベントだと、さすがにほとんどが関西方面の人だと話す言葉から分かる。

暖かそうなイメージのある和歌山だが、この時期の海沿いは風がびゅうびゅう吹いて寒い。観光客の姿があまりないのも、寒々とした感じに拍車をかけている。だけど、コスプレイヤーたちの情熱は熱い。和歌山駅からのバスと和歌山市駅からのバスが到着した10時前には、100人近い列ができた。コスプレイヤー以外の来場者は、ほんのちらほら。

カメコは、コスプレイヤーたちが着替え終わった頃を見計らって遅めに来る人が多いようだ。それと、特に目当てがなく、その場で撮りたくなった人に適当に声をかけて撮らせてもらうカメコは、以前に比べて少なくなったように感じる。特定のコスプレイヤーのグループの専属カメコとして、誘い合って来るパターンが多くなってきているようだ。

人が少ないのは撮影に好都合だけど、こう寒いのは全然好都合ではない。なかなか両立しないものだ。古いヨーロッパの街並みを再現したようなテーマパークは、味わいのあるコスプレ写真を撮るにはたいへん好適だ。

それを狙ってわざわざ東京から来たわけだから、寒さなんてのは根性で吹っ飛ばせ、なんて最初のうちは息巻いていた我々だが、根性にも限界がある。ウォータースライドの下の煉瓦の壁は、背景としてなかなかいいのだが、海風が凝縮されて通り抜ける道になっているようで、常に冷たい風がびゅうびゅう吹きまくり。さすがにたまらなくなって、早々に屋内へ。

汐音さんと緒海さんの衣装は冬コミで一度見ているのだけど、宝塚を観劇してから改めてみると、そっくりにできているのだなぁ、と感心する。あの舞台のすばらしさに感激して、その勢いですごい手間をかけて衣装を制作したんだなーと、思いが少し分かるような気がしてくる。

エル・アルコンの衣装だと分かって「撮らせて下さい」と声をかけてくる女性がいた。初めて会うのに、汐音さんたちとすっかり意気投合して、十年来の知己に会ったように楽しそうに話をしていた。

あまりの寒さに、存分に撮れたとは言い難いもやもやした気分を少し残して終了した。できれば、また行ってリベンジしたい気がする。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。壁に据え付けてある空調が壊れた。風は来るけど、暖かくも涼しくもなく、外の空気そのもの。修理してもらうにしても、まず部屋を片付けて、足の踏み場というものを作らなくてはならない。とりあえず応急処置として、扇風機みたいな形のヒーターを買ってきた。それが三年くらい前。そのヒーターも壊れて、スイッチを入れても反応しなくなった。それが去年の春先。あと少し我慢すれば春だから、このままでいいや。で、そのまま冬に突入し、今に至る。この冬は暖房が一切ない。酒飲んだり、辛いもん食ったりして自分が暖房になるっきゃない。おかげさまで、風邪ひかない。ナントカは風邪ひかないって本当だったようだ。

将棋ニュースプラス「ご主人様、王手です」は次回がいよいよ最終回。一から将棋を習い始めて半年、三人のメイドは3級合格なるのでしょうか。本日配信分、見た。綾ちゃん、よくがんばった。
< http://broadband.biglobe.ne.jp/sitemap/index_shougi.html >