Otaku ワールドへようこそ![147]自分内別人格の反乱/GrowHair

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女の真似なんかしてて天罰が下ったのだろうか。七転八倒の激痛、パンツ血みどろの戦い。歩くこともままならず、仕事を3日も休んでしまった。病院に行っておそるおそる診断を仰げば、血栓性外痔核。

●自分内別人格の反乱

それを微に入り細にわたり描写して何の役に立つ、と疑問に思われる向きもあるかもしれませんが、今回は他にネタがあるわけでなく、半分ヤケクソ気味にオノレの菊門を天下にさらしてみることにいたしますゆえ、よろしくおつきあいのほどを。

これに限らず病気というものは、苦しみながらもとかく自慢したくなるものでありまして、自慢されたからといってちっともうらやましいとは思わないでしょうけど、巷のバレンタインデー商戦の毎度の浮かれムードにやや辟易されている読者諸兄におかれましては、「パレードに雨」な本稿に中和作用を求めるのも、ご一興かと。

2月5日(日)は下北沢と高円寺で写真撮影のダブルヘッダーだった。下北沢はアイドルの卵たち、高円寺は人形たちが被写体。私の格好は例によってセーラー服。このときは痛みながらもなんとか撮影できた。素早く動くことができない上に、表情がこわばっていたが、後で聞けばあまり気づかれていなかったようで。

翌日、仕事から帰るころがいちばん痛んでつらかった。20年来、出口の調子はあまりよろしくなく、時おり痛んだり出血したりしたものだが、この日はそんなのと比べものにならないほどの激痛。会社のトイレでおそるおそる指でさぐってみれば、アズキ粒大ぐらいのがぴょっこり飛び出している。これ以上固くなりえないというぐらい、パンッパンに張っている。

押し込めないかと、指で押してみる。あまりの痛さにうめき声が出る。個室の外で小用足してる人がいたら、中で何してるんだといぶかしむに違いない。誰も来ないでくれよぉ。がんばると引っ込むことは引っ込む。押さえている間だけは痛みも和らぐ。けど、放すとものの10秒でぷーっと膨れ上がり、元のパンパン状態に戻ってしまう。指は血まみれ。




パンツもすでに血まみれで、しょうがないから間にトイレットペーパーを畳んではさんでおく。けど、そのほうが擦れて余計に痛い。生理用のパッドを当てておくことは考えつかなかった。考えついたとしても、女性に貸してくださいと頼むのもナンだし、会社の売店で売ってるのかどうか知らない。売ってたとしても、チョー買いづらい。

歩いていても、ケツに固い団子をくっつけている感触がする。この団子が強烈な痛みをもって自己主張する。痔核の自覚。会社から駅までの帰り道、タクシーが通りかからないかと振り返り振り返りスロー歩き。重い荷物を背負ったラクダのごとく、人生の宿命を背負い、とぼとぼ歩く。ほぼ泣きそう。普通に歩いている人たちが特急列車のごとくびゅんびゅん追い越していく。

この日、翌朝予定されている月例の進捗報告会用のパワポ資料作成で、けっこう遅くまでかかっていた。火曜日、朝起きてみると、昨晩と状況は変わっておらず、どうにもこうにも出社は無理。休ませていただきたい旨、上司のN河氏に連絡メールを入れる。すると返信で、お薦めの専門病院を教えてくれた。所沢肛門病院。カリスマ肛門科として名高い、とか?

実は、10年ほど前にも激しく痛んで病院に行ったことがある。あんなに痛んだのは初めてだったもんだから、これはいよいよ入院して手術を受けねばなるまいか、と思い、大きな総合病院に行った。ところが、診断によると薬で治療でき、2〜3日で治るとのこと。言われたわけではないけど、もっと深刻な状態の患者を診ている名医の俺のところに、そんなオデキみたいなもんのことで来られてもなぁ、そこらの町医者でじゅうぶんじゃん、と言いたげなふうにみえた。

所沢は中野区のウチからはけっこう遠いけど、その病院は小手指駅から徒歩3分のところにあり、所沢で西武新宿線から池袋線に乗り換えれば行ける。都心方向に向かうよりも、通勤ラッシュと逆方向のほうが、すいてて楽だ。

さすがは専門病院、待合室の座布団からして違う。四角い座布団にドーナツ状に丸く綿が入っていて、真ん中が凹んでいる。これはいい! 20分ほどの待ち時間で診察室に呼ばれたのは、大病院と比べれば格段に早い。顔はヒゲぼうぼうなのに、足がつるつるに剃ってあるのをどう思われたかは知らない。

診断は前述のとおり、血栓性外痔核。薬で2〜3日で治るとのこと。内痔核のほうは慢性化していて、手術しないと治らないとのことだけど、そっちは何とか生活できているので見送ることにした。薬を塗ってもらい、ガーゼを当ててもらった。なんかすでに少し楽になった気がする。

しかし、小手指駅前って、昼メシ食うお店があんまりないね。ウチの最寄もあんまりなく、仕方がないので、一駅手前の、以前に住んでたウチの最寄駅で降り、行きつけの喫茶店でA定食。注文するときは「いつもの」。帰ってから夜まで、よく眠れた。夜は夜で、また眠れた。前夜は痛みでろくに眠れなかったので。結局、水、木も仕事を休んでしまった。

痔に自意識が芽生えて反乱起こしてる感じ。本体はいたって健康で、酒も飲みたいし辛いものも食いたい。けど、出口の都合で我慢を強いられる。「なんでこいつのせいで」と言えば「出口をナメたらあかんよ。オレが機能しなかったらどういう困った事態になるか、考えてみんしゃい」と言い返される。ひとりチャットができそう。まるで人面瘡だ。

人面瘡と言えば、昔、指にイボみたいなのができて、限りなく生長していきそうな勢いだったことがある。皮膚科に行ったら、ドライアイスでジュッとやってポロッと取ってもらえた。Novaで英会話を習ってたころで、包帯をして行ったら女子高生から「どうしたんですか?」って聞かれたんで、冗談のつもりで「昔の女の顔が現れて、ぎゃーぎゃー文句言うんだよね」と答えたら、真顔で「そんなに悪いことしてるんですか?」と聞き返されてたいへん困ったことがある。

「ろくでなしのこんこんちきの大馬鹿野郎」を意味する英単語に"asshole" というのがある。文字通りの意味は「ケツの穴」。痔が自我を生じ、痔核に人格が現れ、肛門様がかっかっかっと高笑いするとき、本体は大弱り。やっぱ誰かに恨まれてるんだろうか。

「他にネタもなく」とは言ったものの、これだけで長文を引っ張るのは気がひけるので、そろそろ話題を変えましょうか。

●猫から学ぼう

ウィリアム・サマセット・モームは小さいころ「アリとキリギリス」の話を聞かされてアリが大嫌いになり、見ると踏んづけたというが、私は偉人の伝記を読まされて偉い人が大嫌いになった。イソップ寓話の教訓が気に食わないからといって現実のアリに罪があるわけではないのと同様、伝記を読んでムカッとくるのは偉人のせいではない、ってことに気づくのは、ずっと後になってからのことである。

つまりは、伝記を書いたやつの小人物っぷりが鼻についたのだ。凡人すぎて、書いてる対象人物のことをちっとも理解できてないみっともなさは、今なら笑い飛ばせる。

子供向けの伝記はだいたいパターンが決まっている。幼いころから背負っていたハンディキャップを乗り越え、努力を怠らず、ついには大偉業を成し遂げ、人類に大きな貢献をしました、と。企図がバレバレだ。そこから感銘を受け、偉人にあこがれ、そこに近づく努力をする子供になってほしい、と。はいはいおおきに。偉人自身はダシに使われてるにすぎないやんけ。

そういう中にあって、良寛禅師のはちょっと異彩を放っていた。毎日よく遊び、まりつきが上手かったとか。たいていは一人だが、遊び相手がいるとしても子供たちとか猫たちとか。遺した言葉も「偉ぶった態度はイヤだな」とか「私はダメ人間なので、人間様の相手は向かない。猫ぐらいがちょうどいい」みたいな感じ。一体どこが偉いんだろ? こういうのはじんと心に沁み入り、いつまでも記憶に残る。こんな人が偉人として尊敬を集めるなんて、日本人って、なんだかいいな。よーし今日から俺もダメ人間になるぞ。

2月5日(日)、私はセーラー服を着て出かけ、中野のあおい書店で猫の写真集を買い求め、その足で下北沢の音楽スタジオに行き、アイドルの卵である女子中高生たち6人に写真集にある猫のポーズを代わる代わるとってもらい、撮影した。天の思し召しにより、ちょっとした縁があって、とある芸能事務所の擁するデビュー前のアイドルたちの写真撮影役と英語指導役を仰せつかっているのである。

そのちょっとした縁の始まりは'08年7月20日(日)に遡る。とある劇団の宣伝用写真の撮影を通じて奥井氏と知り合った。いや、もう少し遡ろう。'05年4月29日(日)に浜松町で開かれた「ドールショウ」で人形作家の林美登利さんと知合ったのをきっかけに、創作人形をよく撮らせてもらうようになり、人形作家さんの知合いも増えていった。

その中に、由良瓏砂さんがいた。瓏砂さんはひらめきを感じさせる独創的で呪術的な人形を作るが、役者でもあり、劇団 MONT★SUCHT(モント・ザハト)の一員であった。その劇団の撮影が先ほど述べた日にあったのである。

瓏砂さんはまた、青炎(セイレーン)さんという歌い手さんと「VANQUISH」というユニットを組んでミュージカルを演じる活動もしていた。そのつながりで、青炎さんも来ていて、一緒に撮影させてもらった。青炎さんの所属する事務所「VALOIS ARTISTE(ヴァロワ・アーティスト)」の人としてBMWで送り迎えしていたのが奥井氏である。
< http://www.ness2000.com/va.html >

奥井氏はたいへん親切な方で、私がうっかり容量の見当を誤ってコンパクト・フラッシュが足りなくなったとき、BMWを駆って家電量販店まで連れていってくれた。以降もなにかとお世話になり、'10年4月18日(日)のVANQUISHの公演では、私も神父役として舞台を踏ませていただいた。
< http://www.ness2000.com/vanquish.html >

奥井氏は下北沢にある音楽教室「VALOIS VOIX(ヴァロワ・ヴォイス)」の人でもある。私は公演の3日後の4月21日(水)からそこでボイストレーニングを受けている。
< http://www.ness2000.com/vv.html >

んで、ヴァロワ・アーティストはアイドルの卵たちとして二組のユニット「CGM」と「AM6」を擁し、デビューに向けて特訓をほどこしている。その一環として、私にも前述の指導役が回ってきたというわけである。詳しく述べれば以上のようなことになるが、ごく簡単にまとめれば、写真を撮っていると芋づる式に人とのつながりが広がっていく、ってことである。

ポージングの練習ということなので、ポーズ集のような本を教科書にしてもよかったのだが、ちょっと猫になってみてほしくなったのは、単なる私の趣味である。アイドルの卵たる女子中高生もかわいいけど、猫もかわいい。そのかわいさは、まったく同質のものではないけれど、共通するエッセンスのようなものはあるだろう。下北沢の音楽スタジオにはなぜかちょうどよく猫耳なんかあるし。

いや〜、猫になってるなってる。こっちもごろにゃ〜んと寝っ転がって撮る。あ゛ー、痔が痛てえ。と、人知れず苦しんで撮った難産のたまものであるところの写真、残念ながら権利うんぬんの制約があり、ここにほいっと公開するわけにはまいりませぬ。3月11日(日)に田町で練習ライブをやるので、どうか実物を見にいらしてくださいまし〜。詳細決まったらここに情報掲載されます。
< http://www.ness2000.com/va2.html >

ライブと言えば、12月25日(日)と1月21日(土)に西川口の「Hearts」にて開かれたライブにも練習として出演していた。12月のときは、曲目に英語の曲が2曲。準備期間が2か月足らずだったけど、ちゃんと歌詞を覚えてくれたし、発音もなかなかよかった。欲を言えば発音にはまだ注文つけたい点があったし、歌詞を覚えるのがやっとで表現力うんぬんというところまでは手が回らなかったということはある。しかし、あの短い期間でやれることは精いっぱいやってくれたと思う。

実際、この英語の歌で会場の空気が引き締まった感じがした。「こやつら何者?」みたいな感じで。こんな小さな箱に納まっているようなレベルではなく、近い将来、大きく羽ばたいていってビッグになるんじゃなかろうかと予感させる「何か」があった。

1月のときはイベント全体としてアニソン縛り。CGMとAM6の合体グループとして15分の枠をもらい、3曲歌った。実は前日の夕方になってもう一枠空いてしまい、急遽穴埋め要請が主催者から来た。アニソンではなかったけど、前回披露したオリジナル曲で、立派にやり遂げた。もともとの枠も、いい出来だった。振りがよく揃ってきたし、前回からたったの1か月なのに、格段に進歩していた。まあ、猛特訓してるから、あたりまえなんだけどね。

面白いのは、振りが揃ってくれば一人一人の個性は埋没してしまうのが道理なようであって、実際は逆だったこと。カメラを構え、レンズを通して一人一人の姿をアップで見ると、歌や振りのレベルが向上した分、いっそう魅力が増し、それぞれの持っている味が際立ってきた。集団で「ハレ晴レユカイ」を演じてあんなに愉快なのは初めて見た。3月のイベントでは、さらにオリジナル曲が増える予定です。

余談だけど。ライブで撮ってるときの私の姿もセーラー服。けど、彼女らはまったく動じない。毎週末見てるんで、慣れっこなのだ。私は外を歩いていると路上で歌っているパフォーマを見かけることがあるが、明らかに笑いをこらえて歌っているのが分かることがあり、「あ、ごめん」と心の中でつぶやいたりする。

ライブの帰りは、リアル女子中高生の仲間たちの中に偽物が一人混ざり、普通におしゃべりしている格好になるが、シュールに見えて面白いらしい。「あ、すれ違う人たちが何で笑ってるのかなぁ、と思ってたら、そっかGrowHairさんかぁ」と。慣れとはおそろしい。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp

セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。来るか来るかと思ってるとなかなか来なくて、忘れたころにやってくるのは地震ばかりではなく。15年ぶりに人事異動を申し渡された。申し渡されたといっても、池袋の「ビッグエコー」の受付カウンターで職場の偉い方にばったりと会ってセーラー服姿を見られてしまった(←これは事実)のがたたってクビ同然の左遷、というわけではなく、ありえないくらいの温情人事。

今までの職場は埼玉の、もうちょっと行けば田園風景が広々と見渡せる平らな地帯に建つ古い工場の敷地内の研究所。今度の職場は山手線沿いに建つ24階建てビルの22階。ソリューション提供ビジネスを下支えする技術開発部門。近代的で垢抜けた雰囲気。テレビドラマに出てくるオフィスみたい。

上司のM山さんは働く女性の鑑のような人で、社長賞を受賞している(従業員4万人の会社でこれはスゴイこと)。以前の同僚だが、あのころ小さな子供だった娘さんは、今年成人式を迎えたという。窓からはレインボーブリッジと東京タワーと代々木のドコモビルが見える。技術畑で長くやってきた私としては、野暮った〜い空気のほうが落ち着くんだけどなぁ。もっとバリバリ働けってメッセージなのか。にゃ〜〜〜ぉ。