Otaku ワールドへようこそ![171]拙者、浪人でござる/GrowHair

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●大回り乗車で読書、意外と快適

3月4日(月)、いつもと違う経路で帰ってみた。新宿駅で150円の切符を買う。これで中野まで帰れる。中央線快速電車なら、新宿の次の停車駅が中野で、所要時間は約4分。

ところで、JRの運賃は、基本的に乗車した経路にしたがうが、条件によっては例外的に、利用者が経路を選択できるルールがある。その条件とは、
(1)東京近郊区間から出ないこと
(2)経路が自身と接触したり交差したりしないこと
(3)途中のどの駅でも改札口を出ないこと
(4)一日で完結すること
というもの。

この日、私がとった経路は、新宿─(埼京線)─大宮─(川越線)─川越─(川越線)─高麗川─(八高線)─八王子─(中央線)─中野。

「関東北西部大四角形」と呼ぼう。所要時間は約3時間。いい感じに直通電車が走っているので、実際に電車を乗り換えるのは、川越と八王子だけ。しかも、それぞれの電車の終点なので、乗り過ごす心配がない。

日が暮れてからだったので、車窓からの景色を楽しむためではない。
本が読みたかったのである。意外と快適。

・全行程、座って行ける。
・室温が快適(喫茶店や漫画喫茶などは、時として暑すぎて、集中できない)。
・明るさも読書にちょうどいい(喫茶店は、暗すぎることがある)。
・静か(通勤時間帯は、人が大勢いても非常に静かなのが東京)。
・安い(喫茶店よりも)。

どうです? 快適な読書環境なんじゃないかと。

月曜日にこの経路を試してみて、イケると分かり、火、水、木、金もそれで帰った。標準的な通勤経路になりつつある。




●国家試験という名の崖から落ちた

大回り乗車して読んでいたのは、電子書籍ではなく、紙の本なので、物理的には硬くはないのだけど、内容がそれはそれはもう......。何しろ、知的財産の管理技能に関する国家試験を受験するための参考書なのである。

出題範囲に関連する法規として、民法、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、不正競争防止法、独占禁止法、関税法、著作権法、種苗法、パリ条約、特許協力条約、TRIPs 協定、マドリッド協定、ヘーグ協定、弁理士法、とこれだけある。目次だけでうんざりしてきますな。

読めばいいってもんではなく、内容を頭に叩き込まなくてはならない。これはもはや読書ではなく、勉強である。そうだ、勉強だった。

勤め先の、雲の上におわしましまする偉いお方が、「自己研鑽しないやつはウチの会社にゃ要らんから去れ」みたいなことをのたまわったらしい。わが上司であるM山氏は働く女性の鑑のようなお方であるが、「わが部は私が守る」と頼もしいことを言ってくださった。「けど、その代わり、みんなちゃんと自己研鑽してちょーだいねっ♪」。

「はーい♪ シャイな性格を克服するために、セーラー服を着て街中を徘徊してまーす」。会社的にはそういうのを自己研鑽とは呼ばないらしい。

形で示すには、試験を受けてなんかの資格を取得するのが鉄板だ。会社の推奨資格リストというのがあり、私なんぞに多少なりとも手の届くチャンスがありそうな感じがするのは、「知的財産管理技能検定」ぐらいだ。それも、3級じゃだめで、2級以上とある。げー、勉強しなきゃだよー。

学科試験と実技試験がそれぞれ1時間ずつで、40問ずつ。両方とも80%以上正解すると合格である。この年になって、試験勉強とはちとしんどい。つーか、そんなまとまった時間なんて、とれやしないのだ。

分厚い参考書を買って、大回り乗車して読むのが精一杯だった。本来なら、過去問か模擬試験問題を解いてみるべきところである。読んだだけでは、たいていの場合、頭に入っていないものである。こんなんじゃ、まず、受からん。

見込みがこうも薄いと、セーラー服着て、なんてノリノリな気分にはなれず、B面で臨む。A面B面については、こちらの過去記事をご参照くださいませ〜。
< http://bn.dgcr.com/archives/20130118140100.html >

空気が黄色く霞んで粉っぽい3月10日(日)、東大の駒場キャンパスに向かう。同じ部署の人とばったり会う。あーやっぱり。私以外にもこれ受ける人いるに違いないと思ってた。あんまり選択肢なかったからなー。

受けた感触では、自信をもって回答できたのが、約7割であった。ということは、残る3割のうち、3つに1つ当たっていれば、合格ラインを超えることになる。もしかすると、受かってたとしてもおかしくはないかも。

合格発表があるのは5月7日(火)である。しかし、問題用紙に自分の回答を記入して持ち帰ってよく、試験翌日には模範解答が発表されるので、自己採点できる。突き合わせいくうちに、すーっと血の気が引いていく。自信回答したつもりだったのが、ボロボロなのだ。

結果、学科試験は40問中29問正解で、72.5%だから不合格。実技試験は40問中35問正解で、87.5%だから合格。総合結果、不合格。浪人でござる。次回は、合格したほうは受験免除となり、不合格のほうだけ受けなおせばよい。

次は7月28日(日)だ。それまでにはしっかり勉強しておいて、こんどはちゃんとセーラー服で臨みたい。

●寒風吹きすさぶ屋外でも元気いっぱいな[東京女子流]

アイドルグループ「東京女子流」をすぐ目の前で見ることができたのは、ラッキーであった。2月24日(日)に、下北沢駅南口近くの、ちょっと引っ込んだところにあるダイエー系のスーパー「foodium 下北沢」の前で、ミニライブが開かれたのである。入場無料。というか、どこへ入場するのだ、という狭っこいオープンスペース。

東京女子流は、'10年1月1日に結成された5人組のアイドルグループである。平均年齢15歳。このところ勢いがよく、昨年12月22日(土)には、日本武道館で単独公演を開催している。東京女子流と下北沢を両方知っている人なら、「えっ? あのグループがあんなところでライブ?」と、ちょっとびっくりするに違いない。

実際謎である。オフィシャルサイトでは、まったく告知されていなかった。あんなとこに1万人も集まっちゃったら大変である。かといって、誰も来なかったら寂しいことになるわけで。ちょうどよく100人ぐらい集まって、歌に合わせてちゃんとフリをコピーしていた。うん、謎だ。

私がその場にいたのも謎であるが、天の思し召しか、異常なまでに鋭い嗅覚か、ただの偶然か、まあ、そんなようなものである。何でもない一介の市井の人にとって、自分という目立たぬ存在が有名人の記憶の中に少しでもとどまるようなことになれば、なんだかあやかってちょっとばかりビッグになれたような、わくわく感に浸れるものである。

あのアイドルグループにはありえないほどの小規模なライブだったので、もしかしたら、ちょっとくらいは本人たちの記憶にとどまることができたかもしれないかな、などと勝手に想像してにまにましているミーハーな私である。特に、その日は偶然にも、セーラー服を着ていたので、その多少なりとも特徴ある姿によって、印象に残ってくれてればなぁ、なんて。

歌の他に、リーダーの山邊未夢(やまべ みゆ)さんがバルーンアートを実演してくれたりもした。立ってるのもつらいくらいの寒い日で、かじかんだ手で風船を操るのは難儀そうではあったが、寒いなんてまったく顔に出さず、明るく元気にふるまっていた。うん、若いのに根性あるなぁ。

一介の市井の人にすぎない私は、「これらかもがんばれよぉ」と、心中密かに応援するのであった。

●肉絲湯麺さがしの旅

かつて、埼玉の奥地に「らんざん」というラーメン屋があった。メニューの中で一番高いのが「肉絲湯麺(ろーすーたんめん)」。850円。これが、めっちゃ美味かった。

胡麻の香りの効いた醤油系のラーメンの上に、細切り肉を細切り玉ねぎなどと炒めた具がどかんと載っている。具は、とろみがついていて、それがスープに溶けていき、なかなか冷めない。スープには、細かく刻んだきのこ類が何種類も入っていて、いい風味を出している。

悪いけど、それ以外のメニューはそれほど格別にどうということもなかった。繁盛してないわけではなかったが、4〜5年前だったか、閉店してしまい、跡地は別のラーメン屋になった。

以来、同じようなのを出す店はないものかと方々を探し歩いているが、いまだに出会えていない。まず、肉絲湯麺をメニューに掲げる店自体が少ない。表記は「肉糸湯麺」だったり「ルースーたんめん」だったり「ロースたんめん」だったりするけれど。ネットで検索して食べに行っても、たいてい、思ってたのとかけ離れている。

メニューに載ってなくても、たいていの中華料理屋では、頼めばそれっぽいものを作ってくれることが分かってきた。メニューに「ラーメン」と「青椒肉絲(チンジャオロース)」があれば、まあ、載っけるだけなので。でも、やっぱり違うんだな。それはそれで美味いと思うときもあるのだが、あのとろみときのこ風味に欠けるのは、いまひとつもの足りない。

そういうわけで、この場をお借りして、全国に指名手配しちゃいます。どなたか、美味い肉絲湯麺を出すお店をご存じの方、ぜひご一報ください。国内ぐらいなら、どこへでも参ります。さすがに、かぐや姫にリクエストされてなんかを取りにいくような、どっかの国の辺境までは行けるかどうかはなんとも言えませんが。

●熱弁ふるった弁護人のがんばりは報われたか

前回、東京地方裁判所へ痴漢の裁判を傍聴しに行った話を書いた。
< http://bn.dgcr.com/archives/20130301140100.html >
その判決が3月8日(金)に下された。私は行けなかったので、後日、被害者から聞いた。

判決は、懲役4か月、ただし、3年間の執行猶予つき。こ、これって求刑通りじゃん。この裁判のポイントは情状酌量がどれだけ認められるかにあり、弁護人は時間いっぱい使ってあんなに熱弁をふるったというのに、酌量なしですかそうですか。まあ、「もうしません」と3回誓った上での4回目の犯行なわけだし、しゃあないか。

判決の日は、裁判長からの説教があったわけでもなく、約15分で、あっさり閉廷。被害者の感想、「ざまあみろ」。ううむ、やっぱJK爆弾だ。

執行猶予期間中に罪を犯すと、取消しとなり、即、豚箱行きとなる。今回有罪判決を受けた被告人は、3年の執行猶予期間の満了を待つことなく、またなんかやらかすのではないか、というのが大方の見方である。あれは一種の病気みたいなもんで、頭ではどうなるか分かっていても、手が勝手に動いちゃうんじゃなかろうか、と。

私もそう思う。やっぱクサイ飯を食って頭を冷やしたほうがいいのかも。

●ローマに残ってた私の痕跡

1月26日(土)に赤坂のホテルニューオータニで結婚式を挙げた友人二人は、その後、新婚旅行でイタリアに行っていた。

結婚披露宴の二次会にお呼ばれした話を以前に書きました。セーラー服で行き、大いに盛り上がったのはいいけれど、主役を食っちゃったというか、割と強めのインパクトを残してきたようなのでありました。
< http://bn.dgcr.com/archives/20130201140100.html >

イタリアはヴェネツィア、フィレンツェ、ローマと回ったとのこと。ローマにいるとき、ダンナさんからツイッターの@ツイートが来た。「スターショップに行った?」。

あー行った行った。一昨年の4月だ。イタリア語に翻訳された日本の漫画がずらーっとすごい数揃っているお店だ。ゲームやコスプレ衣装も置いてある。いちおうオタクの端くれである私としてはチェックしておかねばなるまい、と行ったのであった。けど、なんで分かったの?

店員さんと雑談してたらしい。で、二次会にこんな人来たよ、とスマホかなんかで写真を見せたらしい。そしたら、店員さんが、あ、その人ならウチに来たよ、ってなったようで。

遠くローマに行ってまでケバヤシの幻影に出会っちゃうって、さぞかしびっくりしたことであろう。

●『猫弁』の弁は弁護士の弁

大山淳子『猫弁と透明人間』を読んだ。面白かった。弁護士が主人公なのに、やっぱり人殺しのシーンは出てこないんだね。動物殺しも虫殺しも出て来ない。

作者は「ぶんぶん便」というメルマガを発行していて、私は2005年から購読していた。いい文章書くなぁ、人知れず地味〜にメルマガ書いてるのをたまたま発見できてよかったなぁ、なんて思ってたら、脚本の勉強始めましたとか、賞を獲得しましたとか、あれよあれよという間にメジャー街道へ。わお!

「夏休みの犬」がすごーくよかったなぁ。どっかに出てないかなぁと探してみたら、メルマガ配信サイトに過去ログとして置いてありました。
< http://www.emaga.com/bn/?2007030060516083006404.embbb >

うっかり、するよね? うっかりされたほうはたまったもんじゃないけど。目の前にいるときだけ、かわいがってやさしくして、いいことしたな自分、いい人だな自分、みたいに思っちゃってるけど、実は、ほんとに相手の側に立って考えてたわけじゃなかったな、って。後で気づく。

いや、たいてい気づかないか。ある意味、気づかないほうがしあわせか。私なんぞは、それ読んで、あっ、と思っちゃったクチで、やばいぞ、と。それに類することってずっとやらかしてきたかもしれないなぁ。やばいやばいやばいって、七転八倒する。

人殺しシーンが書けないのを、弱点のように思って悩んでたってなことも書いてたっけ。誰それが誰それに毒を盛った、って事実を淡々を書くだけなら、そんなに難しいことではないはずなので、おそらくそういうことではない。

「夏休みの犬」を書いた方のことであるから、おそらくそういうシーンを書こうと思ったら、やる側の視点から、こういう生い立ちで、こういう状況に立たされた自分が、こういうきっかけを得ればおそらく自分もやっちゃうだろうなぁ、と、その気持ちになりきれないと、書けないのではあるまいか。

そういう行為に実際に至ったことはなくても、小説を書く人としては、想像力を働かせて、そんなシーンにおけるやる側の自分、ってもんにちゃんとなりきれなくてはなるまい、と。で、がんばったけど、できなかった、と。そういうことなんではなかろうか。

うん、才能だね。『猫弁と透明人間』、この作者の小説としては初めて読んだけど、すでに全幅の信頼を寄せて、安心しきって読めたもん。

作者のサイト「ぶんぶん館」に「ぶんぶん便」のセレクションが載ってて、それも、いいです。
< http://homepage1.nifty.com/jyk/bun.html >

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp

セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。

人形作家・清水真理さんの20周年を記念しての個展が開催中です。

「人形は生と死の中間に存在する」
2013年は熊本県天草出身の人形作家清水真理が、人形制作を始めて20年の節目の年にあたります。西欧・東欧の宗教美術や日本の土着的文化を取り入れながら制作してきた作品のルーツを、学生時代のスケッチやアニメーション作品、20年間清水の作品を撮影してきた田中流の写真作品などの資料とともに振り返ります。(サイトより)

田中流氏はプロの写真家で、清水さんの作品を、まだ無名だった初期の頃からずーっと撮り続けてます。しかも、撮っていると人形に引き込まれて、8時間ほどにわたって撮り続けたときもあったのだとか。言うまでもなく、清水さんの作品を撮影した枚数は、ダントツに多いです。けど、他にも多くの写真家たちが、みずから希望して清水さんの作品を撮っています。

今回の個展では、7人の写真家による作品がひとつの部屋に展示されています。よく、「写真は被写体が写るのではない、撮っている本人が写る」と言われます。厳しいことを言えば、もし写真がつまらなければ、それは撮った本人がつまらない人だ、ってことです。だから、写真を撮る行為というのは、自分が試される、非常に厳しい行為なのです。

同じ作家の作品を何人かの写真家が撮って、ひとつの画廊に展示、ってかなり珍しい企画なのではないでしょうか。「撮った本人が写っている」さまが、逃れようもなくハッキリ表れちゃいます。撮る者にとっては、非っ常〜にキビシイです。見る者にとっては、きっとすごく面白い。アートの高みに昇華して張りつめた表現もあれば、ロマンチックでメルヘンチックな表現もあります。

そんな中にあって、ワタシも一角を汚させていただいたのは、まったくもって光栄極まりないことであります。清水さんからは「感性が乙女だね」と言われました。

清水真理20周年記念個展1993〜2013「St.Freaks 〜聖なる異形〜」
会期:3月13日(水)〜3月24日(日)12時〜20時〈3月18日(月)は休廊〉
会場:ギャラリー新宿座(東京都新宿区新宿4-4-15)
入場無料
< http://shimizu20.com/ >