[3602] プロの洗礼、開発者の憂鬱

投稿:  著者:  読了時間:29分(本文:約14,300文字)


《売っている本が少ないのは致命的です》

■データ・デザインの地平[36]
 プロの洗礼、開発者の憂鬱
 薬師寺 聖

■クリエイター手抜きプロジェクト[371]電子書籍編
 Kobo auraを使ってみる
 古籏一浩

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■データ・デザインの地平[36]
プロの洗礼、開発者の憂鬱

薬師寺 聖
< http://bn.dgcr.com/archives/20131209140200.html >
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●打たれて強くなる人、諦める人

クライアント企業からデザインの依頼があったとき、デザイナーは、ひとつのテーマにつき複数のプランを用意します。

いわゆる「捨てゴマ」があることによってお勧めプランが引き立ち、受注が確定しやすくなるからです。デザイナーは、それぞれのプランを見せる順序や説明方法も考えてプレゼンテーションを行います。

受託業務において「優先順位の高い」ことは、まずは「採用される」ことです。そして、採用されることよりも「重要度の高い」ことがあります。それは「成果を上げる」ことです。成果がかんばしくなければ、デザイナーの評価は下がりますし、責任も問われます。

ですから、デザイナーは、採用され、且つ成果を上げるプランを用意するために努力します。

ところが、「優先順位の高い」ことと「重要なこと」ことは、必ずしも同じではありません。採用基準と、デザイナーが想定する成果とは異なる場合があります。

時には、捨てゴマのプランが採用されることもあれば、すべてのプランを破棄しての出直しを言い渡されることもあります。

クライアントから明確な指示を引き出すことは、しばしば困難ですが、それでも、デザイナーは、クライアントの真意を推し量ろうと試みます。練り直し、作り直し、再アタックします。粘り強く制作と折衝を繰り返すのです。

そういった経験をあまりしたことがない人は、クライアントの対応にとまどい、真意を探る前に、常に、クライアントの判断が誤っている、と考えがちになります。

しかし、どちらが正しいかを考えることは無意味です。デザイナーにできることは、ひとつしかありません。それは、着地点が見つかるまで呻吟することです。諦めず、考え続けると、不足している要素が浮かび上がってきます。

もっとも、そのような経験を重ねるにつれ、良く言えば賢くなる、悪く言えば小さくまとまってしまいます。

それはデザイナーだけではありません。クライアント側の担当者も同じです。とくに不況下では、ハイリスクハイリターンを恐れて、無難なプランが採用されがちになり、ブレイクスルーは生まれず、悪循環に陥ります。

クリエイティブな仕事を継続するには、クライアントの意向を尊重する姿勢を持ちつつも、天衣無縫であり続けることがもとめられます。

●プロの洗礼に直面する開発者

クライアントの無碍な態度は、新人デザイナーにとって、プロの洗礼ともいえるものです。それは、ひとつの通過儀礼です。

最初の洗礼で、デザインと芸術の区別を知ったデザイナーが「自分のもとめているものと何か違う感」を覚えて、方向転換します(※1)。それ以降、採用と成果の着地点を見つけられないデザイナーが諦めていきます。

残るのは、着地点をすばやく見つけられる優れた人か、生みの苦しみと達成感に喜びを感じる人か、仕事に対して冷静で淡々と取り組む人か、別の分野に軸足のある人です。

YouTubeやニコニコ動画のような開かれた場と異なり(※2)、受託業務のように評価される側と評価する側が明確な閉じられた場においては、プロの洗礼はあって当然ですから、乗り越えるしかありません。

プロの洗礼は、執筆でも開発でも、クリエイティブな側面をもつ仕事では、よくあることです。

広告原稿なら企業、記事なら出版社(編集者)に認められて初めて、消費者や読者やユーザーに成果を問うことができます。筆者自身、サラリーマン時代には、一行単価の高い広告コピーにおいて、クライアントの社長に突き返されたことは一度や二度ではありません。ずいぶん鍛えられたものです(※3)。

そして、今では、プロの洗礼は、アプリケーション開発者にも、しばしば起こります。アプリ開発では審査担当者に認められて初めて、公開して、ユーザーに成果を問うことができます。

インターネットが普及し、開発ツールが進化し、日本語の技術情報も増えて、開発への敷居が低くなると、クリエイティブな業務経験のない人や低年齢者が、取り組むケースも増えていきます。すると、アプリ開発によって初めて、プロの洗礼に直面するということが起こります。

そうした人たちの頭の中は、プログラミングの楽しさとアプリが動いた喜びに満たされており、他の要素が入り込む余地はありません。クライアント側のストライクゾーンを考えず、きわどいところに投げていたとしても、それに気付きにくいことでしょう。その結果、ボールと判断されてしまい、戸惑うことがあるかもしれません。

そのとき、開発者にできることは、ひとつしかありません。

クライアントの真意を見抜き、不足する要素を調べてクオリティを高め、最上級のアプリに仕上げてみせる、という「気迫」を持つことです。

それは、開発者自身のその後の人生にとっても、IT業界にとっても、プラスになりこそすれ、マイナスになることはないでしょう。

●報酬系の差異は受容するしかない

開発者とクライアントの判断が異なるからといって、どちらが正しいかを問うことは、無意味です。

なぜなら、完全に正しい状態か、完全に間違っている状態のどちらかしかない、という考えそのものが、幻でしかないからです。

開発者とクライアントのどちらかが、成果を読み間違っているとは限らないのです。多くの場合、「未来のどの時点までを、成果の対象とするか」───その時間のとらえ方が、異なっているのです。拠って立つ時間が同じでなければ、判断の結果は異なってしまいます(※4)。

たとえば、アプリ開発の目標には、次のような段階があります。後のものほど、時間的に先のことになります(※5)。

(1)目的の動作をするアプリ(開発者が想定している操作をする限り、正しく機能するアプリ)。

(2)目的外の動作をしないアプリ(想定外の操作に対するエラー処理が万全のアプリ)。

(3)ユーザーに受け入れてもらえるアプリ(ダウンロード数や購入数の多いアプリ)。

(4)ユーザーインタフェースの練られたアプリ(操作性やビジュアルデザインも考えられ、作りこまれたアプリ)。

(5)ユーザーが満足するアプリ(多くの星マークが付いたり、良いコメントが多数投稿されるアプリ)。

(6)ユーザーに期待させるアプリ(次回作を待望されるアプリ)。

(7)ユーザーの人生観を変えるアプリ(独創性のある、従来にはないアプリ)

これら7つのあいだに明確な境界線はなく、グラデーションになっています。(1)と(2)の間にも、無数の段階があります。(2)を少し超えたところで十分と判断するクライアントもいれば、(5)の手前までは頑張りたいと意気込む開発者もいるでしょう。この時間のとらえ方を、完全に一致させることは難しいものです。

開発者が判断基準としている時間は、クライアントのそれと完全に同一になるでしょうか?

拠って立つ時間の差異をなくすことはできません。なぜなら、それは個体の報酬系の違いによるものであり、何人も他者の身体を操作して報酬系を変えることはできないからです。

報酬系が短期であるほど、目先のハードルのクリアが重要になります。アプリが目的の機能を果たせば十分と考えます(※6)。

長期になるほど、はるか遠く先のハードルが気になり、開発後の遠い先の評価まで考えがちになります(※7)。

おそらくは、多数の星マークの獲得を目指すという姿勢が、標準的なところではないでしょうか(違うかもしれませんが)。

そして、自分より短い報酬系の考え方は受け入れがたく、自分より長い報酬系の考え方は理解しにくいものです(※8)。

報酬系は、同じ個体の中でも、マトリョーシカのように入れ子構造になっています。長期報酬系のヒトの中にも短期報酬系はあり、短期報酬系のヒトの中にもさらなる短期報酬系があります。

たとえて言えば、それは、為替チャートに似ています。為替チャートは波形を描き、時間によって区切れば、その中にもさらに小さな波形があります。

同じ経済アナリストでも、短期・中期・長期の予測は、異なることがあります。拠って立つ時間によって、判断は異なるのです。同様に、開発において、同じクライアント担当者であっても、拠って立つ時間が異なれば、その判断は異なります。

開発者とクライアントのどちらが正確に先を読んでいるか、大きな成果につながる未来へ舵を切ろうとしているのか、何が賢明な判断であるかなどは、どの時間で評価するかによって異なります。

ましてや、(為替相場を読む側のアナリストが読まれる側の世界に属しているように)開発者もクライアントも、読む側でありながら、読まれる側でもあるのですから。(※9)。

開発者がプロの洗礼をクリアするために必要なことは、クライアントの報酬系を知り、その報酬系を満足させる企画を考えて形にすることです(※10)。

●自由意思に基づく正しさという錯覚

我々は、個体の報酬系の差の前には、無力です。なぜなら、現時点では、我々は自らの意志で、自らの報酬系を設定できないからです。

我々は物質の集まり、おだやかな結合にすぎません。自分とそれ以外の境界など、きっちり線引きできるものではありません。

たとえば水を飲むと、コップの中の水は「私」ではありませんが、喉を流れ落ちる水は既に「私」の一部です。まさに水を飲もうとしたその瞬間、口に水滴が当たる時、その物質の所在を、その都度ヒトが意識することはありません。

私の意志の力によって水素と酸素は私の一部となるのでしょうか? 否、私の意志のおよばないところで、都度、私が構成されていきます。私が認識する私とは、構成された断面にすぎません。

私の中では、私を構成する諸々の物質が、生存し続けるために、その形を維持し続けるために、押し合いへし合いしています。それらの、存続する長さはことごとく異なり、すぐに消滅するものもあれば、長くとどまるものもあります。

それらのバランスが、報酬系を形作っているとは考えられないでしょうか。だとしたら、個体を構成する物質は完全に同一ではないのですから、各個体の報酬系が一致するはずがありません。

にもかかわらず、我々は、自らの主張を正として、相手を論破しようとします。対する相手(と認識されるもの)があれば、我々を構成する物質たちの外交の舞台は整います。

相手が、友人であろうと、プレゼン相手であろうと、苦手な上司であろうと、やる気のない部下であろうと、尊敬する経営者であろうと、政敵であろうと、すべての分子たちがそれを認識して働きを変えるでしょうか。

ヒトが、自分を構成する物質の統率者であるかのように感じるとしたらそれは錯覚で、自分を構成する分子たちを生きながらえさせるために、ただ、突き動かされているにすぎないのかもしれません。

開発者とクライアントの見解が分かれるのは、互いの主張の礎にある報酬系を構成する、物質たちの饗宴の結果なのでしょう。

そして、個体の基本的な報酬系は、一定ではなく、時代と共に変遷していきます。筆者は、ヒトの報酬系は、両極化しつつあると感じています。短い人はより短く、長い人はより長く。それは、ヒトの意志の及ばないところで、着々と進められます。

世界は新しい報酬系に覆われていくでしょう。

その変化も受け入れつつ、我々は、報酬系の異なる相手に歩み寄り、すり合わせ、ディスコミュニケーションを少しでも減らすべく、もがくしかないのです(※11)。


※1 社会的なデザインと、個人的な芸術は、しばしば重なることもありますが、基本的に表現する対象が異なります。デザインは「クライアントに指定された」「作家以外の」対象物を表現するものであり、芸術は「作家が指定した」「作家も含む」世界の一部を表現するものであることが多いと考えられます。

※2 売上や評価などよりも数世紀〜数10世紀先を見る、異常に長い報酬系の者には、後世に残る作品を生み出す可能性があります。
「データ・デザインの地平[15]芸術家、大量発生の時代」参照。
< http://bn.dgcr.com/archives/20120213140100.html >

※3 筆者が技術書や技術解説記事を書き始めたのは開業後ですが、サラリーマン時代には工業系の広告原稿やコピーやマニュアルなどの無署名原稿を多数書いており、突き返されてクリアした経験だけは数多くあります。

※4 短期間で進める距離は少なく、長期間で進める距離は大きいように、長期報酬系であるほど、判断のために意識する領域も広くなるように思われます。

※5 (1)〜(7)は、ソースコード非公開の場合の段階です。ソースコード公開の場合、「カスタマイズやメンテナンスがしやすかったり、データを流用しやすいアプリ」という目標が必要になることもあります。また、「アプリに対してではなく、開発者自身に対してファンが付くアプリ」という目標もあるでしょう。さらには、「コードによって世界を変える」という目標もあるでしょう。

※6 「採用」を目標として「成果」までは考えず、公開はされたものの反応が少なく、つまらなくなって、やめていくケースもあるでしょう。

※7 作り手とクライアントが双方とも長期報酬系に基づいて、それが必要だからと合意の上で、数10年先の成果を期待して企画するケースもあります。その成果だけを見て、先を読んでいないと判断するのは早計です。この社会には、期待できる成果が低くても、それ以外の理由で実行しなければならないことがあるからです。

※8 もっとも隔たりが大きいのは、ヒトの報酬系は同じであると思いこんでいる長期報酬系の経営者と、短期報酬系の社員でしょう。1km先の給水器を見つける視力を持つ経営者は、10m先の水溜りに足を突っ込んで靴を濡らして歩けと命じます。

かたや10m先の水溜りを見ている社員は、浄水器を手っ取り早く工面しようとします。1km先を見る経営者は、10m先しか見えていない社員に、なぜ付いてこないのかと詰め寄り、10m先を見る社員は、いますぐ水を飲める方法があるのになぜですかと抵抗します。

※9 「観測する者が、観測される世界の中にあって観測される側でもある」ことからは目をそらし、我々は、自分こそが観測者であってシュレディンガーの猫の生死を知っている、と思い込みがちなのかもしれません。

※10 筆者は、これまで、Windows Phone アプリは、8本を開発し、3本の企画をし、Windows ストアアプリは3本に企画協力をしていますが、すべて一度もリジェクトされていません(もっとも、自分が今後、Windows ストアアプリを開発したときには、単純ミスなどによりリジェクトされる可能性は捨てきれませんが)。

それは、開発におけるアプリの審査担当者は、デザインやコピーライティングにおけるクライアント側の決定権を持つ人と同じ立場にある、という考えのもとに企画しているからです。

※11 報酬系の異なる相手にプランを通す方法については、日経IT Pro の過去連載「Webプランニングから始めよう!〜SOHO,小模事業者編」(2006年10月〜2007年5月連載。PROJECT KySS名義、筆者単独執筆)の第14回、社会における報酬系の差異の必要性については、第15回も参照。
< http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061006/250089/ >

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■ Microsoft Surface 2
< http://www.microsoft.com/surface/ja-jp >

■ Windows 8.1
< http://windows.microsoft.com/ja-jp/windows/home >

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Windows ストアアプリ開発の企画に少しだけ協力しています。開発は、コラボレーション・ユニット PROJECT KySS の VBプログラマー薬師寺国安です。

◆「南海トラフ近辺潮位予測」
企画の背景については筆者ブログ参照。
< http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/2013/12/5windows-b442.html >

◆排せつ管理 「イマダス」プロトタイプ版
詳細は筆者ブログ参照。
< http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/2013/11/windows-5797-1.html >

◆「動体視力暗算」
< http://apps.microsoft.com/windows/ja-jp/app/75b53b27-f2a1-4ce6-ba16-04ba21a2988d >

◆工学社刊「Silverlight実践プログラミング」に筆者が書いた、3D風回転処理のコードが用いられています。
< http://apps.microsoft.com/windows/ja-jp/app/3d/16022158-2b76-441c-a469-e087eabdb294 >
< http://apps.microsoft.com/windows/ja-jp/app/3d/7e7e07fb-e012-4ee1-a845-c2a4de8f41f9 >

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◆報酬系に左右されるこの世界の成立は不透明。
「Samba de Opacidade(不透明のサンバ)」
アルバム「Out of Imagery(イメジェリの地平)」収録。
< https://itunes.apple.com/jp/artist/yao-shi-si-sheng/id543503414 >

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【薬師寺聖/個人事業所 セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/ >
< infosei@seindesign.net >

絵・音・詩・文・コードを扱うフリーのクリエーター、思索家。
エンジニアリング会社を経てデザイン事務所に勤務後、XML1.0勧告翌月に退職して開業。科学技術や医療・福祉分野のXML案件を手がけながら、書籍や記事を多数執筆(PROJECT KySS名義)。現在は、受託業務から独自開発にシフト中。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2013)

【おわび】前回記事「第34回 拡散する、不確かな『私』」の連載回数が間違
っていました。正しくは「第35回」です。おわびして訂正します。(柴田)


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■クリエイター手抜きプロジェクト[371]電子書籍編
Kobo auraを使ってみる

古籏一浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20131209140100.html >
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毎年10月から12月にかけて、タブレットと電子書籍リーダーがたくさん発売されます。ということで、今回は12月7日に発売されたKobo auraについて書いてみます。

Koboと言えば、楽天Koboとして悪い意味で一世を風靡した電子書籍リーダーです。今から約一年半前の2012年7月19日に、対アマゾンKindleキラー(?)として楽天社長、三木谷氏の肝いり(?)で発売されました。

初日からサーバーに接続できないトラブルや、Macだとアプリがインストールできなかったり、そもそも電子書籍端末の設定が分からなかったり散々な状態でした。初日で数時間後に本が半額になっていたりと、まさにトラブル大賞の代表格。

そうは言っても、今振り返ってみると電子書籍リーダーを販売するタイミングは悪くなかったと思います。楽天としては、あの時期でないとアマゾンを追従できないからです。出さないと、時代に乗り遅れたマイクロソフトのようになってしまうからです。でも、結果的に楽天Koboはアマゾンがいかに凄いか、Appleがいかに使いやすいかというのを実感させただけになってしまいました。

楽天Koboは終わったなと誰しも思っていたのですが、楽天はめげずに次々と新たな電子書籍リーダーKoboシリーズを販売してきました。とは言っても、何種類かのKoboを所有していますが、いずれも使用に難があり、結局Kindle Fire HDを使うか、iPhoneを使って読むというオチにしかなりませんでした。

出すたびに失望を与える電子書籍リーダーとして、いつしか話題にもならなくなってしまいました。

さて、今回発売されたのは見た目がNexus 7や元祖iPadに似ています。名前からして妙なオーラが漂っていそうですが、今回のKobo auraは今までのKoboとは違います。あれだけ大量の不満があったおかげなのかもしれませんが、その不満をかなり解消したデバイスになっています。

まず、説明書が分かりやすくなりました。しかし説明書には設定までしか書かれていないのでマイクロSDカードを、どっち向きにさすのかとか、細かい部分は載っていません(なぜか上下逆差し)。優しいふりして実は厳しいのがKobo。Sony Readerだと細かい部分も説明書に掲載されています。

初期のKoboは設定が分かりにくい部分もありましたが、Kobo auraは簡単になりました。基本的にAndroidタブレットと同じような設定手順です。異なるのは楽天IDとパスワードを入力する画面があるくらいでしょうか。ただ、文字を入力するキーボードはKoboとは思えない優しい設計になってます。

例えば、WiFiのパスワード入力で使われる数字や英文字がまとめて表示されます。つまり、iPhone/AndroidのようにSHIFTキーをタッチして数字・英文字に切り替えるような作業がなくなっています。書き換えが遅い電子ペーパーだと、こういうのはありがたい改良点です。

設定が終わるとホーム画面が表示されます。場合によっては、同期が始まります。同期には時間がかかりますので待ちます。

Kobo auraのホーム画面も改良されていて、ワンタッチで直前のアプリや本にアクセスできるようになっています。Webブラウザもタッチするだけですぐに表示されます。

まずは、何か本を購入して読んでみます。今回は適当にジャンルを選んだら出てきた「ガラケーで撮影する天体写真」という本を購入してみました。

購入手続きは本を選択して「購入¥300」のボタンをタッチするだけです。あとは確認の画面で再度「購入する」ボタンをタッチすれば、自動的にデータがダウンロードされて読めるようになります。

初期のKoboと比べると手軽に購入できるようになっています。ただ、次々と購入したくなるような仕掛けがありません。ここらへんがKindleとの違いです。これだと、ますますKindleに水をあけられてしまうでしょう。

もっとも、本がなさすぎるという致命的な欠陥が残ったままなので、購入する本そのものがありません。例えば、天文関係のジャンルでは一冊しか日本語の本がありません。これが、試しに購入した「ガラケーで撮影する天体写真」です。(旅行・ホテルも日本語の本が一冊しかない)

とは言っても、Kobo auraは楽天で購入できる本がなくても大丈夫です。何と言っても、自炊したPDFを扱えるからです(説明書には自炊したPDFを扱えるとは書いておらず、購入したPDFとの記載があります)。

Kobo auraは32GBまでのマイクロSDカードを利用できるため、自炊したPDFを入れたい放題です。ちなみにHTMLファイルも入れておけば、表示することができます(ディレクトリ階層は無視されるので、ハイパーリンクは正しく動作しません)。

ただし、テキストしか表示されない上に、英文字が大きく表示され日本語が小さいというKoboらしいアンバランスな表現をしてくれます。さすがKobo、ひと味違う。

とはいえ、実際にPDFを表示してみると予想よりもよい出来でした。iPhoneのように二本指でピンチイン・ピンチアウトで拡大縮小が簡単にでき、なおかつリアルタイムに追従します。

Sonyもそうでしたが、電子ペーパーの反応速度がかなりよくなっているのでしょう。指でタッチしたままドラッグしても、だいたい指についてきます。

ひとつよかったのは、拡大したPDFのページを表示した状態で次のページに移動すると、拡大されたまま次のページが表示されることです。文字を大きいまま次のページを見たい場合は便利です。ページをめくるたびに二本指で操作する必要がないからです。

ちなみに、バックライト付きなので布団の中でも読むことができます。端末も軽くなっていますし、表示も高速で不要な画面のちらつきもなくなっています。おまけで入っているWebブラウザーも高速に表示されます。電子ペーパーなので目が疲れないという利点もあります。Kobo auraは頑張って改良したのがよくわかる電子書籍リーダーです。

しかし、売っている本が少ないのは致命的です。一年半経過しても本が揃っていないというのは(もしくは偏っている)どうしようもありません。あと、もうひとつ。本がたくさんあると一度に5冊しか表示されない上に、ページめくりが指でスワイプする状態なので、非常にやりにくい&使いにくくて困ります。見た目はレトロだけどSony Reader T3Sの方が使いやすい。

どのみち、本が少ない楽天Koboをお勧めすることはありません・・・


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/ >

時間が足らずKobo aura使い方辞典は用意できてません。年内には用意したいところ。何となく個人的ランキングは、こんな具合。

iPad>Kindle Fire>Neuxus 7/10>>>Kindle Paperwhite・Sony Reader T3S>>Kobo aura>>>enchantMoon

Kobo aura、いじっていると結構な速さでバッテリーが減っていくなあ。使いまくっているとすぐに終わりそう。どちらかというとiPadの方がバッテリー長持ちするかも。最近のヒット番組と言えば、NHKの妄想ニホン料理(結構前から単発であったけど今は毎週やってます)

・妄想ニホン料理
< http://www4.nhk.or.jp/mousou/ >

見たことも食べたこともない日本料理を、海外の人(国内の場合もある)に想像して作ってもらいます。

その際、3つのヒントが与えられ、それを元に作るわけですが、予想の斜め上を行くような料理とか面白いものがたくさん登場します。

やはり、少ないヒントを元に妄想・想像して作ると面白いものができる気がします。初期の日本のRPGも妙なものが多かったのは、数少ない情報、写真から妄想して作ったからかもしれません。ゲームも手軽に作れるようになったら「妄想ゲーム制作」なんて番組ができるのかもしれません。

・Sony Reader T3S使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Sony/Reader/PRS-T3S/ >

・Adobe JavaScriptリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844395955 >

・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/ >

・Nexus 7(アンドロイドタブレット)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus7/ >

・JavaScript逆引きハンドブック
< http://www.amazon.co.jp/dp/4863541082 >

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/ >

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/ >
吉田印刷所の「印刷の泉」でも購入できるようになりました。


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編集後記(12/09)

●名画(映画)を見る旅の途中である。二夜を要して「風と共に去りぬ」を見た。「南北戦争を背景にした壮大なラブ・ロマン」としか知らない。原作も読んでいない。そもそも好きなジャンルではない。「とにかく名画31本を見る」という動機がなかったら、一生見なかったと思う。製作された1939年は昭和14年、わたしはまだ生まれていない。独軍がポーランドに侵攻、第2次世界大戦勃発、ノモンハン事件で日本軍完敗という年だ。とにかく、70年以上前にこれほど巨大スケールの映画が作られていたとは驚くしかない。降伏するしかない。

ふたつのカップルがいる。スカーレット・オハラとレット・バトラーは、自分のことしか考えない、似た者同士である。スカーレットの友人のメラニーと、スカーレットが一方的に思いつめている幼馴染みのアシュリーは、控えめで心優しい者同士である。メラニーとアシュリーの結婚により、スカーレットは自暴自棄でメラニーの兄と結婚するが死別、次に妹の許嫁を欺いて結婚するが死別、結局レットと結婚するが、ケンカしては仲直りという「もー、勝手にやってくれよ」と言いたくなるパターンのくりかえだ。

スカーレットは園遊会の女王様出身の、はなもちならない超わがまま女だ。世間体を考えず、後家の身で社交の場に出たりして顰蹙の的だ。人をあざける含み笑いをするいやな女だ。レットは最初から最後までキザでいい加減な偽紳士だ。船長と呼ばれ金だけはたくさん持っているらしい。やがて南北戦争が始まる。北軍の猛攻を逃れスカーレットらは故郷へ向かう。しかし、女子供4人を馬車に捨て置いたまま、ひとり戦線へ行ってしまう身勝手な男がレットだ。たぶん金儲けだろう。こんなヒーローがいてたまるか。

後半になると、スカーレットはますますしたたかな女になり、「理解できるのは金だけ」と公言し商売に邁進する。はなっぱしらが強く、いじっぱりで、みえっぱりで、アトランタ中でいばりちらしている。結局、レットは「哀れな女だな」と言って去って行く。スカーレットは最後までしぶとくアシュリーに迫るが叶えられない。そんなにいい男とも思えないがなあ。まともな登場人物はメラニーと召使いの黒人マミー、娼婦のベルくらいか。メラニーほど心やさしい女性はいない。この物語の救いである。

スカーレットをボロクソに評したが、それでもなお、ヴィヴィアン・リーが美しいからひれ伏したい気分だ。ストーリーは予想外に面白かった。DVDメニューにクイズがあった。キャスティングの際、次の俳優には誰の役が考えられていたか? ルシル・ボール 答:スカーレット レット・バトラーを誰に演じさせたいかと質問を受けたマーガレット・ミッチェルは何と答えたか? 答:グルーチョ・マルクス ……その「風と共に去りぬ」見たかったな。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0001DQW9Y/dgcrcom-22/ >
「風と共に去りぬ」


●薬師寺さんの話に深く頷く。請負いやだーと思うこともしばしば。でも結局業界に20年ぐらいはいるなぁ。若い人のキラキラした目が眩しい。/Amazonも本が揃っていない気はする。欲しいタイトルを検索したら、Kindle化リクエストばかり。結局紙の本を買ってるわ。

Jimdo続き。私の2年ほど前の知識だと、業務では使えないなぁと。素人が自分のために小規模サイトを作るのには、とてもいいと思う。テンプレートは豊富だし、ナビゲーションを追加するだけでページまで作成される。当然リンク切れはない。

ブログも作れる。ショッピングカートまで用意されている。プロバージョンにすれば独自ドメインまで使える。SEO的にはいいのだが、ディレクトリ名が日本語なのはSNS的には良くないかも。

で、最新のを見て、自由度が上がっている上に、モバイル対応までしていて至れり尽くせり。「トップへ戻るボタン」なんてあったっけ? Google AnalyticsやDropboxとの連携なんてあったっけ?

坂本夫妻が独自レイアウトで一から作り上げたサイトは、一見Jimdoに見えなかったよ。ほんと小規模サイトならプロでも使えるやん! 生徒さんのサポートしつつ、情報アップデート。続く。(hammer.mule)

< http://jp.jimdo.com/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E6%AF%94%E8%BC%83/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E4%B8%80%E8%A6%A7/ >
プラン一覧。

< http://www.sourcenext.com/pt/s/1312/07_dropbox_2m/ >
Dropboxが15日まで500円引きの9,300円。公式からだと$99.00/年。iOSのアプリ内からだと年9,800円。