[4813] その「得体の知れないもの」を絵にしろと言われて

投稿:  著者:  読了時間:20分(本文:約9,600文字)


《引き出しが多すぎてワケの分からないエカキ》

■はぐれDEATH[79]
 その「得体の知れないもの」を絵にしろと言われて
 藤原ヨウコウ



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■はぐれDEATH[79]
その「得体の知れないもの」を絵にしろと言われて

藤原ヨウコウ
http://bn.dgcr.com/archives/20190621110100.html
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副業をやめた後、とある編集者からある企画を提案された。詳細は勘弁して下さい。進行中だし日の目をみるかどうかまだ分からないのだから。

正直、最初は断った。ヤバい案件なのである。ヤバいというのは世間的に「ブラック」であるということではなく、あくまでもボク個人に帰する。

●壱

2004年の企画展(たぶんデジクリのバックナンバーのどこかに入っている)以来、ずっと封印していたことを、やらざるを得ないような案件なのだ。

そもそも2004年の企画展だって、最初は潰すつもりでいたのだ。だから「まずサンプルを見てから決めて下さい」と最初の打ち合わせで提案し、「まともな社会人でこういう場の人なら確実に引くだろう」というとんでもなブツをサンプルとして提示したら、こちらの意図とは真逆に「是非、この路線でやりましょう!」という恐ろしいことになってしまった。

もちろん断りましたよ。「ギャラリーの品位に影響する」とか「御社の製品をズダボロにする」とか、とにかくマイナス要素を並べ立てて抵抗したのだが、「大丈夫ですよぉ♪」と軽くいわれてやる羽目になった。

最初の企画ではそれまでの成果品を並べるだけだったので、ボクがオッケーを出していればすぐにでも始めるような勢いだったのだが、一からとなると話は別である。

「一年待ってもらえますか?」と、本来ボクにはあり得ない発言をした。

そもそも、成果品をただ並べるのには抵抗がある。画集の話をことごとく断っているのも、これが理由だ。

ギャラリーなので、もちろんちゃんとした展示スケジュールはある。ボクのところに話が来たのはそれなりに直近だったので、さすがにこの提案はのんでもらえないだろうという、淡い期待を込めたのだが「大丈夫です。代わりの方を頑張って探しますから」と、爽やかに答えられてしまい、一年後に開催確定である。

で、この一年間の制作が地獄だった。自律神経失調症は悪化するは、鬱を患い家族に迷惑をかけるは、挙げ句の果てにイマイチなアガリと、お客さんの反応の悪さで完全にトラウマ化したのだ。

いつものボクを期待していたお客様には、大変申し訳ないことをしたのだが、期待を裏切るのが目的だったのも事実である。

お仕事でちょうど壁にぶつかっていた時期でもあったので、こういう選択をしたのだが、これまた裏目に出た。ちなみにこの時の壁は、15年経った今でも越えられていない。というか、越えることを期待するのをやめたのだ。

もちろん、普段のお仕事ではその時のベストをつくすし、それなりの工夫もイチイチ加えている。マイナー・アップデートだけは、ずっとしているのだ。別に努力を惜しんでいるわけではありません。

気がついたら、「引き出しが多すぎてワケの分からないエカキ」ということになってしまったのだが、これは結果としてそうなっただけの話である。迷惑ではあるが、全部ボクの所業の数々が生み出した結果なので、受け入れざるを得ない。

企画展の制作には半年以上の準備(試作、実験、その他諸々)を経て、短期で一気に本制作をするという、見ようによってはそれなりのステップを踏んでいたのだが、中身は無茶苦茶である。

正直あまりに酷い体験だったので、記憶すらおぼろだ。とにかく、トラウマになるぐらいのダメージを、自分で自分に与えてしまったのだ。

「始めてしまうと周りどころか自分すら見失って暴走する」という、ボクの一番悪いクセが大爆発した、というと分かりやすいだろうか。

ボクの持つ本能的なブレーキが壊れていることは、再三書いているので詳細は省くが、このときはブレーキ無しだったので、心身共にダメージは酷かった。巻き添えを食った家族は、もう最悪を通り越して地獄である。奧さんはもちろん、まだ小さかったおねえちゃんには可哀想なことをした。

ちなみに、このダメージは未だに引きずっている。「黒歴史」と過去のものにはできないのだ。多分、一生引きずるだろう。

●弐

そんな地獄の経験をしたボクが、また「白紙の状態から何かを作る」に抵抗するのは、むしろ当然の反応だろう。

もともとアーティストとか、創作を目指していたわけではないし、企画展以来「挿絵画家の範疇からは絶対に出ない」という、ある種のひきこもりになっているのだ。自分の中から何かを無理矢理引きずり出すなど論外である。

前にも少し触れたかもしれないが、ボクは「創作」という概念に関して、おっそろしく厳しい(というか、ニーチェの「超人思想」に等しい、あり得ない状態)定義をしている。

ボクにいわせれば、純粋な創作などあり得ない。

気を悪くされる方も少なくないと思うが、これはボクの本音である。だから、ボク自身のオリジナリティーなるものにだって、何一つ評価をしていない。そもそも、ボクにオリジナリティーがあるとは思ってないしね。

頑張ってオリジナリティーを自分に見いだそうとすれば、線のクセぐらいだが、これはもう単なる運動律の話なので、制作物のオリジナリティーからすると、最底辺どころか評価にすら値しないと思っている。その線のクセで苦しめられているのも事実なのだが。

ボクが「挿絵画家」という範疇に閉じこもっているのは、「文」という作家さん達が生み出したイメージを、ボクが一生懸命視覚化すればいい、という理由に他ならない。

とてもではないが、思いもつかないような豊かなイメージを持つ方が、世の中には沢山いらっしゃるし、中でも文章の世界がボクには一番しっくりくる。このへんも何度も書いているので、詳細は省きます。

とにかく、他人様の豊かなイメージを、視覚的に展開するのがボクの役目であり、それ以上でもそれ以下でもない。というか、この選択肢しかボクにはないのだ。

●参

このボクの状況から、むりやり外の世界へ引きずり出そうとしたのが、今回の案件の担当さんである。

「挿絵画家だから」は甘えです。面と向かってそう言われたのだが、これに関しては十分承知しているので、驚きもしなければ憤りを感じることもなかったし、むしろ「そうだよねぇ」と相槌をうってる始末である。

事実は「怖い」のだが、これだって甘えと言えば甘えだし。驚いたのは、「中にある得体のしれないものが特徴的すぎる」という一言であった。

人にはそれぞれ「得体の知れないもの」が、程度の差こそあれ、存在するのが普通だろうし、得体の知れないものは特徴的になるのが当たり前である。

担当さんはもちろんこの前提を承知して言ってるので、こちらとしては面食らった。そしてその「得体の知れないもの」を絵にしろと言うのだ。

「限界を突破しろ」とは言っていないところがミソだ。

「あるものを素直に出せ」が主旨なので、反論のしようもない。実際はどうなのか、自分ではよく分からないのだが、少なくとも進んで自分の中のモノを絵にする気は毛頭ない。ただの気分の問題である。

さらに、それほど「特徴的」なのかすら疑問である。偏っているのは認めるが、それがイイものだとはまったく思っていないし、世間に通用するようなものではないことも重々承知している。むしろ迷惑な部類に入る。

そもそもボクは、自己評価が低いヒトなのだ。企画展以後は地に落ちたと言ってもいい。

そんなボクの描く絵には、深みもなければ広みもない。これがボクの率直な自己評価である。このボクの評価を否定する人が、少なからずいてくれるのは大変ありがたいのだが、真に受けるほど素直ではない。描けば描くほどうっすい絵になっていくのが明白になる。

そのナノミクロン以下の薄さの絵で、どうにかこうにかそれなりになっているのは、前述したように作家さん達の生み出す豊かなイメージに、寄りかかっているからだ。自分だけなんて、考えただけでもぞっとする。

そのボクに、「オリジナルを」というのは無茶ぶりにも程がある、というのが最初の感想だった。

ただ、担当さんから「敢えて薄くしてませんか?」と言われて、「あれ?」と思った。いや、実際薄くする努力(?)はしているんですがね。

元々、一枚の絵の中にぶっ込むネタが多いタイプなのだが、師匠や奧さんに、「何も描いてないところに濃密な空気を作れるようにならないと、すぐにダメになる」と指摘されていたので、そういう努力はしている。上手くいってるかどうかは別にして。

実際に描くにしろ、敢えて描かずに残すにしろ、そこにある情報量が過多になるのも特徴かもしれない。ほとんど変質者の類である。

絵の具で描くと、このへんの努力は比較的分かりやすくなるのだが、デジタルとなると、話は別である。

0はどこまでいっても0なのがデジタルである。0を∞にはできない。だから、それっぽいことをするのだが、これが薄っぺらさによく繋がるのだ。

ちなみに、ここまで書いた「薄っぺらさ」は、あくまでもボクの絵に対するボクの評価である。他の人は知らん、というか興味もないし。

国外となると何人かいるのだが、共通しているのは「アナログ+デジタルの混合」という点。デジタル・オンリーはいない。

とにかく偏っているのは事実だろう。しつこいようだが、この偏りが世間に通用するとは思っていない。むしろマイナス面しかないと思っている。なのに肯定的に捉えて、あまつさえ「オリジナルで」となると、ありがたいのだが、ある種の悪夢である。

●四

そして……
渋るボクを諄々と諭すように辛抱強く粘られて押され負けた…… _| ̄|○;

ちなみにこの担当さん、女性である。企画展の時の担当さんも女性だった。とにかく、女の人にとことん弱いのだ。女尊男卑もここに極まれり、と言っても過言ではないが、今までの実績がなぁ……。

ちなみに、似たような事を男性に言われたことももちろんあるが、渋った末にことごとく闇に葬っている。この落差! ここまでくると、男性差別と言われても仕方ないな(笑)

さすがに文章なしというのはキツイので、「せめて誰か他の人を」と思ったのだが、諸事情で全部自分でやることになった。

最大の理由は、「他に作家さんを立てたらいつもと同じになる」というのが、担当さんの意見である。いや、そう仕向けたんだけど……あっさり却下されてしまった。

ここでハードルが一気に跳ね上がった。それでなくても、作文が大の苦手であることは十分白状しているので、詳しく説明する必要はないだろう。

しかし、案の定、すぐに作文などできるはずもない。いきなり座礁である。

それでも、一度引き受けた以上は、どうにかしないと気が済まない。こういうところが厄介なのだ。妙に律儀だったり、しつこかったりするから、余計に困りもんである。

色々考え、試行錯誤した末に、まずいくつか絵を描いてみて、そこから言葉を拾うというアホな作戦に変更した。もちろん、担当さんに相談してオッケーいただいてからだ。

脈絡のカケラもなく浮かんでくる妄想を、絵に置き換えるだけの作業なのだが、長い間etudeをやっていなかったので、めちゃめちゃ苦労した。

なんとかそれなりの数を捻り出して(!)、そこから言葉を拾って、拾った言葉を軸に言葉を展開していく。

こう書くと、それなりのことをしてるように思われるかもしれないが、レベルは相当低い。そもそも、単語にすらなっていなかったりしてるのだ。もちろん、言語化できないものもたくさんあった。というか、むしろそっちの方が圧倒的に多かったのだ。

「一音だけで絵はいくらでも描ける」と豪語するボクだが、本当にできるとは自分でも思っていなかったので、正直かなり落ち込んだ。というか言語化できない、ということがショックだった。分かっていても、まさかここまでできないとは……。

さすがに落ち込みっぱなしというワケにもいかないので、メモレベルの落書きめいたラフを拾った言葉をベースに、とにかく描きまくった。脳内シミュレーションでは、とてもではないが追いつかないのだ。

とにかく、妄想レベルの思いつきなので、出るわ出るわ。思いが先に立っているので、絵にすらなっていないのもザラだ。

さすがに、あとから見て「なんじゃこれ?」と思いそうなモノだらけだったので、これまた他の人には理解不能なメモ書きも足していく。結果として、このメモが言葉を生んでくれた。といっても、めちゃめちゃ幼稚ですがね。

●五

この段階で、再び言葉拾いをする。格好をつけてる余裕などまったくなかったので、恥も外聞もなく幼稚な言葉を並べ立てた。まぁどうせこの段階の状態では、外には出ないので安心である。それからまた落書きレベルの絵に落とす。これを何度も繰り返した。

「何度も」でピンときた方もおられるかもしれないが、例のブレーキが効かない症状が既に発動しているのだ。「ヤバっ!」と思ったのは、言うまでもあるまい。

とにかく、どこかでこの無限ループ化しつつある状態に、ストップをかけないとマズい。何しろ寝て起きたら同じ言葉でも、別の絵をいくつも思いついているのだ。下手したら一生このままやりかねないし、メンタルの消耗は凄まじい。

これで死んでも別に構わないのだが、とにかく形にするまでは絶対に死ねないと腹をくくった。つまり、どれほど神経に負荷が掛かっても、一度止まらないと(止まるのにもストレスがかかるのだ)どうしようもなくなったわけだ。

自分で書いたり描いたりしたメモを見ながら、浮かんでくるイメージをむりやり除しながら(さすがに徹底的にはできなかった)それなりのまとめ作業と、どうにか一貫した何かを見つける作業に移行して、再びメモとラフ。

ここでもまだ落書きレベルだ。何がどこでどう転ぶか分からないので、決めてかかるのはこの段階でもまだ排除している。それでも大分幅は狭まったんですよ。その分、イメージが濃密になって、さらに神経をやられるんですが。

ここの作業も、何回か繰り返した。それでも、どうにかこうにか、文章にもなんにもなっていない、言葉の「列」は拾い出せた。

で、やっと、ちょー雑ラフスケッチに突入した。それでも保留にしていたところが、たくさんあったことは白状しておく。ついでに、言葉もさらに追加した、り削ったりと(もちろんラフスケッチもその度に描き変える)を約3週間。

突っ込みどころ満載ではあるが、取り敢えず打ち合わせができるレベルのものにやっと辿り着いた。

●六

この間、上述したようにメンタルはやられまくりで、生活サイクルは狂いまくり、ただでさえ怪しい食生活に至っては、1〜2日食べないのはザラなんて状態になっていた。というか、食べるのを忘れているのだ。

作業に完全に気を取られているので、空腹にも気がつかない。気がついていないことにも、もちろん気がついていない。副業で発症した左半身の筋肉の異常も出まくりで、寝てる時に向こうずねが攣っては目が覚めるという、散々な目に何度もあっている。おちおち寝ることもできやしない。

唯一の助けは気温が上昇してきたことだ。ボクが年間で一番活動的なのは、5月からお盆過ぎ頃までで、他の時期は基本ダメである。冬なんてとんでもない。

もっとも、異常気象は今年も活発なようで(むしろこっちがでふぉと見直すべきだろう)、急激な気温変化(ただし気温が下がる方に限る)に翻弄されている。ちなみに高温多湿を好むので、これからが一番なのだ。PCはヤバいのだが。

相当、雑に作ったラフだがB4強・300dpiのサイズで、一枚あたり1GB越えがザラというのには、正直げんなりした。まだまともに詰め込んでいないネタが、腐るほどある上に、色だってロクについていないのだ。

もちろん、全滅覚悟で作っているので相当ゆとりを残しているのだが、これで本番のラフとなると、正直かなり先行き不安である。

詳細はもちろん省くが、現段階で既に総データ量が36.6GBと、とんでもないことになっている。ちなみに、1枚あたりの最大量は5.5GB。何をどうやったらこうなるのか自分でも分からない。HDDのパーティションも切り直しましたよ。それでも不安は拭いきれない。

ちなみに、特別なことは一切していません。手垢のついた手法にいつも通りのやり方、ありがちな形式。冒険はしない。「一から全部一人で」というところで、十分過ぎるほど冒険してるし、散々書いたり描いたりしたメモのおかげで、いまできることの範囲がある程度見えたし。いや、結構狭かった(笑)

ただ、忘れてた手法を思い出したのは収穫だった。どこまで使うかは分かりませんが、結構な量があったのには自分でもビックリした。

もちろん、ワケあって見捨てた手法ではなく、お仕事を続けている間に何となく遠ざかってしまい、忘れてただけの話だろう。気をつけていたつもりだったのですが、こうして実態がさらされるとそれなりに動揺しますよ。

最終的にどうなるかはまだ分からないが、できれば秋口までにはどうにか山を越えたいと思っている。上述したように、気温が下がると途端にテンション下がるし。結果、すべてがおじゃんになる可能性だって、余裕で、ある。それぐらいの無茶をやっているのだ。

●七

副業をやめたおかげでできているのだが、おかげで極貧も極まれりである。マイナス要素だらけなのだが、救いは一人暮らしであるという点。この姿はもう、さすがに奧さんやおねえちゃんに見せたくない。

無事でき上がるか、死ぬのが先かのチキン・レースなんて、家族に見せるもんじゃない。万一、無事でき上がったとしても、よくて廃人直前、悪ければ発狂だ。だが、そうなりそうなのも事実である。どう考えてもまともじゃないのだが、こういう人なのだ。

何度も書いているが、好んでこんな生き方をしているわけではない。できれば穏やかで平和な日々を過ごしたいのだが、どうしてもそうはならない。ひたすら眠るか、動き続けるかの二択しかないのだ。なぜだ。本当に困ってるのはボク自身なのだが、もうどうしようもない。

7月には年中行事の京都の大工さんもあるので、それなりに体調の方も気をつけておかないとヤバい。もちろん今年も、コンプリート出勤である(笑)

とりあえず、この案件に関してはここでお終い。無事に日の目を見たら書くかもしれないが、書くだけの体力と記憶が残っているか、正直怪しい。ここに書いたことだって、ここ2か月半のことだけなのに、相当記憶が抜け落ちているのだ。

……我ながら色々終わっとるわ……。


【フジワラヨウコウ/森山由海/藤原ヨウコウ】
YowKow Fujiwara/yoShimi moriyama
http://yowkow-yoshimi.tumblr.com


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編集後記(06/21)

●偏屈読書案内:「米中壊滅 日中スワップ協定なんてとんでもない」宮崎正弘・大竹愼一

この本は、チャイナウォッチャーとして知られる宮崎正弘、世界を相手に活動しているファンドマネージャーの大竹愼一、10年間香港に滞在し中国を取材し続けてきた加藤鉱が、現在進行中の「米中貿易戦争」「日本と中国の関係」それとパンク寸前のヨーロッパについて分析する。宮崎と大竹の対談は丁々発止、意見が合わないところがいい。別枠の「加藤鉱の視点」も説得力がある。

宮崎:安倍はウルトラCを温めている。今年7月の衆参同時解散前に消費増税の延期、もしくは凍結を発表する。中国経済が崩壊し、日本経済が危殆に瀕するという格好の「口実」ができるからだ。逆にいえば、安倍首相が衆参同時選挙で勝って、東京五輪まで首相を続けるシナリオとしてはそれしかない。

消費税延期ができなかったら、安倍政権はもう終わりで、レイムダックに陥る。まあベストは消費税廃止なのだろう。それができれば今年の衆参同時選挙を大勝するのは確実である。……宮崎はいい意味での「狼少年」だと思う。この人は10年以上前から一貫して「中国はいま破局寸前である」論を展開中である。

安倍首相が中国通貨スワップの再開や、「一帯一路」に協力を表明するなど、中国との経済関係の緊密化を進めることになった。アメリカに対する裏切りみたいで、なんか変だな〜と思っていたが、宮崎のタネあかしによれば、落ち目甚だしい中国経済の大崩壊を避けるためにほかならない、とのこと。

「ということはアメリカの了解ありきだった。ウォール街としては中国経済をハードクラッシュさせたくない。可能ならソフトランディングさせたい。そのために安倍首相の出番が回ってきて訪中した。そんなシナリオが日米間のトップレベルでつくられていたような気がする」……気がする、って。一方の大竹は、そのシナリオを否定し、アメリカが中国を惑わす錯乱戦法の一つだという。

日本が手を差し伸べる格好をして中国を錯乱させ、さらに手酷い混乱を与えるつもりなのだ。とくに通貨スワップ協定などはきわめて危ない話で、そもそも日本側は通貨スワップを御せる能力を備えていない。この通貨スワップは次元の違う恐ろしさを秘めている。暴落する可能性が高い人民元とのスワップは、絶対にやめるべきだ。崖から地獄に飛び込むようなアホなことだ、という。

安倍は中国の「一帯一路」に協力すると明言したが、口で言ってるだけの可能性が可能性が非常に高く、「一帯一路」は水泡に帰すると宮崎は見る。アメリカは高関税で中国を締めつけていけば「一帯一路」は停滞し、やがて動けなくなる。だから日本は協力を表明しても、結果的には何の助けにもならない、実効性のない話だとアメリカも結論づけている、と大竹は読んでいる。

日本はいまもなお中国に進出している。大竹がいつも言うのは「株市場でも日本人が参入してきたら『売り』のときだ。すでにピークを打って落ち始める」。中国でビッグデータに熱くなっている日本企業は、突っこんでいけば必ず失敗する。トヨタは中国、アメリカ、電気自動車の3つのマイナス要因で潰れるかもしれないと大竹の警告。キャラの違う二人の対談は面白い。つづく(柴田)

「米中壊滅 日中スワップ協定なんてとんでもない」宮崎正弘・大竹愼一 構成/加藤鉱 徳間書店 2019
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198647984/dgcrcom-22/

※6月20日(木)の読売新聞朝刊に「衆参同日選見送り 首相、方針固める憲法改正を優先 という記事が出た。


●QRコード決済の続き。クーポンやポイントに脱線の続き。

現金値引きにしてくれたらいいのに。クーポンがあるから買っちゃう、それはある、あるから効果があるわけで……。

購入履歴やら何やら取られるのは諦めてるから、ポイントはやめてくれないかな。囲い込みのために必要なのはわかってる、わかってるけど。

どちらも自動適用してくれたらなぁと思う。ポンタカードが紐付けられているので、Apple Payで支払うだけで、ローソンではポイントが自動的につく。なんとかPayでも同じようにしてくれないものか。

クーポンの存在を知らなくても、なんとかPayで決済するだけで、自動的に割引されて、やっぱりなんとかPayっていいわ、って思えたら、電子マネーより使う人は増えるよね。決済だけなら、非接触型の方が楽だもん。今のままだとキャンペーン終わったらコード払いは使わなくなると思うわ。(hammer.mule)