Otaku ワールドへようこそ![313]数年ぶりの両眼立体視 ─ 白内障を治しました/GrowHair

投稿:  著者:  読了時間:24分(本文:約11,800文字)



全身麻酔よりも局所麻酔のほうが安全性が高いのはいいとして、この部位に限っては患者本人から見えないように対策を施すことができず、進行状況が逐一分かっちゃうところがなかなかたまらない。9月5日(木)、白内障の手術を受けた。順調に回復中。

生涯でもそうめったにあることではなく、たいていの場合は多くても二回が限度である。どんなだったか、ここに記録しておこうと思う。しかし、あんまり微に入り細にわたりコトの運びを描写すると、ちょっとグロテスクなことになって、読むのがつらくなるかもしれないので、ほどほどにしておこう。

日記みたいなもんで、何かためになることを書こうってわけじゃないけど、もしかしたらご参考になるかもしれないことを、先にまとめておこう。

・白内障になる原因はいろいろあるけれど、歳をとればだいたいみんななるものであって、案外多くの人が罹っている平凡な疾患。
・ホラーなイメージとは裏腹に、手術方法は確立されており、リスクは非常に小さい。意外とお手軽で、日帰りでやってくれるところもある。
・白濁したレンズを丸ごと人工のものに取り換えるので、その後はクリアに見えるし、二度と再発しない。
・ほぼ完全に見えなくなってからは、あまり長く放っておかないほうがいい。白濁化の進行は続いていて、手術が大変になる。
・そういうわけで、白内障になったら早めに対処するのがお薦め。





●白内障とはレンズが白濁すること

まずは目の仕組みから。いちばん外側にあるのは角膜で、目のカバーであり、レンズのはたらきもある。その奥に虹彩があり、眼内に入ってくる光量を調整する。カメラで言えば、絞りにあたる。虹彩の中心の光が通り抜ける領域を瞳孔という。その奥に水晶体がある。これは、レンズ。周辺から筋肉で引っ張ることにより厚みを変えることができ、ピント調整がはたらく。

その奥に硝子体(しょうしたい)があり、これがいわゆる目玉である。球状の壁の内側がドロっとしたゲル状の物質で満たされている。カメラで言えば、レンズとフィルムとの間の空間にあたる。

いちばん奥にあるのが網膜である。ピントが合っていれば、外界の物体の倒立像が実際にここに映っている。カメラで言えば、フィルムにあたる。映像は視神経が捉え、電気信号に変えて、脳に伝達する。

白内障というのは、レンズのはたらきをする水晶体が白く濁る病気である。徐々に進行していく。最初は、夜、光源がディフューズ(拡散)して、やたらとギラギラとまぶしく感じられる。

しまいには、完全にすりガラス状態になり、何も見えなくなる。それでも、強い光源があればどっちの方向から光が来ているか分かるし、動くものがあれば、チラチラするので、水晶体以外はちゃんと機能しているのが分かる。

白濁するメカニズムはよく分かっていないらしい。水晶体はやわらかいのが本来の姿だが、白濁した部分は硬くなる。原因もよく分かっていないが、ぶつけたり圧迫したりするとなるとか、眼内炎などの炎症によって引き起こされるとか、皮膚炎の合併症でなるとか、多様である。

単純に、加齢によってもなる。発症は45歳以上の中年に多く、年齢を重ねるにつれて割合が増加する。また、80歳以上の高齢者はほとんどが白内障になっていると言われる。進行の速さには個人差がある。

白濁した水晶体は、元には戻らない。人工のレンズに差し替える手術を施すことにより、再び見えるようになる。

手術の内容は、水晶体を超音波で乳化破砕して吸引除去し、代わりに眼内レンズを挿入するというもの。眼内レンズは形状が変化せず、ピントは固定となる。もともと水晶体を引っ張っていた筋肉は残るけど、お役御免となる。

通常は、裸眼で10cm強くらいの近さにピントが合う、近視の状態にしておく。数十センチ程度の距離を見る用と、うんと遠くを見る用の2種類の眼鏡を新調すれば、だいたい間に合う。

視線の方向の上下により、遠・中・近の3種類の焦点距離を備えた眼内レンズというのもあるけれど、先進医療の扱いになり、保険が効かない。

ピント調整機能をお釈迦にするのはもったいないので、見えているうちは生来のレンズをもたせたほうがよい。けど、いよいよ真っ白白で何も見えなくなったら、早めに手術を受けたほうがよい。まったく見えなくなってからも白濁はさらに進行していく。

外から眼内に光が届かないため、眼底まで観察できなくなったり、白濁した部分が硬化して切開しづらくなったり、白濁物質が水晶体後方の後嚢と呼ばれる薄い膜に付着して、除去するのが大変になったりと、ぐずぐず先延ばししててもいいことがない。

目を手術するというのはホラーなイメージがあるかもしれないが、白内障手術は確立されていて、リスクはほとんどない。ぜんぜんないわけではないけれど、おおかた予想できる範囲内である。日帰りでやってくれる病院もけっこうある。

難しい要因が起きてなければ、手術は10~20分程度で済む。切開幅は3mm以下。手術する側としては割とお手軽なほうらしい。

一方、受ける側としては、もっとも嫌な部位にあたるだろう。通常は、全身ではなく局所麻酔で行う。そのほうが安全性が高いのはいいのだけれど、何をされているのか、いやおうなく内側から逐一見ながらの進行というたまらんことになる。

他の部位だったら、仕切るなり目隠しするなりして、本人から見えないようにやるのだろうけど、目に限っては、それができないからね。

手術後は翌日からほぼふつうに生活できるが、傷口が治るまで、細菌が侵入して炎症を起こしたりしないよう、3種類の目薬が処方されて、一日4回点眼する。顔や髪を洗えないとか、酒は控えるべしとか、多少の制約がある。目が真っ赤っ赤に充血するけど、これは異常なことではなく、心配要らない。

なお、酒については、アルコールが薬と化学反応して毒物になるとか効かなくなるということではなく、うっかりこすったり転んでぶつけたりするといけないからというのが理由である。ふだんからそんなことはないので、つまりは飲んでいいとも解釈できる。

1か月くらい経ってから眼鏡を新調する。これで、一丁上がり。

問題の原因が元から除去されるので、当然のことながら、よく見えるようになるし、再発することは決してない。

手術にはそうとう心理的抵抗があるけど、先延ばししていていいことはないし、実はそんなにたいへんではないので、もしなったら我慢せず、早く手を打つことをお薦めしたい。

●左目から12年、右目にも来た

記録によると、左目の手術を受けたのが2007年11月29日(木)のことだった。その時点で、右目もすでに白濁化が始まっており、これから徐々に進行していくので、見えなくなったらそっちも手術だと予告されていた。実際、だんだん進んでいった。

セーラー服姿で飛び込み台からプールに落下する仕事をしたのが2014年7月17日(木)のことで、このとき、水面までの距離が分からなくて恐いなぁ、と思った記憶がある。ひょっとして、この時点ですでに右目がほぼ見えなくなってたんだっけ。

映像はこちら:


片目しか見えてなくて不便なことが2つある。ひとつは両眼立体視できなくなるため、距離感がつかみづらくなること。もうひとつは、右側の視野が大幅に狭くなること。

買い物をしてレジでレシートを受取るときなど、相手の指までつかんでしまってたいへん恥かしい思いをすることがある。おそらく相手は、こっちが片目しか見えてないなんて思いもしないだろうから、こいつは何の目的でそういうことをしてくるのだろうと不審に思ったに違いない。

デキャンタから赤ワインをグラスに注ごうとして、縁を接触させているのに位置が前後にズレて、外にこぼれたことがある。傍目にはそうとう酔っぱらっているようにみえたかもしれない。

後ろを歩いている人が右側からすり抜けて追い越そうとするときとか、右のほうから自転車で走ってきて私の目の前を横切ろうとするときとか、私がよけるなり止まるなりするものだろうとあらかじめ見越していたりする。

ところがこっちからは見えてないもんだから、それができない。これは気まずい以上に、けっこう危険なことになる。

A面用もB面用もメガネが傷んできている。目を放置したままメガネを新調するのは、いかにも無駄だ。目を治すのが先だろ。ついに観念して、2019年7月31日(水)、近所の眼科医院へ。

「こうなるまでよく我慢しましたね」。ええと、我慢したというか、いろいろ忙しかったというのもあるし、無精なのもあるし、ずるずると先延ばしして今に至ったっていうのが実情かな。

前回同様、紹介状を書いてもらって、手術のできる総合病院へ。病院にも人気不人気があるらしい。人気のところは半年以上待たされるとか。不人気のところというのは、ひょっとして藪医者という評判でも立っているのだろうかと心配になるが、それほど難しい手術ってわけじゃなし、そういうところでじゅうぶんだ。

眼科の外来は水曜日が休診だそうで、翌朝、行く。建物が古めかしくて、いかにも昔の病院って雰囲気だけど、問題点は特に見当たらないぞ。

早ければ8月29日(木)に手術の予定を入れることもできたが、直後に東岡崎に行く予定が入っていたので、翌週にした。この日のうちに、入院前検査をひととおり済ます。血圧(セルフサービス)、採血、心電図、胸部X線。結果も聞けて、特に問題なし。

目も、当然、いろいろ検査される。白濁が進みすぎて、水晶体よりも奥が観察できない。万が一、硝子体や眼底にもトラブルがあったとしたら、水晶体を人工のものに差し替えたとしても、見えるようにはならない可能性があると予告された。

網膜剥離が原因で、合併症として白内障になるケースもある。しかし、光や動きは見えているので、そこはきっとだいじょうぶでしょう。

白濁が中心から周縁部に向かって伸びているところが3か所ある。もし硬化がそうとう進んでいれば、切開しづらくなって、時間がかかるかもしれないと予告された。

別の眼科医に意見を求めていたが、まあ、硬くはなっているでしょうけど、切開しづらいってほどではないでしょう、との見解だった。

いずれにせよ、すべて想定内のことであって、さほど難しい手術になりそうな感じがまったくしなかった。

●手術、成功

9月5日(木)、9:30amに入院予定だったが、到着したのは10:35amごろだった。1時間以上遅刻。翌日配信予定のデジクリ原稿を、この日の朝になってあたふた送稿してたもんで。

1階で書類を提出して、入院手続きする。3階の病室へ。4人部屋。ベッドひとつは空き。

パソコンを持ってきていたが、Wi-Fi玉を持ってくるのを忘れていた。取りに帰っていいかどうか聞いたら、ダメだという。院内にフリーWi-Fiが飛んでなかった。

手術終了後に、SNSなどで即時報告できないのは残念。手術の予定を事前予告したら、大げさに受け取られ、みなさまがたにずいぶんご心配をおかけしてしまっていたのだ。

病院の用意したパジャマに着替える。瞳孔を開く目薬を点眼されたりして、なるほど、帰っている時間は取れない。昼食は抜き。

0:30pm。2階へ降りて、外来で診察を受ける。1:00pm。3階病室へ戻る。手術まで寝て待つ。この日、目の手術を受けるのは4人。私が最後。

私が最後になったのは、おそらく、手術時間が長引く可能性がいちばん高いから。硬化のせいで切開に手間取った場合、1時間から2時間かかるかもしれないと言われていた。

3:15pmに迎えが来る。車椅子で2階手術室へ移動。手術台に仰向けに寝かされ、手足を固定され、顔をシートで覆われるが、右目のところだけ丸くくり抜かれている。なので、左目は見えない。右目も、最初は完全に白濁していて、まったく見えない。動きだけはチラチラするので分かる。まぶたを開けられて固定される。

目が白濁しているうちは見えないからまだいいんだけど。目薬で麻酔をかけてから、どうやら眼球に本格的な麻酔の注射をしたらしい。切開されているとき、鈍い、ずんとした感触が来るので、分かる。

その直後に、冷たい液体をじゃーじゃーかけられる感触が来る。おそらく細菌が侵入するのを防ぐための消毒なのだろうけど、冷たいのは切開の感触を消すためか。

なんか、やっぱりそうとう苦労してたみたい。後で聞いたところでは、水晶体を丸く切って除去するところまでは順調にいったそうだ。

ところが、水晶体を除去してみると、その下の、後嚢と呼ばれる薄い膜の上にも白いものがべったりと付着していた。

水晶体は薄~い袋で覆われている。これを水晶体嚢という。それの外側の面を
前嚢といい、内側の面を後嚢という。前嚢は丸く穴を空け、超音波で乳化粉砕
した水晶体をそこから吸引除去する。

水晶体嚢は薄くて弱いのだが、後嚢は水晶体と硝子体とを仕切る膜なので、傷つけないよう、細心の注意を払う。もし破ってしまうと、硝子体を満たすゼリー状の物質が出てきてしまう場合があるし、眼内レンズが硝子体のほうへ落っこっちゃう可能性もある。

眼内レンズの挿入を後日に見送らなくてはならなくなる場合もある。まあ、それはそれで想定内のことであって、対処のしようのない事態ってわけではないのだけれども。

しかし、後嚢を傷つけないに越したことはないので、白いブツの除去はほどほどにして、少し残った状態のまま眼内レンズを入れた。

残った部分は、後日、レーザーで処置できるという。切開の必要はない。眼内レンズよりも小さな径で、後嚢を丸くカットし、穴を空ける。下辺の一部を残してつなげておくことで、ぱらっと垂れ下がった状態にしておく。

これとは別のケースだが、後嚢そのものが白濁して、まるで白内障が再発したかのような症状が起きることがある。これを「後発白内障」という。その場合も、レーザーで同様の処置をする。

眼内レンズを入れてからは、近くがめちゃめちゃはっきり見える。機器が近づいてくるのがはっきり見えて、恐怖が倍増!

4:30pm、手術終了。1時間15分。車椅子で病室へ戻る。

その後2時間、仰向けに寝て、絶対安静。というか、眠りに落ちる。手術中はただ仰向けに寝てる以外にどうしようもなかったわけだが、その割にはやけに疲れてた。

6:30pm夕食。9:00pm消灯。なんか、翌朝7:00amまでやけにぐっすり眠れたんだけど。前の晩、原稿書きで、ろくな寝かたしてなかったもんなぁ。途中途中で目覚ましをセットして仮眠、みたいな。

9月6日(金)、朝食後、2階診察室へ。右目にかかっていたガーゼをはがしてもらう。多少ディフューズしているけど、後嚢上に残った白いブツのせいなのか、あるいは、点眼薬で瞳孔を開いているせいなのか。

久々の両眼立体視といきたいところだが、これがなかなかうまくいかない。脳がやりかたを忘れている。そもそも、左右の像が合ってなくて、ものが2つに見える。しかも、ズレがそうとう大きい。

右目の像がそうとう左下へずっこけている。それだけでなく、+10°以上、左へ回転している。これにはびっくりだ。だって、網膜上に映った実像は、左右の目のレンズの違いによって、大きさやボケ具合に差異があったとしても、回転ズレが起きるはずがないではないか。

コードがねじれているのか? 網膜から脳にいたる視神経のせい?

脳は、回転ズレまで補正して両眼立体視しようとして必死で働く。しかし、合致するまで2秒ぐらいかかるのだ。

通常、ピントがぴったり合っているのは、視野角のうちの中心部1°ぐらい。1°というと、腕を伸ばしたときの親指の爪の大きさぐらいに相当する。われわれが、視野全体にわたってピントが合っているように感じるのは実は錯覚で、視線をしょっちゅう動かしてあちこちサンプリングし、残りは脳が補間している。この目の動きを「サッカード」という。

サッカードは通常は意識できない。ところが、これが分かっちゃうんだな。視線が動くたびに像が二重になり、それがぎゅーんと合ってくるので。サッカードの頻度は通常だと1~3Hzだと言われているが、それだと左右の像が合う前に動かすことになる。サッカードの頻度が1Hz程度に下がっている。

脳って、すんげー苦労してんだね。この処理、脳のどこの部位でやってんだろ?

なんか、軽く吐き気がする。脳が、こんな疲れる処理、もういやだ、と悲鳴を上げているのか。

病室に戻り、着替えて待つ。10:30am、退院。

漫画喫茶へ。やっとネットにつながれた。上司にメールを送り、手術成功を報告する。この2日間はあらかじめ有給休暇の申請を出してあるので、仕事は休めるようになっている。

居酒屋へ行く。酒を飲むわけではなく、昼メシ。美味い刺身が食いたくなったもんで。

会計しようとしたとき気がついた。げげ! USBメモリがキャップしかない!漫画喫茶のパソコンに差したまま忘れてきた。

店を出て速足で漫画喫茶に向かう。あ! 居酒屋に手提げ袋を置き忘れてきた!

戻る。取る。漫画喫茶へ。店員さんが片づける際に気がついてくれたようで、しっかり保管していてくれた。ふぅ、助かった!

脳が久々の両眼立体視に忙殺されて、ほかの思考がお留守になってたか。

ひと眠りして起きたら、また左右の像が大幅にズレてる。ものを見ているのは目ではなく脳なのだということが、実感としてよく分かる。

●目が機能することとものが見えることとの多大なギャップ

テレビドラマなどだと、生まれつき、あるいは長期にわたって目が見えていなかった人が開眼手術を受け、身近な人と感動のご対面、みたいなシーンがあったりする。水を差して悪いけど、実際には、そうはならない。

網膜に倒立像が映り、それを視神経細胞が捉え、光の輝度信号を電気信号に変換(光電変換)して、脳に伝達する。脳がこの情報を受け取っても、単に0と1の列(ビット列)が同時並行的に入ってくるだけであり、その信号をどのように処理すれば、外界のどんな情報を獲得するのに有効利用できるのかが分からない。目が開いたからといって、即座に「見える」ようになるわけではない。

目が本来の機能を完璧に果たすようになったとしても、目から入ってきた情報を脳が処理できるようになるまでには時間がかかるのだ。先天盲から開眼手術を受けた場合、2~3年を要することがあり、10年経ってもちゃんと「見る」ことができないケースもある。詳しくは、Wikipediaに「先天盲からの回復」の項がある。

明暗のみが分かる段階、加えて光の方向が分かる段階、加えて色が分かる段階、加えて図柄の大小が分かる段階、加えて二次元的な形が分かる段階、という経過をたどり、徐々に徐々にものを見るための情報処理のしかたを発見していくのだ。脳がどんなことをしているのかが垣間見えておもしろい。

開眼直後、脳は、目から来たビット列が視覚情報を表していることすら、あらかじめ知ってはいないのである。聴覚信号かもしれないし、触覚信号かもしれない。ある瞬間、ひょっとすると、この信号は画像を表しているのではなかろうかとピンと来るのであろう。どうやってそこに気づくことができるのか、謎である。

気づいた後は、画像であることに呼応した情報処理を始めるのだが、プリミティブ(原始的)な処理から始まって、徐々に徐々に、上位階層の処理ができるようになっていく。

かつて、コウモリのように、耳から入ってきた音の情報に基づいて視覚クオリアを生成する「反響定位(echolocation)」のできる全盲男性がいた。舌打ち音を発し、跳ね返ってくる音から、周囲の物の配置が把握できるのだという。弱いフラッシュを焚いたように、一瞬だけ「見える」のだそうである。自転車を乗り回していた。

脳は、耳から入ってきた情報なのだから、これは音に違いないとあらかじめ決めつけてはおらず、その情報が視覚クオリアを生成するに足る情報を含んでいることに気づいちゃったというわけである。

また、舌で見る装置というのがある。ビデオカメラが捉えた映像信号を炭酸飲料のパチパチに似た刺激に変換して、小さな平べったいパネルに送り出す。このパネルを舌に押し当てると、脳は、舌から来た情報だからといって味覚に違いないとあらかじめ決めつけてはおらず、視覚情報だと気づいて、視覚クオリアを生成する。

この柔軟で臨機応変な順応能力を脳の可塑性という。可塑性、スゲー!

さて、通常の場合、目は2つあるので、2枚分の画像情報が入ってきていることに脳が気づく。2つ来ているのだったら、重ね合わせてみて、ぴったり合うかどうか調べてみよう、と思うのは、自然な思いつきかもしれない。

すると、ぴったりとは合わず、ところどころ微妙に位置がズレていたり、像そのものが異なっていたりすることに気づく。

右目と左目とがある程度離れてついていることにより、同一の対象物を見る視線の角度が異なるので、それぞれの目が同じ物体の別々の側面を見ていることになる。像がぴったり合わないのは当然である。これを「視差(parallax)」という。

遠くにある物体を見るときは、両目からの視線の方向がほぼ平行に近い小さな角度をなすので視差は小さい。近くにある物体を見るときは、その角度が大きくなるため、視差が大きい。

この物理現象を逆向きに解けば、視差の情報を利用して、自分から物体までの距離を測定することができる。これが両眼立体視だ。

ここに気づくだけでも、けっこうすごいと思うのだが。気づいたとしても、解くのがそうとうたいへんだ。視差のある2枚の写真が与えられたとき、そこに写っているそれぞれの物体と自分との間の距離を求めよ、って問題、解けますか? 私は大学時代に数学を専攻したけれども、自力じゃ解けない自信がある。えっへん!

両眼立体視のアルゴリズムをコーディングしたソフトウェアが、脳のどこかに生まれつきインストールされているのではないと思う。視差を含んだ2枚の画像が入ってきているという状況に気づいた後で、その情報の利用のしかたを自力で考案しちゃうのだと思う。

脳って頭いいんだよなー。意識側がどんなにがんばっても解けない問題を無意識側はほいほい解いちゃうんだよねー。しかも赤ん坊でもやってのける。意識側がどれだけ「ふんっ!」と気張ってみても、無意識側がどんな計算をしたのか、意識側に引っ張り出すことができないんだよねー。不思議じゃないか?

意識とは、優秀な部下がたくさんいるのに、その存在にも仕事ぶりにも気づくことのできない、まことにもって間抜けな社長だ。

脳が可塑性を発揮するのは、視覚情報に限ったことではない。どんなビット列が入ってこようとも、それが視覚か聴覚か味覚か嗅覚か触覚か、あるいはそれ以外の何かか、といった仮定をあらかじめ設けることなく、そのデータが何に由来するものであれ、入ってきたものは無駄に流したりせず、周囲の外界の状態がどうなっているのかを知るための手掛かりとして、極力拾い上げて有効利用しようとがんばるのであろう。

ビット列に基づいて外界の状態を推測するアルゴリズムを、各自がそれぞれ自力で発見する。モーダル(modal; 視覚か、聴覚化、等々)に依存せず、ビット列から外界を推測するアルゴリズムを自力で生成する、非常に汎用性の高い親玉アルゴリズムみたいなやつが、生まれた瞬間から脳内で走っているという仕組みになっているはずだと思う。これが、おそらく「マスターアルゴリズム」に相当するのだと思う。

現時点において、マスターアルゴリズムはまだ人類に発見されていないのだと思う。無意識下においては、誰もが知っているのかもしれないけれど。発見されれば、深層学習(Deep Learning)なんてもんじゃない、大激震がAI界に、ひいては社会にもたらされるであろう。

マスターアルゴリズムを制する者が世界を制する、勝者総取りみたいなことになるのではなかろうかと。

下記のような書籍が出ている。

  Pedro Domingos,
  "The Master Algorithm: How the Quest for the Ultimate Learning
  Machine Will Remake Our World"
  Basic Books (2015/9/22)

出版から4年経つけど、日本語版が出そうな気配がしない。ロシア語と中国語には翻訳されているようだけど。ビル・ゲイツが絶賛したとか、習近平の書棚に置いてあるとか、何かとお騒がせな本である。

マスターアルゴリズムの発見は、もしかすると、数年のレベルの近さまで迫っているのかもしれない。

どうやら日本は波に乗っかり損ねたようで。大ピンチというよりか、敗色濃厚で、ほぼ絶望的な状況なんじゃないかと私はみている。中国がやってくれて、ぜーんぶかっさらっていっちゃうのではなかろうかと。

●その後、順調、よく見える

手術後の回復は順調だ。久々の両眼立体視とワイドな視野をありがたく享受している。身体の各器官が本来の機能を正常に発揮しているというのは、実によいことだなぁ。

ディフューズはほとんど起きてなく、白いブツの付着が残っているという後嚢の穴空けは、当分やらなくていいや。

想定されるトラブルとしては、傷口から細菌が侵入して炎症を起こすなどがある。処方された3種類の点眼薬 1日4回差すべしという指示をかなり忠実に守ったのがよかったのか、そのようなトラブルは起きていない。

汗が目に入ってはいけないと思い、歩くのを短めに切り上げている。雨が顔に当たるのも避けている。

酒は飲んでも問題ないような気もしたが、いちおう禁酒を守ってきた。

サッカードがいちいち分かるというわずらわしさは解消した。けど、寝て起きると、最初の状態に戻っちゃって、像がものすごくズレている。

脳は、一度、忘れていた両眼立体視の方法を再習得したのに、寝るとまた忘れちゃうのか。目覚めるたびに、両眼立体視の習得を一からやりなおす。

覚えておくよりも、このほうが、記憶の節約になるとか、多様な状況変化に柔軟に対処できるとか、いいことがあるのだろうな。

けど、合うまでの時間がだんだん短くなっていく。これは、きっとヘブ則によるものだ。

こうしてみると、眠りにも、なんらかの重大な機能がはたらいているのかもしれない。

今回のように特殊な状況下に自分を置くと、無意識がどんな処理をしているのか、ちょっとだけ白状してくれる。ん? もしかして、自分を実験台にして、さまざまな状況下に置いて、脳の無意識側がどのように対処するかを観察すれば、マスターアルゴリズムが発見できちゃったりしないかな?


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
http://www.growhair-jk.com/

《たわしおじさん、どこへ行った?》

9月11日(水)にテレビ東京系で放送された『家、ついて行ってイイですか?』で、たわしおじさんがご自宅で取材を受ける場面が映ったらしい。その映像が収録されたのは、2016年11月のこと。

当のご本人は2年前くらいから消息不明。地元所沢の人でも分からないらしい。メール等は送っても送っても返事なし。音信が途絶える少し前、体調を崩したけど大したことないので心配要らない、というメッセージを知り合いたちに送っていたのだが。どうしているのか。ちと心配なり~。

ちなみに、最近もよく目撃情報が上がっている、マントを羽織っている人は、たわしおじさん2号。ところで、オレもちょこっと映ったらしい。あの縛られてるやつ、地上波で流しちゃったのか?!

・レオタードおじさんとタワシおじさんとセーラー服おじさん知り合いやったんか・・・・・

・たわしおじさんとセーラー服おじさんに交流あるの草

・タワシおじさんとセーラー服おじさん、レオタードおじさんみんな友達なのは草

・タワシと散歩おじさん、亀型のタワシに亀甲縛りしてもらったりセーラー服おじさんと面識あったり…。

・今テレビでたわしの散歩おじさんを紹介してて、HajimeKinokoさんの写真集に掲載されたセーラー服おじさんとレオタードおじさんの図が放送されたんだけど、私この本持ってるって言いかけて止めた。

・縄で縛られたセーラー服おじさんと、レオタードおじさん、シュール過ぎるだろ!

・地上波で一鬼のこさんとセーラー服おじさんとレオタードおじさんを見ることになるとは思わなかった

■星野源が来るまで待ってた? 3年前のVTRを解禁
https://news.line.me/articles/oa-rp29371/16e7c16a3427

  COCONUTS-ココナッツ-
  文: かんだがわのぞみ
  星野源が来るまで待ってた?
  3年前のVTRを解禁できた理由に感動の声
  #家ついて行ってイイですか が話題
  2019年9月12日 17:08

実は、男性を取材したのは2016年11月のことで、「星野さんに見て欲しい」と思ったスタッフが、星野さんがゲストに来るまで大切にとっておいたVTRだったようです。