[4942] 「無」の巻 その3◇フォントおじさん、テレビ地上波に出演

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《「読めない」ことをテーマとしたい》

■わが逃走[253]
 「無」の巻 その3
 齋藤 浩

■もじもじトーク[122]
 フォントおじさん、テレビ地上波に出演
 関口浩之
 



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■わが逃走[253]
「無」の巻 その3

齋藤 浩
http://bn.dgcr.com/archives/20200130110200.html
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またまた「無」の話のつづきです。

「無」という文字の成り立ちを調べてみると、

http://bn.dgcr.com/archives/2020/01/30/images/001.jpg

1.もともと「無」は、danceという意味を表す字として使われていたところ、音が同じだったため、nothingという意味の文字としても、使われるようになった。

2.ふたつの意味を持つことによる混乱防止策として、danceの方をバージョンアップして「舞」がつくられ、nothingはそのまま据え置かれた。ということらしい。

つまり、舞い踊る人の姿をトレースした略画が「無」という文字のルーツだったわけだ。

で、それを参考に舞い踊る「無」を制作したのが前回紹介したコレ。

http://bn.dgcr.com/archives/2020/01/30/images/002.jpg

さて、なぜこういった自主制作をしているかというと、この年末年始にソウルで開催されたポスター展「One Letter 一文字」展で、新作を発表する必要があったからなのです。

で、新作ポスターとして発表するなら、シリーズとして3点は欲しいところ。と考えた。

なので、さらに視点を変えた「無」を2点作っていこうと思う。たとえば、この字を建築的に構成する! と仮定する。

これは字ではなく図面である、こういう建築が存在するのだ〜。と思いながら眺めていると、盆踊りの中央に位置するヤグラのように思えてきた。

おお、こんなところにも文字のルーツが見え隠れする。盆踊りのヤグラは、前の日に組み上がって、翌日に撤去されるいたってシンプルな仮設構造物だ。

「無」であること、つまり可読性をキープすることを条件としたシンプルな仮設構造物とはどんなものだろうか。

円柱のみ、直方体のみ(=板とか棒とか)で構成してみるというのはアリだろう。こういうときは、迷わず悩まず、まず描いてみる。

いくつかのスケッチを並べてみると、ベニヤ板を水平垂直に組み合わせたようなものが、なにやらイケそうだ。

で、完成したのがコレ。

http://bn.dgcr.com/archives/2020/01/30/images/003.jpg

「無」という字を構成している要素はほぼタテ線とヨコ線に割り振ることができるが、できれば一画目はナナメ線として認識させたい。

しかし、ナナメの要素を入れることによる構造の複雑化は避けたい。
ならば、カメラを振ればいいじゃん!

ということで、水平垂直のみで構成されるこの立体を、ナナメ上から見下ろしました。

この角度からなら「無」と読めるし、ナナメの動きも伝えられる!

ちなみに、この立体をX軸、Y軸、Z軸上から真正面に捉えても「無」とは読めないのです。

さらにもう一点を考える。

三つ目は「読めない」ことをテーマとしたい。

読めなくなるギリギリの形状とは? 角度とは?

たとえば、無という字を書き順で分割し、手前から奥に向けて配置してゆく。つまり、Z軸は時間軸という想定。

正面から見ると「無」でも、カメラ位置をずらすことで文字として破綻してゆくわけだが、読めなくなる瞬間はどこか?

さらに「美しく読めなくなる」瞬間とは? を考えてみた。

直方体と球体を円柱に刺したものを用意し、ファインダーを覗きながら角度を探る。という工程を、3Dソフト上でシミュレートしつつ、完成したのがコレ。

http://bn.dgcr.com/archives/2020/01/30/images/004.jpg

イイじゃん。自画自賛。

というわけで、2020年最初のリッタイポシリーズ『無』三部作でした!

【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[122]
フォントおじさん、テレビ地上波に出演

関口浩之
http://bn.dgcr.com/archives/20200130110200.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

前回のもじもじトークの『2020年の抱負とか』のテーマで、「今年は禁煙とレコーディングダイエットと20年日記をコツコツと地道に続けていきたい」と書きましたが、なんと、継続しています! すごい。

禁煙が2か月経過しました。その間、1本も吸ってないのです。40年間、1日も禁煙したことがなかったのですが、「気合いだけ」で、禁煙が継続しています。自分を褒めてあげたい。

今でも、時々、「タバコ吸いたーい」と感じます。知人がタバコ吸っている横で、匂いを嗅ぎたくなります(笑)

2か月の禁煙のご褒美に、美味しいものをたくさん食べたいですが、禁煙と並行してダイエットもやっています。これが、結構、キツイのです。

ストレスがかかる仕事が一段落した時に、タバコが吸いたくなるのです。禁煙開始してからの1か月間は、タバコのかわりに何かを口にしたくなりました。たぶん、それが、「禁煙すると体重が増える」の理由だと思いました。

12月上旬からダイエットも開始し、2か月経過しました。なんと、マイナス2kgを達成しました。偉いね。

それから、1日100文字程度のツイッターのノリの日記(メモ書き)も続いています。iPhoneにメモで書き込んでいるだけです。

もし、そんなメモを20年間書き続けたら、80才になるわけで、そんな長期の日記(メモ書き集)、面白いなぁと思って2020年の元旦から開始しました。

家族には内緒ですが、もじもじトークを家族も読んでいるので、内緒にはならないですね(笑)

さて、今日のもじもじトークのテーマは、「フォントおじさん、テレビ地上波に出演」です。

●フォントおじさんもナラビストだった

まずは、こちらをご覧ください。地上波テレビに出演しちゃいました。

http://bit.ly/mojimoji122a

といっても、5秒ぐらいの映像ですけどね。

日本テレビで、毎週日曜12:45~13:15に放送されている『ニノさん』という番組で登場しました。

1月26日放送は『ナラビスト』がテーマでした。MCは二宮和也さんで、ゲストは王林さんと小峠英二(バイきんぐ)さんと重岡大毅(ジャニーズWEST)さんでした。

ディープな世界にディープな人が行列を作って集まる、イベント(フェス)の特集でした。そして、行列に並んで参加する、熱い情熱がある参加者を「ナラビスト』と呼んでいるようです。

ということは、僕は「ディープな世界に情熱を注いでいるナラビストの一人」ということでしょうか。

正解です(笑)

頬と額にシミのようなものが写っていますが、イベントの受付で、「文字のシール」を貼ってもらったからです。

たくさんの人が取材を受けていたので、たぶん、ボツになって放送されないと
思っていたのです。

一応、録画はして外出していたのですが、放送されている時間帯に、FacebookやTwitterやメッセンジャーで、「フォントおじさん、テレビに登場!」って感じで、10件ぐらい書き込みがありました。

なので、家に戻って、録画を見たら、数秒、登場しているのを確認しました!

2月2日(日)12:44までなら、無料で『TVer』で見ることができます。よかったら、ぜひ、ご覧ください。

ニノさん「ナラビスト」
日テレ 1月26日(日)放送分 2月2日(日)12:44配信終了
https://tver.jp/corner/f0045587

前半の「ガチコスプレ」も非常に面白い内容です。番組開始12分30秒ぐらいから「もじフェス」の特集です。

●書体が変わると印象が変わる

フォントおじさんと呼ばれるようになったのは2年前ですが、フォント伝道師(フォント・エバンジェリスト)の活動は10年前に開始しました。

今回の番組で、「書体が変わると印象が変わる」をテーマに、「エレガント」と「古印体」と「コミックレゲエ」の3書体で比較していました。
http://bit.ly/mojimoji122b

「エレガント」は可愛らしく、女子力向上フォント、「古印体」は稲川淳二フォントでちょっと怖い、「コミックレゲエ」は怒った時やインパクトを出した時のフォントって、10年前のセミナースライドでも書いていたのです。

まったく同じ3書体で比較していたので、奇遇だなと思いました。

「フォントが人を操る」というフレーズもよかったですね。パッケージデザインを変えたら、売上が5割り増しになったというような話を時々、耳にしますよね。パッケージ変更の際に、フォント選定も重要な要素であることは間違いないです。
http://bit.ly/mojimoji122c

ここ数年、人々の書体やフォントに対する熱量の高まりを感じています。今年は「さらに、さらに、さらに」、それが顕著になると思われます。

次回も文字ネタをお送りする予定です。また、二週間後にお会いましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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Twitter @HiroGateJP
https://mobile.twitter.com/hirogatejp

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/

Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/


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編集後記(01/30)

●偏屈BOOK案内:斗鬼正一「開幕! 世界あたりまえ会議」

図書館の新刊棚にあったコンビニ本テイストの雑学本。筆者は江戸川大学社会学部現代社会学科文化人類学・民俗学コース教授。誰かにとっては「あたりまえ」だが、私たちにとっては「ありえない」ことを、おもしろおかしく紹介する本で、文化人類学の研究書ではない。フリーのライターが、30冊超の参考文献を漁って作ったものと推察できる。各議題のタイトルは簡潔でよろしい。

男と女について、人生について、コミュニケーション、身のまわり、生きるため、といった5つの「あたりまえ会議」。議題83件を見開き2ページで説明する構成で、簡潔で丁寧な本文の漢字は全ルビ付き。大事な記述は太字と波線罫付き。ヘタヘタな挿絵がいい味。各議題の文末に「日本人からしたら……」というツッコミのようなコメントが入る。小学生でも読めて、そこそこ面白い。

「花嫁が次々と新しい彼氏を引き連れてくる」「幼すぎる妻を手塩にかけて育てる」といった話は、太平洋の島々や未開発地域の話だから斜め読み、主に文明国のおかしな議題が読ませる。議題1は「男女を徹底的に分ける」で、イランではバスは男女が前後に分かれ、出入り口も別。列車も男性と家族連れ専用車両、女性専用車両に分かれているなど、みっちり男女分離が行われている。

「そんな国ですから、たとえ外国人でも、夫婦でない男女がホテルで同室に泊まることは、非常識どころか犯罪で、逮捕されてしまうのです」って、ほんまかいな。トップバッターの記事だから、間違いないはずだ。「ナンパで真っ先に尋ねるのは、苗字」とは、「同姓不婚」という伝統のあった韓国の話。自分も相手も同じ苗字だったら結婚できなかったが、いまは民法改正で緩和された。

それでも8親等内は結婚不可。日本では3等親以内の親子、兄弟姉妹、祖父母と孫、甥姪と叔父・叔母は、慣習的にも法律上も結婚できないが、いとことなら可能である。ところが、韓国人の目にはこれが非常識に見える。韓国では、婚活は焦るな危険。ブレーメンなどドイツ北部の都市では、独身のまま30歳を迎えてしまうと、街の中心にある大聖堂の掃除という罰が与えられるという。

この作業中に、男性は未婚女性から、女性は未婚男性からキスをもらわない限りやめられない。これには同窓会の意味合いもあり、罰せられているはずの本人もみんなでにぎやかにビールやワインを飲む。早く結婚して子供を持てという願いや圧力が込められた通過儀礼なのだ。ドイツはマザコン大国らしい。

結婚披露宴の費用は新婦持ち、というのがアメリカの常識。変なの。結婚は厳格な契約である、というのがイスラム国。変なの。重要なのは新郎側が新婦側に支払う資金(婚資)で、イスラムの法律に定められている通り、前払い分と後払い分に二分され、前払い分は結婚時に、後払い分は離婚した場合に支払うと取り決められている。妻にとっては離婚保険に加入したようなものだ。

その妻が先に死んだ場合、夫は妻の遺体に触れることはできない。結婚は契約なので、死んだら自動的に契約解消となり、もはや夫婦は他人になってしまうからだ。日本も「少しでも若く見られたい女性」「証明写真はなぜか正面顔」の2議題で登場する。日本人にとって「ありえない」ことが世界のどこかでは「あたりまえ」というのは興味深い。病院の待合室向きの本である。(柴田)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847097521/dgcrcom-22/
斗鬼正一「開幕! 世界あたりまえ会議」2019 ワニブックス


●胃カメラ続き。今回も鼻から。経験があるとはいえ、怖い。麻酔を選択するか聞かれたが、以前ナシでもできたからと断った。というか、その時は麻酔について言われなかったように思う。麻酔をすると、うとうとした状態で受けられるらしい。

リクライニングする椅子を案内され、腕には五分おきに自動計測する血圧計、人差し指には脈拍を常時計測するクリップ。横には、医療ドラマでよく目にするモニター。ピコーン、ピコーンと定期的に音がする。ここまでされるのは初めて。

よく見えるようにするためという薬(消泡剤?)を飲む。粘度のある点鼻薬を入れられ、喉まで流すように吸い込む。次に鼻に三回薬を噴射され、吸い込む。舌の上に薬を噴射される。喉や舌がしびれてくる。

次に、どちらの鼻の穴の方が通りが良いか聞かれるのだが、どちらも同じようなもの。迷っていたら、適当でいいと言われ、選ぶ。(hammer.mule)