[4955] 映画は長さを制限されるけれど◇Macの音声トラブルの犯人

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《犯人はお前か〜》

■日々の泡[027]
 映画は長さを制限されるけれど
 【白痴/ドストエフスキー】
 十河 進

■グラフィック薄氷大魔王[644]
 「Macの音声トラブルの犯人」「スキャンサイズの検証」
 吉井 宏
 



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■日々の泡[027]
映画は長さを制限されるけれど
【白痴/ドストエフスキー】

十河 進
http://bn.dgcr.com/archives/20200219110200.html
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少し前に「重厚長大な小説」という内容を書いたけれど、ほとんどの作品が重厚長大となると、フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーの名を挙げないわけにはいかない。1821年にロシアに生まれ、1881年に亡くなった19世紀を代表する作家である。

ドストエフスキーには五大長編というのがあり、書いた順番で言うと「罪と罰」(1866年)「白痴」(1868年)「悪霊」(1871年)「未成年」(1875年)「カラマーゾフの兄弟」(1880年)となる。最も長いのが「カラマーゾフの兄弟」だが、それ以外もかなり長い。

僕の記憶では、中学生に向けた世界文学の名作リストに載っていたドストエフスキー作品は「罪と罰」だったと思う。「罪と罰」はドストエフスキー作品の中で最も有名だった。ラスコーリニコフという主人公の名前は、読んでいなくても知っていた。

ただ、何だかおどろおどろしい感じがして、僕はドストエフスキー作品は敬遠していた。殺人の話ということもあったが、「重い」感じがして近寄りがたかったのだ。それに、ロシア名が長くややこしく、覚えにくかったのも敬遠する理由のひとつだった。

それでも本好きの人間としては、ドストエフスキーを読んでいないことが気になっていた。大学の文学部に入ると、さすがに文学青年がいっぱいいて、「ドストエフスキー、読んでないの!」と大きな声を出されたこともあり、「わかったよ。読んでやろうじゃねぇか」という気になった。

ということで、初めてドストエフスキー作品を読んだのは19歳のときだった。しかし、普通なら「罪と罰」あたりから入るところだろうが、僕はなぜか最初に「未成年」を買った。新潮文庫で分厚い上下巻だった。なぜ、僕は「未成年」を選んだのだろう。へそ曲がりだったのかもしれない。

まあ、そんなわけで「未成年」を読み出したところ、スイスイ読めた。負け惜しみでなく、本当におもしろかったのだ。「未成年」は、ドストエフスキー作品の中でも知名度が一番低い作品である。それが、これだけおもしろいのだからと、僕は続けて「白痴」を買った。

前述のように「罪と罰」は高利貸しのおばあさんを殺す話だし、「悪霊」は現実にロシアで起こった革命組織内の殺人事件をモデルにしているというし、「カラマーゾフの兄弟」は長すぎるし、ということで「白痴」に落ち着いたのである。

ちなみに、当時、若者たちに大人気で「苦悩教・教祖」と言われた小説家の高橋和巳は「日本の悪霊」という作品を書いていて、こちらは出てすぐに読んだ。革命組織と粛清(内ゲバ)がテーマであり、黒木和雄監督が佐藤慶を二役にして映画化(1970年)した。

さて、「白痴」は「未成年」以上におもしろかった。夢中で読んだ。ムイシュキン公爵の造形に魅了されたし、ラゴージンという副主人公の荒々しさが際立っていた。それに、何と言ってもヒロインが素晴らしかった。ナスターシャ・フィリッポブナの名は、半世紀たった今も忘れない。

「白痴」を読んだ数年後のことだろうか。僕はNHKの舞台中継で劇団四季の舞台「白痴」を見た。それで、よけいに印象に残っているのかもしれない。松橋登のムイシュキン、辻萬長のラゴージン、三田和代のナスターシャ・フィリッポブナだった。

今ではミュージカル劇団として有名な劇団四季だが、当時はジャン・ジロドウやジャン・アヌイなどの戯曲を公演する普通の劇団だった。看板役者の日下武史が三島由紀夫の「我が友ヒットラー」を演じたのもその頃だっただろうか。

ちなみに、劇団四季は「カラマーゾフの兄弟」も舞台化しており、カラマーゾフの怪物的な父親を日下武史が演じたと記憶している。浜畑賢吉がイヴァンか、アレクセイ・カラマーゾフを演じていた。彼は若手人気俳優だったのだ。他にもテレビドラマで人気の出た荻島真一が四季に所属していた。

僕はずっと「カラマーゾフの兄弟」(亡くなった内藤陳さんはヤクザの物語であるかのように「カラマーゾフのきょうでぇ」と言っていた)を読んでいないことに負い目を感じていたので、十年ほど前に一念発起して読破したけれど、実はよく理解できなかった。

結局、僕の中では最もオススメのドストエフスキー作品は「白痴」になる。何と言ってもナスターシャ・フィリッポブナが素晴らしい。文豪・石川淳も文芸誌のインタビューで「世界文学の最も印象的なヒロイン」として彼女を挙げていた。

このナスターシャ・フィリッポブナをスクリーンで演じたのは、原節子だった。黒澤明監督が松竹で撮った「白痴」は、昭和26年(1951年)5月23日に公開になった。僕が生まれる半年前のことだ。ここで、原節子は那須妙子の名でヒロインを演じた。

舞台は札幌に移している。ムイシュキン公爵は亀田欽司という名前になり、森雅之の姿をして白皙の美青年として登場する。ラゴージンは赤間伝吉となり、三船敏郎が演じた。ナスターシャだけ語呂合わせをして、男ふたりは適当に名付けたのだろうか。

長いドストエフスキー作品を忠実に再現したせいか、黒澤版「白痴」は4時間25分の作品として完成した。松竹首脳は長すぎるとしてカットを要求し、激高した黒澤明は、「切るのなら、タテに切れ」とキレたという。有名なエピソードだ。

結局、現在でも大幅にカットされた166分バージョンしか見ることはできない。僕が黒澤版「白痴」を見たのは遙かな昔のことになってしまったが、やはり3時間足らずのバージョンで、原作を読んでいても物語がわかりにくかった。

ものすごく簡単に要約すると、「白痴」は無垢で心優しいムイシュキン公爵と荒々しく激しい愛憎にとらわれるラゴージンが、高慢でミステリアスで魅力的なナスターシャ・フィリッポブナを愛してしまい、三角関係の中で破局を迎える物語である。

もし新聞記事になったら、痴情事件として片づけられてしまうだろう。それをドストエフスキーは長大な小説に仕上げた。それだけの文章を積み上げて書かれた物語は、人の心を打つものになった。ムイシュキンの無垢、ラゴージンの情熱、ナスターシャの魅惑、詳しい物語は忘れてしまったが、50年近くたった今も僕の心を捉えている。

ところで、9時間を超える小林正樹監督の「人間の條件」(1959年-61年)や、5時間を超えるベルナルド・ベルトルッチ監督の「1900年」(1976年)もあるのだから、4時間25分の「白痴」オリジナルバージョンが出てきてもいいのじゃないかと思うけれど、カットされたネガが残っていないのだろうなあ。70年近く昔のことだし----。


【そごう・すすむ】
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■グラフィック薄氷大魔王[644]
「Macの音声トラブルの犯人」「スキャンサイズの検証」

吉井 宏
http://bn.dgcr.com/archives/20200219110100.html
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わがっだ〜〜! 3時間もかかってようやく原因がわかった。

しばらく前から、MacProの音量を調整するとエンドレスにエコーがかかってしまう現象に悩まされてた。調整が即座に反映されず、数秒たってから効く症状もあった。

原因と思われたのは2つ。Catalinaにアップしたことと、不具合に気づく少し前にアンインストールしたアプリ(確証がないのでアプリ名は伏せる)。Macの音をサラウンド化したり、イコライザーかけられるやつなのだが、使い勝手が好みではなかったので削除した。

Trash2でアンインストールして、念のためMac内を検索して関係ありそうなものも全削除、したと思ってたのだが、カーネルの「.kext」を削除しなくちゃいけないらしい。

通常、Library/Extensions/の下にあるはずなのだが、StagedExtensions/の下にある。「システムが使うので移動できません」のやつだったので厄介。調べた上でターミナルでやってみたが、どうやってもできない(SIPを無効化しないといじれないらしいと後で聞いた)。

う〜ん、そのアプリを削除したのが原因なら、再インストールしちゃえば大丈夫になるのでは? と。同アプリを入れたままのMacBook Pro13では、エコーがかかる不具合は出てないから。

再インストールしてみても、エコーがかかる不具合は解消されなかった。またアンインストール。なんだよ、もう!

……じゃあ、Macの音量を調整するんじゃなく、アナログのボリュームつまみを使えばエコー症状から解放されるぞ! と思って、USBスピーカーをはずして音量つまみをイヤホンジャックと接続。

音量つまみ
http://www.yoshii.com/dgcr/volume-IMG_2486.jpg

スピーカーやイヤホンを繋いでMacの音量を調整してみると、あれ? エコーがかからないし、ボリューム調整が正常に動く?? おかしいな。いろいろ接続しなおす前の状態に戻してみると、やはりエコーはかかる。……あ! USBスピーカーだ!!

試しに、MBP13にUSBスピーカーを繋いでボリュームをいじってみると、エコーがかかった〜〜! 犯人はお前か〜。

選択されてるかどうかにかかわらず、USBスピーカーを接続した状態でボリュームをいじると、エコーがかかると判明(USBスピーカーのマイクが音を拾うのかとも思ったけど、マイク非搭載)。USBスピーカーは一組しか持ってないので、他のUSBスピーカーで検証できないのが残念。

あ〜疲れた。結局、アプリが関係してるかどうかは不明のままだが、USBスピーカーは使用停止。やっぱスピーカー付きのディスプレイがいいなあ。机の上がすっきりするし。

●スキャンサイズの正確さを検証してみた

ScanSnapとフラットベッドスキャナで、同じものをスキャン。重ねてみると、ずいぶん比率が違うような気がする。ScanSnapは最新型のiX1500だけど、EPSONスキャナGT-X820がもう8年選手。買い替えかな?

念のため、両方でスキャン画像の比率を確認してみた。グリッド用紙に15cmの正方形を書いて、いつものやり方でスキャン。

GT-X820では300dpi、ScanSnapではエクセレント(600dpi)でスキャンしてボカしをかけ、300dpiに縮小(モアレを軽減するため)。それぞれ2回やって重ねた。
http://www.yoshii.com/dgcr/scantest20200130.jpg

結果、GT-X820は15cm x 15.01cmとごくわずかの誤差。ScanSnapエクセレントモードでも15cm×15.05cmの誤差。
青いグリッドも4枚重なってるけどズレはほとんどない。

これならどちらも実用上は問題なく、重ねて確認しでもしない限りわからない。GT-X820はもうしばらく使おう。っていうか、各社、フラットベッドスキャナの新製品が出なくなっちゃったんだよw 

ちなみに、正方形の下にはみ出てる赤い線は、ScanSnapのスーパーファイン(300dpi)のスキャン結果を赤くしたもの。15cm×15.12cmと、誤差は若干大きい。でも、輪転機みたいな速さでビュンビュン読み込まれて、この誤差ならぜんぜんいいや。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/

EPSONのスキャナ画像をPhotoshopで開くとき、カラープロファイルがついてないので、今まで画面プロファイルで開いてたけど派手になりがちで、彩度下げるなど調整してた。EPSON sRGBを指定して開いたら違和感ない色になった。知らんかった!

ところで、HDD全滅がトラウマっぽくなってて、外付けHDDをつけ外しするのが怖くてしょうがないw ディスクコピー507枚分のデータ整理をしたいのに〜。

○吉井宏デザインのスワロフスキー

・三猿 Three Wise Monkeys
https://bit.ly/2LYOX8X

・幸運の象 LUCKY ELEPHANTS
https://bit.ly/30RQrqV

・SCS ペンギンの赤ちゃん PICCO
https://bit.ly/2JStbC4


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編集後記(02/19)

●偏屈BOOK案内:八幡和郎「ありがとう、『反日国家』韓国」

サブタイトルは、「文在寅は日本にとって“最高の大統領”である!」。どういうこっちゃ? 正気か? 筆者は本気でそう思っている。「まず、韓国内において、もし日本の立憲民主党の主張するような衆愚政策を経済で行ったらどうなるかの実演をして、その失敗例を私たち日本人に教えてくれています」。

文在寅政権は、前政権関係者や野党政治家には嫌がらせの限りをつくし、官僚人事も政治運用するなど、まさに恐怖政治そのもの。マスコミとも対立している。歴史教科書の書き換えもひどいものだ。北朝鮮に対してひたすら融和策に徹するも、米朝両国から「仲介者でもないのに余計なことをいうな」といわれ、中国には尽くせば尽くすほどバカにされ、在日韓国人も文句たらたらである。

文在寅は枝野幸男をもう少し善良だが間抜けにしたようなもの、というのが筆者の見立てである。5年間の大統領任期をいかに乗り切るかという以上に、任期後の1期、2期で政権が保守に戻った時に(歴代大統領は必ず悲惨な末路を辿っている)反撃されないよう万全の体制を構築中である。政界はもちろん、官界、司法界、マスコミなどで、保守派を根こそぎ粛清しようとしている。

そればかりか、「積弊の清算」と称して他国との条約や契約など、すべての積み重ねを破壊しようとしている。日韓関係は「戦後最悪」と評されるほどに溝が深まっている。性格的に問題があるのではないかというくらいの反日姿勢だが、一方で実は本人も家族も日本文化の愛好者であるようだ。長女一家はシンガポールに移住している。将来の暗黒に怯えて、韓国に見切りをつけたらしい。

筆者は韓国への対抗措置として、5つの具体的方策を提案する。1)日本人が半島に残した個人財産への補償を要求 2)対北朝鮮経済協力の拒否/統一時も含む 3)三代目以降に特別永住者の地位を認めないこと 4)歴史教科書における近隣国条項を韓国に限って撤回 5)韓国大衆文化の流入制限(韓国と同等の制限を、ということ) これらは韓国が本当に困ることである。やってみなはれ。

韓国では「東京五輪をボイコットするべきだ」という声も強まっている。友好的に参加するなら歓迎だが、もったいをつけるなら、何も無理して参加してくれなくていいし、妙なパフォーマンスや妨害をする目的なら来ないでほしい。しかし残念だが、必ず来るだろう。いま韓国人観光客の減少で本当に困っているのはコリアン社会だけで、日本経済全体に影響を与えるほどでの話ではない。

「日帝残滓」を糾弾するなら、国旗・国歌も変えたらいい。近代的な学校制度を作り、各地に学校を建てたのも朝鮮総督府だから伝統ある殆どの学校は「日帝残滓」だ。京城帝国大学の伝統を受け継ぐソウル大学も廃校にするのが筋であろう。書き言葉としての漢字ハングル交じり文を創ったのも日本人だ。「日帝残滓」だらけだ。朝日新聞の社旗にクレームをつけないのは不思議だ。

「歴史について極端に執拗で恨みを膨らませていく韓国人と、良いことにも悪いことにも忘れっぽい日本人とは好対照です。本書は、お人好しの日本人のために、日韓で何が議論され、日本側がいかに譲歩して現在の関係があるかを理解してもらうために書きました」とまとめる。食傷気味ではあるが。(柴田)

八幡和郎「ありがとう、『反日国家』韓国」2019 ワニブックス
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847098536/dgcrcom-22/


●病院の待合室。雑誌や絵本が多いのだが、川柳本が置いているところがあった。いつ自分の番が来ても、すぐに立てるからいいね。

「シルバー川柳」は9巻まで出ていて、1は2012年9月発売、最新巻は2019年9月発売。綾小路きみまろ的な毒舌川柳ばかり。文字が大きくて読みやすいよ(笑)。

「誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ」
「恋かなと 思っていたら 不整脈」
「万歩計 半分以上 探しもの」
「LED 使い切るまで 無い寿命」

「『アーンして』 むかしラブラブ いま介護」
「来世も 一緒になろうと 犬に言い」
「あの世より 近い気がする 宇宙行き」
「確かめる むかし愛情 いま寝息」

「断捨離で うっかり夫 捨てそうに」
「寝坊して 雨戸開ければ 人だかり」
「書き込んだ 予定はすべて 診察日」
「ブログより コンロ炎上 気をつける」

「社団法人全国有料老人ホーム協会が主催し、毎年1万を越える応募作のなかから、敬老の日にあたり、ユニークな作品が選ばれてきました」とのこと。(hammer.mule)

シルバー川柳
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