クリエイター手抜きプロジェクト[631]InDesign 紆余曲折だったInDesign自動化本
── 古籏一浩 ──

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今回は、8月28日に発売された、InDesign自動化サンプルプログラム本が出版されるまでの経緯について。

・InDesign自動化サンプルプログラム
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844379070/dgcrcom-22/


InDesign、Illustrator、Photoshop、AfterEffectsなど、主要なAdobeアプリケーションの自動化本を、ようやく出すことができました。ただ、すんなりとこれらが出版できたわけではありませんでした。

最初のIllustrator 10自動化本は毎日コミュニケーションズ(現在はマイナビ)、次のInDesign自動化本は技術評論社、そしてPhotoshopやAfterEffectsなどはインプレスR&Dから出版されています。





元々の企画は2002年頃でした。Illustrator 10になりJavaScriptを使って制御できるようになったからです(リリースは2001年)。

2003年にはPhotoshop 7にプラグインをインストールすると、JavaScriptで制御できるようになりました。同じ年にAfterEffects 6.0も、JavaScriptを使って制御できるようになりました。2003年以降、自動処理できるAdobeアプリケーションが増えたのです。

DreamweaverやFireworksなど、マクロメディア系のアプリケーションも同様に制御できます。ちなみに、マクロメディア系のスクリプトエンジンの方が、高速で性能がいいです。

そこで、AdobeアプリケーションをJavaScriptを使って自動制御するための、本の企画を考えたわけです。企画段階では、Illustrator、Photoshop、AfterEffectsの3つでしたが、やがてInDesignやAcrobatなどにも展開という感じで考えていました。

最初のIllustrator10自動化本は、予定通りに出版することができました。

・Illustrator10 自動化作戦 with JavaScript
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4839913544/dgcrcom-22/


ところがこの後、自動化本の企画が出版社側の都合により、なくなってしまいました。9.11テロの余波による経済関係のダメージが、遅れてやってきたのだと思いますが、ともかく企画は消え去りました。

2年後くらいには中国の影響か、全体的に景気がよくなって出版社側も持ち直したのですが、自動化本の企画が復活することはありませんでした。

ただ、自動化処理は必ず役に立ち、必要になるはずです。結局、あきらめるのも何なので、今度は技術評論社に話を持っていきました。一番需要がありそうな、InDesignをターゲットにしました。

2008年になって、ようやく出版できたのが「組版時間を半減する! InDesign自動処理実例集」です。この時は印刷会社と連携して作成しました。

・組版時間を半減する! InDesign自動処理実例集
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4774136875/dgcrcom-22/


ようやく出版できたものの、後が続きません。自動処理は予想以上にマイナーな世界、ニッチな世界でした。そうこうしているうちに、Adobeのアプリケーション群の多くが、JavaScriptを使って制御できるようになっていました。

出版社では駄目なら、自分でPDFにして出すという方向を考えました(2010年)。せっかくの自動化本なので、InDesignでテキストを読み込んで、全自動でレイアウトするという方法を使って生成しました(こういうのはマシンパワーに大きく依存するので、速いマシンでないとつらいところがあります)。

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/

(現在はネットでの購入はできなくなっています)

自動レイアウトとはいえ、他の複数の仕事をしつつ本を書くというのはけっこう大変で、Photoshopなど途中で挫折。

そうこうしているうちに時代が流れ、マイナーな本でも出せるようになりました。そう、電子書籍です。Kindleなど電子書籍の普及により、自動化本を復活させることが可能になったわけです。ありがたや電子書籍といったところです。

今度は順番に書けるだろうということで、需要のあるものから出していくことにしました。この段階でどのようなアプリケーションの本を出すかは、おおよそ決まっていました。InDesignに関しては桁違いの量だと、前々から分かっていたので最後にすることにしました。

こうして2013年に出版されたのが、以下の本です。電子書籍の制限により、一般書籍のようなレイアウトができないため、読みやすさに関してはあまりよくありません。他にもシステムの制限で、脚注などを書くことができません。

そのため、注意事項も全部本文中に書かないといけません。つまり、本筋を書いて枝葉となる部分を欄外に書く、ということができません。

・Adobe JavaScriptリファレンス
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844395955/dgcrcom-22/


そして、次に出版されたのが以下の本です(2014年)。ESTKは現在開発終了しているので、VSCodeを使って開発することになります。が、完全にESTKの代替にはならないので、デバッグ時には必要になることもあります。

この本だけ、なぜか判型が違うのですが、出版社側もどうしてこれだけ判型が違うのか忘れてしまってるようで。他と同じサイズなら本棚に並べた時にきれいになるのですが。もしかして、ページ数が少ないので判型を小さくして、本を厚くみせようという狙いだったのかもしれません。

・ExtendScript Toolkit(ESTK)基本編
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844396137/dgcrcom-22/


そして、三度目となるIllustratorの自動化本が、2015年に出版されました。この段階で最新技術のCEPを使ったパネルとか、掲載できればよかったのかもしれませんが、残念ながらそこまでの技術(&情報)がありませんでした。

今ならもっと使い易くできるものもあります。Illustratorは自動化スクリプト作って公開したり、販売したりしている人がたくさんいますので、検索して探してみるとよいかもしれません。

・Illustrator自動化基本編
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844396498/dgcrcom-22/


同じ2015年に、Photoshopの自動化本も出版されました。Photoshopに関しては、元々途中まで原稿を書いてあったので、早く出版することができました。

・Photoshop自動化基本編
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844396676/dgcrcom-22/


次に出版したのが、2016年のプレミア&メディアエンコーダーです。が、実はプレミアとメディアエンコーダーは資料がまったくなく、ほとんど独自解析しています。プログラマ的な勘どころというか、そんな感じなので実際のところ不具合を突っ込まれても、回答しにくいというのはあります。

・Premiere Pro & Media Encoder自動化サンプル集
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844397443/dgcrcom-22/


その次に出版したのが、AfterEffectsです(2017年)。これは共著になっています。より多くのサンプルと情報を入れようとしたところ、一冊では入り切らず二冊に。実際には付録が収まらず、ダウンロードデータ内に収録できなかったものを含めています。

実は最初に出したバージョンは、アマゾンでのオンデマンド印刷にすると画像がかなり黒くなってしまって、読めないということがありました。アマゾン以外では問題ないのですが、これに対処するために図版をPNG形式から全部JPEG形式に変換することになりました。

ここらへんはバッチ処理ですぐに終わりますが、未だに原因は不明です。販売後二か月目以降のものであれば、図版は黒くならずに印刷されます。

・After Effects自動化サンプルプログラム
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B06XXVP69W/dgcrcom-22/

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B06XXH2JC3/dgcrcom-22/


After Effectsでも一冊に入らないので、この段階でInDesignは膨大だから一冊にするのは無理だろうなとは思っていました。まず、得意な部分としてリファレンス部分から書き始めました。

他にいくつか仕事を抱えている場合、リファレンスは作りやすいからです。というのも、ひとつの命令についてだけ書けば、よく手短にできるからです。あとは地道に積み重ねるだけです。

ところが、InDesignは他のアプリケーションと違って、機能の数が桁違いです。以下にInDesignのオブジェクト等をまとめたサイトがありますので、見てもらえばわかると思います。とにかく膨大です。

・InDesign DOM CS5-2020
http://indesign.cs5.xyz/dom/domtree.html


書き始めたものの膨大ゆえに、なかなか終わらず出版社側から催促が来てしまうという状態に。そこで、当初一冊だった本を三冊に分割して出版するということになりました。こうして2019年に、後半のリファレンス部分だけ先に出版されました。

・InDesign自動化サンプルプログラム逆引きリファレンス
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844396846/dgcrcom-22/

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844396854/dgcrcom-22/


後は本の前半部分を書けば、InDesign自動化本の完成です。残ってるのはデザイナー&出版社&編集者から募った、リクエストサンプルです。これは2018年頃にはすでにできていました。

ただ、実際に書いてみると結構ページ数に余裕があるようでした。当初の予定では300ページ弱で収まるはずでした。でも、せっかくページ数に余裕があるなら、限界まで書かないと損(?)みたいな感じがしたので(こういう本は二度と出せないので)やれるだけやることにしました。サンプルの追加と付録の追加です。

まず、その項目内での最初のサンプルスクリプト以外の図版は無しにしました。これでページ数を節約できます。また、似たようなパターンのスクリプトは、最初だけ掲載しておいて、残りはダウンロードデータに含めることにしました。

編集側には図版をひとつにまとめてもらったり、無理矢理横に並べてもらったりと、いろいろ処理してもらいました。

ページ数の限界まで…といきたいところですが、今後のInDesignのバージョンアップによる不具合や修正点などを加筆するために、若干ページ数に余裕を持たせています。

とはいえ、結局全部は入らなかったので、収録できなかった付録6〜16はダウ
ンロードデータに含めることにしました。

こうして、ほぼ20年がかりでどうにかこうにか、自動化本を出版することができました。一応当初の目的は達成したことになります。ただ、これはAdobeアプリケーションを自動化するための最低ラインの本であって、本当はこれを土台(か踏み台)にして、新たなる自動処理の本などが出てくるのがベストだと思っています。

もう本人が高齢化してるので、次の世代にバトンタッチといったところです。

・InDesign自動化サンプルプログラム
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844379070/dgcrcom-22/



【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/


Acrobat(PDF)のJavaScriptは、どうしたの? という声が聞こえてきそうですが、さりげなくオライリーの本の一部書いてたりします。本に名前は掲載されていませんが。というか、InDesignよりも面倒臭いのがAcrobatなのと、自動制御がセキュリティの都合もあって難しいので、気が向いたらデジクリに書くといった感じで…(逃げ^^;)

・創って学ぼうプログラミング
https://news.mynavi.jp/series/makeprogram


・8K/4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/


・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/