[0002] PDFを駆使したオンラインマガジン「月刊アイピーネット」の反省

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0002 1998/04/14発行
  <http://www.towers-inc.com/mag/daily/>
  情報提供はこちらまで 
  登録・変更<http://www.towers-inc.com/mag/daily/regist.html>
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●本日のコラム『PDFを駆使したオンラインマガジン
 「月刊アイピーネット」の反省』火曜日担当:柴田忠男
●創刊オメデトウメッセージ
 ・株式会社インプレス/井芹昌信さん
 ・有限会社アゴスト/広瀬一郎さん
 ・大日本スクリーン製造株式会社/郡司秀明さん
●JPC(Japan Publishing Consortium)定例セミナーのお知らせ
●本日のTIPS/3Dアプリケーション編




【日刊・デジタルクリエイターズ】火曜日のコラム
 月曜日担当:柴田忠男「月刊アイピーネット」編集長

『PDFを駆使したオンラインマガジン「月刊アイピーネット」の反省』 

私は「アイピーネット」という、日本で初めての<PDFオンラインマガジン>
を、昨年9月に大阪のアイピーネットシステムから創刊しました。アイピー
ネットは、特定のスポンサーがいるわけではなく、印刷会社が始めた新しいビ
ジネスなんです。残念ながら、現在はちょっとお休み中ですが、その間も日替
わりで表紙を変更し、アーチストのギャラリーの機能を持たせています。これ
は、とてもグッドなアイデアで、毎朝見に行くのが楽しみです。記事も少しづ
つ更新しています。

アイピーネットが昨年12月で休刊した理由は、経済的に続かなくなったからで
す。オンラインマガジンで成功した例はない、ということを承知の上で始めた
ことですが、お金を集めるシステムがうまく機能しなかったのです。

オンラインマガジンの成功の鍵は、コンテンツがよいことと、集金のシステム
がしっかりしていること、この2点です。コンテンツがよいことは、編集者に
とって当たり前のことで、とくに言うことはありません。お金を集めるシステ
ムを最初から作っておかない限りは、なかなかうまく行きません。われわれ
は、コンテンツ制作に注力しつつ、そのうちお金を作る仕組みを考えよう、と
やっているうちに休刊になってしまったのです。

うまく行かなかった理由は3つ考えられます。まず、致命的に宣伝不足でし
た。紙、オンラインをフルに使って、こういうサイトがある、ということを告
知しない限り、なかなか見てもらえるものではない。これは大きな反省点で
す。
それから、データベースを整備して、そこから顧客を引き寄せる予定でした
が、肝心のデータベースまで手が回らなかった。私は編集者出身なので、「コ
ンテンツさえしっかりしていればよい」という考えでした。今から考えるとト
ンデモな間違いでありました。コンテンツを優先して、毎月1日の更新に力を
入れすぎ、お金を集めるデータベースの管理がうまく行かなかった。これはク
レージーな間違いでした。

それから、課金のシステムを最初に考えていなかった。最終的には、年間会費
という形でスタートしようとしましたが、もし途中で失敗した場合、返金が必
要になります。これらのことを考えて、昨年末に休刊の決断を行なったわけで
す。

このような反省点とは別の問題もあります。それは、出版事情が非常によくな
いということ。もはや出版においては、志とか文化とか言っている場合ではな
く、「売れたものが正義だ。売れないものはバカだ」という身も蓋もないのが
現状なんです。編集畑の人間としては情けない限りです。

私たちの目指したものは、業界がどうなるかなど、志、文化の面からの、我な
がら優れたコンテンツでした。今考えると、それは少し自己満足であったのか
な、と言う気もします。でも残念ながら、志、文化、今後どうなるか、などの
ことに誰もお金を払わない時代なのではないでしょうか。

そういう本が紙で出ても、最近は売れないようです。オンラインになると、プ
ロバイダ利用料、電話代がかかる上に、操作も面倒であり、見にくい。そうい
うわけでますますお金を払ってまで、本を買おうと思わない。ひるがえって考
えると、私自身もオンラインでお金を払う気にはなれない。ということは、コ
ンテンツでお金を取るのは、非常に難しいことではないかとというのが今の結
論です。

紙の出版でも、現在は非常に厳しい状態にあります。現状でこれをオンライン
で行なうには、勇気と覚悟と忍耐力がなければできないでしょう。私たちも最
初から紙での出版を考えていたので、そこで何とか採算が合うのではないかと
希望を持って始めたのでしたが、紙に行き着く前に力が尽きたという感じで
す。でも、4カ月の苦闘は無駄にはなっていません。すごくいい仕組を考えて
います。それは、またお話ししましょう。

読者諸君、毎日<月刊アイピーネット>に来てください。ツジムラノブヒロさ
んの素敵なイラストに会えます。
http://ip-net.ieps.co.jp/

【プロフィール】
柴田忠男/しばた・ただお
オンラインマガジン「月刊アイピーネット」編集長。1946年生まれ。明治学
院大学レタリング研究会および自転車部卒業、専攻は「犯罪社会学」。
小学校教員(臨時)、通信教育団体職員を経て、日本万国博覧会の年に株式会
社玄光社入社。「小型映画」「コマーシャル・フォト」「イラストレーショ
ン」編集部などを経て、「SUPERDESIGNING」を創刊、編集長。1996年7月
31日、退職。約26年の会社員編集者時代を終えて以降はフリーの編集者、ラ
イター。1996年6月より約1年間、実験的なオンラインマガジン「WONDER-
J」編集長。「日経デザイン」その他で執筆。
JPC(Japan Publishing Consortium)副理事長。「ディジタル・イメー
ジ」運営委員。「日本語の文字と組版を考える会」世話人。
Seybold SeminarsTokyo トラック・リーダー。
日本デジタルアートコンテスト審査員。

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■祝・創刊メッセージ
【日刊・デジタルクリエイターズ】創刊に際して、多くの方々よりお祝い・
激励のメッセージを数多く頂いております。ありがとうございます!
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●株式会社インプレス 取締役編集人 /井芹昌信
(インターネットマガジン/INTERNET Watch創刊編集長
現在 Internet Business Project プロデューサー)

私見ですが、
パソコンの登場は「プロ」と「アマ」の差を曖昧にしたと思っており、イン
ターネットは「組織」と「個人」の差を曖昧にすると思っています。

もし、「デジタルクリエーター」のことをインターネットやパソコンを駆使し
てモノ作りをする人だとするなら、その活動範囲は従来の「ライター」、
「フォトグラファー」、「グラフィックデザイナー」などに比べ、極めて曖昧
で広範囲な領域に及ぶことになるでしょう。それは、企画であり、原稿書きで
あり、デザインであり、営業にまで及ぶかも知れません。

極端な言い方をすれば、デジタルの力を借りることで、たった一人でも企画か
ら販売に至るまでできてしまうということです。そんな時代のクリエーターに
は、本当の意味での「モノ作り」の心が問われてくると思うのです。それは決
して、Photoshop5.0の機能を知り尽くすことではないでしょう。それは、一
太郎の達人だから芥川賞をとれるわけではないのと同じです。

つまりは、自分が作りたいモノを作り、それを見てもらいたければ公開し、そ
れで生活したければ売る、それだけだと思うのです。最初に言った「プロ・ア
マ」の差は、それを「生業にするか・しないか」であり、「組織・個人」の差
は、今後どんどん「大・小」の差に近づいていくと思うのです。

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●有限会社アゴスト代表/広瀬一郎

デジタルクリエイターに期待したいのは「オリジナリティ」です。各人の得意
ワザを駆使した、いままで見たことがなかった新しいイメージを見たい。それ
が、見たくて私も6年前から「STEP-BY-STEP」という雑誌をやっているわけ
です。

ひろせいちろう。
月刊誌「STEP-BY-STEPアート&デザイン」編集長兼発行人。
(有)アゴスト代表。<http://www.agosto.com/>でクリエイター向け使用
権つきコンテンツ(写真・イラスト・フォント)の通販をやっています。買っ
てね!

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●大日本スクリーン製造株式会社 グラフィック・アーツ事業本部
 マーケティング部  マーケティンググループ/ 郡司秀明

懲りない柴田おじさんが、懲りない部活を始めるというので、懲りないマター
が関西ノリでつっこみを入れようと思いましたが、真面目なコメントをさせて
いただきます。すんまへん。
かつてのアナログやCEPS時代、コミュニケーションはメッセンジャーのごと
き営業マンだけに委ねられてきました。結果、クリエイターは印刷所の技量を
疑い、一人でブツブツ言っていた時代がありました。印刷所(製版側)は「何
にも分からないデザイナーが・・・ぶつぶつ」という具合だったと思います。
それがデジタルになりクリエイターがサービスビューローを訪ねる時代になる
と、直接スキャナオペレーターやPostScript出力のエキスパートと話ができ
るようになりました。レストランを例にとれば、CEPSとは厨房が遠くにある
ホテルの巨大レストランのごときものでした。
それがDTP時代になり、実際の板前と話しながら、料理を作るのを見ながら食
事を楽しむことが出来るようになったわけです。このメールマガジンが、名板
前のようなコミュニケーション手段になってくれることを心から願っておりま
す。できれば梅田の地下街のような、ペーソス溢れるものにしていただければ
個人的にはうれしいのですが?
具体的にはクリエイターの方に印刷までの知識が伝わればと思います。印画紙
とかフィルムとか、中間生成物ではない完成品に関した知識が必用とされる時
代になりつつあります。ビデオに精通した神田さんもいらっしゃるので、ワン
ソースマルチユースに一歩でも近づきたいものです。応援しますよ。ふれーふ
れータイガース?!ほんわかほんわか・・・
激励文以上

私の経歴は?
歩く広告塔、歩くセクシャルハラスメント、懲りないヤツ、デジタル夢追い
人、カフェのマスターいろいろありますが、最近の表面ヅラは「まーけてぃん
ぐを主たる業務にする真面目なサラリーマン」どす。しかしてその実体は「清
らかな少女の心を大切にするフェミニスト」であります。


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■イベント告知

「JPC(Japan Publishing Consortium)定例セミナー」

■日時:平成10年4月15日(水)13:00受付開始 13:30~17:00
■場所:東京オペラシティタワー48階アップルコンピュータ本社セミナールー
ム(新宿区初台)
■参加費:JPC会員¥5,000 JPC団体会員¥7,000 非会員¥10,000
■テーマ:「Seybold Seminars N.Y.98速報&飛躍するオンラインパブリッ
シングの需要」

●第1部
「Seybold Seminars N.Y./Publishing98速報」(13:30~14:15)
プレゼンター:日本コダック株式会社 プロフェッショナル事業部 営業二部 デ
ジタル営業二課 主任/三邊眞吾
:株式会社エムディエヌコーポレーション 取締役編集人/藤岡功

「飛躍するオンラインパブリッシングの需要」(14:15~15:00)
プレゼンター:株式会社電通 総合デジタルセンター デジタルビジネス開発室
デジタル開発3部 主務/内山 光司

●第2部
「プロ向けHTMLエディタのユーザによる評価」
・NetObject Fusion編(15:20~16:00)
プレゼンター:株式会社ミディシティ チーフデザイナー/青木 誠、ITエンジニ
ア/ポール・チャヴェズ・Macromedia Dreamweaver編(16:00~16:
30)
プレゼンター:株式会社キノトロープ プロデューサー/伊藤 幸治・GoLive
CyberStudio編(16:30~17:00)
プレゼンター:株式会社ソフトウェア・トゥー 米国事務所 技術リエゾン/ジョ
エル・イングルスルッド

■情報交換会-オンラインパブリッシング(17:10~18:40)
テーマ:ツール(HTMLのハンドリングについて)
進行役:株式会社電通/内山 光司、マクロメディア株式会社/坂口城治
参加費:会員無料 非会員¥2,000

※お問い合わせ、お申し込みは、JPC事務局まで
JPC事務局 堀口 健
〒102-0073 東京都千代田区九段北4-1-3
日本ビルディング九段別館8F MdN内
TEL 03-5275-8998 FAX 03-5275-2933 携帯 020-20-20107
URL <http://www.MdN.co.jp/JPC/> E-mail


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■本日のTIPS/3Dアプリケーション編
 【日刊・デジタルクリエイターズ】では毎日クリエイティブ関連のアプリケ
 ーションのTIPSを掲載していきます。
 TIPSの難易度は、5段階で★印を文末に付けています。
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●StrataVision3D Ver.5.0編/「メタリック、透明度の表現」

テクスチャーパレットから金属やガラスなどの設定を行っただけでレンダリン
グを行っても、それらしい質感が出ないことがあります。これらの素材は周辺
の写り込みがないと、それらしく見えないからです。そんな場合、[レンダリ
ング]→[環境効果]で[映り込み]で好みの映り込み設定を行います。擬似
的な映り込みが適用されますのでよりリアルになります。
なおガラスの質感はもう少し細かな設定をします。(レイトレーシングのレン
ダリング時)[レンダリング]→[レンダリング設定]でレイトレースを選択
し、その下の[エキスパート]内の[反復反射数]の数値を2~3あたりに設定
します。数値が大きいとレンダリング時間がかかります。
このダイアログボックス内の設定次第でレンダリング画質やレンダリング時間
に変化をつけることができますので、参考例以外にもいろいろ試して下さい。
★★★(W by 松岡アキラ)

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【日刊・デジタルクリエイターズ】では、このようなグラフィックアプリケー
ションのTIPS・講座を毎日掲載していきます。もちろんWEBページとも連動
して、制作に役立つ情報を立体的に構成していきたいと考えています。


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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0002 1998/04/14発行
発行社  タワーズ株式会社
     <http://www.towers-inc.com/>
     大阪市中央区高麗橋1-5-6 東洋ビル3F
     TEL:06-231-1011 FAX:06-231-0838

編集長  森川眞行 
     柴田忠男 
     神田敏晶 

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許可無く転載することを禁じます。
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