[0008] このごろのセミナーですっかり芸人気分

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0008 1998/04/21発行
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●本日のコラム『このごろのセミナーですっかり芸人気分』
 火曜日担当:柴田忠男

●本日のニュース
 ・「漢字が危ない」の人たちが危ない(笑)
●創刊オメデトウメッセージ
 ・日経デザイン編集長/ 勝尾岳彦さん
 ・早川廣行さん
●第3回DCPメインビジュアル募集のお知らせ
●本日のTIPS/3Dアプリケーション編




【日刊・デジタルクリエイターズ】火曜日のコラム
 火曜日担当:柴田忠男「月刊アイピーネット」編集長

「このごろのセミナーですっかり芸人気分」

 3月の初めに、リクルートコンピュータパブリシングの主催で、出版社の
トップ向きのセミナー「デジタル化がもたらす出版社経営の転機」が行われ、
250名以上のエライさんを集めた。わたしもスピーカーの一人だった。同社が
なぜこういうイベントをしたのかというと、結局は仕事獲得が目的である。私
に与えられたお題は「電子メディアの可能性」だったが、ちゃんとクライアン
トの目的を把握しているから、電子出版の話を少々して、あとは「アウトソー
シングしろ」という内容にした。言外で「リクルートへ頼みなさい」との含み
がある。芸が細かい(段々芸人のようになってきた)。
 まず、出版社がDTPを導入しない、デジタル化ができない理由を具体的に述
べた。このネタはもう4年くらい使い回している。ということは、出版社のデ
ジタル化はあんまり進んでいないことを意味する。(その内容は、もうここで
書いてもしょうがないほど陳腐)
 「なまけものが多い編集者でDTPに本気で取り組む人が多くいるとは思えま
せん。無理難題を印刷会社に後工程に送り、『入れたが勝ち』なんて威張って
いる編集者が、みずからの負担が劇的に増えるDTPを金輪際やるはずがありま
せん。社内で本格的にDTPをやろうとしたら、経営トップの決断と強力なリー
ドが必要です。デジタル化についていけないアナログ社員はリストラです。そ
うして優秀な編集者は去って、パソコンを使えるだけの編集の素人だけが残っ
たりします」
 (相変わらずの編集者バカ論を展開。ややうけ)
 「ではどうしたらいいのか。いま申し上げた困難を乗り越えてDTP化する出
版社は立派です。本来DTPは情報発信者のものですから、それがあるべき姿で
す。しかし、導入できないところはできません。そのまま立ち枯れていくので
しょうか?」
 (一呼吸おく。芸が細かい)
 「デジタルに対して無関心であったり、見て見ぬふりをしているようでは未
来はありません。早急に勉強して、DTP的なものの考え方を身に付けてくださ
い。本当にデジタル化してしまう、あるいはデジタルの考え方を身につける、
それで初めてワンソースマルチユースとか、コンテンツビジネスとか言えるよ
うになります。絵に描いた餅ではなくなります。お金をかけずに、コストダウ
ンをはかることが可能です」
 「ともかくデジタルのワークフローを身につけることです。そのことはとり
もなおさず、デザイン、製版、印刷の工程の再認識ということになります。そ
していままで外に丸投げしていた仕事を、工程ごとに把握するようになり、コ
スト意識が身につきます。つまり、どうすれば無駄なお金を使い、どうすれば
コストダウンが図れるのか、DTPのワークフローを検証することで明確に出て
くるはずです。同時に、無駄な金をかけた責任者を明確にすることができま
す」
 (ここで、A4の雑誌のカラーページ見開きで校正時に直しが発生したとき
の、データの修正とフィルムの再出力のコストを計算。たとえばリクルートコ
ンピュータパブリシングでは~とふるのは忘れない)
 「色校正で赤字を入れざるを得なかった編集者は、その再出力分の責任をと
らせるべきです。なぜなら、DTPは入稿するまでに完全データを作れるシステ
ムだからです」
 (ややうけ)
 「結局コストが問題になるのは、初校後のデータの修正、フィルムの再出
力、再校に絞られます。これらは、しっかりやればゼロにすることも可能で
す」
 (ややうけ)
 「こうすれば、編集者同士、対デザイナー、対印刷会社とのコミュニケー
ションは密になり間違いのない仕事ができるようになります。つまり、従来丸
投げであった仕事に、もっと積極的に関われということです。編集者の能力も
はっきり出てしまうのがおそろしいところです。リストラ対象者があぶりだせ
ます」
 (かなりうけ)
 「ワークフローを身につけて、あとはデザイン、製版、印刷の専門家たちに
任せます。自らを中途半端にデジタル化すると痛い目にあいます。いまや、デ
ザイン、製版、印刷はほぼデジタル化を達成しています。そういう専門家をう
まくコントロールしていけば、たしかに安く、早く、うまい成果物が得られる
はずです」
 (ここで、松下電工のちょっとショックな発注システムの例を持ち出して解
説)
 「新しい方法論を取り入れていくときに、一番の阻害要因はいままでの出版
社と印刷会社のもたれあいです。癒着といってもいい。いままで構築された人
的なもたれあいをいかに解消するかがむずかしいものです。逆に言うと、そう
いう関係のない新規の構築の方が楽です。出版社もコストダウンや品質の向上
を目指すのでしたら、印刷会社との人間関係の増改築をするよりも新築をされ
たらどうでしょうか」
 (オイオイ、ネタはばれていないか? 今までの印刷屋と手を切ってリク
ルートコンピュータパブリシングをパートナーにしたら、と暗に提案)
 実は、ホテルの会場でスポットライトがガーンとあたった瞬間、用意してい
たシナリオはガラガラと崩れて、手当たり次第の話となってしまい、本人の採
点は55点。それでも3人のスピーカーの中では一番うけて、企画運営の人たち
によろこんでもらえた。
 そこでセールス。「いろいろなセミナーでスピーカーやります。クライアン
トの望み通りの話ができます。ご用命をお待ちしております」
 私は芸人を宣言する。だが、神田さん、森川さんには負ける。芸の本場、関
西の「いちびり」(いまだに理解できない感覚)には絶対勝てまへん。

■今はなき「MACWORLD」でボヤキコラムを連載しそれなりに人気があった
(と思う)。廃刊にともない、どうしたかというと「STEP-BY-STEP アート
&デザイン」にちゃっかりワープした。024号(出たばかり)から新連載《デ
ジタル部活日記》をごらんください。
柴田忠男 online magazine「月刊アイピーネット」編集長 
http://ip-net.ieps.co.jp/

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■今日のニュース

●「漢字が危ない」の人たちが危ない(笑)

 「『欠陥』インターネットで『漢字の危機』」「漢字の行方 文字を排除し
たら文化滅ぶ」「漢字が足りない!JISで処理可能いまも6300字」「文字コー
ド国際化のワナ」「漢字を救え!文字コードを考えるシンポジウム」などな
ど、マスコミは日本文藝家協会のプロパガンダに乗せられて、断定的で煽情的
な報道をしているが、本当に「漢字の危機」「日本文化の危機」なのだろう
か。
 「それならみんなの前で話して下さい。ちょうどJISの当事者も呼んでいま
すから」と、日本文藝家協会電子メディア対応特別委員会(委員長・島田雅彦
氏)に申し入れたら、都合が悪いからと断られたのが「日本語の文字と組版を
考える会」の3月8日のセミナーだ。いろいろ本を読んだり、インターネットの
ホームページを眺めたりしていると、どうやら「漢字が危ない」グループは、
公開討論のリングに上がるのを逃げて、場外乱闘に持ちこもうとしているフシ
がある。
 日本文藝家協会に対して何も含むところはないが、ええかげんなこと言いふ
らして世間を騒がさないでくれといいたい。この騒動を一蹴する論評が「中央
公論」3月号に出ているから一読をおすすめする。日本を代表して国際会議で
発言している松岡榮志氏が「『漢字の危機』は杞憂にすぎない」と書いている
から安心していい。また、アドビの山本太郎氏が自分のホームページで、完膚
なきまで「漢字が危ない」プロパガンダを論破している。

◎山本太郎  文字コードに関する最近の議論について
http://www.kt.rim.or.jp/~tyamamot/charcode/onchar.html

 最高のお薦めは「群像」の匿名コラム「侃々諤々」である。4月号のそれは
絶品である。ここまで皮肉で辛辣な表現はみたことがない。腐された方が気の
毒になるほどの巧妙な悪口である。これはわざわざ図書館に行って見る価値が
ある。
 そして、予告するが「ユリイカ」の今月末発売号が面白いゾ。「漢字が危な
い」グループはギャフンと言うだろう(ちびまるこちゃんじゃないが、ホン
ト、人がギャフンと言うのを聞いたことはないけど)。そこまで言うか、とい
うくらいの大悪口大会で、「漢字が危ない」陣営が逆に気の毒になったくらい
だ。彼らはもう立ち直れないだろう。
 嗚呼、「漢字が危ない」の人たちが危ない(笑) (柴田)

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■祝・創刊メッセージ
【日刊・デジタルクリエイターズ】創刊に際して、多くの方々よりお祝い・激
励のメッセージを数多く頂いております。ありがとうございます!
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●日経デザイン編集長/ 勝尾岳彦

 もはやデザインの世界においては、デジタル抜きでのモノづくりは考えられ
ないほど、急速にデジタル化が進んでいます。そして、デジタル化によって、
従来は不可能だった表現、一部の人たちだけが可能であった表現を、幅広い
人々が実現できるようになりました。このように、デジタル化はクリエイティ
ブワークへの力強い味方であるのですが、一方で現在DTPで問題となっている
ように、従来は十分訓練された、デザインのルールを熟知したプロが行ってい
たことを、全くそういう素養のないアマチュアが行って、成果品の質を著しく
悪化させてしまうというマイナスの面も孕んでいます。
 デジタルクリエーターは現在のデジタル技術でできることと、できないこ
と、デジタル表現の特性と特色を十分に理解した上で、新しいデジタルデザイ
ンの文法を生み出して行なって欲しいと思います。

【プロフィール】
勝尾岳彦
東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。同大学院美術研究課修士課程修了。GKイ
ンダストリアルデザイン研究所勤務の後、91年5月に日経BP社入社。日経デザ
イン編集部に配属。93年3月日経デザイン副編集長。94年7月日経アート編集
長。98年3月より現職。

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『デジタルクリエイター? 』

「日刊デジタルクリエイターズ」創刊おめでとうございます!大変ですね!壮
挙ですね!怪挙ですね!
「デジタルクリエイター」って何なんでしょう?
私も3~4年前は「デジタルフォトグラファー」と自称していましたが、最近は
「写真家」と言うことにしています。
自分の行なう作業の内容がほぼ100%デジタル化して数年経つ現在、あらため
て仕事の内容をデジタルと強調する意味が無くなってしまったように感じられ
るからです。 技術的には今更アナログの不便さに戻るつもりはありませんが、
「写真家」としての私にとって、出来上がった作品が、アナロググラフィであ
ろうとデジタルグラフィであろうとどうでも良いことなのです。 デジタルカメ
ラの実用性がきわめて向上した今、「写真家」にとってデジタルは非常に便利
なツールにすぎないのです。
いずれ私同様、デジタルを意識せずにデジタルフォトを制作する「写真家」が
大半になることでしょう。 そうなればデジタルフォトもただの写真と呼ばれる
ようになり、従来のアナログ写真はクラッシクフォトとか銀塩写真とか、脚注
付きで呼ばれるようになるのでしょう。
その時、「デジタルクリエイター」はなんと呼ばれるのでしょうか?

【プロフィール】
早川廣行
'45年生まれのロートル広告写真家、マッキントッシュプラスの広告活動に従
事してマックフリークとなり、デジタルな世界にはまりこんで抜け出せなく
なった。
業務用デジタルカメラ利用者の勉強会「デジタルカメラ学習塾」塾長。毎月1
回、第一土曜日の午後、定期勉強会を有明・お台場地区で行なっている。
問い合わせは事務局&事務局長=(株)スタジオエビス 金田秀樹
E-Mail:

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■イベント・情報

「第3回 DCPメインビジュアル募集」のお知らせ

98年11月25日から27日幕張メッセにて開催されます「第3回デジタ
ル・コンテンツ・プラザ」に際し使用する印刷物、Webサイト等に用いるメイ
ンビジュアルを下記のとおり募集いたします。

締め切り:98年5月6日午前10時 当協会必着(土日および4/29,
5/1,5/4,5/5は事務所がしまっておりますので受け付けできません)

募集作品:「第3回デジタル・コンテンツ・プラザ」(英文名称: 3rd
Digital Content Plaza)を象徴するデザイン(ロゴを含んでも含まなくても
可)チラシ、ポスター、当日配布パンフレット、新聞・雑誌等広告、展示会場
ブース/ステージ、Webサイトなどにて共通に使用できる独立したビジュア
ル。
デザインはイラスト、CG、写真、コラージュなどの形態にはこだわらない。
作品はA4サイズのハードコピー(印刷物)で提出する。お一人で複数提出も
可。なお、採用された作品の使用に際しては原則として制作者名を明記しま
す。

応募条件:過去に他所にて未発表のもので著作権が応募者自身に帰属するも
の。採用された場合には上記用途およびその後当協会の広報使用などにおける
使用権(複製権)は当協会に帰属する。その他の場合については別途相談す
る。なお、採用後デザインの一部手直しをお願いする場合もあります。

報酬  :採用作品1点に対し、デザイン料10万円を後日お支払いします。
    不採用になったものについては報酬はありません。

選定審査:締め切り後1週間以内にマルチメディアコンテンツ振興協会DCP
事務局にて採否を決定し、応募者に連絡します。なお、適切な該当作品がない
場合には1点も採用しない場合もあります。

応募宛先および問い合わせ先
財団法人マルチメディアコンテンツ振興協会 DCP事務局
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-21-8 秀和第3虎ノ門ビル8F
Tel: 03-3506-1703 Fax: 03-3506-1739
E-mail:


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■本日のTIPS/3Dアプリケーション編
【日刊・デジタルクリエイターズ】では毎日クリエイティブ関連のアプリケー
ションのTIPSを掲載していきます。
TIPSの難易度は、5段階で★印を文末に付けています。
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●StrataVision3D Ver.5.0編/「モデリングデータの3Dソフト間のやりと
り」

3Dオブジェクトを製作する際、ソフト固有のモデリング能力では製作しづら
い形状に出くわすことがあります。そんな場合、他の3Dソフトで作成された
データを持ち込むことによって互いのソフトの長所を生かすことができます。
画像データに関してはソフト間でやりとりできる定番データ形式が定着してい
ますが、3Dデータに関しては現在、完全なデータ形式は存在していません。
DXF形式が最も対応ソフトが多いので利用する機会も多いのですが、製作ソ
フト固有の属性が欠落し、ほとんど形状データのみの互換性しか取れません。
ソフト間の方言も多く、データの狂いなどの問題も(少々)抱えています。
Macintoshの場合ならQuickDraw3D形式で、DXFより多くの属性を維持し
たままデータを移すことが可能になります。ソフト側が対応していればこの形
式がおすすめです。
他のソフトのデータがそのまま読み込めるようになっている場合もあるので利
用ソフトごとに調べてみるといいでしょう。
★★★(W by 松岡アキラ)

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0008 1998/04/21発行
発行社  タワーズ株式会社
     <http://www.towers-inc.com/>
     大阪市中央区高麗橋1-5-6 東洋ビル3F
     TEL:06-231-1011 FAX:06-231-0838

編集長  森川眞行 
     柴田忠男 
     神田敏晶 

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