[0023] 3Dなんてこわくない! 04

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0023 1998/05/08発行
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●本日のコラム『3Dなんてこわくない! 04』
 金曜日担当:上田和浩

●本日のニュース
 ・「Metastream」ダウンロード開始
 ・Whoa! 新型Macintosh「iMac」登場!
●イベント・情報
 ・日本語の文字と組版を考える会セミナーのお知らせ
●本日のTIPS/3Dアプリケーション編



●本日のコラム『3Dなんてこわくない! 04』
 金曜日担当:上田和浩

今回は3Dの基礎講座モデリング編です。

3Dソフトでモデリングという場合は、おおむね3D形状データーの編集と考え
ていいでしょう。しかし実際は[モデリング]にはさまざまな意味を含んでいる
場合があります。

●モデリングとカービング

立体芸術の分野でモデリングという場合は彫塑を指します。芯材に粘土の様な
可塑性のある素材を肉づけしていく立体物作成方法です。それに対して木彫り
のような、堅い物質を刃物で削っていく方法を彫刻(カービング)といいます。

3Dソフトの場合は、形状を足したり引いたり、可能な限り自由度の高いように
ツールは設計されますので、どちらかといえば彫塑に近い感覚のソフトがほと
んどでしょう。粘土のような…という売り文句のツールが多いことが一つの証
明です。

彫り損ねてしまうと修正が難しい彫刻の技法を、彫刻家は逆に創作のバネにす
るところがありますが、修正が容易なことが特徴であるデジタル処理とは正反
対の性格を持ちます。彫刻的な性格を持つ3Dソフトが少ないのはそのせいで
しょう。あえて彫刻的な性格を持つ機能を探すなら、CSGあたりかもしれませ
ん。

CSGは特定のツールやソフトを指すものではなく、Constructive Solid
Geometryという立体表現方法の略です。プリミティブと呼ばれる、球や円
柱、立方体等の基本形状を、集合演算で足したり引いたりして複雑な形状を作
る技法です。ある種パズル的な要素のあるモデリング方法で、単純な形状とい
う制約を逆に創作のバネにするところがあり、(ブーリアンで形状を削る作業も
似ているかな)、そういう意味で彫刻的な技法なのです。

3Dソフトの黎明期にはモデリングにあまりメモリがいらず、比較的単純なアル
ゴリズムですむためにCSGによる3Dソフトが多かったのですが、今日ではCSG
だけの3Dソフトは見られなくなっています。

●ソリッドモデルとサーフェイスモデル

CSGは基本的には形状を中味のつまった塊として扱う[ソリッドモデル]です。
それに対して複数の頂点をポリゴンとして定義して形状を作る方法は[サーフェ
イスモデリング]といいます。もちろんCSGだけがソリッドモデリングではな
く、ポリゴンを扱うソフトでも中味のつまったソリッド形状として扱うことの
できるソフトもあります。

見た目では区別できない場合がありますが、ブーリアン演算した場合に差がで
てくる時があります。[サーフェイスモデリング]の3Dソフト、例えば
RayDreamでは内部に気泡の入った形状をブーリアンで作成するときに、完全
にオブジェクト内部に入り込んだ気泡部分を省略してしまいます。また、容量
計算や、重心、材質強度等の、単なる視覚的効果以上の要素をシミュレーショ
ンすることが目的のソリッドモデルもあります。

●静的モデルと動的モデル

[静的モデル]、[動的モデル]という見方で[モデリング]を分類することもできま
す。
可動部分の少ない飛行機や、宇宙船、建物等を[静的モデル]、とするならば、
人物のモデリングなどは、[動的モデル]の典型でしょう。アニメーションしや
すいように複数の形状をリンクさせ、ツリー構造で管理することが[動的モデ
ル]の基本です。リンク角度の制限や、インバースキネマティックスのような、
より現実的な構造を模した機能を追加することでより高度で操作製の良い[動的
モデル]とすることができます。

一方、ボーン機能は、静的な一体式の形状であっても仮想の骨格を設定するこ
とで有機的ななめらかな変形をさせることのできる機能です。このことによっ
て、[静的モデル]、[動的モデル]という分け方も少し曖昧になりつつあります。
人体モデリングに特化したソフト、[Poser]は、動的なモデリングの到達点の
一つでしょう。Poserのインバースキネマティックスは初心者でも非常に自然
なポーズづけを可能にしていますし、ほとんどそれと意識させないボーン機能
は見事だと思います。(形状がいびつになるケースは多々ありますが)

●スイープ

面を掃引して形状を作る技法です。
直線による掃引をエクストルード、円による掃引をレイス、パスによる掃引を
スイープ、(又はパスエクストルード)、複数の断面による掃引をロフティング
(又はスキン)と呼ばれます。今日の大部分の3Dソフトが装備している機能で、
ソフトによって呼び方が違ってきます。

●ボクセル表現

あまり主流の表現方法ではありませんが、モニターがピクセルの集合で自然な
画像を表現するように、3D形状をサイコロの様な微小なボクセルの集合体とし
て表現する方法です。利点としては雲や流体の様な不定形のボリューム形状を
表現しやすいことです。欠点としては非常に大量のメモリと計算が必要なこと
です。医療データーの3D化の様な特殊な分野で活用されています。ボクセルの
数を極端に制限してホビー的なソフトにしたものに、かの、中ザワヒデキ氏デ
ザインのDigital Nendo_デジタルネンドがあります。

●オクトリー表現

ボクセル表現の改良版です。ボクセルを8分割し、それぞれの領域に形状が含
まれるか含まれないかを再帰的に判定していきます。CSGのレンダリング処理
のひとつ、ボクセル分割はこれに近い処理をしていたのではないかと思いま
す。

●メタボール表現

メタボールは、ソフトによっては単にモデリング機能の一つとして扱われてい
る場合もありますが、本来はCSGや、ポリゴン表現に並ぶぐらいの根本的な違
いのある立体表現方法です。

すべての形状を球体を中心とした濃度球体として扱うモデリング方法で、濃度
分布で何%の以上の箇所は形状として認識し、それ以下の部分はないものとし
て扱います。そうすることで非常になめらかに融合した独特の形状を作ること
ができます。

CSGに似たところもあり、-のメタは、論理演算でいう-演算のようなくりぬき
を行うことができます。メタボールを実装している多くの3Dソフトでは最終的
にポリゴンに変換して扱いますので、メタボールとしての特徴は薄れたものに
なってしまいます。

純粋にレンダリングまでメタボールに特化したソフトは、メタモデラーがあり
ます。Rayflect社製のRayDreamのエクステンションのメタボールツールは、
球体以外の形状も扱うことができる優れものです。モデラー内部ではメタ形状
を維持し、レンダラーにはポリゴンでデータを渡す構造になっているので、ア
ニメーションにも使うことができます。

【プロフィール】
上田 和浩
90年頃から3DCGに手を染める。RayDreamはVer.1からのユーザー
幽霊ツールと悪魔払いツールが懐かしい…(注)
StepByStepにRayDreamの記事を連載中。
RayDreamの解説本も出版予定です。

(注) 一時的にオブジェクトを隠すツールの日本語訳、当時はフォーカルポイン
トコンピューター(株)が扱っていました。現在はフォーチュンヒル(株)が扱っ
ています。

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■本日のニュース

●「Metastream」ダウンロード開始

本日発表されたmetastreamという新3Dフォーマットをさっそくチェックし
てみました。
現状では英語サイトのみの情報なので、誤訳による解釈の違いがあるため、見
た目の印象だけをたよりに3Dクリエーターにとってこのフォーマットがどう
いったものかを感じたまま報告いたします。

http://www.metastream.com/
からリンクをたどり、プラグインをダウンロードするわけですが、現状では
Windowsのみ対応でMacintoshでは確認できません。
かつてVRMLでも同様のことが有ったように思います。Macintosh対応のブラ
ウザがほとんどなく、VRMLフォーマットの対応もオマケ的なものでしかあり
ませんでした。
今回もMacユーザーにとってはおあずけを食らったような印象が有りますね。

さて、使用感ですが・・・・・・
プラグインを組み込んだブラウザ上で、シューズや人の顔などのテクスチャ
マッピングされた3Dオブジェクトがマウスの動きに合わせてぐりぐり動きま
す。

3Dオブジェクトはダウンロードの過程で徐々に高品位になっていくので見て
いて楽しく、マウス操作でポリゴン数をリアルタイムに増減させることが出来
たり、細かく作り込まれたモデリングとリアルなマッピングが素晴らしく、思
わず「おおおお」とうなってしまいました。
しかし、これだけではサンプルがいいのか、データフォーマットがいいのかよ
く分かりません(笑)。

高度なインタラクティブ性とアニメーションの多様性(ゲーム機のようなポリ
ゴンアニメーションが再現できるなど)を期待していたのですが、簡単な例は
あったものの、決定的なサンプルは有りませんでした。

現在metastreamに対応している3DソフトはMetaCreations社のDream
StudioとRay Dream 3D用に用意されたプラグイン(要ダウンロード)と
Infini-D4.5 です。モデルデータだけでなく、アニメーションデータも
Exportしてくれるとうれしいのですが・・・・・・

少しの時間しか使用する時間がなかったので細かなことはわからないのです
が、個人的な感想では、オブジェクトデータは高品位だけど、3Dキャラクタ
を躍らせたり、VRML以上の対話性があるのかは分からなかったということで
す。

3Dクリエーターとしては自分の作品世界をWEBで再現できるツールとして注
目していますので、日本語情報や続報などを確認してから再検証したいと思い
ます。

【プロフィール】
松岡アキラ(ディジタルクリエーター)
現在では広く知られているディジタルクリエーターという肩書きを3年前から
使っていたことだけが誇りの、さすらいクリエーター。
Macとの出会いは湾岸戦争の日。本格的なMac業務はその1年後。フリーへの
転機は阪神大震災。すべては1月17日が起点となっている(今年は何もな
かった)。Mac関連業務を転々とし、現在は3DCGをメインにさすらいつづけ
ている。独創性のあるCGがウリのはずだが、それではなかなか食べていけな
い。売れない芸人のお決まり文句。理想の仕事環境を求めながら、CG芸を磨い
ている。
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森川です。ボク自身3D制作は本業ではないのですが、今回のメタストリーム
には驚きました。3Dやりたくなりました(笑)
凄いですね~、メタストリーム。要するにプラグインの中に3Dをレンダリン
グするためのエンジンというか技術を入れ込んだ…って解釈すればいいのかな
プラグインのダウンロードもそれ程時間がかからないし、ストリーミングで送
られてくる3Dデータも軽いですよね。本当に初心者でも気軽に3Dが楽しめ
る時代になったんだなぁ…と実感しました。

メタストリームの目的がWEBショッピングや、医療などに使われることを目
的とする…と宣言されていることを意識すると、今後メタストリーム用のデー
タの作り方に関しても、何らかの新しい技術を発表してくれそうな期待をして
しまいます。
今後プラグインが浸透して、3Dデータで商品を確認するようなバーチャルシ
ョッピングの時代がやってくれば楽しいと思うな…クリエイターの仕事も増え
るしね。 (森川)

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●Whoa! 新型Macintosh「iMac」登場!$1,299(約16万円)

http://www.apple.com
本日の朝4:00すぎ、異変のおこっていた米国Appleサイト(新製品発表の時は
いつもですが…)に、新型のMacintoshが紹介されました!

それは「iMac」という製品です。eMate以来のアップルらしいデザイン製品に
魅力を感じました。8月の出荷予定ですが、スペックは、G3の233MHz、32メ
ガのメモリ、4ギガバイトのハードディスクなど、Windows98で標準採用と
なるUSBポートも装備されています。15インチモニタですがとってもキュー
ト!ワンボタンでインターネットにアクセスできるようです。
ひさびさに欲しくなるマシンの登場です。

CPUのスピードも大事なのですが、机の上に置きたくなるようなデザインは
もっと重要ですね。CPUスピードは5分でなれてしまいますが、愛着が持てる
デザインだと5年間は使いたくなりますね。もちろん、日本でも発売してくれ
ますよね?(神田)。

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■イベント・情報

●日本語の文字と組版を考える会セミナーのお知らせ

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日本語の文字と組版を考える会
第9回公開セミナー
テーマ【日本語の組版-過去・現在・未来】
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日時:1998年6月7日(日) 13:00-17:30/会場:中央大学駿河台記念館
会費2,000円/(当日欠席で資料のみご希望の方)資料会費2,000円
内容:第1部【問題提起】
  ・日本語組版の特質:野村保惠(あるふぁ企画)
  ・日本語組版の歴史:府川充男(聚珍社)
  ・紙の印刷物とデジタルテキスト:家辺勝文(日仏会館)
   第2部【パネルデイスカッションと討論】

人間とコンピュータとテキストの出会いによって生まれる新しい表現様式を
積極的に認知するために「デジタルテキスト」という用語を使う。
「電子化という新奇な技術がいかに既存の表現手段に追いつけるか」という
視点からは様々な還元主義と単純化に陥りやすい。
電子化が専ら文字の問題として取り上げられることが多いのもその一例であ
る。
デジタルテキストは過剰な期待と過小評価の間を揺れ動いている。
デジタルテキスト以前にすでに印刷はテキストを共有するための技術だった。
組版が対象とするテキストの視覚的形式は書き手と読み手のみならず
従来の技術と新しい技術が出会う場所でもある(文責・家辺勝文)。

申込方法:ファクスか電子メールで「お名前とふりがな、電話番号、報告書
送付先住所(自宅/職場)と新郵便番号、会社名、ファクス番号、
メールアドレス」をお送りください。

申込先:事務局 facsimile 03 5496 9672 / 03 5229 8047
E-mail

主催「日本語の文字と組版を考える会」
世話人:
杏橋達磨 逆井克己 佐藤有子 沢辺均 柴田忠男 高野幸子 前田年昭 向井裕一

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■本日のTIPS/3Dアプリケーション編
 【日刊・デジタルクリエイターズ】では毎日クリエイティブ関連のアプリケ
 ーションのTIPSを掲載していきます。
 TIPSの難易度は、5段階で★印を文末に付けています。
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●StrataVision3D Ver.5.0編/「メタボール」

球体同士の表面を滑らかにつなぐことで不思議な形状を作るという、おもしろ
いモデリング機能です。
2つ以上の球体を選択し、[モデリング]→[メタボール]→[結合]と、操
作はこれだけです。「影響範囲」のスライダーを調整することで、球体間の表
面張力(?)を調整できます。球体間の距離が離れすぎていると、うまくつな
がりません。

楕円状の球状は利用できません。完全球体に変換され、メタボール化されま
す。

ダブルクリックで、数値による設定で球体のつながり具合を調整する事ができ
ます。
[モデリング]→[メタボール]→[結合解除]で、元の球体に戻すことがで
きます。(後述の球体アニメーションのやり直しの時などに利用します)

テクスチャーの貼り付けは、結合後のメタボール状態でやり直す必要がありま
す。結合前の個々の球体のテクスチャー設定は無視されます。

メタボール専用ソフトと比較すると、楕円状の球体が使えないことや、球体ご
との影響範囲の設定ができない、マイナス成分のメタボールができないなど、
機能的に物足りない面もありますが、Vision3Dのメタボールはアニメーショ
ン可能というメリットがあります。

結合前に、各球体別にアニメーション(移動、拡大縮小、回転など)を設定し
た後に結合を行うのです。非常に不思議なアニメーションができます。
レンダリングに時間がかかるのが難点です。
余談ですが、上位ソフトのStudioPro2.Xでは楕円状球体にも対応、プレ
ビューやレンダリングも高速で快適に使えるようになっており、最新版の2.5
ではパーティクルの粒子をメタボール化できるようで、噴水などの液体表現が
向上しています。
★★(W by 松岡アキラ)

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●本日は、毎日Tipsを書いてくださっている松岡アキラさんが、タワーズに。
早速、Metastreamについての原稿を書いてもらいましたーー! (濱村)

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0023 1998/05/08発行
発行社  タワーズ株式会社
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編集長  森川眞行 
     柴田忠男 
     神田敏晶 

情報提供はこちらまで 
           担当:濱村和恵
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