[0091] 小出版社がインターネットで活路を拓く

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0091 1998/07/28発行
http://www.towers-inc.com/mag/daily/
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●本日のコラム「小出版社がインターネットで活路を拓く」
 水曜日担当:柴田忠男

●マクロメディア+タワーズイベント「WEBデザインで儲かりまっせ」

●本日のニュース
 ◎主要サイト情報
  Apple/ Microsoft/ Sun Microsystems/ SGI/ Adobe

●イベント・情報
 ◎THE AIR WARE展



●本日のコラム「小出版社がインターネットで活路を拓く」
 水曜日担当:柴田忠男

言語学関係で地道な出版活動を続けるひつじ書房と、電子出版のさきがけボイ
ジャーが手を組んで、新しい書店流通の方法にトライして成功している。ボイ
ジャーが開発し7月15日に発売した「T-Time・インターネット<縦書き>読書
術」(3400円)というCD-ROMを、ひつじ書房が書籍として全国の書店で販売し
ている。これが大変なヒットとなり、発売1週間で版元は品切れ状態(初版
3000部)、重版を待てない読者から問い合わせが殺到、さらに両社のホーム
ページへのアクセスが続いているとのこと。

ボイジャー http://www.voyager.co.jp/
ひつじ書房 http://www.hituzi.co.jp/

ここにアクセスすると『T-Time』の商品情報、FAQ 、取り扱い書店一覧などが
掲載されている。また「インターネット読書術」のコーナーにはT-Timeユー
ザーのためのURLリンク集がある。これには文学、民俗・文化、芸術、官庁文書、
経済、教育、法律、メディア・情報関連、社会・環境問題、哲学というジャン
ルの膨大な電子情報が並んでいる。こんなにデジタル化されたテキストがオン
ラインにあるとは驚きだ。すでに立派な電子図書館が出来上がっていたのだ。
これらは、T-Timeを用いてすぐに読める。

ボイジャーは文学、哲学、科学の良心的な電子本(CD-ROM)出版の版元であるが、
書店流通から排除されて苦戦を続けており、電子本が紙の本と何ら区別なく書
店流通されることを悲願としてきた。一方、ひつじ書房のような小出版社のビ
ジネス環境も相当に厳しく、インターネットを利用して活路を拓こうとしている。

そこで、ひつじ書房とボイジャーが手を組んでの試みが「書店流通プロジェク
ト」である。小さな者同士が手を組み、これもまた小さな芽である未来の電子
本作家へ「呼びかけ」をおこない輪を広げている(そのことは「ボイジャーと
書店流通の開始について」参照。ボイジャーに請求すれば送ってもらえる)。

T-Timeについては、もう説明を要しまい。プレーンテキスト、HTMLなどのテキ
ストデータに対して手軽に好みの文字面を設定して、モニタ上でじつに快適に
読むツールである。縦書き、横書き、段組みも自由。独自のグレースケール表
示で見やすく、文字サイズも変更は自由だ。

私も今年のマックワールドで唯一購入したツールだ。これはマック版の先行発
売商品だったが、今回発売されたハイブリッド版へは無償バージョンアップが
可能だ。私もこれまでも、長いテキストはT-Timeを用いてものすごいスピード
で読んでいたものだ。ネットスケープの設定をすれば、いきなりT-Timeでメー
ルが読めるようになるようだが、私のネットスケープのバージョンが0.01古い
のでまだ試していない。ときどきこれがプリントできればいいなと思うが、切
実な要求ではない。

いま興味があるのは、T-Timeでの表示を前提とした電子出版である。どう見せ
たいのかというデフォルトをファイルに仕込んでおけるので、読むだけに限れ
ばPDFみたいなことができるはずだ。T-Timeの画面表示はユーザーの好きなよう
になる(そこがいいところなのは百も承知で)、こっちの意図した段組みや文
字サイズで見てもらう設定をしたファイルを送りだせるのなら、「日本で初め
てのT-Timeで読むマガジン」ができるはずだ。

ということで、FAQを覗いたら、専用ファイル形式TTRというのがあるそうだ。
これがそうなのか。だが、これは商品版CD-ROMでは制作は出来ないばかりか、
データも読めないという。TTRはこれから無償で配布されるT-Time Liteという
専用プレイヤーでのみ表示できる。PDFやエキスパンドブックよりもお手軽にで
きるのだったら、この出版もありだと思うが、TTRをつくるツールというのがま
た高価だったり操作がめんどうだったら、やはりPDFの方がいいのかなとも思う。

これは、ホームページのT-Time情報を見ていての思いつきで、勘違いかもしれ
ない。要するに「日本で初めてのT-Timeで読むマガジン」を作ってみたいなと、
「日本で初めてのPDFオンラインマガジン」を作った<懲りない>私は思っただ
けである。

ひつじ書房は日本の言語学の研究書を出版する学術専門出版社である。自力で
ホームページを作った、日本で最初のマイナーな(失礼)出版社でもある。だが、
海外の研究動向の輸入ではないオリジナリティ溢れる研究書の刊行という事業
は茨の道を約束されているといってよい。そこで、彼らが賭けたのはインター
ネットの可能性である。房主の挨拶がホームページにある。

「ともかくもできることをしよう、あせらず、あきらめず、しぶとく。我々の
ホームページは、将来的に、言語学を中心とした人文科学の成果を、国内外を
問わず発信できるようになるということの日々の実践であるとともに、また、
実験でもある。専門書の刊行に困難が伴うのは、日本ばかりではない。日本人
以外の研究者の本も出すことにしている。オンラインが、ちっぽけな出版社の
事業に実効ある成果を生み出してくれるか、どうか。研究を行う人、読む人の
絶大なる支援をお願いする次第である」

会社が小さくても志は高いボイジャーとひつじ書房には最大級のエールを送り
たいと思う。読者諸君、上記のURL にアクセスして、「T-Time・インターネッ
ト<縦書き>読書術」をゲットしましょう。

【プロフィール】
しばた・ただお 7月は講演2回、文字コード入門の長文の原稿、ディジタル・
イメージ大阪展のための細かな準備などに追われたが、けっこう無駄な時間も
過ごしてしまったと反省。毎日午後は出版社で仕事の予定だったが、ハード環
境が不備のためやはりSOHOに舞い戻り。おまけに、日本デジタルアートコンテ
ストの作品集を制作中だ。また、美少女を描くアーティストを緊急で募集中、
自薦他薦を問わず、どしどし情報をお寄せいただきたい。

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●マクロメディア+タワーズイベント「WEBデザインで儲かりまっせ」

昨日27日13時過ぎより大阪のエルシアターで行われた。天候不順にもかかわ
らず、沢山の方にご来場いただき誠にありがとうございます。

司会の神田氏の「イェーイ」から始まり、一同爆笑。出演者登場の際には、格
闘技の試合のごとく、テーマ曲が流れる。最初のセッションでは、マクロメ
ディア社の手嶋社長から、DTPとWEBビジネスの違いやマルチメディアについて
の解釈、Shocked CD、データベースなどについての話があり、実際に阿部氏よ
りデモが行われた。

Apple社の大西氏より、Apple社の現状とメッセージ。発想を変えられる人がビ
ジネスに結びつけられる、どんなビジネスでも儲からないものはないとのこと。

次は、水曜日のコラムでお馴染みのまつむら氏と笠居氏のFlash3セッション。
まつむら氏は、Glaphic World誌用のラフスケッチをもとに実際の作業の行程を
披露。グラフィックツールとしてのFlash3をアピール。笠居氏は、プルダウン
メニュー作成方法から、Flash3の機能の説明に触れる。そのあと、両氏が裏技
的なMovieを披露する度に、客席からどよめきが起こる。

DreamWeaverは、杉山氏。実際のWEB制作業務の流れを説明したあと、その一部
分を担う役割であるDreamWeaverの具体的な使用方法を語る。それぞれの機能に
よって如何に業務が楽になったか、経費節減や時間短縮ができたか、この製品
の良さやカスタマイズの度合いの高さを紹介。かなり具体的でハイレベルな内
容で、WEBの初心者には難解だったかもしれない。

Fireworksは森川氏。機能説明はWEB上<http://www.towers-inc.com/mag/fireworks/>にあるから見に来てね、はい終わり、などという掴みから入る。
WEBでは書きたくても書けない、そんな話も交えつつ機能説明からはじまり、
WEBビジネスで如何に効率的なソフトかを語る。初めてFireworksを目にする参
加者も多いようで、その機能を見定めようという雰囲気が漂う。考えていた以
上に使えそうなのでびっくりした、という意見も私は個人的に聞いた。

ラストのパネルディスカッションでは、神田氏が米マクロメディア本社訪問の
際に撮ったビデオをオープニングとして流す。WEBビジネスは本当に儲かるのか
どうか、というテーマから始まり、それぞれのパネラーの思うWEBビジネスの流
れであるとか、プロとアマの差、データベース、日本のWEBビジネスの鎖国状態
について語られた。思った以上に遠慮がちなパネラー達。白熱というよりは、
きちんきちんと参加者に伝えようという姿勢が見えた。

強行スケジュールの割に、密度の高いセミナーであるとの意見をいただく。
画像付きのレポートページを近々WEBにアップ予定。(濱村)

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■本日のニュース

●主要サイト情報

Apple
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Portland Press Herald社、400万ドルのMacベースコンピュータシステムを採用
http://www.apple.com/hotnews/

信頼性のトップに。Comsumer Reportsマガジンの読者によると、AppleとDellが
信頼性とサービスについて、最高得点をマーク。PC Worldの読者も、Dell、
Hewlett-Packard、Appleを最も信頼性を提供する企業と評価。
http://www.apple.com/hotnews/

HyperCard 2.4.1アップデータ配布開始。英語版Hypercard 2.3、2.3.5、2.4.1
に対応
http://www.apple.com/hotnews/

サポート、「Q&A」のページ更新
http://svc.apple.co.jp/qa/index.html

Microsoft
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J.D.Edwards&Co.などを含む主要アプリケーション開発企業、自社の製品を
WindowsNT Server5.0のActive Directoryに統合。所有にかかるトータルコスト
を抑え、アプリケーションの機能性を増大。
http://www.microsoft.com/presspass/press/1998/Jul98/ActivDPR.htm

Windows 98発売開始速報
http://www.microsoft.com/japan/win98/newsreport.htm

Windows 98関連書籍7タイトル発売
http://www.microsoft.com/japan/info/press/whatsnew/w98books.htm

Microsoft Visual Studio 97 ファミリーの開発ツールのMicrosoft Windows
98における開発環境の動作についての案内
http://www.microsoft.com/japan/developer/

Windows Developer Site更新
http://www.microsoft.com/japan/developer/winds/

Microsoft Community、7月末より全国47都道府県にて順次開催
http://www.microsoft.com/japan/community/

Sun Microsystems
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Sun、1997年のUNIXサーバー出荷台数で市場1位に。International Data
Corporationの調べによると、他の2つのカテゴリ(UNIXエントリー市場とミド
ルレンジ市場)でもトップ、出荷については年間75%の伸び率。
http://www.sun.com/smi/Press/sunflash/9807/sunflash.980727.1.html

エンドユーザー導入事例を大幅更新
http://www.sun.co.jp/cstudy/

Silicon Graphics
~~~~~~~~~~~~~~~~
ディズニークェスト、米シリコングラフィックス社を技術パートナーに選ぶ
http://www.sgi.co.jp/Headlines/1998/Jul/siggraph98/disney2.html

Adobe
~~~~~
Acrobat、After Effects、Illustrator、PageMaker、Photoshopの最もポピュ
ラーなプラグイン10種を公開
http://www.adobe.com/newsfeatures/industrynews/topplugins.html

アドビのポストスクリプト3インタプリタ実装のコントローラを搭載したデジタ
ルイメージングシステムを、大日本スクリーン製造株式会社が発表
http://www.adobe.co.jp/whatsnew/index.html

Adobe製品のMicrosoft Windows 98への対応表を掲載
http://www.adobe.co.jp/support/win98.html

嶋田美香

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■イベント・情報
 今見られるイベント・アート・セミナースケジュール
http://www.towers-inc.com/mag/daily/event.html
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●THE AIR WARE展
コンピュータグラフィックスと衣服のあいだの出来事
http://satellite.nikkei.co.jp/events/970630/ART/bi-airware.html

コンピュータグラフィックス・アーティストの原田大三郎とファッションデザ
イナーの津村耕佑の二人のクリエーターが、異なった視点から身体と衣服の近
未来を予見しようとする初の展覧会です。

会 期:1998年7月16日(木)~9月1日(火)、水曜休館
     午前11時~午後6時(金曜は8時まで)
会 場:神戸ファッション美術館アートウイング
    (神戸市東灘区・六甲アイランド)
http://www1.mesh.ne.jp/kobe-mic/kipc/kfm
主 催:神戸ファッション美術館、日本経済新聞社
後 援:神戸市、(財)神戸ファッション協会
観覧料:一般・大学生1000円(800円)
    高校・中学・小学生および65歳以上700円(600円)
    カッコ内は前売りおよび30人以上の団体料金

お問い合わせ:日本経済新聞社大阪本社企画事業部 
〒540-8588 大阪市中央区大手前1-1-1
TEL 06-943-7111

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0091 1998/07/28発行
発行社  タワーズ株式会社
     <http://www.towers-inc.com/>
     大阪市中央区高麗橋1-5-6 東洋ビル3F
     TEL:06-231-1011 FAX:06-231-0838

編集長  森川眞行 
     柴田忠男 
     神田敏晶 

情報提供・投稿はこちらまで 
              担当:濱村和恵
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http://www.towers-inc.com/square/editor/visit.shtml
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