[0093] メーキングオブ「タイタニック」

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0093 1998/07/30発行
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●本日のコラム『メーキングオブ「タイタニック」』/ 出渕亮一朗

●本日のニュース
 ◎Emigre47号のお知らせ
 ◎主要サイト情報
  Sun Microsystems/ Adobe

●イベント・情報
 ◎CD-ROMとInternetの融合がもたらすWebでの利用法セミナー



●本日のコラム『メーキングオブ「タイタニック」』/ 出渕亮一朗

先週末のコラムを書いたばかりなのに、「今度はタイタニックねたでデジクリ
に書いてね」と、休む間もなく鬼の大柴田さんからからメールが来た。
(これは、 http://www.towers-inc.com/mag/daily/9807/04.html#1 の後に原稿
をいただきました。)

タイタニックか~。ぼくなんか小学校の1、2年生のころから知ってるぞ。とい
うのは、そのころNHKで「タイムトンネル」という海外ドラマをやっていて、そ
の第一回がタイタニックの巻だったのだ。これは、開発中だった一種のタイム
マシンで二人の科学者が、未来と過去を右往左往するというけっこうおもしろ
い番組だった。(別にも書いたけど、どうしてあの番組の再放送やビデオ化がな
いのだろうか?)タイタニックにワープした主人公達が、「この船は沈没する」
と警告しても、だれも聞いてくれない……といったストーリーだったと思う。

まあ、そんなわけでハリウッド版「タイタニック」を見に行った訳だが、まわ
りは年配の女性ばっかりだった。男なんてちらほら。きっとみんなレオナルド
=デカプリオを見に来てるんだろうな~。レオナルド=デカプリオ、リョウイ
チロ=デブチなんか似てませんか?(石が飛んできそうなのでやめます)

もうひとつの話題としては、細野晴臣さんのおじいさんが、ただ一人のタイタ
ニックの日本人乗客であったという話がある。TV番組の「知ってるつもり」で
やっていたのだが、彼は生還組であったが、誤解から「ひきょうな日本人」と
して長らく知られていた。

しかし、彼の死後発見された手記によりそうではなかったということがわかっ
たそうだ。実際、最後の救命ボートが下ろされたあと、「あと二人!(乗れる)」
という船員の声が聞こえたそうだ。自分の前の人が海に飛び込むのを見て、は
じかれるように続いたそうだ。まさに、救命ボートに乗ることができて助かっ
た最後の一人だった訳である。

映画としての「タイタニック」の見方はいろいろあると思う。もちろん俳優人
気もあるし、ラブストーリーに感動してもいいし、歴史を知るというのもいい。
しかし、デジタルクリエイターとしては、冷静に映像の作られ方も研究しなが
ら見なくてはならないのだ(このコラムもそれがメインです)。

先日、ソフトイマージュの恒例セミナーがカナダ大使館であり、Digital
Domain社のDaniel Loeb氏の公演を聞いてきた。彼はソフトイマージュを使った、
タイタニックの3Dエフェクト部門のデザイナーのひとりである。タイタニック
が港に泊まっているシーン、大海原を航海するシーンの鳥瞰など、ほとんど
「ニセモノ」だそうである。セミナーでは特にデジタルキャラクターの話が中
心であった。

ラストで垂直に逆立ちしたタイタニックから、乗客がぼんぼん落ちるシーンが
ある。ぼくはここが一番「どうしているのかな~?」と感じたところであった。
なんと、主人公たちなど前景の人以外はすべて3Dアニメーションによるデジタ
ルキャラだそうだ(気が付かなかった!)。キャメロン監督が、「もっと! 
もっと出せ~!」というので1000人位のキャラが一度に登場しているらしい。
すごいのは、ひとりひとりが何かしら自分の事をやっていることだ。まさにイ
ンフォメーション=オーバーロードである。

デジタルキャラを作るのに、はじめはモーションキャプチャーを使っていたら
しい。しかし、これはいいようで結構時間のかかる作業であることがわかった。
人一人の動きを作るのに1ヵ月くらいかかるのだ。

また、ノイズ成分が多くデータの加工がたいへんである、後で動きの演出を変
えることがむずかしい、といったことがわかった。結局最後は、完全なデジタ
ルキャラにアニメーターが手でモーションをつけていったそうだ。それに使っ
たソフトイマージュによるスケルトンモデルが会場で示された。簡単な人間の
骨格にハンドルがいくつか付いていて、それを操作することによりマペットの
ように自然な人間の動きを付けることができる。これと同様のものをぼくは以
前あるゲーム会社の仕事に少しかかわったとき見せてもらったことがある。

ソフトイマージュはマニュアルを見ただけではわからない、けっこう職人ワザ
のいろんな秘密があるソフトなのだ。このモデルで生産効率があがり、なんと
か間に合ったそうだ。しかし、150人以上の3Dデザイナーと300台くらいのコン
ピュータを使っていたらしく、物量作戦であることにはかわらない。

このセミナーでは、このデジタルキャラの話がメインでしたが、もちろんタイ
タニックのSFXはそれだけではありません。デジクリでもおなじみの花山由理さ
んが手伝ってくれたので、以下は彼女の文をそのまま掲載させてもらいます。

先日、NHKの「クローズアップ現代」で、アメリカが最新軍事技術で景気回復し
たという特集をやっており、なんと、その最新技術とは、軍事の持つ膨大なシ
ミュレーションデータでした。

その代表例として、「タイタニック」の大海原の大シーンのほとんどで使用さ
れていました。まず、海軍で使用している魚雷シュミレーション用データによ
り(風向き、風速、深度、水温などによる魚雷の進行がいかなるものかという
データ)、タイタニックが走った時の海の波を全てCGで作成!!しています。
あのリアルな波がですよ、CGなんですねー。

また、「WIRED」誌(1998/5月号)によると、キャメロンは1994年から本物の
「タイタニック」の撮影をしていて、また、遠距離から微妙な動きまでリモコ
ンであやつれるという、その撮影用のカメラを独自に開発させています(ダイ
ブした時の公開日記が記載されています)。これによって、撮影されたシーン
をもとに、かなり厳密にセットを作成してます。回想シーンから現在海に沈ん
でいるシーンへの美しい変化の所ももちろん、CGです。

衛星放送のキャメロン特集の番組によると、撮影した実物をもとに、厳密で精
巧なタイタニックの複製を作ったキャメロンですが、さすがに、何百人ものエ
キストラを長期間、あるいは危ないシーンには使えなかったらしく、また実物
大を海に浮かべるまでの予算もなく、かなりひいた角度から撮影している大海
原の船上で人が動きまわるシーンでは、まずCG。船の各階の人物のほとんどを、
CGで作成しているというところがすごい。あれがCG?? と驚きました。でも、
よく見ると、一人一人顔がノッペラボウなのでした。

番組のインタビューで、キャメロンがこう言っていました。「僕は、撮影不可
能なものをおぎなうものとして、CGを使用している。例えば、エキストラが危
険にあいそうなシーンをCGでおぎなったりとかね。どう自然にみせるかという
ところに使用するんだ」

(花山さん、ありがとう)

【プロフィール】
でぶち・りょういちろう
■1958年鳥取県生まれ。九州芸術工科大学画像設計学科卒。(株)アスキー、
(株)ハイテックラボを経て、現在(株)アトムで仕事。学生時代からプログ
ラムから始めるコンピューターアニメーション作品を制作発表。SIGGRAPH、
ART FUTURA(イタリア)、ORF(オーストリア)など、海外での受賞が多い。現
在はVRML作品の研究と制作に力を入れている。サイバースペースにおける人工
生命や人工知能といったものに興味がある。1997年はBiota org主催のデジタル
バージェスコンテストでWinnerをもらったり、マルチメディアグランプリで
ネット部門エンターテインメント賞をもらったり、VRML作品でたくさん受賞し
た年でした。

■最近自分の活動には、インターネット、VRMLなどデジタル最先端への興味と、
沖縄伝統芸能などアナログ超伝統へとふたつの方向のベクトルがある。何で? 
と聞かれることもるが、人間としては自然なバランス感覚だと思うんだけど? 
伝統はもう完成されて際った世界です。学べることがたくさんあります。ただ、
同じことばかりで閉じていることも事実です。最先端は自由な発想でいろんな
ことが実験できるけど、また未完成、未熟と言うことも確かです。
このフィードバックは貴重なものなのです。
mailto:debuchi@atom.co.jp
http://www.atom.co.jp/

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■本日のニュース

●Emigre47号のお知らせ

Relocating Design(デザインの転換)

グラフィックデザインの将来は依然はっきりしないので、デザインが落ち着く
べき場所が、熱い論争のトピックになり続けている。
Jeffery Keedyは、最新の記事「Graphic Design in the Postmodern Era」で、
この論点を公表し、批評の欠乏を指摘。

Lorraine Wildは、彼女の記事「The Macrame of Resistance」の中で、「テク
ノロジーの不可抗力とマーケットの要求に直面して、グラフィックデザインを
救う」という道を提案。独自の洞察と考案はプロの病気を治療する方法として
彼女のリストのトップにある。彼女の考えは、Mike Schmidtによって提出され
た手紙で反響を浮け、「The Readers Respond」セクションに発表された。

また、この問題では、Micheal Sheaとのインタビューあり。彼の明確な批評の
手紙は、以前「The Readers Respond」セクションを引き立たせていた。彼はこ
の機会に、彼がグラフィックデザインにおける理論と実践、作者と読者の間に
存在する分離として気付いたものを説明。

一方、Zuzana Lickoが最新のタイプフェイスデザイン「Tarzana」を提供。
Emigre47を通し、初のテストドライブとなる。

最後に重大なことを1つ。Stuart Baileyは、博識な言葉と仲間のデザイナーか
らのフィードバックを求めて世界中を旅している。

1年間の定期購読(4回発行) US以外では$29.00。
定期購読の詳細については: http://www.emigre.com/EMaSu.html参照。
今回発行分を受けるには、8月1日までに予約のこと。

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●主要サイト情報

Sun Microsystems
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「Java Studio 1.0 日本語版」サンプルソフトウェアのダウンロード
http://www.sun.co.jp/studio/samples/

Adobe
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「Adobe Publishing Solution 提案書」のご案内
http://www.adobe.co.jp/whatsnew/index.html

「今週の活用事例」にNECパーソナルシステム、福井市役所、第一証券(株)、
ルシエルブルーと新規4件を掲載。
http://www.adobe.co.jp/whatsnew/index.html

「ポストスクリプト初級コース」の9月/11月分のスケジュールを掲載
http://www.adobe.co.jp/whatsnew/index.html

違法コピー追放活動に関するページを新設
http://www.adobe.co.jp/whatsnew/index.html

嶋田美香

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■イベント・情報
 今見られるイベント・アート・セミナースケジュール
http://www.towers-inc.com/mag/daily/event.html
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●CD-ROMとInternetの融合がもたらすWebでの利用法セミナー
- Macromedia Authorware 4J 実用/応用編 -

<会場>
株式会社アスキー本社ビル 地下2階ホール
渋谷区代々木4-33-10トーシンビル

<内容>
Authorwareによる新しいオーサリングの手法である、Webと融合(連携)した
オーサリングの概念とWeb上での利用法・制作についてご紹介いたします。
Shockwave for Authorwareの概念・利用法及び制 作実例、Shoced CD
テクノロジーの概念・利用法及び制作実例など。

<日時>1998年8月20日(木) PM 15:00 - 17:00
<定員>120名(無料ご招待)
<特典>参加者全員にマクロメディア製品の体験版とAuthorwareの事例集を収
    録した「ShowcaseCD-ROM(Hyblid)」を差し上げます。

<今後のセミナー予定>
9月「Macromedia Authorware4J教育向け/導入編」
-コンピュータを使用した開発実例、他-
10月「Macromedia Authorware4Jコンテンツ開発事例編」
11月「Macromedia Authorware4J最新テクノロジー編」
- Macromedia PathwareTの連携、他 -

<お申し込み先>
株式会社アスキーマルチメディア事業部
TEL: 03-5351-8652 FAX: 03-5351-8659
E-mail: mailto:mmd-mkt@ascii.co.jp
URL: http://www.ascii.co.jp/ascii/mmd/

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●本日、森川が急病の為、コラムをお休みさせていただきました。

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0093 1998/07/30発行
発行社  タワーズ株式会社
     <http://www.towers-inc.com/>
     大阪市中央区高麗橋1-5-6 東洋ビル3F
     TEL:06-231-1011 FAX:06-231-0838

編集長  森川眞行 
     柴田忠男 
     神田敏晶 

情報提供・投稿はこちらまで 
              担当:濱村和恵
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※リアルタイム編集後記「編集長はつらいよ」はこちら↓
http://www.towers-inc.com/square/editor/visit.shtml
※討論・激論・あったか感想・なんでもありの「日刊デジクリBBS」↓
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