[0289] ワールドアート宣言

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【日刊・デジタルクリエイターズ】 No.0289 1999/03/30.Tue.発行
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     1998/04/13創刊
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●ワールドアート宣言
 ゲスト:出淵亮一朗

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●サーバーの件



「ワールドアート宣言」
ゲスト:出淵亮一朗
E-mail:debuchi@atom.co.jp
http://www.atom.co.jp/vrml2/index-j.html

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ここのところハードの進化が早い。今年に入ってから、インタラクティブ3Dグ
ラフィックスの往年の覇者SGIが、Pentium IIベースであるが、初のWindows
NTベースのマシン、Silicon Graphics320/540を発表した。マックもホームユー
ザーに人気のiMACやG3の発売と負けていない。かと思うと3/2には日本でインテ
ルがCPU、Pentium IIIを正式発表。インターネットを快適に体験できるソ
リューションだとうたっている。

それに先立ってインテルのライバル、AMDも新CPU、K6-IIIを2月に正式発表。さ
らに3/2にはまるでぶつけるかのように、ソニーが次世代ゲーム機、Play
Station IIの発売予告した。これは発表を見る限り、5万円以下の家庭用ゲーム
機で、少し前まで、SGIのONYXレベレでしかできなかったような3Dシミュレー
ションを行わせようという恐ろしいものである。しかしインテルも来年は1GHz
(!!)のCPUを出す、と進化はとどまることを知らない。

なんか、すごい混戦模様となってきた。でもハードメーカーの方は大変でしょ
うが、ユーザーとしては安くて早く、性能の良いコンピューターが出てくるの
は大歓迎だ。どんどん競争してね、っていう感じだ。ここにきて、インタラク
ティブ3Dグラフィックス技術を使った、サイバースペースやワールドが本当に
一般に根付きそうだ、ということが現実的になってきたのだ。

今回は、まず、「ワールドアート宣言」として、ワールドアートとは何かを定
義してみよう。そして、その後、関連したおもしろいサイトを紹介していこう
と思う。

●ワールドアートとは……

インタラクティブ3Dグラフィックスは最新の発明され現在、一般的になりつつ
あるメディアジャンルである。「技術としてあるメディアが生み出されたとき、
必ずそれを応用したアートを作ろうとするアーティストが出てくる」とは歴史
の事実である。

コンピューターが発明された後、ホイットニー兄弟による初のコンピューター
アニメーション「ラピス」や、ビデオが発明されるやいなや、ナム・ジュン・
パイクはすぐさま「ビデオアート」を宣言した、などなど。

もちろん、インタラクティブ3Dグラフィックスは20年以上前からあった。当時、
エバンス&サザランド社の高価なベクタースキャンの装置と、スーパーコン
ピュータを使えば、ワイヤーフレームであるがビル街をウオークスルーしたり
することができた。しかし、その鑑賞手段がだれにでも、安くどこでも手軽に
手に入るようにならなければ、本当に表現ジャンルのひとつとして定着しない。

インタラクティブ3Dグラフィックスの技術を使ったアートを「ワールドアート」
と呼ぶことを宣言しようと思う。「ワールドアート」とは、真の「ワールド」
ならではのアートとはどんなものなのか、考え定義してみよう。

1)ワールドは十分な広さと複雑さを感じさせる。

Virtual Realityはまず、ただそこにあるだけのコンピュータ内の世界である。
世界を体験するということは、ちょうど旅に出るようなものである。そこにた
どり着いた人は、自分で歩き周り、物にさわり、人に話しかけて体験が深まっ
ていく。赤ん坊のように、乳母車に乗せられて母親に連れて回られるのでは、
おもしろくもないはずだ。
 
題材として取り上げられる世界とは、興味深いものでなければならない。あま
り人の行かない世界、だれも行けない世界、あるいは、だれも行ったことのな
い世界、空想の中だけの世界などである。外国、宇宙、深海、過去、未来、ミ
クロの世界、あの世、異次元……ネタは現存する小説や、映画の中にたくさん
転がっている。

世界は十分な複雑さとスケール感を持っている必要がある。世界には、あちこ
ちに秘密のほっとするような隠れ家などを、こっそり作っておこう。ただ、も
しかしたら、だれも見つけてくれないかもしれない危険もあるが、こういった
配慮がワールドに深みを増させるはずだ。「秘すれば花なり」とは、世阿弥の
能芸論での言葉である。

2)モデル、マテリアル、テクスチャ、ライト、サウンドは十分な説得力をもつ。

説得力を持つモデリングはポリゴン数を増やし、テクスチャやサウンドは大量
のデータを食う。しかし、やはりアートとして人を感動させるワールドは、
ディテールに説得力を持たなければならないのである。
 
抽象構造主義芸術家は、「具象性はいらない」といい、たとえば、球と立方体
だけで、ワールドを作るかもしれない。「これは、球をクリックすれば、そっ
ちの立方体が回転し、そっちの球は別のワールドへリンクしている……構造的
には君のワールドと同じものだね」と彼は言うかもしれない。しかし、彼は大
切なことを忘れている。

球と、たとえば人の顔は違うのだ。人の顔を見たとき、人は瞬間的に記憶の貯
蔵庫をゆさぶられる。そして、いろいろな隣接した感情が呼び起こされる。こ
の感情は人によって少しづつ違うが、まただれでも大体同じである。球ではこ
の感情が起こらない。アーティストはこういった原理を理解し、呼び起こされ
る感情をうまくアレンジしコントロールするよう、直感によってビジュアルを
工夫し、何らかの感動へとつなげる作業をするのである。

3)ワールドはインタラクティブで因果関係を持っている
 
現実の世界はインタラクティブなものである。自分の働きかけに反応する。ド
アは押せば開く。電話は鳴って、受話器をとれば話声がする。石を投げれば落
下し、池に落ちればチャポンと音をたてて波紋ができる…などなど……。

また、ワールドは因果関係に満ちていなければならない。いわゆる風が吹けば
桶屋が儲かる、というやつである。草に水をやれば育ち、それを牛が食べる。
牛が死ねば肥やしとなり、また環境は豊かになる……。これはインド哲学以来
の真理なのである。

4)ワールド内に住むキャラクターはナールな行動をとる

ナール(gnarl)とは、ルーディ・ラッカー命名による「カオスの縁」における
ふるまいである。もともと、「木のコブ」の意味から、サーフィン用語で「グ
ニャッと巻いた波」そして、コンピュータ用語で、「十分に複雑な」と言った
意味となった。

生命とはナールな存在である。人間の行動もまた、ナールである。ワールド内
にキャラクターが潜んでいるとすれば、鑑賞者がその「デジタル生命」に遭遇
したときに、それは十分にナールな反応をしてほしいものだ。

つまり、単にひとつの同じ動きを永遠に繰り返すといった、単純なおもちゃで
あってほしくないということだ。あるときは逃げ、あるときは威嚇し、しかし、
機嫌がよければすりよってくるといった、気紛れで先の読めない行動を起こし
てほしい。これこそ鑑賞者がワールド内で体験したいと思っていることである。
 
5)ワールドは存在自体に意味がある

例えばワールドで3Dゲームを作りたいのなら、3Dゲームをやれば良いのである。
ゲームとは、ここでは単純な、シューティングやファイトで得点を競う、ある
いは、決められた時間内で何かをするといったたぐいのものである。

アートとしてのワールドは、他のアートと同様に、良い音楽を聞いたあとのよ
うに、良い映画を見たあとのように、良小説を読んだあとのように、ああ、良
いものを体験したという、充実した幸福感を与えるものでなければならない。

ワールドに、あまり目的は持ち込まないほうがいいかもしれない。ツアー旅行
でガイドブックに載っている観光地を大急ぎで回って、写真をとってそれで終
わり、というよりも、海辺で面白い岩を見つけて30分座り込んで眺めている、
と言う旅のほうがアートの鑑賞にふさわしい。

アートとは、全感覚を研ぎすまして鑑賞するものだ。競争や「仕事」のための
単なる背景にしてしまってはいけない。そう、現実世界同様、ワールドは存在
するだけで意味があるのだ。

●ワールドアート特集!

さて、ここでいくつか最新/最近のワールドアートと呼んで良いおもしろい
Webサイトを紹介してみよう。

Virtual Friend 2.0 / Haptek Inc.
http://www.haptek.com/


トップバッターはちょっとすごいぞ。Haptekのバーチャルフレンドは、3Dの宇
宙人キャラなんかが、ペチャペチャしゃべりまくる。しかも、あなたが入力し
たテキストを、そのまま音声で話してくれるのだ! 英語サイトなんで、日本
語や自分の名前を入力すると、いかにも英語圏の人が日本語をしゃべっている
ようで笑える。バーチャルイングリッシュティーチャーって感じだ。

ほんと英語の勉強にこのまま使えそうだ。英語は書けるんだけど、発音が悪く
て通じない、という人にも、通訳機として使えるかも!? しかもこれがフ
リーダウンロード。ちょっとデカいんだけどね(フル機能を使いたければ、正
式版をオーダーしなければならない)。

キャラは、Roswellという宇宙人、ゴリラ、アラビア人、ハンバーガー(!)…
…なんて多彩で、これが目まぐるしく3Dモーフィングする。音声もたくさん準
備され、テンポや音程をかえることができる。さらに、このキャラをメールで
送ることができるのだ。

Haptek独自のハイパーテキストの編集が簡単にでき、キャラモデル、テクス
チャ、モーフ、音声、言葉などを組み立て、自分の「3Dムービー」を作り、そ
れを相手に送ることができるのだ。これはもうポスペを超えてるかも?


珊瑚の惑星 / Coral Planet
http://www.intel.co.jp/jp/home/webtech/coral/index.htm


これはインテルジャパンHPにあるが、実は私の新作VRMLワールドで、本格的
バーチャルダイビングを楽しめるサイトである。

サイバースペースにある珊瑚礁の海に潜ると、そこには23種類、150匹近い魚や
海の動物を観察することができる。
海底は十分に広くて、あちこち探検できる世界となっている。魚はプログラム
で泳いでいるので、かなりリアルだ。
また、ボートの上にあがればホエールウオッチングもできる。これらの魚の説
明やクジラの行動はページ上にポップアップされ、オンライン魚類図鑑にも
なっているのだ。

実を言うとこの作品は、インテルPentium IIIのデモとして製作されているので、
もともとちょっと重たく作られている。また、この作品ではVRMLブラウザに
blaxxun interactive (http://www.blaxxun.com/)
のblaxxun Contact 4.0を
採用している。CosmoPlayer 2.1はまだPentium IIIに対応してなくて、ちょっ
と遅いからだ(しかし、CosmoPlayer 2.1.1は対応するらしい)。

う~ん、ちょっと自分の環境では苦しいという方は、この作品は「ディジタ
ル・イメージ1999東京展」でも展示する予定なので、そちらにぜひおこしくだ
さい(と、なにげに宣伝してますね)。

Multipath Movies / Brilliant Digital Entertainment
http://www.multipathmovies.com/


これもちょっとすごい。ネットで見られるなが~い3Dムービーである。しかも、
マルチパスムービーの名の通り、途中で選択した方に話を分岐させることがで
きる。高性能のWindows PCを使えば、フル画面で5~7分もある"Webisodes"を楽
しめる。

ウェビソードとは、VRMLキャラFloops! あたりで使われだした、Webで楽しめ
る3Dエピソードをさす。3Dワールドを体験するよりもストーリーに重点がある。
だから視点をかえたりはできない。だが、エフェクトのボタンで、モデルをグ
ニャグニャにしたり、風船みたいにブクブクにしたり、ディスコライトを回し
たり……(このへんの感覚よくわからないが)といったことができるので、明
らかに3Dデータである。3Dデータで転送するので、QuickTime Movieのようなア
ニメーションデータよりずっと小さくすることができる(にしても、数メガバ
イトあるんだけど)。

独自のDigital Projectorというプラグインをダウンロードすれば、サンプル
ムービーをフリーで見ることができる。本編が見たい方は購読してね、ってい
うシステムだ。

たとえば、"XENA - Worrior Princess"という番組では、暗黒神秘ワールドの女
性戦士が主人公だ。魔女が崖から落ちようとすると、画面の左右に「やつを助
ける」、「やつを無視する」というボタンがでる。選んだ方でストーリがかわ
るという仕組みだ。

Virtual Friendsもだけど、キャラクターはきれいにテクスチャが貼られ、表情
は3Dモーフで動く。ちゃんと会話とリップシンクもしているようだ。


Virtual World Wide Web / Superscape interactive 3D software
http://vwww.com/


ここは、Superscape(http://www.superscape.com/)の独自3Dプラグイン、

Viscapeのワールド集である。

Viscapeのデータ、SVRのVRMLと違うところは、独自のクオリティの高い表現で
差別化をはかっている。たとえば、影、環境マップ、鏡面反射などをレンダリ
ングすることもできる。そして軽くて早い描画をうたっている。ただ、VRMLの
ようにオープンデータではなく、データ形式は公開されていない。Superscape
としては、SVRのオーサリングツール、3D Webmasterを販売していきたい方向の
ようだ。

Viscapeのプラグインには、VISCAPE SVR / VISCAPE VRML / VISCAPE
UNIVERSALがあり、それぞれ、svrのみ、VRMLのみ、その両方に対応している。
しかし、おすすめはVISCAPE SVRのダウンロードである。ViscapeのVRMLはまだ
ちゃんとサポートされてなく、VRMLのブラウザは一番最後にインストールした
ものが動作するからである。

このサイトのおすすめは、Top 10の中にある"I Still Know What You Did
Last Summer"である。これは、同名の映画をもとにしたインタラクティブ3D
ゲームである。

ワールドに入ると、嵐の夜、小島の波止場に一人ほうりだされる。鎌をもった
変質者がワハハと笑いながら、あなたを追っかけてくるのだ。頭を使って逃げ
なければいけない。迷路を抜けると自分の名前が刻まれた墓石があったり、だ
れもいない別荘に逃げ込んだりする。はまるとかなり恐い。ときどき鳴り響く
雷や、後ろから追っかけてくる殺し屋の足音……。
ほんとうに悪夢の中の世界なのである。


Colony City / blaxxun interactive
http://www.colonycity.com/


先にVRMLブラウザを紹介したblaxxun (http://www.blaxxun.com)
のマルチユー
ザーワールドのひとつだ。ここではアバターとなって、2D/3Dチャットを楽し
める。blaxxunはインタラクティブ3DグラフィックスにVRMLを採用している。

コロニーシティの特徴は、サイバーワールドにコミュニティを構築していくこ
とだ。世界中の誰もが、この都市の住民になることができる。そして、自分の
好きなところに自分の家をもてるのだ。ここではプライベートにチャットを楽
しめる他、コロニーのために貢献すれば、家具を増やしたりすることができる
のだ(コロニーの通貨があるらしい)。そして、すごく貢献した人は市長にも
なれるらしいが、どうすればいいのかは謎。

なんか、以前紹介したイギリスのTV番組「プリズナーNo.6」を思い出さないで
もないが……でも、ああいう「監獄」ではなく民主的な世界です(ちなみに来
日したブラックサンの人と雑談したところ、二人とも「プリズナー」のファン
のようだった)。

最近、入力テキストを音声に変えるチャットもサポートされた(英語のみ)。
blaxxunはそのサーバーでビジネスをやっていきたい方針のようだ。


Avatars 98 / Active Worlds
http://www.ccon.org/conf98/index.html


Avatars 98は、1998年11月21日あたりに行われた、Contact Consortium
(http://www.ccon.org)
による、世界初のサイバースペースでの、国際見本市
であった。

アバターに関するシーグラフのような、コンファレンスをバーチャルにやりた
かったようだ。今年のチェアはBiota.orgのBruce Damer氏である。メインは
ActiveWorlds (http://www.activeworlds.com)
の3Dマルチユーザーワールドプ
ラグインを使ったワールド内でのものであった。

現実のコンファレンスのように、展示会場、アートショー、ゲストによる講演
会などがあった。展示会場には、自分のブースをだすことができる。それは出
展費をとり、自分の好きなモデルやテクスチャで組み立てることができる。
パーツを組み立てて簡単にだれでもワールドを構築できるのがアクティブワー
ルドの特徴である。

アートショーにもアーティストが自分の作品スペースをもうけることができる。
これは、自由応募で作品をつのり、運営側の審査を通ったものが展示されたよ
うだ。

11/21前夜、私はActive Worldsを使って会場に入ってみた(時差の関係で昼
間)。祭りの前の期待感が高まっていた。まるでコミケのコスプレのように、
世界中から思い思いのアバターに扮した人が集まってくる。その中で、ひとき
わ目立つアバターがいた。それはビキニの女性で、肩に蝶がひらひらとまり、
手には何か耳の長いペットをかかえていた。なんか、バーチャルなのに照れて
しまって、じろじろみちゃいけない、でも気になるので周りをいったりきたり
してしまった。

Avatars 98のメインイベントにAVVY AWARDSというアバターコンテストがあった
のだ。結果発表を見るとサマーという名の彼女(?)が一等賞だった(やは
り?)。

Summer/My2Keys/Netropolis http://millenium.simplenet.com/summer.html


私は用があって11/21の本番には参加することができなかった。しかし、トータ
ル4000人がアクセスし、瞬間最大アクセス数は200~300人だったようだ。講演者
としてVRMLの神様、マーク・ペッシなどが話されたようだが、どんな感じだっ
たのか体験できなかったのが残念! (だれか聞かれましたか?)

余談だが、最近Active Worldsのチャットを眺めていたら、英語圏にも顔文字
が出現していることを発見した。ただ、横文字の国ではなぜか、顔が縦になっ
ているのだ。採集したところによると……。

:-} :))) :)) :) :D :^) :( :o) :0) :o)> :>]- :-(

なんかだった。「海外には顔文字はない、うんぬん」といった批判的なエッ
セーを読んだことがあるので、たぶん最近広まったのでは?


PAW 2 / SONY PSDセンター
http://www.so-net.or.jp/paw/index-j.html


PAWはSONYのVRMLブラウザ、Community Placeを使った、昨年あたりからオープ
ンしているマルチユーザーワールドである。ここでは単に3Dチャットができる
だけでなく、自分のペットの犬を飼えることが重要な役割を果たしている。
PAWはこの2月で、PAW「セカンドワールド」とバージョンアップされた。今のと
ころ無料である。

ペットはかってにおしゃべりし、エサをやれば育ったりする。また、あなたに
メールを送ってくる。他のユーザーと名刺交換もできるし... はやりのいろん
な要素がつめこまれたワールドである。

このワールドを仕切っているのは「お金」である。落ちているアイテムを拾っ
てリサイクルなどすれば、お金にかわる。
お金でペットのもようを変えたり、アイテムを買ったりすることができるのだ。
また、季節おりおりのいろんなイベントも組まれている。けっこう人気のワー
ルドで、深夜11時を過ぎると(電話料金が安くなるので)どっと、1000人くら
い入ってくるらしい。


Alice / カーネギーメロン大学
http://www.alice.org/


ワールドサイト紹介の最後に、日刊デジクリの読者から教えていただいたサイ
トをあげよう。

Aliceはカーネギーメロン大学のStage 3 Research Groupによる、インタラク
ティブ3Dグラフィックス、プログラミング環境である。大学での研究なので、
VRMLに近くパブリックサービスである。オーサリングツールもフリーで手に入
れることができる。

ざっと見た感じ、特にVRML以上であるという点はないようだ。ただ、キーボー
ド入力がサポートされているのがいいなあ、と思った。デモワールドでは、
"DancingAlice"が好きだ。アリスがディスコミュージックにのって飛び跳ねる
のがばからしい。

こんなふうに、インタラクティブ3Dグラフィックスのプラグインは百花乱立と
いう様相だ。何が一番いいんだろうか? 個人的意見としてはVRMLである。

VRMLは1997年にVRML97 ISO/IEC 14772-1として認定された。つまりインタラク
ティブ3Dグラフィックスの世界標準規格のデータ形式であるということだ。

VRMLは見るのに重いといわれたが、それはブラウザのCPUやグラフィックスカー
ドへの対応が遅れていただけで、今は他のプラグインと比べて特に遅いという
ことはなくなりつつある。また、データサイズが大きくなるともいわれるが、
VRMLはオープンデータ形式で、中身がテキストでかかれているのが、いいので
ある。自由に自分で対応プラグインを作ることもできる。また、gzipで圧縮す
れば、他のデータと比べて特にサイズが大きいということもない。

オープンにデータが考えられただけあって、表現できる柔軟性はVRMLが一番な
のではなかろうか? ただ、VISCAPEのように、レイトレーシング的な描画表現
ができればと思う。多分、数年前はハードがここまで進化することを予想せず、
その手のスペックはもりこまなかったのだろう。だがこういった表現をサポー
トするのはスペックさえ決めれば、ごくた易いことのはずである。

世界はまわっている。ワールドのためのプラグインもどんどん変化/進化して
いくのだろう。

おまけ。人工生命ネタをひとつ。

Vida Life 2.0 / Art And Technology Foundation
http://www.telefonica.es/fat/vida.html


Life 2.0は今年スペインでおこなわれた世界初の「人工生命」のコンペティ
ションである。これは、ロボット、コンピューター作品、ネット作品なんでも
メディアは問うていない。

結果が発表されている。 一等賞はオランダのErwin DriessensとMaria
VerstappenによるTickleである。この小さなロボットは、肩こり解消マシーン
である。イボイボのあるキャタピラと4つのセンサーを持ち、寝そべって背中に
のせると落ちないように進行方向を制御しながら動き回る。

二等賞はやはりロボットで、カナダのBill VornとLouis-Phillippe Demersによ
る"La Cour Des Miracles"である。
たくさんのロボットが含まれているが、"The Heretic Machine"というのを見て
みたい。これは、檻の中に入っていて、人が覗き込むとラッシュしてきて、格
子をつかんでガタガタゆさぶるといったものである。

そういえば最近、NTT インターコミュニケーションセンター(ICC)でも、「共生
する/進化するロボット展」てのをやっていましたね。

(この回終わり)

■でぶち・りょういちろう 1958 鳥取県生まれ。九州芸術工科大学画像設計学
科卒。(株)アスキー、(株)ハイテックラボ・ジャパン、を経て現在、
(株)アトムの専属アーティスト。94年キリンコンテンポラリーアワード最優
秀賞受賞。97年マルチメディアコンテスト ネット部門エンターテインメント賞
受賞。その他、海外での作品発表、受賞いろいろ。ディジタル・イメージ会員。

■日本でいちばんVRMLをわかりやすく解説できるのが出淵さんである。かつて
「月刊アイピーネット」に連載し、その後も書き続けられたVRML芸術論と人工
生命論、世界のVRML事情などの大量の原稿がわたしのもとに眠っている。どこ
か先進的な出版社はいないものか? 意識の高い編集者のアクセスを望む。
(柴田忠男)

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