[0393] モバイル編集者の落とし穴

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0393     1999/08/06.Fri発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 13656部
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 <楽するための努力には落し穴>

●デジクリSPECIALコラム
 モバイル編集者の落とし穴
 須貝 弦

●須貝もコネタ!フォロー編
 デジタルデータを盲信するな? その2

●書店情報 (投稿)
 私の勝手な一押し

●Webサイト情報
 日本語フォントの無料頒布

●セミナー案内
 JPC8月定例セミナー
 カラーマネージメントの最新動向とユーザー事例



■デジクリSPECIALコラム
モバイル編集者の落とし穴

須貝 弦
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先輩のライターから譲っていただいたPowerBook 5300csを、重さにもめげずに
持ち歩いている。ちょっとした休憩時間や移動時間に開いては、メールのチェ
ックをしてみたり…という毎日だ。

「世の中そんなにお前を呼んでないぞ!」っていう声も、どこからか聞こえて
こないでもないが。しかし最近、紙媒体からはあんまり声がかからず、メール
マガジンの急ぎ仕事ばかりこなしている自分としては、多少重たくても Power
Bookがあるとずいぶんと便利なものなのだ。

仕事のスタイルに大きな変化(というほど大げさなモノではないが)が出たこ
とは、先週の記事を読んでいただければおわかりいただけると思う。

だからといって何もかもうまくいくかというと、そうではない。PowerBook な
らではの不便なところや、落とし穴もいくつかあるのだ。

まず不便なところ。それは重たいこと。代々PowerBookというラインアップは、
重量の軽減をスポイルしている。Duo シリーズや2400のように例外っぽいモノ
もあるにはあるが、メインストリームにはなりえなかった。

私の5300csも3kg超の重量があり、予備バッテリーを加えるとかなりヘビーに
なる。それ以外の仕事道具もカバンに詰め込むと、装備重量は4kgを超えてい
る。これを毎日持ち運ぶとなると、まさしく「平成のニノキン」(某二宮さん)
状態。ついでに筋力トレーニングにもなる。

一方の落とし穴はというと、やっぱりバッテリーの持ち時間だと思う。最初か
らあまり期待はしていなかったが、ここまで持たないとは思わなかった。とく
に工夫をせずに使っていると、だいたい1時間くらいでジ・エンド。予備バッ
テリーを含めても、実際に仕事ができるのは2時間くらいだ。たかが2時間し
か使えないものを苦労して持ち歩くことが、効率がいいことだとは思わない。

たとえば、私が日中に秋葉原で取材した原稿を、夕方6時までにクライアント
に入稿したいとする。午前11時半に家を出て昼の1時に秋葉原に入り、4時ま
で取材をして6時までに仕上げるよりも、2時間早く行動して4時までに家に
かえり、自分の仕事部屋で腰を落ち着けて作業した方が、おそらく人間として
は正しい方向なハズだ。

しかしまぁ、モノグサな私は早起きして取材するよりも、ドトールで涼みなが
ら作業するほうを選んだ。そのかわりバッテリーが長もちするように、いろん
な手段を使ってみたのだ。

基本はRAMディスクの活用だ。RAMディスクは、メモリーの空間をディスクにみ
たてていて、ハードディスクのようにいちいち回ったりしないから、省電力だ
しスピードも速い。PowerBookはデスクトップと違い、システム終了時にRAMデ
ィスクの内容が保存できる。次に起動したときは、前回終了したときの状態で、
RAMディスクにデータが復帰する。

そこで、「メモリ」コントロールパネルから4MBほどのRAMディスクを作って、
そこにテキストエディタや作業中の書類など、仕事に必要なデータを厳選して
放り込んだ。

RAM ディスクの中のアプリケーションで、RAM ディスクの中の書類を開くよう
にすれば、消費電力は軽減できるはずである。小田急線の準急電車で実験した
限りは良好。他にもモニターの輝度を落としたり、サウンドを完全にオフにし
て、いざ秋葉原に進出したのだが…。

ひとつ忘れていたのは、通信だった。私はPHS を使ってデータ通信をするのだ
が、これが結構電力を使うのだ。そして、私が「軽い」という理由だけで使っ
ている某マイナーメーラーも面白いくらいディスクアクセスがある。

そして最大の敵は、これまた「軽い!」という理由だけでかたくなに使いつづ
ける「ことえり」。いくら軽くても、まともな変換候補を出してこないから、
辞書ファイルへのアクセスが頻繁に発生して、電力を使っていく。

表計算ソフトでデータを編集したあと、エディタで文章を書いていたら「バッ
テリーがないからスリープするぞ!」と警告が出た。しかたなく書類を保存し
て、カバンから予備のバッテリーを取り出す。続いて「もうスリープするから
な!」と最後通告が出て、数秒後にあっさりスリープなさった。「ま、予備バ
ッテリーの駆動時間で仕事は片付くだろ」と思いながらバッテリーを交換。

スリープ後、バッテリーを交換。
バッテリーを、交換!?
私は、落とし穴にまんまと落ちたのだ。

PowerBookのRAMディスクの内容が保存されるのは、システムが終了したとき。
スリープ状態でバッテリーを交換したら、それは正常終了ではないから――。

「ノーォォォォォッ!」

私は叫んだ。岩本町のドトール(2階の窓側)で、だ。バッテリーを交換して
再起動すると、RAM ディスクはスッカラカンだった。よくよく考えれば当たり
前の話だ。私の苦労はなんだったのだろう。なんのためにこんな重たいものを
背負ってきたのだろう。節電の努力は、そして今日の仕事は――。

私は駆け足で秋葉原駅に向い、帰路についた。幸い、仕事に必要なデータは全
部紙にメモしてある。急いで家に帰って作業すれば、まだ締め切りには間に合
う。こんなとき、総武線のオンボロ電車の鈍速ぶりが私の神経を逆撫でする。

やっぱり、楽して仕事をしようとするのが間違いだと、私は心のそこから反省
した。こうやって原稿にして書いてみると笑い話なんだが、でもこれは私の基
本的な姿勢に問題があると思った。心底こたえたのだ。

いい仕事をするための努力ではなく、楽するための努力をして結局泣きを見る。
小学生の頃からぜんぜん成長していないではないか。そう思いながら自宅で急
いで作業していると、今度はデスクトップがフリーズしてファイルが破損! 

あぁぁ!

翌日、知り合いの編集者からモバイルギアを見せてもらった。予備バッテリー
と合わせて7時間以上駆動するというそのマシンは、懲りない私の長期目標と
なったのだった。

【すがい・げん】
バイクのキーシリンダーをいたずらされた。ロッテが借金生活。降ってわいた
急な引っ越し。最近いいことがないライター兼フリーター。そろそろ事務所ネ
タでもなくバカネタでもなく、真面目な記事をデジクリに書こうと思っている
24歳。
mailto:gsugai@hh.iij4u.or.jp

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■須貝もコネタ!フォロー編
デジタルデータを盲信するな? その2
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先日のネタに対してさっそくご本人からのレスポンスがあり、「デジタルデー
タを盲信するのはやめましょう」ということが、どのような意図だったのか、
そしてどのような経緯だったのかを知ることができました。「いろいろむずか
しいことが多いので、知らないで変なミスをするのはやめましょうね」という
主旨は、理解しました。

いまちょうど、デジクリのメーリングリストで「HTMLメール」や「メールの添
付書類」のことが話題になっていました。いくら自分が詳しくても、メールを
送る側の知識はそれこそ人それぞれで、いろいろと大変なことがありますよの
~というような話題が出ていたんです。

デジタルでの仕事は、データがいろんなところを渡り歩き、いろいろなやり取
りが発生します。そこで使われるソフトも人それぞれです。だから、DTP の世
界における「ページネーションマニュアル」のような、誰もが最低限の共通認
識をもって仕事ができるような、土台づくりが必要なんだと思います。つまり
「知らないで変なミスをする」ことを防ぐわけですね。

でも、職場でそれをやろうとすると、小姑の出現を招きそう。まぁ、いた方が
いいのかもしれないですけどね。

【すがい・げん】
雑誌は奥付付近から見る。初めて見る場合は版元、印刷会社等。いつも読んで
いる雑誌は編集後記から。そういう習性がしみ付いている、おかしな24歳。

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■書店情報 (投稿)
私の勝手な一押し
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こんにちは。私はとある地方の某本屋で働いています。店の宣伝は好きでない
ので、書店名は匿名とさせてください。地方の美術系大学の出身ですので、最
低限のことは知ってるつもり。今はしがない書店員ですが、デジタルデザイン
に未練あり。

私の勝手な一押し

TOMATO (CD-ROM:ハイブリッド)
イギリスのTOMATOのCD-ROM。映像と音楽。それなりに売れてます。扱ってる書
店は限られているので地方の人は手に入れるのは難しいかな。

GASBOOK6 (CD-ROM:ハイブリッド)
当店一番人気。T-シャツ、ビデオ、CD-ROMが入ってます。これまた地方の人は
入手が厳しいかも。

上の2点ですが、パソコンショップでは置いている店とそうでない店がはっき
り分かれているように感じます。PCショップはゲームとビジネスソフト中心と
いった感じでしょうか?

都心型大型書店に芸術書コーナーかCD-ROMコーナーに、ひっそり置いてあるケ
ースをよく見ます(私の周辺の場合ですが)。書店員がCD-ROMの内容を知って
いるかで、置き場に差があるようで。

書籍はあいかわらずPhotoshopとIllsutorator 関連入門書が人気。3D関連は一
時ほどではないような。夏休みになれば変るかな。雑誌は design plex(出版
社:BNN)が人気。レイアウトスタイルブック'99(出版社:ワークスコーポレ
ーション)も好調。おそらく付録CD-ROMが良いのかな。

Macがいちばん(雑誌)が休刊です。iMac が売れているそうですが、本や雑誌
はいまいちですね。年末はすごく売れていたのに。

何気に思いつきでメールしてしまいました。

ハンドル:ととと(匿名、匿アドレスは駄目かしら?)
ホームページ作成中

・こういう情報は大歓迎です。どんどん投稿お願いします。(デジ栗)

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■Webサイト情報
日本語フォントの無料頒布
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タイポグラファー佐藤豊さんが、ご自分のWeb サイト「ようこそ!書体の世界
へ」で「かなロゴ」と「キャパニトL-教漢」の書体を無料で配布している。

「かなロゴ プレゼント」では、ひっこしました!、おたんじょうび おめで
とう!、あけましておめでとう!、クリスマスセール!、ディスカウント!
など17のコピーが、フォントを変えて6種類用意されている。グリーティング
カードや手紙、チラシやポスター、Webデザインなど、何に使っても自由。

色をつけたり、組み合わせを変えたり、好きなような改変も自由。「プロの人、
どうぞ仕事に使ってください」とのこと。これらは、佐藤豊さんの創作したか
な書体をアウトライン化したAdobe Illustrator のデータである。

また、キャパニトL-教漢(Ver.1.1)という日本語TrueType フォントも無料頒布
している。Acrobat4.0Jで作成するPDF ファイルに埋め込みも可能だ。ただ、
漢字は小学校で習う教育漢字しか含まれていない。漢字以外はJIS に規定され
ている文字しか含まれていない。

「キャパニトL-教漢」は、全角かな部分にキャピー(デザイン:佐藤豊)を、
かな以外の文字には、アニト(デザイン:佐藤豊&成澤正信)を使用して合成
された書体である。普通の日本語TrueTypeフォントと同じように入力・使用で
きるが、ビットマップ・フォントを含んでいないので、小サイズでの画面表示
などではあまりきれいではない。

教育漢字だけでは困る人は、フォントワークス社のアニト-L またはニィス社
のアニトの漢字を買ってくだしさい、ということ。このフォントは、類似品を
作成したり、改変などは許されていない。

http://www.linkclub.or.jp/~typelabo/

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■セミナー案内
JPC8月定例セミナー
カラーマネージメントの最新動向とユーザー事例
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日時:8月18日(水)13:30~18:00 ※13:00より受付開始
場所:東京オペラシティタワー 48階 アップルコンピュータ(株) 本社セミ
ナールーム 京王新線・都営地下鉄新宿線「初台駅」前
参加費:JPC会員¥5,000 JPC団体会員¥7,000 非会員¥10,000

カラーマネージメントの最新動向について
JPCカラーマネージメント部会 杉山久仁彦

モニタのキャリブレーションの導入事例とOPTICAL
(株)イメージ アンド メジャーメント BPセールス 菅澤

QuarkXTension(いろピタXTension)でColorSyncを使う
(株)ユニゾン 吉田 

MonacoColorの導入事例
(株)第一サンエー 横山(株)アプティ 富川 

5:00~6:00情報交換会「カラーマネージメントの課題について」
(進行:恒陽社 石塚)

http://www.jpc.gr.jp/index2.html

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■編集後記(8/6)
・諸星大二郎は面白い。いま「西遊妖猿伝」に夢中。かつて双葉社版の単行本
を揃えていたのだが、途中で休止。潮出版が大幅加筆した完全版を出し始めた。
10巻目でそれを知り、あわててそれ以前のものを求め始めた。あと2冊まだ未
入手だ。わたしは返品をお化粧直しした本が嫌いなマニアで、3辺が削られて
いないのを探している。手塚治虫全集もあと1冊で後期も全巻が揃うが、どこ
かに「そよ風さん」の化粧直しなしのきれいなのないかな。ばかですね(柴田)

・「あの人はいま?」って好きじゃない。惨めさをクローズアップしている感
じがするし、出演する人も今の生活に満足している人ばかりじゃないから。だ
けどこのサイトはデマ混じりであっても、問う人たちの要求に応えているとい
うスタンスで、情報を交わすネットの特性を上手く使っているサイトの一つだ
と思う。大体問われているひとたち自体がマイナーすぎる。逆に答えから元の
バンド名を知ったり。影山ヒロノブってレイジー(名前だけ知ってる)だった
のね。昔好きだった漫画家さんが引退しているのを知ったり。あの人はまだ頑
張ってるんだ、と嬉しくなったりした。うん。プライバシーに踏み込まない程
度に、隠したい過去を暴露するのを主体とはせずに、やっちゃってくださいっ
て感じ。ここで盛り上がった人の復帰とかあれば面白いな。(hammer.mule)
http://www.threeweb.ad.jp/~elephant/tuiseki/tuiseki.htm

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発行   デジタルクリエイターズ
     <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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 担当:濱村和恵
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