[0464] 「どうしてデジタル始めたんですか?」の答えに代えて。その2

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0464   1999/11/11.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14326部
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 <迷ったら、やる>

●デジクリトーク
 「どうしてデジタル始めたんですか?」の答えに代えて。その2
 MacとPhotoshopを買うまで
 "Yume"(竹久マサオ)
 
●デジクリトーク 
 インターネットから生まれた本「パラグアイに住む」
 田中裕一
 
●展覧会案内
 イラスト展『吉井宏作品展1999』



■デジクリトーク 夢賣新聞
「どうしてデジタル始めたんですか?」の答えに代えて。その2
MacとPhotoshopを買うまで

"Yume"(竹久マサオ)
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前回、学生のこの質問にちゃんと答えられればと、前歴から書き始めた。

20才代に写真で色々と試していた私は、10年ほどのブランクの後、90年
にカメラマンに復帰。91年秋。少し日本人ともつき合い上手になったMac に
再会。そいつはPhotoshopという実に私好みのソフトを連れて来ていた。

「やるならこれかな…? きっとこれだ、これっきゃない!」と思った。本屋
でさっそく関係の雑誌を探し、一番広告の多いMACLIFE を買い込んだ。あまり
良くわからないが、とにかくPhotoshop や画像処理に関する記事を見つけては
読んでみた。以来そこらじゅうに「これすっごいぞォー!」っと知ったかぶっ
てふれ回った。

92年正月。「スーパーデザイニング」という本が出た。サブタイトルは「コ
ンピュータが変えるデザインと印刷」。出版は「コマーシャルフォト」の玄光
社。駆け出しカメラマンの頃に、ポートフォリオを持って押しかけた出版社だ。
「オッ出た、出た!やっぱりなぁ。コマ・フォトからこんなの出たぜ!」と早
速買ったものの、Macをまだよく触ってもいないので、MACLIFEと同様に内容は
あまり理解出来ない。

やはり井の中の蛙だった。音楽の世界にはシンセサイザーなどに端を発したパ
ソコンによる制御が普及していたのは知っていた。写真の現場から離れていた
10年の間にデザインや印刷、そして写真の領域にも確実にパソコン、と言う
よりMacは広まっていた。

「先ずは外堀を埋めにかかるか。本丸は後の楽しみに置いといてぇ」などと負
け惜しみをつぶやきながら、わかるところから読み進み、図版の作品に見入っ
ていた。まだ本当にMac を買えるかどうかも判らないのに、気持ちはとにかく
早く「自分で作ったろやないかぁ」の一心だった。

なつかしい玄光社に、写真ではなくCGのポートフォリオを持って「スーパー
デザイニング」編集部を訪れるのはそれから1年後のことになる。

92年冬。たまたま取材で長崎に行き、パリ時代の友人のデザイナーに久しぶ
りに会った。いつものようにMac の話をしたら「俺、もう仕事で使ってるよ」
とサラリと言われてビックリ。「あーもぅー手が早いんだからぁー」。

取材を終え、夜に彼のスタジオを訪れ仕事場を見せてもらった。デザインや画
像処理にMacのCXとQuadra700が実際に稼動している。それまでショップなどで
見たのはやっぱりあくまでもデモンストレーション。お定まりのダイジェスト
でしかなかった。

でもここは違う。それまで打ちっぱなしの練習場を金網の外から眺めていた輩
が、18ホールのコースの見学に行くようなもの。山あり谷ありバンカーあり
の初めての現場にそりゃぁもう興奮! その友人が実際にMac で作ったデータ
を画面に映しながら、刷り上がったポスターやパンフレットを見せてくれた。
「やっぱ、うちも早く入っれよ!」と決めたー。

「また来るからネ、今度はゆっくと」と言い残して帰途についた。それからは
狂ったように資料を集めては調べまくった。当時のMACLIFE に広告を出す阪神
間の日本橋以外(というのは当時まだ大阪不案内の私は日本橋を全く認識して
いなかったのだ)の店には殆ど顔を出すか電話で問い合わせた。

情報だけは頭パンパンに膨れ上がった。まるでガキの頃、戦艦や戦闘機、戦車
のスペックを一生懸命そらんじて言えたのと同じ状態。どこかを押したら、耳
からプニューってカタログが出て来そうだった。そこでこめかみを押しながら、
自分が写真を取り込んで作業するのに必要な機材をリストアップしては、あち
こちから山のような見積もりを取った。請求書の山はよく見るが、見積もりの
山はあの時限りだ。その結果、必要な周辺機器はほぼ決まったが、Mac 本体を
どれにするかは最後の最後まで悩んだ。

いよいよそれまで高嶺の花と思っていたMac 一式を入手する資金の算段の時が
来た。何しろ当時の私としては分不相応な投資だ(今ならなおさらトンデモな
い金額。その頃、結婚を翌年に控えての何たる無謀!「ワタシ、決して振り返
りません」)。

結局、オートフォーカスの一眼レフに買い替えようと思っていた軍資金を頭金
に、残りを5年のリースにすれば何とかなるだろうと腹を決めた。…以来、今
もってマニュアルのカメラが現役。「物は大切に使いましょう」がモットーな
んですぅー。

92年夏。再び長崎を訪れ、今度は彼のスタジオに10日あまりの居候。その
間、彼の仕事を見たり、Mac が空いた時には恐る恐る触らせてもらった。この
時、自分で作ったデータを入れた初めての3.5 インチのMOは、今でも机の中
にある。忘れもしない128M用1枚が75000円ナリ。

それにつけても今思うに、時間に追われて忙しい仕事場に、10日以上も二重
丸の初心者に居座られ、アレコレ質問され続けるとは迷惑千万な話この上ない。
その間嫌な顔ひとつせずにつきあい、色々と教えてくれた友人は現在も私のデ
ジタルの恩師であり、いまだに何かあると相談に乗ってもらっている。感謝の
超1970万色!(何のこっちゃ)

この2週間の滞在のお陰で、デジタルデザインの概要を大雑把なりにも掴む事
が出来た。もとより私はPhotoshop で写真の加工ができれば良かったので、そ
れ以上の事はオプション感覚で見聞きさせてもらっていた。ところがこの事が
後に幸いしてか災いしてか、デジタルの「ダイナミズム」というか「いい加減
さ」に見事ザブンと呑み込まれて行くとは当時は全く気付いてナーイ!

92年秋。買った買った!1年越しでとうとうQuadra950 を発注。結局その時
点での最高機種にした。メモリーは24M、ハードディスクは奮発して400
M。当時としては超立派なもの。経済的にも精一杯を越えた装備だ。システム
はSystem7。この頃漢字トーク7は出ておらず、まだQuadra は英語のシステム
のみの対応。

ソフトはPhotoshop2.0。当時すでに日本語化されていたが、英語版が買ったフ
ィルムスキャナに一緒について来るそうな。どうせ英語のシステムだからいい
だろう(…ところがこれが到着初日の最初のトラブルとなった)。

さていよいよ思う存分制作が出来るようになるぞとストレッチ、腕立伏、腹筋、
ジョギング(しないしない)。以後、興奮と喜び、自己嫌悪と後悔。日々これ
百喜百憂の生活の始まりだった。

【Yume/たけひさ・まさお】YUMEWORK@aol.com
http://members.aol.com/yumework
Digital Iconography 【WORKSHOP YUME】主宰
写真家/フォラストレーター/ディジタル・イメージ会員 第3回日本デジタ
ルアートコンテスト準グランプリ受賞。

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■デジクリトーク
インターネットから生まれた本「パラグアイに住む」

田中裕一(パラグアイ共和国アスンシオン市在住)
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・今年8月に、アゴストから「パラグアイに住む」という書籍が発行された。
出版者と筆者が一度も顔をあわせることなく(東京と南米ではねえ)メールの
やりとりだけで作り上げた、いかにもインターネットの時代にふさわしい本で
ある。発端は筆者が開いたホームページ。それを見た「気分はほとんどラテン
の人」として有名な(笑)アゴストの広瀬一郎さんが、本にしましょうと持ち
かけたもの。これがB6の厚い書籍となり、アゴスト(8月:スペイン語)に
「アゴスト未来選書」の第一号として刊行された。パラグアイという見知らぬ
国のようすが活写されていて、非常に面白い(デジカメで撮影した写真はイマ
イチだけど)。筆者の田中裕一さんに、この本ができるまでの話を書いてもら
った。                            (柴田)

インターネットを始めた当初、南米の情報はほとんど無く、パラグアイに関し
ての情報は全くありませんでした。友人達に声を掛けても誰もホームページを
作成する様子も無いので、自分で作成することにしたのです。

97年の3月、最初は写真も何も無い簡素な14ページでスタートした当方の
ホームページ、見聞きしたパラグアイに関する情報を毎日それこそ日記のよう
に綴り、今日まで書き足して来ています(現在は185ページあります)。

ホームページを出して以来、日本の色々な方からメールをいただくようになり、
パラグアイという特殊性の為か新聞、雑誌に紹介されラジオにも出演する事が
出来ました。

そして、今年の正月、それまで何回かメールをいただいていた方から思い掛け
ないメールをいただいたのです。

「実は私は出版社を経営している者なのです。田中さん、ぜひパラグアイにつ
いての本を書いてください。私どもはどちらかというとコンピュータ系の出版
社ですが、一般書でも大丈夫です。『パラグアイはパラダイス』というタイト
ルではいかがでしょう。半分が南米カップで来る人のための観光ガイドで、半
分は「比較文化論」のようなエッセイ仕立てで(ホームページの文章の再利用
も可です)。写真ページも20ページくらい入れたいですね」

というものでした。出版社はアゴスト、主にグラフィック・デザインの雑誌を
発行している会社という説明で、今回の本が一般図書としては始めての企画だ
との事でした。

私は「迷ったら、やる」という事をいつも心に決めていますので、この折角の
申し出、人生で本を書くチャンスなど滅多にあるものでは無いと考え、即答で
OKを出したのです。

こうして出版の話が決まりました。私はパラグアイ共和国・アスンシオン市に
在住、出版社は東京都千代田区、地球の一番遠い場所で二人の本作りが始まり
ました。それまで日本の書店で販売しているようなパラグアイに関する一般書
(ガイドブックも含めて)は全く無く、パラグアイを取り扱った書籍としては
初めてのものとなるという事で、なるべく平易に判り易く多くのテーマを広く
浅く取り上げることにしました。

忙しい毎日を過ごしているサラリーマンが、ふと書店で聞きなれぬ国の本を手
に取り、日常とは違う地球の反対側の世界に思いを馳せ、リラックスしてもら
う、そんな本を目指して書いてみました。

それまでのホームページで、折に触れてエッセイらしき物を書いていましたの
でこれをある程度は利用出来るとしても、半分以上は新たに書く必要がありま
した。また趣味で出しているホームページと「販売する商品としての書籍」で
は全く構成が異なります。何度も校正を重ね、何とか4カ月後には最初の草稿
が出来上がりました。

早速インターネットで原稿を送付し、出版側の意向を聞き、書き直してまた草
稿をメールで送りました。このような作業を何回も繰り返し、何とか出版側の
OKを取ることが出来ました。また出版社からは、写真も多く載せたいという
ことでデジカメで撮影し、これもインターネットで送付したのです。

こうして企画から約半年、地球の反対側でそれぞれが作業をし、お互い一度も
顔を会わす事も電話で話をすることさえも無く、インターネットだけの交信で
本が完成したのです。まさに「時代の本」と言えると思います。また「アナロ
グ媒体」が「デジタル媒体」に置き換わるのが普通ですが、今回はその反対、
これも今風なのではないかと思います。

本のタイトルは「南米のパラダイス・パラグアイに住む」、日本のメディアで
はほとんど取り上げて来なかった普段着の南米パラグアイの様子を記した本で
す。日系人が多く、親日的で治安も良く、文化的な生活が送れる、そんなパラ
グアイのありのままの姿を色々な角度から書いております。

先の見えない現代の日本、本書が皆様の生きて行く方向性に対して何かのヒン
トになるかも知れないと思っております。「脱日本の指針」というサブ・タイ
トルも付けてみました。

もし宜しければ書店でお手に取っていただければ幸いです。東京であれば八重
洲ブックセンター(地階)、紀伊国屋書店(旅行ガイド・海外生活のコーナー)
ジュンク堂などで買う事が出来ます。

「南米のパラダイス、パラグアイに住む」
田中裕一著 アゴスト刊 1400円 421ページ

パラグアイに行こう、イグアスに行こう・南米現地発信ページ
http://www.mars.dti.ne.jp/~mitsui99/

アゴスト
http://www.agosto.com

【たなか・ゆういち】tanaka@uninet.com.py
東京世田谷生まれ。東北大学大学院工学研究科博士課程前期二年修了。(株)
青木建設勤務、本社勤務のほかパナマ、ブラジル駐在員。1990パラグアイ
共和国に移住、現在アスンシオン市在住、地元保険会社に勤務。

パラグアイは例年ですと11月は夏の初めで、強い太陽の照付ける元、気温も
30度を超える日が続くのですが、世界的な気象異常なのか、この一週間くら
い気温は低く、肌寒い程です。これから本格的な夏を迎える前の天からのプレ
ゼントかも知れません。暑く厳しい夏が3月始め頃まで続きます。

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■展覧会案内
イラスト展『吉井宏作品展1999』
http://www.yoshii.com
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<以下は主催者情報>

日時 11月15日(月)~27日(土)12時~19時(日・祭日休み)
   最終日17時まで
会場 杉野学園 ギャラリーU <入場無料>
   東京都品川区上大崎4-5-8 Tel03-3491-8151(内線274)
   アクセス JR目黒駅、東急目蒲線目黒駅、徒歩3分。ドレメ通り沿い
   詳細・案内図はhttp://www.yoshii.com

メッセージ
1999年制作の新しい作品を中心に、雑誌カバーイラスト原画やキャラクタ
ーイラストなど、いろいろ展示します。

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■デジクリWEBサイト案内
http://www.murauchi.co.jp/sale_ivent/h111111111111.htm
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平成11年11月11日午前11時11分11秒
EXPO会場での超特価ノートパソコン100円タイムセールに続きこのページで
衝撃の" 何か "が起こります。激安なのか!?  懸賞なのか!?  それは秘
密です!!

とかいうサイトがあったけど、なにが起きたのですかねえ。デジクリがお手元
に着くころはとっくに終っているでしょう。このごろなぜかデジクリの到着が
遅いですね。デスクに聞くとちゃんと送ってますよ~とのことだが、まぐまぐ
が調子悪いのか? 463号なんてわたしのところに発行時刻からちょうど半
日後の、もうすぐ木曜日という時間に到着したのである。なぜに? (柴田)
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■編集後記(11/11)
・久しぶりのアナログの入稿を楽しんでいる。画集の日本語版なのだが、絵の
部分は既にあるフィルムを手貼り、テキスト部分は写植である。まず写真の位
置指定を先に送り、そのレイアウト用紙コピーに写植をコピーして貼る。昔か
らこの作業が好きだった。でもDTPに慣れて校正が甘いので、印画紙になっ
てから間違いを発見したりする。オンラインになってさらに校正が甘くなった
(のか集中力がなくなったのか)ミスが多いこのごろである、反省。(柴田)

・最近、まぐまぐ経由の本誌到着が遅いようである。昨日の号はお昼までに出
しているのに、昨日中には届かなかったようだ。メルマガ発行システムは、も
ちろんいろいろと機能があるのだろうが、基本的な形だと、何通かごとにメー
ルを送り出すのであるから、最初に登録されているアドレスと最後に登録され
ているアドレスとでは届くのにタイムラグがある。一度に処理できるメルマガ
の件数にも限界があるので、送信処理をしたものが多く詰まっていれば、自然
待つことになるのであろう。…こちらではいかんともしがたいのであります。
お待ちいただいていた皆様、申し訳ありません。(hammer.mule)

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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.shohyo.co.jp/nagesen/ <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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発行   デジタルクリエイターズ
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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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