[0508] 勘違いと偏見と誤解の世界

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0508   2000/01/18.Tue発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 14756部
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 <コソコソと『日本人のくせに~!』の呟き>

■デジクリトーク
 勘違いと偏見と誤解の世界
 海津宜則
 
■デジクリトーク
 水鳥たち。
 北澤浩一

■連載 「ip2000」プロジェクト奮闘記 0001(1/18)
 ゼロからの出発
 川井拓也

■投稿 ホームページリニューアルインフォメーション
 大和団次郎

■編集部からお知らせ
 


■デジクリトーク
勘違いと偏見と誤解の世界

海津宜則
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突然、事情があって降板してしまったので、そのまま静かに消えるつもりでい
た年末、柴田さんより原稿執筆依頼のメールが舞い込んで来た。例の「199
9年、わたしにとって最大の危機とその対処」についてである。取りあえず執
筆することにした翌日だったか? デジクリにこのお題目の原稿募集が掲載さ
れていた。

事情があって忙しく連載を降板した者が、募集原稿に投稿した形で再登場しち
ゃうのは、やっぱり変だ!

と、感じたので、お断りしてしまった。しかし鬼の柴田さん(失礼)は年明け
もシブトク執筆依頼を打診してくるので、取り合えず1カ月に1回程度という
ことで受けることにしたのだが・・・私の原稿って面白くもないし、ためにも
ならないと思うのだが・・・? ・・・どうして???

ところで、「1999年、わたしにとって最大の危機とその対処」用に書こう
と思っていたネタが実は、デジクリそのものであった。私が、突然デジクリに
原稿を連発した影響なのか? 一部のヒトから、どうも私は気むずかしく口煩
いヒトというレッテルが貼られてしまったようである。生身の私をを知ってい
る方から見たら、思わず笑ってしまうことだが、知らないヒトは本気にするだ
ろう・・・と少しだけ背筋が寒くなった。言葉とは面白くも恐ろしい最終兵器
かもしれないと改めて考えてみたが、どう頑張っても、一度染みついたレッテ
イルはなかなか剥がれないのが世の常である。だから、対処法はない。

ところで、前に書いたような気もするが、昨今は名刺交換した相手の名刺にメ
ールアドレスが記載されていないと致命的と言っても過言ではない・・・と、
私は考えている。しかし、まだまだ通信を行なっていない方も多いのも事実だ。
で、このメールアドレスの有無はそれぞれの住む世界を別のモノにさえしてし
まうのではないだろうか。例えば、既に私の生活の中ではFAXもほとんど必
要なく、すべてがメールで処理されている。しかし、さすがにこう書くと、少
しばかりオーバーだが、実際私がFAXを使うのはソフトウェアのアップデー
トの申込みぐらいである。それすら最近はオンライン化しはじめている。多様
化と一括りにしてしまえば簡単なコトだが・・・。

ところで、同じ仕事をしている者同士でも、まったく違う次元で生きているよ
うなコトも実際にある。もちろん、どちらが優れているとかという問題ではな
い。しいて言えば、どちらも優れていないような気がする。同じような環境で
仕事をしていても、テリトリーの違いから発生するズレということもあるので
はないだろうか。特定の組織へ参加しているかいないか? あるいは、特別な
BBSなどに固まっているかいないか? という・・・実は、本質的になんら
意味のないコトが、住む世界に壁を作っているような気がしてならない。しか
も、ネットワークという世界が進化すればするほど、デジタルという怪しい呪
文が蔓延するほど、この怪しいテリトリー意識が増幅しているような気がする。
気のせいだろうか?

少なくとも、あこがれの組織に参加した途端、鼻先が10センチも伸びるよう
なヒトとの同席はご遠慮したいものだ。しかし、最近、このパターンが多いの
は何なのだろうか? やはり、まだまだ日本は古き良き時代の肩書き社会から
脱皮していないのだろう。"Discover Japan ?"(死語)合掌。

さて、メールアドレスを取得して、次に行なうのがホームページ作成だろうか。
一通りネットサーフィンをやり疲れた先に待ちかまえている次のハードルであ
る。私も数年前に勢い余ってホームページを作成した。しかも、ドメインまで
取得してしまったのである。よくあるパターンである。

ところが、これを『日本人のくせに格好付けてcomなんか使って~!』と陰
口を叩く輩がいる。今でこそco.jpなどを取得するのは、さして難しいこ
とではないが、それでもcomより維持費がかかる。出来るものならco.j
pだろうが・・・当時はそれをいくらお金を積んでも個人には発行してくれな
かった。だからcomなのである、それを理解してもらえないからか、いまだ
にアチコチでコソコソと『日本人のくせに~!』の呟きが聞こえてくる。

メールアドレスは短いに越したことはない。もしcomに先客がいたら、to
(トンガ)という手もあるが、これまた『トンガなんて阿呆か?』と馬鹿にす
るヒトがいる。これって差別じゃないだろうか? と私は思うが、騒ぎたいヒ
トは勝手に騒げばよいので、聞く耳を持たないことにしている。

余談だか、コレって、『クリエーターたるもの、常に最新のハードウェアで武
装していないと笑われる』と騒ぐヒトに似ているような気もする。確かに最新
のハードウェアで武装するに越したことはない。しかし、今ある環境で特に不
自由を感じないのであれば、あえて買い換える必要もないわけである。問題な
のは、どんな作品を作ったか?であって、どんなハードやソフトで作ったか?
ではないのだが・・・勘違いしているヒトはまだまだ多い。

さてさて、話を戻すと、勢い余って作成したホームページも、作成当初は、よ
せばいいのに、苦手の英語で、毎日簡単な文章をしたため、それに合わせたイ
ラストやフォトイメージングを作成していたのである。そのせいだったのか、
届くメールの半分以上は外人さんからという悪夢の日々を過ごしたコトを思い
出した。一番びっくりしたのは、私が日本人ということを知らずに、日本の方
から英文メールが届いたコトだ。しかも、しばらく私自身が気づかずに英文メ
ールを取り交わしていたのだから、勘違いというのは本当に怖いと痛感したも
のだ。まっ、comだからアメリカ人と思われていたのだろう。

さて、毎日作成していたイラストも、解像度が低いとは言え、半年ぐらい続い
たのだから我ながらびっくりする。今はやりの【毎日トップ画像更新】の先駆
け(?)なのだろうか。そして、ある時ちょっと大きな仕事に流されて更新が
止まった途端・・・永遠のブラックホールに吸い込まれたかのように、私のホ
ームページは交信を絶ってしまった宇宙船のような存在になっていた。

それから、様々な方からリニューアルは何時なのか? と聞かれるたびに・・
困った顔をしていたのは言うまでもない。「一度でも、怠け癖がついてしまう
と、こんな風になってしまいますよ!」の典型例である。そうこうしている昨
年の末、何かに導かれるように・・・と書くと格好がいいが、突然、実質1年
以上放置したままであったホームページを、リニューアルするコトにした。と
ころがこの世界・・・1年以上前と言えば、太古の昔的状況と言っても過言で
はない。ほとんど考古学の世界である。

とにかく新しいソフトと格闘すること数日・・・なんとか年末には間に合った
ものの、なんとなく収まりが悪い。デザインがどうのこうのという問題ではな
くて・・・何かが自分の中でしっくりしない。それは未だに漠然として私の頭
の中から消えることがない。取りあえずそのモヤモヤは今後の課題として残す
ことにし、年明け早々にBBSを設置することにした。

とは言っても私が利用しているレンタルサーバーには既製品が用意されている
ので、勢いがあれば誰でもBBSを設置出来るというわけである。しかし、こ
の勢いが災いしたのか、大晦日に10年ぶりくらいでタマタマ見た紅白歌合戦
の美川憲一さんの仮面ライターの敵キャラ的衣装が怖かったのか? 突然腹痛
が走り・・・そのまま風邪で寝込んでしまった。

そして、気が付けば2日の昼過ぎという、なんとも間抜けなミレニアム体験と
なってしまった。元日の記憶がまったくないのであるから、大間抜けもいいと
ころだ。紅白を見たのがわるかったのだろうか? 突然ホームページをリニュ
ーアルしたのがいけなかったのだろうか? 普段しないことをしてはいけない
と、祖母が口を酸っぱくして言っていたコトを思い出した。年配者の忠告は心
して聞くものだと今更ながら感じ入った。私の1月1日は何処に行った~?

オマケ:今年の大河ドラマは好きなネタの『葵・徳川三代』。第一回放映の関
ヶ原の戦いは映画さながらのシーンが多く、衣装も斬新で圧巻であった。熱い
一年になりそうだ。

【かいづ・よしのり】yoshinori@kaizu.com
グラフィックデザイナー/イラストレーター。
http://www.kaizu.com

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■デジクリトーク
水鳥たち。

北澤浩一
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水鳥たち。




■ 一月初め、私は日本海側の国道を酒田へ走った。
 もちろん写真を撮るためである。
 国道に白い泡のようなものが舞う。
 打ち寄せられた海水が泡になったもので、土地のひとにはその呼び名が
ある。時折それは、ちぎれた水鳥の羽に似ていた。
 プロビアのiso1600が一本しかなく、ほとんどをiso100で我慢した。
 昨日ポジがあがってきたが、シャッター速度が足りず波のかたちは正確
ではない。雨の装備がなく、三脚も使わなかった。
 これにどんなコピーをつけようか。まだ言葉も熟してはこない。



■ 一群のフィルムの中に、赤ん坊の写真が写っていた。
 昨年10月に産まれた友人の始めての子で、奴は公務員だから遅くできた
方だといっても良い。
 はじめは外で飲むはずだったのだが、奥さんと本人の所望で家へ呼ばれ
ることになった。
「北澤さん抱いてくださいよ」
「へい。こ、こんなわたしでよかったら」
 首の据わらない赤子を抱かされる。
 その前に、台所で手を洗う。ハンカチは持ってる。
 赤ん坊は父親の趣味で、難しい読み方をさせる文字ひとつが名前なのだ
が、でへでへとひとの顔をみている。
 あぐらをかきながら子供を抱き、更に酒を飲むのは難しい。
 五分でぐったりとなった。汗もかく。
 暫くすると、父親がおしめを替えた。
 私はその姿と赤ん坊のきんたまを写真に撮った。
 父親である友人は器用におまけみたいな足をもちあげ尻を拭き、何事か
を成し遂げたかのような顔をして卓袱台に戻った。
「ぐっといけ、ぐっと」
 手を洗わずに私に日本酒を薦める。
 部屋には緑色の牛乳に似た便の匂いが残っている。
 ままよ。



■ 酒田には沢山の水鳥がいた。
 低く飛ぶ、冬の鷹も真近である。土門さんの写真館を横目に、日帰りの
風呂に入ることにした。小さな露天風呂で土地のひとに酒田港の噂を聞
く。酒場ならあそこがいいとも教わる。
 今、そのポジをスキャンしていると、果たしてこれが現実だったのだろ
うかといういぶかしい気分に襲われる。
 穴蔵のような事務所でモニターを18時間眺め、1000円で買った赤いフリー
スを上から羽織っている。
 私は一杯目の酒をショットグラスに垂らした。
 鼻を近づけ普段はしたこともない匂いを確かめる。
 緑色の牛乳の気配を捜したが、あれは新しいものだけの匂いなのだ。


○「青い瓶の話」 vol 2236

【きたざわ・こういち】
1958年生まれ。97年1月より、読売新聞社の有料会員制インターネット
サービス「yominet」、その文芸フォーラムを業務委託され執筆・担当。
コピーライター/デザイナー。「文芸とアート、広告との接点」をテーマにP
DFを軸とした活動を行なっている。
http://www.yominet.ne.jp/forum/lane/
(id/pass:半角英語 guest で閲覧可)


▼デジクリは35字改行で、尻揃え。英数字はそのときのキブンで全角になっ
たり半角になったりするわりとエエカゲンなのだが、今回は北澤さんのいつも
のスタイルをそのまま踏襲してみた。実験的?

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■新連載 「ip2000」プロジェクト奮闘記 0001(1/18)
ゼロからの出発

川井拓也
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連載2回目からはいきなり丁寧語になります。

さて、私は現在映像をなりわいとしているプロデューサーをしています。ここ
1年CSの番組制作などが多くそれと連動してWebサイトのプロデュースな
どを行ってきました。うちの会社はもともと(というか現在も)CMの制作会
社ですがCMというものは15秒や30秒に全精力を傾けるメディアなわけで
す。当然製作費も高いしかける時間、人数もそれ相応のものです。

ところがCSというのはCMに慣れた目から見ると「おいおいゼロがふたつ足
りないぞ」というような製作費です。それをこなすためには従来の考え方では
到底対応できないんですね。といってもその道のプロは問題ないでしょうけど
CMなんていうもっとも秒単価の高いメディアをやってしまった経験からする
と、かなり異文化に映るわけです。そこで人数を減らし効率を良くしてなんと
か15秒3タイプ作る時間で30分の番組を作れるようになりました。多分そ
れでまだかけすぎなんでしょうけどね。

そして現在では60分の番組を撮影2日、編集5日で作れるようになりました。
これは番組制作としても異例な早さだと自負します。でもそれには、ある特定
の番組フォーマットを最初から規定してく必要があります。で、半年くらいや
っていたんですけど、そんな中で街をプラプラ歩いているとあるチラシが目に
入ったわけです。

「90日間世界一周の船旅!」

おお~、いいなあ~、時間あればこんなのに参加してみたいもんだなあ~。
日本を出て4日、寄港して2日、また出航して5日、寄港して2日かあ。
4日、2日、5日、2日、4、2、5、2・・・・・・・んっ?

こ、これは映像制作における「撮影」「ポストプロダクション」「撮影」「ポ
ストプロダクション」と同じサイクルではないか!!!
そこから私の初夢がはじまりました。

(続く)

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■投稿
ホームページリニューアルインフォメーション
大和団次郎
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団次郎くんのEVAお友達のページ「快盗ハラマンのコーナー」を紹介します。
http://www.d1.dion.ne.jp/~danjiro/danjiro

ここでは、「快盗ハラマン(ざっくん対ハラマン)」というストーリーアニメ
ーションの連載を行なっており、現在、第5話まで話が進んでいます。EVA
というベクトルアニメーション方式を使っており、見るためにはプラグインが
必要ですが、FLASHとは違った動きがあり、だれでも楽しめる内容です。
EVAとFLASHの比較も掲載しています。

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▼編集部からお知らせ
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間違えたようです。何人かの読者から指摘あり。以下、代表して。

おはようっす。いちデヂクリ読者っす。
ええっと、日刊デジクリに出てたヴァル・ケイシーはんのサイト、
URLちごてました。(505号クールサイト情報)
あてずっぽうに打ったところ、以下のが正しいようです.

http://www.valcasey.com/

あ、これ苦情じゃナシに、善意のおしらせです。
いつもたのしませてもろて、ありがとさん。
既知のバグだったらゆるしてや。

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■編集後記(1/18)
・「嫌煙権の次は嫌『携帯電話』権」という記事がWIREDのニュースにの
っていた。「携帯電話は都市の風景の一部になった。しかし、マナーに関する
論争は烈しさを増している。一部の商業施設や公共の場所は、この現象に対処
する方法を編み出している。しかし、携帯電話戦争がこれからの社会問題にな
る可能性は高い」と、日本より携帯電話が遅れている(ト思うが違うかな)ア
メリカで問題になっているようだ。ありがたい。歓迎すべき嫌煙権だって輸入
ものだし、早く嫌「携帯電話」権もアメリカで盛り上がって、日本に外圧をか
けてくれい。ところかまわず携帯電話しているマナーのない人をみるにつけ、
こりゃ規制しなけれ仕方ないぞと思うのであった。        (柴田)

・昨日は阪神大震災の日。年々減っていく特別番組。広島に転勤している弟の
話だと、終戦記念日には大阪では見られない原爆の番組も多いそう。阪神大震
災の特番は、関西以外では放送しているのだろうか。その震災時以降、慰問に
まわっているソウルフラワーユニオンがラジオに出ていて「満月の夕」という
曲を生演奏していた。とても心に沁み入る曲だった。NHK「みんなのうた」
でも流れていたらしいので、知っている人は多いかもしれない。ニューエスト
モデルとメスカリンドライブは、こういう音楽をするようになったんだなぁ。
ちょっと遠い目をしてみる。               (hammer.mule)
http://www02.so-net.ne.jp/~duke-hid/sfs/index.html

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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.shohyo.co.jp/nagesen/ <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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発行   デジタルクリエイターズ
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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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 担当:濱村和恵
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