[0621] はじめての個展奮闘記

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0621   2000/06/08.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 16263部
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 <1週間に1枚ノルマ>

■デジクリトーク
 はじめての個展奮闘記
 筒井海砂

■デジクリトーク
 個性を生み出すためのトライ
 三海誠二

■新刊案内
 Creator's Style IDG刊



■デジクリトーク
はじめての個展奮闘記

筒井海砂
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●歯をくいしばっている自分がいた

私、筒井海砂はフリーになって5年目の今年、一大決心で個展を開催しました。
開催が決まったのは半年前。「初」という事で異様な精神的盛り上がりが発生
し、「全て新作で」というトンデモな企画を立ててしまいました。開催決定の
その日からギャラリーの壁面積を計り、どれくらいの作品が何枚飾れるかを算
出。結果、36枚の作品が必要と判断されました。そしてついに(巷で話題の)
「1週間に1枚ノルマ」が誕生。それは地獄の日々の始まりでした。

仕事をしながらの制作ですから、7日間で1枚を仕上げるというのは想像以上
に過酷な作業でした。やっと描き上げた翌日には次のノルマ。終わりの無いゴ
ールを追うような空しさ漂う毎日。それに加えて「個展には金が要る」という
思念が許容量以上の仕事を取らせ、1ヵ月に30点以上の仕事を抱えるハメに。
歩こうとすると体がナナメに進む、というユカイな状態が続きました。

それでも最終的には37点の作品をギャラリーに展示する事が出来ましたし(予
定より1枚増えてるところが自分でも笑える)、作画作業がスピードアップす
るという予想外の効能もあったんです。

いよいよ個展が始まって、異様な緊張感の中で過ごした6日間。草食動物のよ
うに短時間の睡眠を繰り返す事でしか眠れない、気がつくと歯を食いしばって
いる自分がいる(これは柴田氏の「それはあなたがアニマルだから」という回
答を得ました)。今まで感じた事のない疲労感でした。

●なんでPhotoshopを使わないの?

会場で一番多かったのは「全部Photoshopで描いてるんですか?」という質問。
「全部」が付いている辺りから、制作のどこかにはPhotoshopを使用している
だろうという考えが予想出来る。でも私は全部Painterで描いてまして、そう
話すと「なんでPhotoshopを使わないの?」という質問が返ってくる訳です。

私の作品はツルッとしたエアブラシ画で、Painterの持つテクスチャ感や手描
き感はまったくありません。だからPhotoshopでも描けるし、その方が楽だと
いう事なんでしょう。でもソフトは私にとって画材なんで、自分に最も使いや
すく加工した筆や紙がPainterなんであります。「描く」という作業に固執す
る私にとっては、便利な機能やら合理的な作業は魅力的ではありません。なん
せCG的な効果を使う事が殆どないもんで。いごっそう* にはPainterが向いて
ます。

次に多かったのが「作家の方とこんなに話せるとは思ってませんでした」とい
う言葉。会場では様々な初対面の人とかなり深いところまで話をしました。平
均一人あたり1時間くらいかな(長いの?)。CG講座やキャラクターの話題、
果ては身の上相談まで。独立願望の強い20歳の女性の悩み相談などは、かなり
熱く語ったもんです。私はそれが普通だと思ってましたが、どーやらかなり特
別だった様子。長年親から「おまえは口から先に生まれた」と言われて来たも
んで、これは致し方なく.....。

●人の意見はとても痛くあったかい

そして、届く、届くよドラえもん。示し合わせた訳でもないのに電報を送って
くれた人すべてがドラえもん電報。「普通女の子の個展だと花が届くのにねぇ」
というギャラリーオーナーの意見にも頷けるが、世の中にはキティちゃん電報
もあるのだぞ。そして普通の電報でもイイのだぞ。

しかし、私を知る全ての人がこの「ドラえもん」に納得している事は大体想像
がつくのです。筒井のイメージはドラえもん。これからこれで行きましょう。

終わってみればあっと言う間。でも「やっと終わった」という気もします。37
枚ものを作品を一度に見るって事はなかったので、展示してみて分かった事も
数多くありました。そして、人の意見はとても痛く、そしてとてもあったかい。

疲れはしたものの、得られる物の大きさには到底及ばず、1年に一度くらいは
継続してやってみたいもんだと思いました。

最後に何人かの専門家に言われて気になっている事。私は歌舞伎をテーマにし
た作品をシリーズ的に描いています。それに対して「海外に持って出てはどう
か?」という意見が数回。今最も描いていて楽しいし、自分でもイチオシ。そ
の作品に対して同じような意見が重なると、猪突猛進人間は既に足踏み開始中。

色々な危険性やハードルがあるのは当然ですが、とにかく動いてみたい。何か
情報をお持ちの方はご一報をば。

*「いごっそう」………土佐弁で頑固者、気骨者のこと

【つつい・みさ】tiger@bb.mbn.or.jp
イラストレーター。1970年高知県生。普通大学、一般会社員を経て、95年突如
フリーのイラストレーターに。以後キャラクターを中心に各方面にイラストを
提供中。ディジタル・イメージ会員。個展の様子をサイト上で公開してます。
展示作品も徐々に掲載。
http://plaza9.mbn.or.jp/~artworks/

デジクリサイトにも筒井さんの作品を掲載
http://www.dgcr.com/kiji/tutui/

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■デジクリトーク
個性を生み出すためのトライ

三海誠二
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最近デジタルで作ったものを「汚す」ことにはまっています。

コンピュータをさわり始めた当初は、デジタル特有の階調の美しさや、均一で
ムラのない印象が新鮮で、魅力的に感じましたが、今日のようなデジタル作品
の氾濫の影響か、最近は、その「らしさ」が妙にいやらしく思えます。

一度出力した物をコピー機で何度もコピーしてかすれさせ、再度スキャンして
使ったり・・・あるいは手で描いたものをコンピュータに取り込み、また出力
して手を入れたり、紙をグチャグチャにして出来たしわをテクスチャとして使
ってみたり、ノイズをガンガンに入れて画像を荒くしたりと、色々な方法を考
えては実践しています。失敗も多くありますが、思わぬ効果を発見する事もあ
り、やっていて結構楽しいです。

そうやって出来たものを見ると、何となく味が出ていて、普通に作ったものと
比べてみても何か違うように感じるんです。

単なる自己満足なのかも知れませんが、ただ自分のこだわりと言うか、デジタ
ルというツールに自分の感覚とか感性とかアイデアが合わさって出来上がった
作品には「個性」があらわれると思います。

コンピュータの機能を使い、技術だけを追求して作った作品は、何の個性も生
じないのではないでしょうか。

自分が、これまでデジタルでやって来た過程を振り返ってみると、技術の追求
にずっと奔走していたように感じます。

良いもの、素晴らしいものを作るには技術の修得が重要だと考え、参考書を読
みあさったり、テクニックばかりを追いかけていました。

確かに、それは大事なことではあったのですが、創造したり、発想する事より
も機能や技術の方を重視してしまった事がいけませんでした。そのうち、自分
の作品が薄っぺらで、何も訴えかけてこない事に気付き、結構悩んだ時期もあ
りました。それは「何を作るか」より「どう作るか」という技術的な思考の方
を優先していたからです。

ずっと、そうやって来た自分にとって「汚す」という行為は、今までになく新
鮮で、発想する事の大切さを教わった気がします。

僕の考える「汚す」とは、単に見栄えを荒くしたり、汚したりする事だけを意
味するのではありません。それだけでは、単なるテクニックのひとつになって
しまいます。

誰でも似た様な表現が可能なデジタルというツールで、「個性」を生み出すた
めの自分自身のやり方であって、ああしてみよう・こうしてみようと言う想像
力を養うことのできるものだと思っています。

今はまだ、色々と試行錯誤をしている状態で、大した事は全然できていないん
ですが、将来的には、上品で優等生っぽい今のデジタルを、少し不良っぽくし
たいと考えています。

デジタルには、まだ色々な表現の可能性があるはずです。その可能性を探って
いくのはとても楽しいことですし、いつかは自分の個性を発揮できる作品づく
りが出来るといいなと思っています。

【みかい・せいじ】mikai@yppnet.co.jp
デザイナー。1974年富山県生まれ。大学卒業後、独学でコンピュータグラフィ
ックを学ぶ。現在は会社員としてデザインの仕事に従事するかたわら、独自の
世界を表現するCGづくりに励んでいる。ディジタル・イメージ会員。

まだ制作途中ですが、よければ見て下さい。
http://www.yppnet.co.jp/mikai/

▼三海さんも、筒井さんもディジタル・イメージサイトに個人情報があるはず
ですが、なぜか現在サイトにアクセスできません。あとでトライしてみてくだ
さい。
http://www.digitalimage.org/

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Creator's Style IDG刊
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「Creator's Style」がIDGから刊行された。編著はFar,Inc.、B5変型版192頁
で本体2,850円。注目のクリエイターの仕事場を大公開。“発想”を豊かにす
る秘訣がここにある!

グラフィックデザイナー、イラストレーター、ミュージシャン、映像作家、CG
クリエイター、マンガ家など、現在大活躍中のさまざまな分野のクリエイター
たちの仕事部屋を探訪していくフォトブック。彼らは、日々、どんな場所で、
どんなものに囲まれながら、何を使い、何に触れ、何を想い、優れた作品を生
み出し続けているのか。注目クリエイターたちの仕事場・作品を写真で見せな
がら、彼らの楽しいエッセィを盛り込んでいる。

目次(登場クリエイター)
横尾忠則・・・・・・・・・・・陽の当たる一角で
青木克憲・・・・・・・・・・・がんばんなくちゃいけない
ヒロ杉山・・・・・・・・・・・真っ白な気持ちでいられるために
安野モヨコ・・・・・・・・・・Dive to Happiness!! 日々、期待シ努力スル
とみぞうちゃん・・・・・・・・1+1=2じゃない生活
ミヤヂマタカフミ・・・・・・・Minimum Style
モンキーパンチ・・・・・・・・24時間、仕事(?)
グルーヴィジョンズ・・・・・・データと時間の共有
若野桂・・・・・・・・・・・・VIRTUAL OYAJI ROOM
今井トゥーンズ・・・・・・・・New Horizon. New Comics
ステロタイププロダクト・・・・ステロの名の下で
岸虎次郎・・・・・・・・・・・僕の牢屋
オカモトケンジ・・・・・・・・We Are "ROCKIED"
安倍吉俊・・・・・・・・・・・内なるキャンバス
ラジカル鈴木・・・・・・・・・道玄坂の喧噪 仕事場の静けさ
富岡聡・・・・・・・・・・・・妄想シアターのコックピット
ヲノサトル・・・・・・・・・・ハードコア・ムーディールーム
イワタナオミ・・・・・・・・・すべてはエンターテインメントのために
セキユリヲ・・・・・・・・・・築40年の仕事場で暮らしを愉しむ
稲葉英樹・・・・・・・・・・・SWITCH ON
生意気・・・・・・・・・・・・Welcome to "DELUXE"
村上隆・・・・・・・・・・・・敗れし者たちの道場
森本晃司・・・・・・・・・・・細胞の記憶
タナカカツキ・・・・・・・・・代官山深夜2時、或る狂った男の宴
常磐響・・・・・・・・・・・・原点回帰
伊藤ガビン・・・・・・・・・・俺が仕事場
(コラム)my favorite_クリエイターのお気に入りの場所

▼「Creator's Style」をIDGから読者5名にプレゼント。
希望者はinfo@dgcr.com宛にメール下さい。サブジェクトはCreator's Style
デジクリに関するコメントを書いてください。締め切りは10日(土)正午。

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【ip2000プロジェクト】
川井隊長、コロンボにて足止め! いったいなにが起こったのか?
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【訂正】すいませんの不注意でした
618号 神田さんのテキストで「水野晴夫」は「水野晴郎」のまちがい
620号 日付けが「06/06」とあるのは「06/07」のまちがい」
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■編集後記(6/8)
・今日も暑くなりそうだ。6棟ある建物の解体工事が、だんだん我が家の近く
迫ってきた。いまのところ振動と騒音はまあ耐えられる程度だが、問題は埃で
ある。洗濯物は干せないし、窓は開けられない。「布団干し命」の妻は怒り狂
っている。埃がひどすぎる、散水が不足ではないのかと工事現場責任者に申し
いれたら、屋上からホースで水をかける作業員が追加された。地面が揺れても
ハニー号はすぐに慣れたようで平気で寝ている。ああ、またグラッと。(柴田)

・昨日の続き。他のディレクトリはどうなっているんだろう。何をしているん
だろう。クラックされたショックはさほどなく、それよりもクラッカーの行動
に興味津々。どうせトロイの木馬くらいは仕掛けているだろうから、少々のこ
とをしても相手は動じないだろう。事例と目的探しをしよう。すぐにネットか
ら切り離すべきものなんだろうけど、知られた後の向こうの行動も知りたい。
向こうが触ったと思われるファイルをコピーしておこう。ああそうだ。JRCERT
に連絡しなきゃ。メールは無理だろうからFAXで。続く。  (hammer.mule)
http://www.jpcert.or.jp/ (JRCERT)
http://www.cert.org/ (CERT)


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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.nagesen.gr.jp/  <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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発行   デジタルクリエイターズ
     <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

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 担当:濱村和恵
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