[0639] めざせ! 256モード

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0639   2000/06/29.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 16325部
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 <ソレにあうのはドレなんだ>

■デジクリトーク
 めざせ! 256モード
 いのうえ いちこ

■デジクリトーク
 「STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDA」へのお誘い
 菅原明彦

■デジクリトーク
 前田一昭写真展「海市の街」を見て思う
 魚住耕司

■連載「ip2000」プロジェクト奮闘記 0102 6/29
 あまりに唐突に出会ってしまったピラミッド
 ------(フェーズ1)航海日誌38日目-------
 川井拓也@エルサレム
 




■デジクリトーク
めざせ! 256モード

いのうえ いちこ
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あるとき夫が、「オマエのクロゼットのなかって、真っ黒」といった。「ま、
なにいってるのっ、ちゃんと白から黒へのグラデーションに並べてあるのにっ。
きいっ」と反論したが、負けない夫は「それは失礼。でも、かなりトーンジャ
ンプしてるグラデのようで」という。

おウチを建てたときに、寝室のヨコには「ウォークイン・クロゼット」という
ものがついてきた。お洋服だけのお部屋である。だーっとぶら下げておくだけ
なので畳む手間が省けるし、服をチョイスするときにも一目で欲しい服を手に
出来るので便利だ。

あらためて見渡してみると、クロゼットの8割が黒、反対側にちょろっとかか
っている白に行くまでにスミ70%、50%、30%のグレーがある。たしかに夫の
指摘するとおり、グラデと呼ぶには色数が少なすぎる。

わたしは、「衣」道楽である。稼ぎの半分くらいはお洋服に使ってしまうが、
それほど稼ぎは多くないので半分といってもたかが知れている。よほど気にい
ったものか高価なコートなどでない以上、ほとんどの洋服はワンシーズンで捨
ててしまう。まだ着られるのにもったいないような気もするが、無駄なことを
するのが道楽の醍醐味のひとつである。

夫にいわせると、「捨てるなら、ナゼまた同じような服を買うのだ」と不思議
でならないらしいが、同じブランド同じ黒のシャツやスカートでも、毎年ちょ
っとしたデザインや形に「トレンド」とゆうものがあり、微妙にちがうのだ。

ブランドといえば、好きなデザイナーズ・ブランドが20年前から変わっていな
いのも驚きであった。高校を卒業したあたりから買い始めたブランドを、いま
この年になっても着ているのである。20年間、買い、捨て、買い続けてきたわ
たしの青春そのものだ。しかし、5色のグレースケールのクロゼットにも大異
変が起きるのである。

●黒は「守り」の態勢か

仕事の関係で、今年になってから取材をする機会があった。コンピュータ業界
で働く人たちに会って、お話を聞かせてもらうのである。面白いことに、デザ
イナーやイラストレーターといったクリエイティブな人たちのほとんどが、黒
い服を着ていた。

シャツ、セーター、ジャケット、ジーンズ、スカート、種類はいろいろあって
も、上下どちらかあるいは両方が黒かった。そして、わたしももちろん黒づく
めの格好である。喫茶店やオフィスで、黒づくめと黒づくめが向かいあって座
る。カラスが2羽、よからぬ相談をしているようにも思えた。

あるとき、原宿にオフィスを持つ女性デザイナーを訪ねることになった。賑や
かな竹下通りを歩きながら、心の準備を始める。わたしの心の動きは顔や態度
にダイレクトに接続しているので、ちょっとした驚きでもスグに外に出てしま
う。あっ、と声に出ることはなくても、目を見開いたり、後ずさりしてしまう
のだ。

だから、写真資料がなく、会うまで外見がわからない初対面の人の取材に出向
くときには、相手に失礼のないようにちょっとした準備が必要になる。特にデ
ザイナーといったクリエイティブ系の職業の人の場合には、なおさらだ。どん
なイデタチであろうと驚かずにすむように、あらかじめ様々な状況をシミュレ
ーションして慣れておくのである。

髪はとうぜん茶色かメッシュを入れているだろう。眩しいほどの金髪というの
もあり得る。原宿という場所を考えると、紫や緑というのも想定しておいたほ
うがいいし、女性だからといって刈り上げショートでないとも限らない。鼻や
まゆげにピアスが刺さっていても驚かないようにしよう。洋服にいたっては黒
であることに間違いないだろうから安心できるが、念のために上下ヒョウ柄と
かラメラメきらきらもインプットしておこう。

心の準備も万端にドアを開けると、目鼻立ちの整った美人が立っていた。顔の
どこにもピアスなどないし、艶やかなロングの黒い髪。そして、意外にも彼女
は黒い服を着ていなかった。鮮やかなライムイエローのセーターに、シルバー
グレーのコーティングがかかったジーンズ。とびきりの美人だったせいもある
かもしれないが、ものすごく似合っていて、めちゃくちゃカッコ良かった。下
品な想定ばかりしていたことを心の中で恥じながら、そろそろわたしも黒づく
めから脱してみようかと思い始めていた。

いままで何度か「脱・モノクロ」にチャレンジしたこともある。年に数回、ふ
らっと衝動的にきれいな色のシャツやパンツを買ったこともあったが、何度も
着ないうちにゴミ箱行きになった。どうも自分にはしっくりこないような気が
して、すぐに黒い服を身につけてホッとするのである。

風水で有名な先生が、「黒い服を着るのは『守り』に入っている証拠です。ア
クティブに生きたいなら、オレンジや黄緑などの明るい色を身につけましょう」
といっているのを聞き、「守り」の態勢というのは当たっているかもしれない
なと思った。

黒はすべてにおいて「無難」な色なのではないかと思う。なんとなく黒を着て
いればお洒落っぽい雰囲気があるし、ハズさない色、これさえ着ていれば間違
いない、という気がする。ある友だちが撮影の仕事に行ったときに、集まった
ライターやデザイナー、キャメラマンがみな黒づくめの洋服だったといってい
た。打ち上げのパーティーも、多少ドレスアップした装いにはなるがやはり黒
が多いという。

20年間、自分にもっとも似合う色、好きな色だと思いこんでいた黒であるが、
無意識のうちに守りや無難を求めていたのかもしれない。

●色をまとって心に元気を呼び戻す

ちょっとここらで脱線してみるのも面白いなと思ったわたしは、まず鮮やかな
きみどりのシャツと真っ赤なジーンズを買った。夫は「なにもそこまでやらず
とも。黒いなかに、なにかひとつ色を取り込むだけで良いのでは」と慌ててい
るが、こうゆうことはイッキに、思い切って、テッテー的にやらなくてはダメ
なのである。

黄緑と赤を着てはじめて街にでた日は、妙に緊張した。「今日だけ、ちょっと
こんな色なんです、いつもは黒なんす」と言い訳しながら歩きたくなった。み
んながわたしを見ているような気がした。しかし、歩いているうちに気分がハ
イになってきたのも事実である。なんだか心が外向きだ。いつにもまして歩幅
が広い。

一日でカラーの世界のトリコになったわたしは、7色のカラージーンズを買い
込んだ。ふたたび真っ赤、オレンジ、ブルー、ショッキングピンク、ライムイ
エローと白のガラガラ、紫、薄い緑。Tシャツやシャツも買った。やるときゃ
やるのさ。

おかげで、友だちには「いったい、どうしたっていうの?」とか、「色を身に
つけるのは年を取った証拠だ」と好き勝手いわれているが、そんなこた気にし
ない。だが、ひとつだけ気になるせりふがあった。

「ちょっと太ったんじゃん?」

そうである。重大なことを見逃していた。黒という色は、着やせするのである。
きりりと引き締まったカラダに見せてくれる効果があったのだ。赤やピンクを
身につけるようになってから、あちこちで「太った、太った」と言われ続け、
これはもうダイエットに励むしかない。

そして、もっと困っているのは、色のコーディネイトに頭を使わなくてはなら
ないことだ。黒しか着ていないときには、そのへんの服をひっつかんで適当に
あわせても何の問題もなく、どんな組み合わせでもOKだった。が、今度は、そ
うはいかない。何の考えもなく着てしまうと、トンでもない配色になり、鏡を
見て気持ちが悪くなる。アレとコレはあうのに、コレとソレの組み合わせはで
きない。いろいろ着回せないのはつまらないし、面倒でもある。ソレにあうの
はドレなんだ。

わたしはこの5月から6月にかけて、めっちゃブルーな日々を過ごさなくてはな
らなかった。毎日、来る日も来る日も病院に通い、痛いことをされていたので
ある。唯一の救いは色とりどりの洋服たちだったかもしれない、と考えるとき
がある。毎日ジーンズの色を変え、いろんな色をまとうことで気分転換をし、
心に元気を呼び戻していたような気がするからだ。もし、昔のまま黒づくめで
いたなら、もっと暗い気持ちでいただろうと思う。

これからどこかでわたしを見かけたときに、もし黒い服を着ていたら、それは
仕事が来なくて新しい洋服を買うオカネがないのか、あるいは守りの態勢に入
ってるか、どちらかだ。

【いのうえ いちこ】ichiko@vds.ne.jp
WEBデザイナー。エッセイスト。著書に『SOHOへの道』、『パソコン在宅SOHO
成功物語』(来月12日発売予定)(いずれも海文堂出版)がある。
http://www.vds.ne.jp/~ichiko/

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■デジクリトーク
「STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDA」へのお誘い

菅原明彦
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●STRATA-UGとは?

お久しぶりです。昨年「iMacでリゾートワーク」という企画で何度かデジクリ
さんに掲載していただいた菅原です。今年も昨年よりはちょっと控えめ(?)
ですが、リゾートワークをする予定でおります。

今回は、そちらは置いておいて、STRATA-UGの代表として投稿させて頂いてお
ります。実は何度かこちらでもニュースとしてご紹介頂きましたが、STRATA-
UGでは来る7月22日~23日にこちらでもお馴染みの長野県上田市マルチメディ
ア情報センターで「STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDA」というイベントを
開催する予定です。

まず、「STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDA」の内容に触れる前に、STRATA-
UGについて紹介させて頂きます。みなさんは「STRATA」というソフトは御存じ
でしょうか? 以前はMacでは3Dの代名詞的なソフトだったものです。STRATA
ブランドの代表的なソフトにSTUDIOProというものがありますが、先日その機
能限定版である「Strata3D」がインターネット上で無料で配付されたという事
もあり、名前は御存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。(ちなみに、以
下でダウンロードできます)
http://www.3d.com/

STRATA-UGは、そのSTRATAを使うユーザーの集まりとして発足しました。基本
的にはインターネットでのメーリングリストを利用した情報交換や交流が主な
のですが、かなりの数のCG作家が集っていますので、年に数回イベントを行う
ようにしています。これまでにギャラリーを借りてグループ展を行なったり、
MacWorldやWindowsWorldでブースを出したこともありますので、ひょっとした
らご覧になったこともあるかもしれません。

また、STRATA-UGのサイトでは、常設展示としてWeb上でメンバーの作品を公開
しておりますので、ぜひご覧になって下さい。
http://strata-ug.kamekichi.co.jp/

●「STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDA」の内容

さて、前置きが長くなりましたが、「STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDA」
についてお話したいと思います。もともとは今から3年程前、Strata社の東京
事務所が存在していた当時ですが、日頃なかなか交流する事のないユーザーを
集め、箱根で泊まり込みでセミナーや交流会が開催されました。

これは「Strata User Conference in Hakone」という名称で開催され、全国か
ら200人程のユーザーが集まりかなり盛況なものとなりました。これはユーザ
ーにはかなり好評だったのですが、その後種々の事情で継続できなくなってし
まいました。今回企画しているものはUG主動の形でそれを復活し、泊まり掛け
でないとなかなか合う事のできない遠方の方も集まっていろいろな催しを行い
たいと考えています。現在までの所、南は九州、北は北海道とかなり広範囲の
参加者が集まっています。

箱根の時はSTRATA社のユーザーへのサービスの一貫、つまりビジネスとしての
ものですが、今回のものは運営はそれぞれがイチユーザーであるUGのメンバー
ですので「みんなで楽しむ」が基本です(^-^)。イベントの名称は「STRATA-UG
CONFERENCE」となっていますが、主催がSTRATA-UGなのでこの名称にしている
だけで、STRATA-UGメンバーでなくてもコンピュータ・グラフィクスに興味の
ある方なら誰でも参加できます。

では、実際どのような事を催すかと言いますと、今回2日間情報センターを借
り切る形になります。情報センターの特徴で、今回カンファレンスで使用させ
て頂くのはミニシアターにもなる定員200人のホール、企画展示ギャラリー、
定員20人のセミナールーム、の3つがあります。

まず、ホールでは「STRATAマスターセミナー」として、STRATAのパワーユーザ
ーによるテクニカルセミナーとSTRATA-UGメンバーによる動画作品の上映を行
う予定です。セミナーの講演者はSTRATAと言ったらもちろんこの人、のダバカ
ンさんを始めとする豪華メンバーで行います。一番最初のセミナーでぼくもダ
バさんと掛け合いで講座をやる予定です。ぼく的にはStrata3Dでどんなものが
できるかをやろうかと考えています。

次に、企画展示ギャラリーですが、こちらはSTRATA-UGメンバーの作品展とワ
ークショップ(ユーザー自身の制作行程のデモや、ポストカード販売など)、
協力企業の(株)バイオス様のデモンストレーション(こちらはCG制作システ
ム、DVD制作システム、ビデオオンデマンドシステムなどの展示が主です)が
予定されています。作品展はカンファレンスが終了した後も約1カ月間展示さ
れます。

最後はセミナールームになります。ここではSTRATA PetiteVision3Dを使用し
て、3D入門講座です。講師はナカノヒロフミさん、まつながかずさんで、ナカ
ノさんはキャラクター制作入門を、まつながさんは3Dロゴ制作入門をそれぞれ
ご担当していただきます。こちらは定員20名なので、先着順になりますから、
お早めにお申し込み下さい。

ここまでお読みになって、「なんだ普通のイベントみたい」と思ったアナタ、
それはちょっと早いかもしれません(^-^;)。カンファレンスの目的は、「テク
ニック、デザイン論、テクノロジーの紹介。展覧会によるSTRATAの可能性の追
求」というのもありますが、もう一つには交流、というのもあります。

開催概要には「STRATAユーザー同士の交流」と書いてしまいましたが、これは
STRATAユーザーに限定しているわけではなく、興味のある方なら誰でもとホン
トは付け加えたいところでした。特にSTRATA-UGメンバーにはお酒が入ると非
常に饒舌になる方が多く(かつ、お酒が入らないと自分の作品の話やテクニッ
クの話をしないという人もいます)、非常に楽しい方が多いですから、それを
目的に普段接する機会がない人と深く話すというのも面白いですよ。セミナー
だけでなくぜひオープニングパーティやSTRATAナイトにも参加して、楽しんで
いただければ我々STRATA-UGとしても企画したかいがあります。ぜひいらして
ください。

STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDA詳細については、
http://strata-ug.kamekichi.co.jp/conf2000/index.html
STRATA-UG CONFERENCE 2000 in UEDAのお問い合わせは、
strata-ug-conf@excite.co.jp

【すがわら・あきひこ】suga@j-link.ne.jp
1969年生まれ。イラストレーター。東京デザイナー学院卒業後、マルチメディ
ア制作会社、編集デザインを経てフリーランスに。母校の姉妹校の東京ビジュ
アルアーツにて講師を兼任。STRATA User Group 代表。ディジタル・イメージ
会員。共著書:デザイナーが遊ぶWeb デザイン、ストラタバキューン!(共に
秀和システム刊)

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■デジクリトーク
前田一昭写真展「海市の街」を見て思う

魚住耕司
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前田一昭写真展「海市の街」
日時 6月17日から7月9日
場所 "ギャラリーぽると" 北九州市門司区港町2-27 門司港郵便局
   コミュニティルーム
情報のあるサイト http://mojiko.com/maeda/

●強い黒

「海市」とは、蜃気楼の漢語表現です。作者の前田一昭氏は、北九州の写真家
集団"SESSION"の代表をされているスチールカメラマンです。"SESSION"とは、
「記録・情報伝達の手段」としての写真の時代は終わりつつある、として"個
人の表現"、「アート」としての写真のあり方を模索していこう、という写真
家集団です。今回の写真展も、個々の風景は、世界の一部としてではなく、そ
のような、個人の心の内なるものの表出として展示されています。

しかし、写真というものを見るとき、やはり我々はそのような見方はしないも
のだ、ということを、今回の展示会を取材してくれた地元テレビ局の方と応対
してつくづく感じました。

「この風景はどこの風景ですか」
記者の方から頻繁に出た質問は、これでした。

これに対して、何処で撮ったものであろうと、それが重要ではなく、「心象」
が表れているのです。という事を説明することになります。記者氏も個人とし
てそのことは理解してくれるのですが、この問いに答えを用意するのは、風景
を撮影した写真を報道する以上、お約束のようなものなのかもしれません。

前田氏は、今回の写真展は「破壊と再生」のイメージがテーマ、と言われます。
その為に、九州一円を取材されたそうです。普賢岳の麓の火砕流に洗われた学
校。石油へのエネルギーの転換で寂れてしまった大牟田や干上がった諫早湾。
どの場所も、自然の力に、或いは我々人間の目的の為に、その姿を変えさせら
れ、やがて人々が立ち退いた場所です。

それらの場所で撮られた写真には、何一つディテールも階調もない均一で深い
黒が、物陰に蹲り、或いは画面全体をやがて飲みこむ気配すら見せています。
前田氏は、この何もない黒を手に入れるために、あえて被い焼き・焼きこみな
どのプリント技術を駆使したオリジナルプリントをスキャナーにかけ、デジタ
ル画像にしてインクジェットブリンターで出力したそうです。

この作品について説明するとき、「今の時代の日本人が誰でも感じている焦燥
感や喪失感」ということを前田氏は言われます。この黒は、救いのない「無と
絶望」のイメージなのでしょうか? まるで、やがて悪疫のように世界を被っ
てしまう、そんな悪しき象徴なのでしょうか?

大げさなことを言えば、この闇に飲まれる前に、心のうちに湧いて来る焦燥や
喪失から目をそらし、一時の快楽に逃避するのが「正しく」、この廃墟で写さ
れた写真は、そんな空しい宴の後を写したものなのでしょうか?

しかし、私にはこの強い黒は、単に忌むべき闇ばかりではない、と思えます。
写真展ラストの数点は、植物達のイメージになります。そのイメージの中では、
黒はけっして恐ろしいものではありません。廃墟と化した風景にも、力強く生
きる植物達が生まれ育ちます。大木の立派な幹を表す黒は、決して恐ろしい無
の象徴ではなく、命の力強さというものを象徴しています。葉に溜まった露の
美しさを際立たせる背後の暗闇は、決していずれは全てを食い尽くそうという
ようなものではなく、露とそれを受ける葉を引き立たせています。

「浄闇」という言葉があります。

前田氏の作品中の黒は、空しい宴の後を覆う闇から、世にある以上は避けられ
ぬ矛盾との直面にもたじろがない力、自信のようなものすら芽生えさせる浄闇
の黒へと変質しているかのようです。

人の営みなど、やがては消える蜃気楼に過ぎないかもしれません。今回の写真
展のテーマの一つが「破壊」、しかしもう一つのテーマは「再生」ですが、こ
の「再生」とは、単に人の世の営みを儚み(或いは嘲笑し)、植物の姿に自然
をみて、自然に帰れ、と説く陳腐な結論にするべきではないように思います。

闇を恐れず、直視するなら、自然から与えられている、営みを再生させるプロ
グラムは、我々人間の文明の営みに強く働くように思います。我々が未来を信
じて歩むのなら。

【うおずみ・こうじ】uozumi@mxj.mesh.ne.jp
門司港ポータル&LIVE Station
http://www.mojiko.com

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■連載「ip2000」プロジェクト奮闘記 0102 6/29
あまりに唐突に出会ってしまったピラミッド
------(フェーズ1)航海日誌38日目-------

川井拓也@エルサレム
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【現在の船の位置=凸】
東京>>香港>ベトナム>シンガポール>スリランカ>セイシェル>ケニア>
エリトリア>エジプト>イス凸ラエル>クロアチア>ギリシア>イタリア>カナリア
>キューバ>メキシコ>カナダ>ロシア>東京
Transported by http://www.peaceboat.org/
Planning&Produced by http://www.taiyokikaku.com

【ip2000チームが航海しながら制作・発信中のコンテンツ】
●「ドリームキャッチャー~人生の宝物」
ケニヤFLASH番組予告登場!エジプト受付け開始!
http://www.vaionet.com/

●発売中!宝島社「週刊ウルトラ1」(公称35万部)
伊勢華子のip2000奮闘記連載いよいよ開始! 8週連続!
http://www.ultra-1.com/

【今日のコラム】
□□□□テクニカル度
■■■□旅行シズル度
■□□□おもしろ度
■□□□制作プロセス度

カイロの朝がやってきた。日光が痛い。なにかとてもダイレクトに肌にくる。
朝食をたっぷりと取り朝の通信タイム。メールを受信してホテルのテラスでレ
スを書く。すべての部屋にテラスがあり快適快適と思っていたが、しだいに蝿
がブーンブーンと寄ってくるので屋内に退散。再度通信と思ったが、どうもこ
のホテルの回線はそれほど多いわけではなく、話中ばかりになってしまった。
そしてびっくりするのが電源が時々ブオン!と落ちること。ロビーに出たらな
にやら工事をしていたが、コンピューターを再起動するようにホテル全体が暗
くなったりするのだ。

しばらくロビーで待っていると20日ぶりにメンバーがやってくる。「おおっ!
ただいま!」と抱擁しつつ、早速東京からの新鋭機材を説明する。荷物をバン
にのせ早速ロケ地である名物ピラミッドへ。東京での話や船での話をしている
うちにガイドさんが「つきましたよ」と日本語で。「ええっ?」と振り向くと
そこにはピラミッドが。雑談しているうちにピラミッドに着いてしまった。

だんだんあの三角形が近づいてきて「いよいよだねえ~」なんて言いながらた
どりつくイメージだったが、あまりに忽然と現れてしまったので面食らう。そ
していつも絵葉書でみたり映像で見たりするピラミッドだが、すぐ裏まで都市
でありちょっとびっくりする。

通訳のマクシミリアンさんはおなかがぽこっと出た愛嬌たっぷりの人物。「ヒ
~ヒッヒッ」と独特の笑いを浮かべるナイスキャラクターである。ハクション
大魔王の顔と体に、笑うセールスマンの笑い声といったあんばい。ディレクタ
ーの山本遊子ともハイテンションなギャグ合戦を早速始めていた。久しぶりの
現場にちょっと安心。

さて、お仕事開始。エジプトでのミッションは従来通りの「番組制作」「web
制作」の他に機材のテストもある。レトロ通販から借りているステディカムDV
のレポートとビデオαから借りているPD150のレポートである。明日は灼熱の
カイロロケを画像と共にレポートしよう。

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【ip2000プロジェクト】6/29
船上で大活躍の清水康祐帰還! 
音信不能帰還に撮影された空白の5日間の映像とは?
http://www.ip2000.net/
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■編集後記(6/29)
・文春文庫「田宮模型の仕事」はおもしろかった。文章はけっして上手ではな
いが感動を呼ぶ。何を隠そう、わたしも模型少年だった。手先が超器用な兄貴
に比べられると全然だめだが、普通よりはセンスはあったと思う。プラモデル
はたくさん作ったし、ライトプレーンは数知れず、バルサで作ったヒコーキに
タイガーロケッティなんぞを装着して飛ばしていた。だからすごく親近感をも
って読めた。アニメ作家の大塚康生さんとのエピソードなんか、なるほどな~
と感心しきり。雨がやんだら浦和のゆざわやに田宮を見にいこう。 (柴田)

・私も数年前までは黒ばかり着ていた。一番似合う色なんだから、仕方ないじ
ゃ~ん、と思っていた。ジーンズやTシャツ、スニーカーなんて履かなかった。
似合わないから仕方ないじゃ~ん、なのだ。でもある時から、鮮やかな色も、
カジュアルウェアも似合いはじめて、結構人間って流動的なんだなと思った。
子供の頃からストレートロング。パーマをかけたことも、ショートにしたこと
もほとんどない。美容室での会話が苦手というのが一番の理由なのだが(だっ
て興味のある話にならないんだもん。話題の接点が噛み合わない)、楽なこと
も一因。ロングが流行るそうなので、ここいらでぱっとショートに、と思いな
がら忙しさにかまけるのであろう。私の場合、守りというより怠慢。/400通
メール事件解決。「ざまあみろ」メールのリレーホストのプロバイダー会員と
判明。別ホストアドレスでメール発信できるようなので名前は伏せるが、そこ
のサポートの方がメッセージidから辿り警告を。返事がなかったので諦めてい
た。お見それしました。ありがとうございます。      (hammer.mule)


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■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.nagesen.gr.jp/  <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
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編集長     柴田忠男 < mailto:tdo@green.ocn.ne.jp >
デスク     濱村和恵 < mailto:zacke@days-i.com >
アソシエーツ  神田敏晶 < mailto:kanda@knn.com >
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