[0769] アートディレクターという仕事

投稿:  著者:


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0769   2000/12/19.Tue発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 17137部
情報提供・投稿・広告の御相談はこちらまで mailto:info@dgcr.com
登録・解除・変更・FAQはこちら http://www.dgcr.com/regist/index.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

---PR-----------------------------------------------------------------
【求人広告】AQUENT.INC <http://www.aquentpartners.co.jp/> 【新着情報】

■恵比寿|外資系広告代理店で、Webの経験少々あるセクレタリーを募集
■天王洲|ホテルのブランドイメージに関わる様々な企画立案、企画力のある方
■高井戸|Webページの作成・更新、英語サイトの日本語訳、販促企画運営も
-----------------------------------------------------------------PR---
---PR-----------------------------------------------------------------
■■■■■  SANYOデジカメiDshotで21世紀に残したい映像を撮る!   ■
■■■■ 10名様にiDshotが当たる“モニターキャンペーン”実施中  ■■
■■■     応募期間:2000年12月1日~2001年1月10日     ■■■
■■            ▼応募はこちら▼          ■■■■
■       http://www.idshot.com/index.html?mn     ■■■■■
-----------------------------------------------------------------PR---

 <映像がデスクトップから手のひらに舞台を移して再生される>

■デジクリトーク
 アートディレクターという仕事
 森川眞行

■連載「ip2000-phase2」 疾走記(170)12/19
 映像を持ち歩く時代がやってきた--(その1)
 川井拓也@東京

■イベント案内
 dmap-第2回映像コンテンツプレゼンテーション競演会



■デジクリトーク
アートディレクターという仕事

森川眞行
───────────────────────────────────
仕事場の隣のデスクで、僕の仕事を手伝ってくれているM君がある日こう聞い
た…「森川さん、デザイナーとアートディレクターの違いって何ですか?」

●全ての現場での判断基準は商品が売れることに直結

僕がアートディレクターと言う肩書きを名刺に刷り込んだのは12年前である。
僕はあるデザイン会社にヘッドハンティングされて(要するに給料に吊られて)
アートディレクターとして職に付いた。その会社は某有名百貨店の通販媒体の
制作物を作る会社だった。

僕が担当したのはカタログである。一冊のカタログを作るには、まずクライア
ントである百貨店の担当者(バイヤー)が商品を用意する。それは婦人服から
始まり、紳士服、家具、家庭用品、貴金属、日用品…と多くの商品が用意され、
各バイヤーは商品の説明をして、それを誰にどのように売りたいか…という話
をして終わる。

我々は、商品を撮影用のスタジオに持ち込み、コピーライターは商品を取材し、
スペックと商品コピーを作成し、我々デザイン部隊はカタログの全ページの撮
影ラフとページレイアウトを作成するのである。

アートディレクターは、一冊のカタログを撮影するためのデザイン…というか
コピーライターの書くコピーの内容以外の全ての責任を追う立場にある。その
ためにデザイナーはもちろん、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイク、モデ
ル、写植屋、版下屋、製版屋、印刷屋のすべての指示を出さなくてはならない
のである。

その時に、どんなカタログを作るのか? その姿勢がもっとも大切である。ど
んなカタログを作るのか? …それは商品が売れるカタログである。これが全
ての現場での判断基準になるのだ。

「いいデザイン」とは何か? それは商品が売れるデザインデザインである。
ページのレイアウトも、写真のトリミングも、タイポグラフィも…デザインの
要素になる全ての現場での判断基準は商品が売れることに直結するか否か…な
のである。

かっこいいとかCOOLとかイケてるとか、曖昧な言葉でデザインは語れない。そ
う、いいデザインとは、クライアントの目的に合致しているものなのである。
そしてアートディレクターとはその目的の為に、全ての作業をコントロールす
る役割である。

例えば、モデル撮影。ここには多くのスタッフが現場に立ち会う。カメラマン
はよいモデルを使ってかっこいい写真が撮りたいに決まっている。当然スタイ
リストも自己主張がしたいからテーブルの上にありったけの自分のセンスをぶ
ちまける。ヘアメイクも然りである。モデルも東京の雑誌などで良く見かける
モデルを使っており、一日のギャラが、僕の給料の半分位の高級モデルだ。当
然自分の納得できない写真は撮られたくないだろう。

カメラマンは、セットを組み、大道具も配置し、スタイリストはテーブルの上
から洋服に合わせたお気に入りのアクセサリもってモデルに近付く。ヘアメイ
クも流行の髪型をなんとかやってみたいと言う。しかし、我々は雑誌のグラビ
アを撮影しているのではない。ここからがスタッフとアートディレクターとの
闘いなのである。

我々は通販のカタログを作っているのだ。売りたいのは商品だ。だから商品で
ある洋服にかかるような髪型にはNGを出し、アップにする。どれが商品なのか
分かりにくくするアクセサリは、すべて外してしまう。商品が背景と溶け込ん
で分かりにくくなるセットはすべて排除し、最終的にはホリゾントでの撮影に
する。

そりゃ、現場は面白くない。モデルはだんだん不機嫌になる。しかし、そこで
我々は何の仕事をしているのかをそれぞれのスタッフに説明し、いらないモノ
を排除する勇気を持つ。これが僕のアートディレクターの仕事であった。

だってデザイナーは知っているのだ。一生懸命、凝りに凝って撮影したポジも、
カタログの目的から外れていればそのポジは使わないし、最悪は再撮になるの
である。ちなみに一回のカタログで撮影に使う経費は1000万円を越えるのであ
る。カメラマンやスタイリストやモデルがクライアントではないのである。

目的がはっきりしていて、常に完成した形がぼんやりとでも頭の中にあること。
作成の途中でその目的から外れるものはすべて排除すること。これさえ分かれ
ば撮影だけでなく、デザイナーに対するレイアウトや、タイポグラフィ、製版
屋への色の注文も明確になるのである。

…なんて生活を僕は2年程経験し、その後はMacintoshでの制作にシフトした。
懐かしい話だ。

●NGを出せる勇気が必要

で、その時に覚えた感覚は一人で仕事をするようになっても、いまだに役にた
っている。もう多くのスタッフと関わることはないけど、仕事の進め方は同じ
である。

例えば、Photoshopで画像を合成する時に、時として偶然に(笑)かっこいい
表現に遭遇したとする。その時に、妙なアーティスト根性と闘うこと。これが
自分にとってのアートディレクションなのである。

また、今回ビデオを制作した。撮影時に何度もNGを出して取り直したカットも
編集の段階で、必要がない…と判断すればカットしてしまう勇気。これが現在
でも僕がデザインを続けていて実行していることである。

時には何日もかけたPhotoshop合成や、緻密に作成したイラストや3Dのモデリ
ングも、現在の仕事から外れていればNGを出せる勇気が必要なんだ。もちろん
「せっかく作ったのに…」と頭の中ではもうひとりの自分がふてくされている
ことも多い(笑)けど、今もこのやり方で自分も含めて多くの人たちと格闘し
ている。

─── 
今回のテキストは以前に書いてストックしてあるものでした。実は18日の大阪
のイベントのことを中心に今回のコラムを執筆しようと思ったのですが、イベ
ント終了後の打ち上げで、深夜まで飲んでしまって、書けなくなってしまいま
した。ごめんなさい。

これからのWebデザインやWebサイト構築。そしてイベントで初公開した
Fireworks4やDreamweaver4について。また森川がこの夏から続けてきたWebペ
ージテンプレートビジネスの「WEB-OMS」については、来年じっくりと報告し
ますね。18日の大阪のイベントにお越しくださったみなさん、どうもありがと
うございました。

「WEB-OMS」はまだ暫定版ですが、以下のWebサイトで情報公開中。
販売代理店大募集です。

http://www.siliconcafe.com/weboms/

Silicon Cafe' / 森川眞行 
morikawa@siliconcafe.com
http://www.siliconcafe.com/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■連載「ip2000-phase2」 疾走記(170)12/19
映像を持ち歩く時代がやってきた--(その1)

川井拓也@東京
───────────────────────────────────
ip2000-Phase2 現在のオリビア号の位置(凸)
カヤオ(ペルー)>凸イースター島>パペーテ(タヒチ)>ラウトカ(フィジー)
>ポナペ(ミクロネシア)>東京
http://www.japangrace.co.jp/board/ (企画・プロデュース)

私が所属するのはCF制作会社であり商品は「映像」ということになる。しかし
その会社でも異例な「機械」を売るプロジェクトをやったことがあった。今か
ら3年前になるが「デジタルプレゼンテーションボックス」通称「DPB」という
ものだった。

その当時CFのプレゼンテーションは、B0のシチレンボードにカンプライターと
呼ばれるプロのイラストレーターが描いた絵コンテのコマを貼り付けてプレゼ
ンするのが常識だった。そして資料映像やビデオコンテと呼ばれるイメージを
喚起させるための映像ツールは、VHSでテレビを通して見せるわけだ。

それらをすべてパソコン上でやろうというのが「デジタルプレゼン」のコンセ
プトだった。パワーポイントとAVI画像のリンクのテスト等で実践して分って
きたのは「配布物」の問題だった。プレゼンは画像、映像、そしてプレゼンタ
ーの声という複数の要素で構成されている。その場でプレゼンが盛り上がって
も結局その場にいる人以上の上の人に決裁を取りに行く場合は配布資料が必要
なわけだ。

いくらデジタルを取り入れて準備工程を簡略化しても、カラーコピーやビデオ
テープを別に添付しないといけないのでは効率は悪くなるばかりか作業が増え
るだけでなんの意味もない。

そこで考えたのが「DPB」と呼ばれるものだった。これはプレゼンテーション
自体をまるごとDVテープに収録してしまうという機能をゼロハリのアタッシュ
ケースに詰め込んだものだった。スキャンコンバーター、DVウォークマン、マ
イク、小型CCDカメラ、ミキサー、セレクターを組み込んでありここにパソコ
ンを接続してプレゼンを行うとその時のPCの画像、プレゼンターの音声、それ
に対するプレゼンを受ける側の反応(映像)、音声が同時に1本のDVテープに
収録できるわけである。質疑応答も含めてプレゼンを丸ごとおさめあとはその
マスターDVからVHS等にコピーをすればいいというものだ。

この製品を各広告代理店に持ち込み、それぞれの代理店自慢のプレゼンテーシ
ョンルームで実演したのだ。まるで「ミッションインポッシブル」のような気
分で銀色に光るケースを自慢気に披露したものだ。すると某大手代理店が2セ
ット購入すると申し出てくれた。自作PCみたいな製品であるからほとんど利益
はなかったが自分の考えた「コンセプト」が買ってもらえたことを考えるとと
てもうれしかった覚えがある。

ただその製品がどれくらい現場で活躍したのかは分らない。担当者がその「コ
ンセプト」をどう解釈して利用したかによるだろう。

この「DPB」を制作した当時考えていたのが、「デスクトッププレゼンテーシ
ョン」という空間概念だった。会議室が大きければ大きいほど生産的な会議に
ならないという話はよくされることだ。誰かが誰かの「発注」に基づき「回答」
するという前時代的な「プレゼンテーション」を抜け出すには担当者同士が互
いの知恵を「プレゼン」することが必要だと思ったのだ。

そして、書類にある目次にのっとってプレゼンするのではなく相手の出方によ
って見せるもの、見せないものを取捨選択しながらプレゼンしていくことがで
きるのが「デジタル」の力だと思っていた。

つまり「デジタル」を使いこなすためには「アナログ」な思考が非常に重要視
されるわけだ。ここでいう「デスクトッププレゼンテーション」とはPCを使っ
て机でやるという意味ではなく最小限の人間同士で動的なプレゼンをするとい
う意味である。ネット時代の映像コンテンツプロデュースにはさまざまな引出
しが必要になる。映像だけではなく「広告」の要素、「web」の要素、「携帯
電話」の要素、「テレビ」の要素などを組み合わせながら「新しい価値」を創
造しなければならない。

ここ数週間に出てきたさまざまな新製品を見ながらこんな昔話を思い出した。
なぜなら、映像がデスクトップから手のひらに舞台を移して再生されるように
なってきたからだ。NTTが始めたPHSによるMPEG4の動画配信、シャープの新型
ザウルスのビデオ再生機能などなど。

そして来年の春には携帯で普通に映像を見られるようになる。手のひらにある
映像を見る、見せ合うという生理的に新しい感覚がどんな映像を求めていくの
か? 映像制作者として興味は尽きない。今までの映像の文法は通用しない。

誰が新しい文法を開拓するだろうか?

【かわい・たくや/デジタルコンテンツプランナー、プロデューサー】
ストリーミング映像、衛星放送番組、webサイト等を手掛ける。2000年は地球
一周する船にデジタル機器を積み込み一クルーズマルチコンテンツを実験した
「ip2000」をプロデュース。

<http://www.ip2000.net>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■イベント案内
dmap-第2回映像コンテンツプレゼンテーション競演会
http://www.cgarts.or.jp/dmap/
───────────────────────────────────
<主催者情報>

CG-ARTS協会では、2001年3月15日・16日に開催する「dmap-第2回映像コンテン
ツプレゼンテーション競演会」のプレゼンターを募集しています。応募の締め
切りは、12月22日(金)。多数のご応募をお待ちしております。

概要:
dmapは、新しい「才能」を発掘し斬新な「企画」を世に送り出す場。新人から
現役の企画・制作者を対象として、映画・テレビ番組・Web・ビデオ・CD-ROM・
DVD・ゲームなど、さまざまな映像コンテンツの企画をインターネットを通じ
て募集しています。応募者と企画概要はWebで紹介。プレゼンテーション競演
会会場には、第一線で活躍されているプロデューサーやディレクター、クリエ
イター、投資家、プレス関係者など、映像コンテンツに関わる方々が、その企
画のビジネス展開や才能の活用を目的に集まります。

主催 CG-ARTS協会
会期 平成13年3月15日(木)・16日(金)
会場 恵比寿ガーデンプレイス 東京都写真美術館

(1)応募資格
コンピュータを利用して制作した映像コンテンツをプレゼンテーションできる
個人または団体なら、自由に応募できます。年齢、職業、国籍、経験なども問
いません。プロとして活躍されている方でも、 アマチュアの方でも応募いた
だけます。

(2)テーマ・内容
映像コンテンツの制作に関する自主企画であれば、テーマ、手法(2D/3DCG
Webコンテンツ、実写、手描き等)、インタラクティブ性、規模(長編/短編)、
発表メディアなどはすべて自由です。まだアイデア段階にある企画でも、すで
に制作が進行しているものでも応募できます。他のコンテストに応募したり、
受賞した企画も応募できます。

(3)応募方法
Webでまず「応募予約」を行なっていただいたあと、提出書類や応募映像を事
務局まで送付していただきます。その後の連絡は、Eメールで行ないます。

応募要項の詳細等につきましては、dmapのWebページでご確認下さい。
http://www.cgarts.or.jp/dmap/

お問い合わせ先:
CG-ARTS協会 dmap事務局
e-mail:dmap@cgarts.or.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■編集後記(12/19)
・来週の今日は北京にいるはずだ。われわれが展示する北京市労働人民文化宮
というところは、天安門から故宮博物館に至る道の右側にあるかつての太廟。
たんなる作家集団が展覧会を開けるような場所ではないようだ。でも、できち
ゃうんだからすごい。正式なレセプションも行われるので、スーツにネクタイ
が必要というのが困った。しかも厳冬。どんな恰好で行けばいいんだ? これ
からいろいろ暖かい衣料を買い出しにいかなくてはならない。また、旅に必需
の文庫本選びという楽しく悩ましい仕事もある。落ち着かない、、、(柴田)

・今日の後記に書こうと思っていた新聞記事があったのだが、母親が処分して
しまっていた。昨日の夕刊ぐらい置いておけばいいのに。記憶があやふやなの
だが、バナーをクリックすることによって募金が出来るという、食糧難の人々
を救うというサイトについてだったと思う。クリックする人も気軽にできるし
広告主もイメージアップにつながるのだそうだ。 (葹迯纈・・・ぢ)

----------------------------------------------------------------------
■ 日刊デジクリは投げ銭システム推進準備委員会の趣旨に賛同します ■
http://www.nagesen.gr.jp/  <投げ銭システムをすべてのhomepageに>
----------------------------------------------------------------------


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
発行   デジタルクリエイターズ
     <http://www.dgcr.com/>

編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
        森川眞行 

情報提供・投稿・プレスリリース・記事・コラムはこちらまで
 担当:濱村和恵
登録・解除・変更・FAQはこちら <http://www.dgcr.com/regist/index.html>
広告の御相談はこちらまで  
メーリングリスト参加者募集中  <http://www.dgcr.com/ml/>

★等幅フォントでご覧ください。
★【日刊デジタルクリエイターズ】は無料です。
 お友達にも是非お奨め下さい (^_^)/
★日刊デジクリは、まぐまぐ<http://rap.tegami.com/mag2/>、
Macky!<http://macky.nifty.com/>、カプライト<http://kapu.cplaza.ne.jp/>、
Pubzine<http://www.pubzine.com/>、E-Magazine<http://www.emaga.com/>、
melma!<http://www.melma.com/>のシステムを利用して配信しています。

Copyright(C), 1998-2000 デジタルクリエイターズ
許可なく転載することを禁じます。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■