[0995] 愛と革命は成就しない?

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0995    2001/12/14.Fri発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 19837部
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 <この三角関係にはどう考えても出口はない>

■デジクリトーク
 愛と革命は成就しない?
 十河 進

■デジクリトーク
 Side-A「メタセコイアで3D入門(4)」
 Side-B「あれから。」
 根本和昭



■デジクリトーク
愛と革命は成就しない?

十河 進
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●20世紀は革命の時代だった?

遠い昔、「革命」という言葉はまだロマンの香りに包まれていた。プロレタリ
アートたちはいまだ輝きを失わず、カストロと共にキューバ革命を成功させた
後、南米を転戦した革命戦士チェ・ゲバラは若者たちのヒーローだった。「い
ちご白書」(1970)で主人公たちが立てこもる校舎にはゲバラの肖像が掲げら
れている。

僕は筑摩書房から出ていた「世界ノンフィクション全集」で、たまたまカスト
ロの侵攻の時にハバナに滞在していたジャーナリストの夫婦が書いたキューバ
革命のルポを面白く読んだことがある。確か、カストロのハバナ侵攻は大晦日
から新年にかけての出来事だったと思う。

「ゴッドファーザー・パートII」(1974)でマイケル・コルレオーネ(アル・
パチーノ)はマフィア同士の取引の話でハバナへ行き、カストロ率いる革命軍
の侵攻に合い、這々の態でアメリカへ逃げ帰る。共産化したキューバはアメリ
カにとっては喉元に突きつけられたナイフだったが、キューバ革命はマフィア
のビジネスにも大きな影響を与えた。

ところで、筑摩書房の「世界ノンフィクション全集」には中学の課題図書にも
なっていたジョン・リードの「世界を震撼させた十日間」とエドガー・スノウ
の「中国の赤い星」も入っていた。

一般に「十月革命」と言われる1917年の「ボルシェビキ革命」に立ち会い迫真
のルポルタージュとしてまとめられたジョン・リードの「世界を震撼させた十
日間」は、エドガー・スノウが毛沢東をルポした「中国の赤い星」と共に共産
主義革命を描いたノンフィクションの古典と言われている。

プロレタリアートによる共産主義革命が最初に成功したのはロシアだった。三
月革命でケレンスキー内閣が成立したもののレーニンが指導するボルシェビキ
による十月革命によってロシア革命は成功し、世界初の社会主義国家が成立し
たことになっている。革命と反革命、あの時代の内紛はよくわからない。

ところで、確か「十月革命」は旧暦で本当は11月7日なのだと、昔、何かで読
んだ記憶がある。歴史の教科書には「十一月革命」と載っていた。僕はずっと
「俺の誕生日はロシア革命記念日なのだ」と言っていたのだが、ソビエト連邦
が消滅して以来、何の意味もなくなった。結局、ソビエト連邦は70年余しかも
たなかったのだ。

レーニンは革命後、早くに死んで遺体はレーニン廟に安置され、多くの観光客
(?)の視線に晒され、世界革命をめざしたトロツキーはメキシコに逃れたも
ののスターリンの暗殺者に襲われて斧で頭を割られた。多くの人間を粛正しシ
ベリアの収容所を満杯にしたスターリンは、最も唾棄すべき権力主義者として
スターリニズムという言葉を生んだ。

●ハリウッドが讃えたコミュニスト映画

ハリウッドの貴公子と言われるウォーレン・ベイティが初監督作品として選ん
だ題材は、なぜかジョン・リードの生涯だった。タイトルは「レッズ」(1981)
という。「アカたち」あるいは「アカども」とでも訳すのだろうか。

トルーマン・カポーティの代表作「ティファニーで朝食を」(1958初版)の中
で、ヒロインのホリー・ゴライトリーは「あの厭なアカ」と言い、当時のアメ
リカ人たちの最大の恐怖だった共産主義を嫌悪してみせた。東西冷戦下の頃の
小説である。

アカ狩りの別名であるマッカーシズムとして名を遺したマッカーシー上院議員
は「国防省にいるコミュニストどもをあぶり出す」と宣言し、ミッキー・スピ
レインが誕生させた私立探偵マイク・ハマーは「コミュニスト・イズ・ギャン
グ」と言いながら共産主義者たちを殺しまくった。

アカ狩りで大きな傷を負ったのはハリウッドである。チャップリンはアメリカ
を追放され、ジョセフ・ロージーはヨーロッパへ逃げざるを得なかった。ドル
トン・トランボは仕事がなくなり、偽名で「ローマの休日」(1953)のシナリ
オを書いた。エリア・カザンは同志の名を権力に売り渡して逃げ延び、半世紀
後にアカデミー賞特別賞を受けた時にさえブーイングをくらった。

そんな中でWASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)の代表の
ような俳優であるウォーレン・ベイティは、なぜジョン・リードを主人公にし
たのだろうか。それは僕には未だに謎だが、この3時間を超える大作はアカデ
ミー監督賞を獲得してしまう。

驚いたことに、この映画は最後のクレジットタイトルがスクロールする時に何
と「インターナショナル」が流れるのである。驚きながらも、僕はその演奏に
合わせて口ずさんだものである。

起て 飢えたる者よ 今ぞ日は近し
覚めよ 我が同胞(はらから) 暁はきぬ

ラストに「インターナショナル」が流れる映画がアカデミー監督賞を獲得する。
そのことも僕にはなじめなかったが、もしかしたらアカ狩りで仕事を失った才
能ある映画人たちに対するハリウッド人たちの贖罪だったのだろうか。

いざ闘わん いざ 奮い起て いざ
ああ インターナショナル 我らがもの

僕は、1980年代の映画館の暗闇の中で声に出さずに歌っていた。

「インターナショナル」が毎日のように歌われていたのは、30年以上も昔のこ
とだ。まだマクドナルドは日本進出を果たしていなかったし、新宿西口に高層
ビルはなく浄水場跡の原っぱの草が風になびいていた時代の話である。「イン
ターナショナル」や「ワルシャワ労働歌」が、その風に乗って漂ってきた。

当時から、若者たちは言葉を略す傾向があったのか、「インターナショナル」
は「インター」と略され、「ワルシャワ労働歌」は「ワルロー」と略された。

●革命の時代を背景にしたラブ・ストーリー

「インターナショナル」や「ワルシャワ労働歌」のことなんか何も知らない中
学生の頃に、僕は「ドクトル・ジバゴ」(1965)を見た。デビッド・リーン監
督が「アラビアのロレンス」(1962)に続いて作った映画であり「アラビアの
ロレンス」で起用した現地俳優オマー・シャリフを主人公に抜擢した。

十年ほど前にデジタルマスタリングのLDで「ドクトル・ジバゴ」が発売になり、
さっそく購入して見直したら、映画が始まってすぐにモスクワのデモ隊が歌っ
ているのは「ワルシャワ労働歌」だった。次のシーンでデモ隊が歌っているの
は「インターナショナル」である。

暴虐の雲 光を覆い 敵の嵐は吹き荒れる
ひるまず進め 我らが友よ 敵の鉄鎖を打ち砕け

革命前夜。ロシア社会は騒然としていた。後にヒロインのラーラの夫になるパ
ーシャは政治意識の強い学生で、デモに出てコサック兵たちの襲撃を受ける。
そのコサック兵の蹂躙を目撃した医学生ジバゴは怪我をした民衆を手当てする。

「ドクトル・ジバゴ」と言えばモーリス・ジャールが作曲した「ラーラのテー
マ」を思い出す。ロシアの民族楽器バラライカをフィーチャーした美しい曲で
ある。「映画音楽史上、最も美しい曲」と言われることもある。映画を見た頃、
僕はラジオ番組で追っかけてこの曲を聴いたものだった。

革命に巻き込まれる主人公たちの波乱に充ちた運命を謳い上げるために、モー
リス・ジャールはラーラのテーマを軸に勇壮なシンフォニーを奏でる。そして
自作曲の間に「ワルシャワ労働歌」や「インターナショナル」を挟み込むのだ。

この映画の主要人物は5人いる。医者で詩人であるジバゴ。その妻になるトー
ニャ。ヒロインのラーラ。ラーラの母親の愛人だが、ラーラと関係を持つコマ
ロフスキー。彼は革命前は弁護士として上流階級に出入りしながら革命後も見
事に生き延び司法大臣になるしたたかな男だ。ラーラの幼なじみで後に夫とな
るパーシャは、革命運動に身を投じ革命軍の将軍にまでなるが、やがて反革命
の烙印を押されて粛正される。

原作と違って、映画は第二次大戦後のソビエト連邦から話が始まる。アレック
・ギネス(「スターウォーズ」のオビワン・ケノビですね)は共産党の幹部で、
あるダム(人民の国ソビエト連邦の希望を象徴するような近代的で巨大なダム
だ)の事務所にきている。

ひとりの娘が連れてこられる。アレック・ギネスは自分がジバゴ(彼は死後復
権し、その詩集はソ連中で読まれている)の異母弟エヴグラフであり、ジバゴ
とラーラの間に生まれた姪を捜しているのだと告げ、その娘にジバゴとラーラ
の物語を語り始めるのだ。

「風と共に去りぬ」(1939)が結局、南北戦争を背景にした男女の愛の物語で
あったように、「君の名は」(1953)が東京空襲をきっかけにして始まったメ
ロドラマであったように、戦争、革命という動乱の時代を背景にした男女の物
語はドラマチックな展開を不自然ではなく設定できるので、運命に翻弄される
男女のラブ・ストーリーが描ける。もちろん「ドクトル・ジバゴ」も例外では
ない。

●妻か愛人か選ばねばならない理不尽さ

デビッド・リーン監督はイギリス時代の名作「逢びき」(1945)や「ライアン
の娘」(1970)のように「禁断の愛」(つまり不倫の恋ですね)を映画作家と
しての大きなテーマにしている。「アラビアのロレンス」だって、後半はロレ
ンスが自分の同性愛的な部分に気付き、それを抑えようとして複雑な性格にな
っていく「禁断の愛」の物語だ。

「ドクトル・ジバゴ」は革命前夜から第一次大戦の勃発、さらに革命の動乱に
翻弄される人々の運命を描いた一大叙事詩(映画の宣伝コピーみたいですけど)
なのだが、突き詰めるとジバゴとラーラの禁じられた(それゆえに美しさを湛
えた)愛の物語でもある。

ジバゴは兄妹のように育てられたトーニャ(ジェラルディン・チャップリン、
もちろんチャップリンの娘です)と結婚し、その妻を愛しながら戦場で軍医と
看護婦として出会ったラーラ(ジュリー・クリスティー、十代の僕の最大のヒ
ロインでした)との不倫の愛に苦悶する。

愛する人を愛することが、同時に別の愛する人を裏切ることになるという不倫
の愛の構造は、人間が同時に何人かの異性を愛することができる精神構造にな
っているために起こる悲劇である。こう書くと異論もあるだろうけれど、確か
に人は妻や夫を愛しながら別の人を恋することはある(差し障りがあるので、
僕にも経験があるとは書けないのだけど)。

デビッド・リーンの「逢びき」は1984年に「恋におちて」というタイトルでリ
メイクされた。メリル・ストリープとロバート・デ・ニーロという「演技力な
ら最強よ」コンビでの再映画化だった。その映画を見てもわかるが、妻子ある
男女の「禁断の愛」を深く深く考察した作品である。

革命後のモスクワから離れて旧領地で家族と暮らすジバゴは近くの町でラーラ
と再会し、妻に偽ってラーラの元へ通う。ジバゴは妻を裏切る苦しさを感じな
がらもラーラを抱かずにいられない。どんな誠実な男も一度くらいは落ちる人
生の陥穽である。こういう時、人間は本当に始末が悪いと思う。

彼は愛するトーニャを裏切っていることに苦しみ、「すべてをトーニャに告白
して、彼女に赦しを乞い、もう二度とラーラとは会うまいと決意」するのだが、
その直後に、別れをきちんとラーラに伝えなかったから、もう一度ラーラの元
へと引き返し話し合おうと思いつき「もう一度ラーラに会えるという思いは、
ジバゴを狂喜」させるのである。

しかし、この三角関係にはどう考えても出口はない。昔、山口百恵は「はっき
りカタをつけてよ!」と男に迫ったが、迫られた男はまさに「絶体絶命」なの
である。ジバゴもカタはつけられない。

●珠玉の美しさを持った愛の物語

しかし、革命が彼らの不倫関係を救う。ジバゴは「妻に愛人のことを告白しよ
うか」と悩んでいる時に赤衛軍に囲まれ、軍医として拉致されてしまう。そし
て長く続く白衛軍との戦闘に従軍している間にジバゴの家族は国外追放処分に
なり、二度と会えなくなるのだ。

トーニャを失ったジバゴは、再会したラーラをかつて家族と過ごした人里離れ
た旧領地の酷寒の別荘に連れていく。ジバゴとラーラの最後の夢のような日々
である。運命は彼らを二度と会えなくするのだが、その直前のつかの間の幸福
が彼らに訪れる。

ラーラと共に橇で旧領地の凍り付いた家に着いたジバゴは書斎の机に座り、机
の中からノートとペンとを取り出し、その真っ白な紙に「ラーラ」と記す。後
にソビエト中の人々が読むことになる「ラーラ詩集」の第一編が書かれる瞬間
だ。そのシーンは美しい。すべてを忘れて二人きりの濃密な愛の生活に浸る、
その幸福感が伝わるシーンである。

僕はずっと、その時にどのような詩が書かれたのかが知りたかった。旧ソビエ
ト連邦では発禁になったが、ノーベル賞を受賞してしまった(授賞式にはソビ
エト政府の圧力で参加できなかった)パステルナークの原作「ドクトル・ジバ
ゴ」が新潮文庫に入り、ようやくジバゴの詩を読むことができたのは十年ほど
前のことだ。初めて映画を見てから、すでに25年が過ぎていた。

そのおもざしの優しい忍従は
ぼくの心に永遠に沈んだ、
だからぼくは平気なんだ、
この世界が残忍であることにも。

ジバゴは「あいびき」という詩に、このように「愛する人の面影があれば、ど
んな過酷な運命でも生きていける」と記している。愛する人を得た人間は詩人
になる。ジバゴの詩はラーラがいなければ、決して書かれなかったものだ。映
画版「ドクトル・ジバゴ」では、二人の愛が一冊の詩集を生み、その詩集が共
産主義社会においても人々を感動させていることが明確に描かれる。

プロローグとエピローグで、ジバゴとラーラの間に生まれ幼い頃に行方不明に
なり孤児として育った娘に(ジバゴとラーラが永遠の別れを迎えた時にラーラ
は妊娠していたが、そのことをジバゴは知らぬまま死んでしまう)、エヴグラ
フは何度も詩集を見せる。

「君の本当の父と母の姿は、この詩集の中にあるのだ」と彼は言いたそうであ
る。晩年のジバゴを看取ったエヴグラフは葬儀に現れたラーラと出会い、彼も
またラーラを愛するようになっていたのだ。だが、ラーラはモスクワの町で逮
捕されシベリアの収容所で死んでいく。

どんな革命も戦争も人間の愛を変えることはできないし、その真実の愛が書か
れた文学作品は永遠の命を保つのだと、デビッド・リーンは言いたかったのか
もしれない。「ドクトル・ジバゴ」は、ジバゴとラーラの美しいラブ・ストー
リーとして永遠に記憶されるだろう。

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
雑誌編集者。いろいろとやらなければならないことが増えて、時間をどう使う
かが課題になる。休日に本を読んだり映画を見たりという時間がなくなってし
まった。ネ、ネタの補給が……

映画批評空間「ドクトル・ジバゴ」
http://cinema.media.iis.u-tokyo.ac.jp/movie.cgi?mid=2343

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■デジクリトーク
Side-A「メタセコイアで3D入門(4)」
Side-B「あれから。」

根本和昭
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●Side-A「メタセコイアで3D入門(4)」
前回のアンケートより……

[作業中に聴いているものを教えてください]
上司がシューティングゲームで殺した人間の叫び声
[その理由]
部長・・・いくらヒマだからといって・・・私にとってはかなり耳障りな音な
んですけれど・・・。

部長、ゲームしてもいいけど、音消そうよ……。
ということでこんにちは、根本です。
全回答中、最も過酷な環境下で作業をなさっているこの方には、突然ですが
「3メタセコ」プレゼントしたいと思います。
※10メタセコで「CGアイドル・オリジナルトレカ」をプレゼント!
(ほんとか!?)

それにしても、どんな会社なんでしょう……。非常に興味深いですねぇ。一体
なに屋さんなんでしょうか? よかったら詳細をご連絡ください。このネタ、
非常に興味深いので、もう少し続けたいと思います。まだ投稿していない皆様、
是非ご協力ください……(って本来の趣旨から離れている気が)。

※前回のアンケート結果とアンケートフォーム、文章中の図は下記URLに。
http://www.system-assist.com/nemoto/metaseq4-1.html

<4-0.前説 ~CGアイドルコンテスト、惨敗>
案の定、惨敗(最下位)でした。結果を真摯に受け止め、これからも精進した
いと思います。このままじゃ終われないよね。応援してくださった方、この場
を借りてお礼を申し上げます。ありがとう!

<4-1.移動・拡大・回転のポイント>
前回、移動コマンドについて解説しましたが、同じ理屈で拡大や回転もできま
す。同じ理屈というのは即ち、「選択した部分について移動・回転・縮小でき
る」ということです。前回説明した通り、オブジェクトは点と辺と面で構成さ
れています。それらの選択を上手く使い分ける事で、様々な変形が可能になる
わけです。

<4-2.拡大コマンド>
ということで拡大コマンドです。いつも通り「基本図形」から立方体を生成し
て実験してみましょう。画面左の「拡大」ボタンもしくはQキーを押します
(図1)。立方体が全て選択されている状態だと思いますので(選択されてい
なければ、編集-全て選択を)、オブジェクトの上でマウスをドラッグしてみ
ましょう。マウスの動きに合わせて立方体の大きさが変わったでしょうか?

次に選択を解除し、適当な辺をドラッグしてみましょう。辺だけが変形してい
るのが分ると思います(図2)。同じように任意の点を選択して変形する事も
可能です。この場合、複数の点を選択しないといけませんので、Shiftキーを
押しながら複数の点を選択しドラッグします。

この時注意しなければいけないのは、ドラッグの開始位置。なんにもないとこ
ろでマウスをクリックしてしまうとその時点で選択解除がかかってしまい、変
形できません。点・辺・面の上でドラッグしはじめることが必要です。(実は
「選択固定」という技もあるのですが、これは後々ということで)
この辺りは少し癖があるので、実際に操作しながら感覚をつかんでください。

<4-3.回転コマンド>
全く同じ要領で回転もできます。画面左の「回転」ボタンもしくはCキーを押
しましょう(図3)。ドラッグすれば回転ができるのですが、この時、回転パ
ネルのモードに注意してください(図4)。「球回転」と「スクリーン」とある
と思います。

球回転は、ボールを転がす感覚で回転でき、スクリーンは視点を軸にして回転
するという仕組みになっています。好みが分かれるところですが、僕はスクリ
ーンモードが使いやすいと思います。どちらも慣れないと思い通りの変形がで
きないので、とにかく触ってみることが大切です。

あ、ちなみに、X,Y,Z軸については説明しなくてもわかりますよね? 強制的
にその軸を中心に変形をかけることができます。

ちょっと難しかったでしょうか? 今回はこれにて。
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●Side-B「あれから。」

「あれからもう一年なんだね」
表参道で偶然見つけたパスタの店で、僕達の昔話は始まった。

「本当に早いよね。」
僕はありきたりな返事と、精一杯の笑顔で返す。本当にあっという間だった。
一年前という時間がまるでつい最近の出来事に感じられるほど、僕の中であの
頃の記憶は鮮明なままだ。

 *
「ビール頼んでおいて、ハイネケン。」
そう言って席を立つ彼女に、「昼間からビール?」と聞くと、「だって飲みた
いんだもん」と少しおどけてみせた。彼女が化粧室に行っている間に、適当な
食べ物とビールをオーダーし終えると、中庭のテラスで楽しそうにおしゃべり
をしている人たちを意味もなく眺めてみる。

 *
恐らく、僕の考えている「あれから」と、彼女の考えている「あれから」は違
うはずだ。僕はあの日、確か10月最後の日。彼女から付き合えないと告げられ
た。寂れた路地をいつもの速さで歩きながら、彼女は一言一句確認するように、
ゆっくりと僕に話した。僕はその理由に納得がいかず、ひたすらゴタクを並べ
て食い下がり、彼女は半ば諦めたような顔をしてそれを聞いていた。

 *
その頃彼女は悩んでいた。僕とは違う誰かのことで。僕はその話をしながら涙
を流す彼女に何も言えなかった。ただ、彼女を悲しませるその誰かが憎くて仕
方がなかった。そして僕もまた狡かった。そんな彼女の状況をチャンスだと感
じていたのだ。一方では彼女を心から心配し、またもう一方ではそんな彼女の
状況を喜んでさえいたのだ。僕は所詮その程度の人間だ。

 *
彼女は「今日も寒いわね」などと言いながら、よく冷やされたハイネケンを美
味しそうに飲んでいる。僕は昔話とは到底思えない昔話を懐かしみながら、日
も暮れかけた中庭のテラスを意味もなく眺めていた。

【根本和昭】nemopo@din.or.jp
システム・アシスト所属、悩めるCG屋さん。

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■編集後記(12/14)
・「秀吉、反逆す」(土岐信吉、廣済堂文庫)が面白かった。信長殺しは秀吉
だトいう、八切止夫みたいな異説太閤記。太田牛一の「信長公記」の本能寺の
記述は創作だとか。また光秀怨恨説の史料はひとつもないという。この時代の
謎や、忠臣蔵、新選組などのテーマが面白くマンガからトンデモ本、史料に近
いものまで集めている。そういえば今日は四十七士の討ち入りの日。(柴田)

・宅配便やセールスの多い日。水道関係のことで来た、という人は、ポストに
貼っている(屋号で書類が届くこともあるので)私の名刺を見て「僕もデザイ
ン関係の仕事をしていたんですよ」と。デジクリ読んでくれるとのことだった
ので嬉しい。こ汚い格好で出てしまったことが、ちと悔やまれる。何か一緒に
できたら面白いなぁ。/たのみこむ。ネタのない人は、時々いってみるべし。
デジクリ関係なら「コンピュータ」や「映画・ビデオ」「その他」あたりがい
いっす。笑えるものや濃いものもいっぱい。雑貨などは、ここを見て商品化し
ているんじゃないかと思うものも。/そのたのみこむ、の書き込みで見つけた
商品「スコープアイ」は、自分の耳の中を画面に映しながら掃除するもの。背
筋がぞわぞわとするんですが、ちょっと試してみたいかも。 (hammer.mule)
http://www.tanomi.com/metoo/  たのみこむ。作ってくれ!
http://www.scope-eye.com/scopeeye/scopeeye.htm  スコープアイ
http://www.scope-eye.com/scopeeye/contents/J5fil330.htm  見える映像
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2000/12/01/toretama/toretama.html WBS映像

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 

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 担当:濱村和恵
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