[1135] Wブッキングの功名

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1135    2002/07/29.Mon発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 21282部
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     <デジクリは8/1~8/18を基本的に夏休みとします>

■デジクリトーク
 Wブッキングの功名
 神田敏晶

■デジクリトーク
 おいしい装丁。
 白石 昇

■デジクリトーク
 レッツ ゴー トゥ「ロボぐるみ」ワールド(4)
 北川かりん

■製品案内
 LiFE with PhotoCinema



■デジクリトーク
Wブッキングの功名

神田敏晶
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KNN神田です。

先週は、和泉元彌さんのWブッキングのための日本国内大移動の話題で、日本
の芸能界の話題はもちきりでした。

この話題の発祥は、2月17日にソルトレーク五輪の特別番組出演のために奈良
の斑鳩町での狂言ライブに和泉元彌さんが、2時間30分遅れたことが判明し、
今回もどうなるんだろう? という野次馬精神がもたらした話題でした。

7月27日、岐阜県可児市から東京・新宿コマ劇場までの約400キロを、ヘリやビ
ジネスジェットを乗り継いで移動するという強行スケジュールは、なんなく成
功してしまい、視聴者の期待(?)を見事に裏切ってしまったという結末でし
た。どちらも無事に公演を終了しました。少し、肩すかしでした。

視聴率はまだ発表されていませんが、これは見事な視聴率のとれるドキュメン
タリーでした。しかし、「他人の不幸」を見てみたい的な悪趣味な企画でもあ
りました。

そこで、なぜマスコミがこの話題に注目するのかを考えてみました。やはり、
一番大きなことは、「他に話題がなかった」ところでしょう。芸能情報の一番
の稼ぎ頭は、世界のどこでも「スキャンダル」です。「スキャンダル」もすで
にマーケティングの手法として利用され、簡単には話題になりえません。「離
婚」なども事務所的には販売促進企画のひとつとなっています。

ゆえに、離婚や浮気程度ではもう話題を独占することができません。しかし、
芸能界では、ほとんど考えられないWブッキングのスケジュールを繰り返す和
泉元彌さんが、今回はどのように対応するのかという「企画」には、メディア
側にとっては格好の題材でもありました。

「結果」という情報を知るだけのスキャンダルよりも、この「どうなるのか?」
という今後の結果が出ていない情報のほうが、エンターテインメントとしては
面白いことは確実だからです。

今回の「遅刻期待報道」には現場報道だけに約300人ものメディア人が投入さ
れました。関係者をふくめるとこの10倍は軽く、この話題にたずさわっていた
ことでしょう。

当日は、期待をはずして、快晴でヘリコプターもビジネスジェットも順調、約
300万円もの交通費もこれだけの話題と露出を考えれば、安いものです。実際
にスポーツ紙の記者も新幹線でチャレンジしたことによって間にあってしまう
という体験レポートもありました。

しかし、この話題、これだけでは終わりません。

9月14日には、長野県大町市での公演と、岡山・山陽学園大での講義が重なっ
ているそうです。どのようなスケジュールを重ねているのか不思議でなりませ
んが、普通ならばどちらかをキャンセルすると思うのですが、これが「戦術」
ならば、再度この大移動に果敢にチャレンジされることでしょう。

岡山の山陽学園大にとっては、好都合な話題です。日本のメディアに学校の名
前がPRできることになるのですから、しかも9月11日の同時多発テロの話題が
終わった頃で話題がない頃ですから絶妙なタイミングです。

マスメディアにパブリシティを打つ際には、これぐらいの「どうなるのかわか
らない?」面白さや話題を提供する必要があるようですね。

KandaNewsNetwork,Inc. http://www.knn.com/
CEO Toshi Kanda mailto:kanda@knn.com
45-14 Oyama-cho,Shibuya,Tokyo,Japan151-0065
Phone81-3-5465-6555 Fax81-3-5478-8719

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■デジクリトーク
おいしい装丁。

白石 昇
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白石昇です。まず、ダミー本を作らねばならない。そうなのだ。訳文が整備さ
れ、版下が出来上がったら一度プリンターで印刷して、切って貼って本の形に
してみて、どこがどのようにいけないのか訂正などしなければならないのだ。

懸案だった訳註用の画像は、著作者事務所チーフマネージャーさんの協力によ
り、ほぼ集まった。訳文も、ボランティアで訳文を校正して下さる四人の不幸
な方達の協力を得るようになってからというもの、客観的な御意見をふまえて
七回書き直した。版下もずれないように製作した。

とりあえず印刷して、本の形にしてみなければならない。なぜなら、不備がな
いように版下を製作したつもりでも、不備が出てくるはずだからだ。アートワ
ーク担当者は基本的に頭が弱いので、そういうことは多々あるのだ。

思っていたとおり、テキストの訳註番号のズレなどがあっさり見つかった。し
かも、更に加えて、頁番号の校正が根本的に間違っているという事実も判明し
た。右から開いて左に向かって読むにっぽん語の本は、見開き左側に奇数ペー
ジが来なければならない。ようするに頭が弱い故に根本的なことがわかってい
ないのだアートワーク担当者は。

結局、三回もダミー本を作り直さなければならなくなった。しかも、この大事
な時期にプリンターが故障するという不幸に見舞われたために、プリンターを
借りることになってしまい、あちこちに迷惑をかけるハメになった。百六十枚
以上の印刷を他人の設備で執り行った結果、もしかしたら私は数少ない友人知
人を失ったかもしれない。

著作者は事務所隣のアトリエで七月の個展に向けて、毎日大きなベニア板のキ
ャンバスに塗料を塗りつけていた。私はそんな塗料まみれの事務所に通い続け、
日々、アートワーク上の修正、訳文などの訂正を続けた。

著作者は舞台と平行してここ六年ほどのあいだに二回の個展を開き、国内で大
きな評価を得ていた。著作者の描く絵や作るオブジェは技術的に凄いものでは
なかったが、それらの作品が見る人をシンプルで楽しい気分にするものなのは
間違いなかった。そもそも、いい表現というものはそういうものなのかもしれ
ない、思えるほどに楽しいものを著作者は作り続けていた。

六月のある日、私はアトリエに行き、両手を塗料だらけにして作業している著
作者にむかって言った。

「表紙のカパーデザインをお願いしたいんですけど、やってもらえますか?」

著作者は忙しいのか、好きなようにやってかまわないよ、と言ったが、私はそ
こで引き下がるわけにはいかなかった。彼の本は、彼の手による装丁でなけれ
ばならない。

いままで出版されている彼の著作の装丁すべてが、彼の手によるものだったし、
そもそも何年か前に私が書店で初めて彼の本を購入することになったきっかけ
は、その装丁の楽しさによるところが大きかった。

彼の装丁はとにかく楽しかった。あざといけれどイヤミがなく、小ネタが効い
ていて、その表紙を見た途端、一瞬、釘付けになってしまう、そんな感じの装
丁が出来る人間なのだ著作者は。

「ダメですあなたの本はあなたの装丁でなければなりません。あなたはアジア
でもっともイカした装丁が出来る人なのですから」

と私が言うと、彼は頭に白い塗料をまぶしたままで微笑んだ。じゃあ世界一は
誰だ? とつっこまれたら、私は、サルバドール・ダリ、と答えるつもりだっ
たが、彼は、何も聞かずにじゃあわかった、アイディアを事務所のDTP担当の
子に伝えておくよ、と言った。

次に事務所を訪れたとき、DTP担当者がパソコンの中で、奇天烈でイカした画
像をいじっていた。原本第十二版時点での表紙をそのまま日本語版にも採用す
る、と言うことらしかった。

私は自分が翻訳の原本に使った第十九版目の表紙は見ていたが、その表紙は見
たことがなかった。その表紙ははっきり言っておいしすぎた。こんなおいしい
表紙で市場出荷されるのであれば、私の一年以上の翻訳作業も報われることは
間違いない。

私は目頭を熱くしながら、あとはこれを印刷して出版し、皆様のお手元に商品
としてお届けするだけだ、と思った。とりあえず出版のためのデータはほぼ揃
っていた。

しかし、どうやらこの時点の私はこの先に待ちかまえている難関に思いを巡ら
すだけの想像力に欠けていたようであった。

つづく。

【しらいしのぼる】noboru@geocities.co.jp
語藝人。昭和44年5月1日長崎県西彼杵郡多良見町生まれ。『抜塞』で第12回日
大文芸賞を受賞。

昨年末、パパイヤ削ってました↓
http://hp.vector.co.jp/authors/VA028485/h131221.html

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■デジクリトーク
レッツ ゴー トゥ「ロボぐるみ」ワールド(4)

北川かりん
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ポジティブな私ではあるが、やはり前回のコンペに落ちた事が相当ショックで、
中々立ち直れなかった時、友達がパフォーマンスアーティストのAさんを紹介
してくれた。彼女は日本だけにとどまらず、海外でも活躍しており、会った翌
週にはドイツへ公演に行くという超忙しい人なのだが、わざわざスケジュール
を調整して会ってくれる事になった。

作品を見てもらい客観的な意見を聞いてみたかった私は、でっかい自分の作品
「ロボぐるみ」をバラバラにしてえっちらおっちらと横浜から東京まで運んで
行った。

私の友人の部屋でロボぐるみを袋から出した瞬間、Aさんはギャハハという威
勢のいい笑い声を放ち、気持ち悪いー何これー?、よくこんなの作ったねーと、
冗談ぽく毒舌を吐いた。
そして、
「で、これで何をするの?」
と、聞かれて、ウっと言葉に詰まってしまった。

何をするの? ってこれだけなんですが・・・というと、
「これだけじゃあ、ダメだよー。もっと世界というのか、好き! って気持ち
っていうのか、そういう何かが伝わってこないとダメだよ」
そしてそこから色々批評というかアドバイスをしてもらった。

「ロボぐるみ」はもっとこだわりというか、私がやり続ける理由というか、ワ
クワクするような事をガンガンやればいいだけで、何も他なんて気にする事な
いんだよという、なんともスッキリしたアドバイスだった。

で、あれだけだとダメなんだよ、あそこからどうしたいのかが必要なんだ。そ
の為にはガンガン作る事だよ、作り続けてそこから何か新しいものが見えれば
それをすればいい、もっとハミ出してやりな! 縮こまって、まとまるな! 
と言われた。

この話を聞いて私は目からウロコが落ちたのである。本当に「カラン」って音
がしたように思えたくらいだ。

とにかく悩んでるヒマがあったら作れ! コンペに落ちたら一時的に落ち込む
けど時間が解決するよ。好きな相手にメールうって、返事こないかなーって待
ってて来ないと落ち込むけど、ひょいと来たりすると嬉しいだろ? と言われ
て正にその通りですと思ってしまったのである。

作品はアーティストの生き様であって、こんなウジウジした奴の作る作品なん
てロクなもんじゃないなと思った私は、翌日からなんだか急に張り切って制作
にかかった。

もう遠足当日の子供みたいに朝も早く起きてしまって、作りたくってしょうが
なかった。作品の方向性とか何も決めてなかったけど、ただ作品に触れていた
かった。やっと創作意欲を取り戻せた事に私は深く感謝した。

【北川かりん】tasu@h8.dion.ne.jp
「ロボぐるみ」制作者。TASU主宰者。

●TASUホームページ
*デジクリバックナンバー
*ロボぐるみ作品集無料ダウンロード
http://www.h3.dion.ne.jp/~tasu/

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■製品案内
LiFE with PhotoCinema
http://www.photo-cinema.com/
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LiFE with PhotoCinema(ライフ ウィズ フォトシネマ)は、デジタルカメラ
で撮った写真と好きな音楽から、誰でも簡単に映画の予告編のような映像─
PhotoCinema(フォトシネマ)─をつくりだせるソフトウェアである。従来の
映像編集ソフトやムービーアルバム作成ソフトとは違い、写真の切り替え効果
や合成方法、効果的なテキスト表示等の演出が卓抜。motiondive(モーション
ダイブ)等の開発で知られる(株)デジタルステージが、それまで培った経験
と第一線で活躍する多くのクリエイターのセンスとエッセンスを詰め込んで開
発したものだという。

デジタルステージ
http://www.digitalstage.co.jp/

「LiFE with PhotoCinema」オフィシャルサイト
体験版もダウンロードできる。ギャラリーにある作品が非常におもしろい。
http://www.photo-cinema.com/

●「LiFE with PhotoCinema」のナイキバージョンが緊急発売決定

ナイキジャパンのショップ「AD21」からこの夏、100箱限定で発売になったコ
ラボレーションボックス「0602TYO」がある。これは、0602TYOオリジナルデザ
インのナイキのシューズ「SHOX」やアナログレコード、ドライフィットTシャ
ツ、そして「LiFE with PhotoCinema」が同梱された豪華限定ボックスである。

この製品はナイキジャパンより発売。原宿の「AD21」のショップ店頭のみで
100箱限定販売を目的として制作されたものだが、デジタルステージのオンラ
インショップでも20箱のみ販売する。抽選予約販売という形で7月28日より31
日まで、抽選予約の受付ををしている。先着順ではない。

詳しくはこちらのウェブページへ
http://www.digitalstage.net/product/nike/

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■編集後記(7/29)
・先日、ちかくの公共図書館のバザールとやらがおこなわれた。不要になった
蔵書の処分かな、貴重なものが放出されるなら、ト開始時間に会場に行ってみ
たら、広くもない部屋の机に置かれた本(らしきもの、なにしろ見えない)に
たくさんの人が群がっていた。老若男女、じつにたくさん。無料配布なのか、
販売なのか分からないが、早い者勝ちなのは確か。その光景をみて2秒で踵を
返したわたしに、受付のおばさんが驚いていた。理由はないけどなんとなく不
快。なんかあったときに、多分わたしは生き残れないタイプだろう。(柴田)

・長女なもんで、親の相談を受けたり、愚痴の相手をすることが小さな頃から
多かった。小学校の時には、同級生におばさんくさいと言われたことがある。
優等生だったし(これは誉められたもんじゃない)道を外すことはなかった。
子供の頃から、親の面倒を一生みるのは自分だと思っていたから、妹のダンナ
が家にいて、親が自分たちの余生をみるのはこの人だろうと(無意識に)思っ
ているのを見ると、今までの人生がばからしくなってくる。もっと遊べば良か
った。まぁ10年くらい前にはそれに気付けて、ある程度の動きをしていたりし
たんだけど。たいていの長子(例外は当然ある)と会話していて一番大きく共
通する点がここ。末っ子に、親が借金の肩代わりをしたため、将来を見据え、
節約しつつ真面目にコツコツ貯蓄していたある長子は気が抜けたそうだ。キリ
ギリスにも救いの手はあるのだと。結婚を考える時に親との同居をまず考えて
いたけど、小さめの家でも、バリアフリーじゃなくても、お洒落な感じでも大
丈夫やーん、とか考えられて、ちと嬉しい。もうこっちの気持ちは独立しはじ
めているんだから、妹夫婦や両親からの相談は受けないぞ。ぷんだ。ほんとに
親代わりしている人や、家庭持っている人から見たら、甘えた文章だよね。/
自転車の自由、人生の自由、体が軽い。あとは仕事だけだっ。(hammer.mule)
http://www.fujitv.co.jp/jp/b_hp/jackal/  いや~ん空手がツボ

・「イラストレーションファイル・デジタル02」シナリオ整形アプリ「太宰」
をプレゼント中。詳細は1132号を。
http://www.dgcr.com/present/
http://www.dgcr.com/present/index2.html

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 

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