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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1136 2002/07/30.Tue発行
http://www.dgcr.com/ 1998/04/13創刊 前号の発行部数 21298部
情報提供・投稿・広告の御相談はこちらまで mailto:info@dgcr.com
登録・解除・変更・FAQはこちら http://www.dgcr.com/regist/index.html
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<デジクリは8/1~8/18を基本的に夏休みとします>
■デジクリトーク
権兵衛が種蒔きゃカラスが……
モモヨ
■デジクリトーク
夏休みは天国か地獄か
海津宜則
■新刊案内&プレゼント
Webスペシャリストのための ──『情報デザイン ケーススタディ』
【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1136 2002/07/30.Tue発行
http://www.dgcr.com/ 1998/04/13創刊 前号の発行部数 21298部
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<デジクリは8/1~8/18を基本的に夏休みとします>
■デジクリトーク
権兵衛が種蒔きゃカラスが……
モモヨ
■デジクリトーク
夏休みは天国か地獄か
海津宜則
■新刊案内&プレゼント
Webスペシャリストのための ──『情報デザイン ケーススタディ』
■デジクリトーク
権兵衛が種蒔きゃカラスが……
モモヨ
───────────────────────────────────
先週、お知らせしたように、Ogg Vorbis(音声圧縮システム)の正式バージョ
ンがリリースされた。ながらく待ち望まれていた正式なリリースがアナウンス
され、UNIX、WINDOW、MAC、BeOSそれぞれの、エンコーダー、バイナリーバー
ジョンが一挙に公開された。
これまで、RC1から付き合ってきた私としては喜ぶべき話であるが、事態はそ
れほど安穏としていられないのである。
なにしろ、Ogg開発元である本家サイトのリンクページに、WINDOW版の日本語
ハウツーとして掲載されているページの主宰者である以上、関連情報を収集し、
それを確認しなくてはならない。今回は、従来にない変更点の多さだ。それを
追いかけなくてはならない。
そんなこんなで、あたふたするうちに一週間が過ぎてしまった。
その前後に、みなさんもご存知のことだと思うが、JPEGの特許権を主張する会
社に対してソニーが巨額の特許権料支払いに応じたと言うニュースが世間を騒
がせ、その影響で、がぜんOgg Volbisへの注目もいや増したようで、メールの
質問なども加わって本当にあたふたした日々が続いた。というか、いまなお続
いているから過去形で語れるような呑気な状況では、決してないのである。
特許と音声圧縮の関係とは何かと言うと、これまで何度もお話してきているが、
mp3という形式のファイルに対して、開発者、特許権者が特許料を徴収する(
つもりでいる、あるいは留保する)とアナウンスしている件がある。
このアナウンスは、あまり日本では咀嚼されないで語られてきているので、妙
にヒステリックになってしまったところがあるが、実際にmp3に対して使用料
を徴収するかどうかではなく、将来的にmp3形式のファイルをネットなどにア
ップして得られる利潤については、自分たちの権益を確保していく程度の意味
であるかもしれない。もちろん、どこかの企業がこの権利を侵害した場合は莫
大な金額の損害金を取られるだろうが、今回のソニーのJPEG騒動と同じで、
JPEGの使用者が、そのまま、どこぞの権利者に対しての負債を負うことになる
わけではない。
しかしながら、他のサブマリン特許や、まるでコミックの悪役のような連中が
いつあらわれるかも知れず、そして権利者がいつ留保している権利を行使する
かもしれない。WEB制作委託している私達としては、クライアントに迷惑をか
けることは避けたい。そう考えるのが当然である。こういう漠然とした不安は、
危機管理という面から見ても、感じないほうが鈍感である。
こと画像については、近年、GIFで似たような騒ぎがあった。一時は、制作の
現場で、皆一様にGIF使用を控えたという事実がある。それについで今回は
JPEGである。数年のうちに画像のフォーマット特許に関連して、これだけ事例
があがれば、過敏にならない方が問題だ。
そもそも、GIFもJPEGもダメなら、画像で言えば、では、何を使えばオーケー
か? どのフォーマットなら安心できるのか? そう考えると、残るはPINGく
らいしかなくなる。それがだめなら、ビットマップをそのまま使う、なんて原
始的な話になりかねない。
しかし、である。何故、日本の技術系団体が制定した規格の特許がどこぞの会
社のものになっているのか? そのあたりもきちんとした答えが知りたいもの
だし、mp3だって、似たようなもので基本的な技術はmpegの音声圧縮であり、
これも工業系の団体が制定したものだったのではないか? こうも思う。つい
逆切れしそうになるのは私だけだろうか。
法的にそれなりの根拠はあるのだろうけれど、こうしたことは、やはり、国際
的な視点から、首相あたりが首脳会議できちんと言えなければ話にならない。
わが国の業界が技術者を結集して優れた規格を制定しても、その結果ばかりを、
どこぞの国の会社にさらわれるのは、種を蒔く後ろからカラスに穿り返される
戯れ歌の主人公のようで情けない。そう思う次第だ。
悪知恵の働く書類の専門家や法律屋が技術者やクリエーターの畑を荒らすのは、
我慢ならん! そう憤慨するのは、実は、わが国のクリエーターばかりではな
かった。実は、このOgg Vorbisの開発者達がそれなのである。
これまで、既存の陣営から幾多の妨害もあり、バックアップしている企業体の
頓挫もあったが、その後、チームはカンパで開発を続けてきた。そして、その
バージョン1.0がリリースされた。これで圧縮音源ファイルの使用は未来に渡
って保証されたわけだから、考えてみると大変な偉業である。
土台をかつてのUNIXコミュニティーにおいている彼らを心底脅かすことは誰に
もできなかった。そして、今、彼らは、映像の圧縮コーデックへとプロジェク
トを広げようとしているところだ。このニュースもより明確な情報が手に入り
次第、皆さんに報告する。期待していて頂きたい。
とにかく、音声圧縮コーデック、Ogg Vorbisは離陸した。デジクリはお休みに
はいるけど、みなさんのバックアップ、どうか、よろしくお願いしたい。
モモヨ(リザード)管原保雄
下記が日本語OggVorbisのページだ。
http://www.babylonic.com/ogg/
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■デジクリトーク
夏休みは天国か地獄か
海津宜則
───────────────────────────────────
勤めていた頃、結果的に有給休暇を殆ど使うこともなく無駄にしてしまった私
は、当然ながら夏休みは毎年(と言っても3年ほどであったが)返上モードで
あった。これは会社から強制されたわけではなかったが、雰囲気的に休みを言
上できる状況ではなかったのが原因だったかもしれない。うまく表現出来ない
が、目に見えない圧力みたいなものを自分自身で必要以上に強く感じてしまっ
たのかもしれない。もしかすると大企業ではない辛さ故なのかもしれないと最
近思い出すようになった。
こんな書き方をすると、とんでもなく嫌な会社にいたようなニュアンスになっ
てしまうが、そうではなかったことを付け加えておく。当時の上司は夏休みの
ことを気を遣ってくれていたし、有給の使い方も気にしてくれたが、余裕のな
い社員数ではどうしようもなかったというのが実情であった。だから私は妙な
部分で大企業のサラリーマンへの妙な憧れがあったりする。計画的に有給休暇
を使って長期休暇を取ることへの憧れである。実は私の弟はこれに該当する立
場にあり、毎年楽しい夏休みを過ごしている。羨ましい限りだ。
そんな事言っても自由に夏休みを組み立てられるフリーの方がどんなに頑張っ
てもサラリーマンより快適じゃないの? という話をよく聞く。でも、フリー
って言うのは考えてみれば毎日仕事を探しているようなものだ。つまり、この
禅問答はどんなものでも何処に思慮のポイントを置くかでイメージは激変して
しまうという典型的な話のような気がする。
例えば『フリーは定年退職がなくていい』と言われるが、『フリーは定年がな
いために死ぬまで働かなくてはならない』と思うと憂鬱になる。そんな事言っ
たって『フリーは収入も多く高級外車を乗り回している』と思われているが、
『退職金も共済年金もなく、外車に乗っているのはほんの一握り』だったりす
るのが現実である。
こんな具合に、どうしても派手な部分だけが一人歩きしていまうのが他人の仕
事のイメージだ。サラリーマンだってとんでもない高給取りはいるわけだし、
全てがドラマのようではないはずだ。そもそも、他人の生活そのものが派手で
インパクトのあるものに見えてしまうのはどの業界にいても同じではないだろ
うか。
でも、それは何故なのだろう。本当に気になるのであれば、気に入った仕事に
転職すればいいわけだし、それが出来ないことを家族の有無や年齢などを理由
にするのもおかしな事ではないかとさえ思うことがある。いや年齢や性別で物
事を括りがちな今までの社会構造が、既に意味を持たなくなっているのかもし
れない。
だいぶ脱線してしまったので、話を夏休みに戻すと、私が子供の頃(これだけ
で年がバレバレ)にハワイやグアムに行くというのはとんでもない金持ちの世
界だったが、今まではハワイより沖縄や北海道に行くほうがお金がかかる(東
京から見た場合)。いや那須や日光のホテルに泊まるだけでも充分にハワイよ
りお金がかるかもしれない。
ホテルなんか泊まるほうが悪いと言われそうだが、旅館や民食の多くは、山間
でも夕食は魚の刺身という訳の分からない状態が普通であるかの状況があまり
に長すぎた。だから、そんなところにわざわざ出かけたくはないというのが私
の信念である。これは、私自身が刺身を食べられない事が影響しているのでは
なく、山間には川魚は泳いでいるかもしれないが、絶対に海の魚は泳いでいる
はずがないということを言っているのである。
元来狭い日本と言っても地域ごとに様々な風情があったはずなのに、画一的な
観光状況は興醒めさえする。折角の自然を人工的に切り崩してしまったがため
に風情の根元である気の遠くなるような時間が作り出した秩序が崩壊し、どこ
も似たような雰囲気になってしまったから、国内旅行は敬遠されてしまったの
ではないだろうか。団体バスで出かけて世界のショーを見て、朝まで麻雀して、
帰りのバスで爆眠という観光パターンが少数派となってしまったのも影響して
いるのかもしれない。例えが悪いが、演歌世代の激減に象徴されているような
気さえする。
それじゃ何処にいったらいいのか? という問題よりも深刻なのが日程調整だ。
なぜなら、フリーの夏休みは基本的に根回しとの格闘だからである。うっかり
突然休んでしまったりすると、次の仕事に影響が出てしまったりする。普段の
仕事でなまじブロードバンドの恩恵に与り、インターネットでリアクションの
良い対応を繰り返している者が突然起こす4~5日のブランクの後遺症は想像以
上に大きい。
かくして前倒しで仕事を処理し、担当者には夏休みの日程を事前に告げておく
のだが、チームワークで仕事をしているデザイナーやイラストレータなどは全
員が同時に仕事をしているとは限らないので、当然予定通りに事は進まなくな
ってしまう。つまり、誰か1人が必ず夏休みだったりするからだ。
そのため旅行先にノートパソコンを持ち込んで、仕事の続きを深夜のホテルで
繰り広げるなどということも珍しくなくなってしまう。ただ、キャンピングカ
ーのエンジンをかけて深夜にのキャンプ場でノートパソコンでシコシコと仕事
をするようなことはしないつもりだ。だってこのシーンは相当哀れだからだ。
もちろん私はこんな事をしたことはないが、私でさえ何度も目撃していたりす
るので、いまではさして珍しい光景ではないのだろう。かくいう私もメールチ
ェックだけは行える態勢で出かけることを心掛けているのだが、そんな時に限
って深夜のホテルの一室にはろくなメールが届かないのである。
そして昨年は、ついに大チョンボをしてしまったのである。ノートパソコンの
データを整理していたことを忘れてそのままカバンに詰め込み、旅行に出かけ、
消灯前の深夜にホテルでアクセスしようとしたが通信設定が分からず、とうと
う開き直って結果的に4泊5日の間一切通信を行わなかった。そして自宅に戻っ
た時にどんな状況が待っているのかが少しばかり怖かったが、結果的にその間
は緊急の用件もなく、納品した仕事の問題も発生していなかった。
少しばかり運が良すぎたのだろうか。でも、逆の運が固まっていたと想像する
とやはり背筋が凍り付く。世の中本当に便利になったのだろうか?
海津宜則【かいづ・よしのり】グラフィックデザイナー/イラストレーター。
<http://www.kaizu.com>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■新刊案内&プレゼント
Webスペシャリストのための ──『情報デザイン ケーススタディ』
http://www.seshop.com/detail.asp?pid=2985
───────────────────────────────────
Web制作においては、ワークフローの大切さは以前よりも増してきている面も
ありますが、仕事の流れを図表を中心に用いて説明がなされたような、いわば
絵に描いた餅のような手法だけではなかなか上手く事が運ばないのが現実です。
実際の仕事に活かせるワークフローとするためには、ワークフロー自体に点在
する様々な情報をデザインし、各々の思考で各々の環境にフィットさせていく
ことがとても大切だという観点から、本書では情報デザインというものの導入
部分から始まり、それをワークフローに寄り添わせる考え方などを示しつつ、
ヒントにつながるようないくつかのケーススタディを添えて、テキスト中心に
まとめた内容となっています。
※上記コメントは、著者Jules Yoshiyuki Tajima氏のWebページが出典元です。
担当編集者より著者に許可を得て引用させていただきました。
本書は「情報デザイン」の視点からWeb制作のワークフローへの深い理解を促
すことを主題としています。また反対に、概念レベルの理解に終始しがちな
「情報デザイン」の考え方を、実際のWeb制作のワークフローの中で具体的に
理解できる「情報デザインの実践書」としてもお読みいただける意欲的な内容
となっています。これらは著者Jules Yoshiyuki Tajima氏のWebサイト制作、
および他メディアにおけるビジネスデザインの経験に裏打ちされており、たい
へん説得力のある原稿を仕上げていただきました。
Web制作に関わるすべての皆様にぜひ御一読いただきたい一冊です。
(翔泳社 担当編集者)
Webスペシャリストのための ──『情報デザイン ケーススタディ』
Jules Yoshiyuki Tajima著/B5変/352頁/ISBN 4798101796/定価2,800円+税
http://www.seshop.com/detail.asp?pid=2985
※上記URLには書籍の目次等の基本情報や立ち読み(PDF)コーナーがあります。
●本誌を翔泳社から読者3名さまにプレゼント。ご希望の方は、プレゼントお
知らせコーナーから応募してください。締め切りは、8月20日14時。発送をも
って発表に代えさせていただきます。
http://www.dgcr.com/present/index3.html
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■編集後記(7/30)
・わたしの夏休み。「ディジタル・イメージ」の運営委員をやっていた頃は、
毎年8月は東京・大阪を3往復くらいしていた。そのついでにあちこち旅行して
いたが、昨年からはそれをやめてもっぱら自宅にこもって本の整理などをして
いる。今年はデジクリはお休みするが、写真趣味のあたらしいメールマガジン
を創刊するため、結局休めないことになるだろう(すまん、デスク)。また、
この機会にファイルメーカーとカシス パブリッシャーを本格的に独習しよう
と思う。また、タイポグラフィ関係の刺激的な出版企画に関わっているので、
こちらもお勉強が必要だ。いずれにしろお出かけはない、暑い夏。 (柴田)
・フリーって不自由業だと、つくづく思う。どこに行っても、あの仕事の進捗
状況はどうなった、仕事が順番に規則的に入ってくればいいのに、次の仕事は
どうしようか、入金がちゃんとありますように、どうやったら実力があがるか
などと考えている。一度失敗したら次はない。ミスやレベルの低い仕事は、仕
事の減少につながる。優しい担当者さんばかりではない。誰にも聞けないから、
始終勉強勉強。勉強予定本が積み上がっている。一泊旅行をするのが関の山。
それでもPCは持っていき、真夜中にメールチェックだ。休暇中のホテルで、い
きなりの修正のため徹夜したことだってある。夏休みに強制的にネットを触ら
ないようにしたら顰蹙をかったことも。メールの返事が24時間以内って誰が決
めたのぅ? 締め切りでひぃひぃ言っている時は絶対無理。ごめんなさいです。
うけたい仕事を選べるのはフリーのいいところだけど、業務だけしたいなら会
社員の方がいい。雑務多くて肝心の仕事は夜中に。雑務してても収入にはなり
ましぇーん。徹夜が続いたあとや、値引き交渉を受けたときに新聞を読んでい
ると、ふと求人欄に目がいく。そんなエアポケットを幾度か乗り越え、いつ着
陸するかわからない不安定なフライト。最近気流が荒くて大変だ。休みがあっ
ても有意義に使えない私、写真メルマガの創刊が楽しみっ! (hammer.mule)
・「イラストレーションファイル・デジタル02」シナリオ整形アプリ「太宰」
「情報デザイン ケーススタディ」をプレゼント中。詳細は1132号、1136号。
http://www.dgcr.com/present/
http://www.dgcr.com/present/index2.html
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発行 デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/>
編集長 柴田忠男
デスク 濱村和恵
アソシエーツ 神田敏晶
情報提供・投稿・プレスリリース・記事・コラムはこちらまで
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Copyright(C), 1998-2002 デジタルクリエイターズ
許可なく転載することを禁じます。
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権兵衛が種蒔きゃカラスが……
モモヨ
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先週、お知らせしたように、Ogg Vorbis(音声圧縮システム)の正式バージョ
ンがリリースされた。ながらく待ち望まれていた正式なリリースがアナウンス
され、UNIX、WINDOW、MAC、BeOSそれぞれの、エンコーダー、バイナリーバー
ジョンが一挙に公開された。
これまで、RC1から付き合ってきた私としては喜ぶべき話であるが、事態はそ
れほど安穏としていられないのである。
なにしろ、Ogg開発元である本家サイトのリンクページに、WINDOW版の日本語
ハウツーとして掲載されているページの主宰者である以上、関連情報を収集し、
それを確認しなくてはならない。今回は、従来にない変更点の多さだ。それを
追いかけなくてはならない。
そんなこんなで、あたふたするうちに一週間が過ぎてしまった。
その前後に、みなさんもご存知のことだと思うが、JPEGの特許権を主張する会
社に対してソニーが巨額の特許権料支払いに応じたと言うニュースが世間を騒
がせ、その影響で、がぜんOgg Volbisへの注目もいや増したようで、メールの
質問なども加わって本当にあたふたした日々が続いた。というか、いまなお続
いているから過去形で語れるような呑気な状況では、決してないのである。
特許と音声圧縮の関係とは何かと言うと、これまで何度もお話してきているが、
mp3という形式のファイルに対して、開発者、特許権者が特許料を徴収する(
つもりでいる、あるいは留保する)とアナウンスしている件がある。
このアナウンスは、あまり日本では咀嚼されないで語られてきているので、妙
にヒステリックになってしまったところがあるが、実際にmp3に対して使用料
を徴収するかどうかではなく、将来的にmp3形式のファイルをネットなどにア
ップして得られる利潤については、自分たちの権益を確保していく程度の意味
であるかもしれない。もちろん、どこかの企業がこの権利を侵害した場合は莫
大な金額の損害金を取られるだろうが、今回のソニーのJPEG騒動と同じで、
JPEGの使用者が、そのまま、どこぞの権利者に対しての負債を負うことになる
わけではない。
しかしながら、他のサブマリン特許や、まるでコミックの悪役のような連中が
いつあらわれるかも知れず、そして権利者がいつ留保している権利を行使する
かもしれない。WEB制作委託している私達としては、クライアントに迷惑をか
けることは避けたい。そう考えるのが当然である。こういう漠然とした不安は、
危機管理という面から見ても、感じないほうが鈍感である。
こと画像については、近年、GIFで似たような騒ぎがあった。一時は、制作の
現場で、皆一様にGIF使用を控えたという事実がある。それについで今回は
JPEGである。数年のうちに画像のフォーマット特許に関連して、これだけ事例
があがれば、過敏にならない方が問題だ。
そもそも、GIFもJPEGもダメなら、画像で言えば、では、何を使えばオーケー
か? どのフォーマットなら安心できるのか? そう考えると、残るはPINGく
らいしかなくなる。それがだめなら、ビットマップをそのまま使う、なんて原
始的な話になりかねない。
しかし、である。何故、日本の技術系団体が制定した規格の特許がどこぞの会
社のものになっているのか? そのあたりもきちんとした答えが知りたいもの
だし、mp3だって、似たようなもので基本的な技術はmpegの音声圧縮であり、
これも工業系の団体が制定したものだったのではないか? こうも思う。つい
逆切れしそうになるのは私だけだろうか。
法的にそれなりの根拠はあるのだろうけれど、こうしたことは、やはり、国際
的な視点から、首相あたりが首脳会議できちんと言えなければ話にならない。
わが国の業界が技術者を結集して優れた規格を制定しても、その結果ばかりを、
どこぞの国の会社にさらわれるのは、種を蒔く後ろからカラスに穿り返される
戯れ歌の主人公のようで情けない。そう思う次第だ。
悪知恵の働く書類の専門家や法律屋が技術者やクリエーターの畑を荒らすのは、
我慢ならん! そう憤慨するのは、実は、わが国のクリエーターばかりではな
かった。実は、このOgg Vorbisの開発者達がそれなのである。
これまで、既存の陣営から幾多の妨害もあり、バックアップしている企業体の
頓挫もあったが、その後、チームはカンパで開発を続けてきた。そして、その
バージョン1.0がリリースされた。これで圧縮音源ファイルの使用は未来に渡
って保証されたわけだから、考えてみると大変な偉業である。
土台をかつてのUNIXコミュニティーにおいている彼らを心底脅かすことは誰に
もできなかった。そして、今、彼らは、映像の圧縮コーデックへとプロジェク
トを広げようとしているところだ。このニュースもより明確な情報が手に入り
次第、皆さんに報告する。期待していて頂きたい。
とにかく、音声圧縮コーデック、Ogg Vorbisは離陸した。デジクリはお休みに
はいるけど、みなさんのバックアップ、どうか、よろしくお願いしたい。
モモヨ(リザード)管原保雄
下記が日本語OggVorbisのページだ。
http://www.babylonic.com/ogg/
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■デジクリトーク
夏休みは天国か地獄か
海津宜則
───────────────────────────────────
勤めていた頃、結果的に有給休暇を殆ど使うこともなく無駄にしてしまった私
は、当然ながら夏休みは毎年(と言っても3年ほどであったが)返上モードで
あった。これは会社から強制されたわけではなかったが、雰囲気的に休みを言
上できる状況ではなかったのが原因だったかもしれない。うまく表現出来ない
が、目に見えない圧力みたいなものを自分自身で必要以上に強く感じてしまっ
たのかもしれない。もしかすると大企業ではない辛さ故なのかもしれないと最
近思い出すようになった。
こんな書き方をすると、とんでもなく嫌な会社にいたようなニュアンスになっ
てしまうが、そうではなかったことを付け加えておく。当時の上司は夏休みの
ことを気を遣ってくれていたし、有給の使い方も気にしてくれたが、余裕のな
い社員数ではどうしようもなかったというのが実情であった。だから私は妙な
部分で大企業のサラリーマンへの妙な憧れがあったりする。計画的に有給休暇
を使って長期休暇を取ることへの憧れである。実は私の弟はこれに該当する立
場にあり、毎年楽しい夏休みを過ごしている。羨ましい限りだ。
そんな事言っても自由に夏休みを組み立てられるフリーの方がどんなに頑張っ
てもサラリーマンより快適じゃないの? という話をよく聞く。でも、フリー
って言うのは考えてみれば毎日仕事を探しているようなものだ。つまり、この
禅問答はどんなものでも何処に思慮のポイントを置くかでイメージは激変して
しまうという典型的な話のような気がする。
例えば『フリーは定年退職がなくていい』と言われるが、『フリーは定年がな
いために死ぬまで働かなくてはならない』と思うと憂鬱になる。そんな事言っ
たって『フリーは収入も多く高級外車を乗り回している』と思われているが、
『退職金も共済年金もなく、外車に乗っているのはほんの一握り』だったりす
るのが現実である。
こんな具合に、どうしても派手な部分だけが一人歩きしていまうのが他人の仕
事のイメージだ。サラリーマンだってとんでもない高給取りはいるわけだし、
全てがドラマのようではないはずだ。そもそも、他人の生活そのものが派手で
インパクトのあるものに見えてしまうのはどの業界にいても同じではないだろ
うか。
でも、それは何故なのだろう。本当に気になるのであれば、気に入った仕事に
転職すればいいわけだし、それが出来ないことを家族の有無や年齢などを理由
にするのもおかしな事ではないかとさえ思うことがある。いや年齢や性別で物
事を括りがちな今までの社会構造が、既に意味を持たなくなっているのかもし
れない。
だいぶ脱線してしまったので、話を夏休みに戻すと、私が子供の頃(これだけ
で年がバレバレ)にハワイやグアムに行くというのはとんでもない金持ちの世
界だったが、今まではハワイより沖縄や北海道に行くほうがお金がかかる(東
京から見た場合)。いや那須や日光のホテルに泊まるだけでも充分にハワイよ
りお金がかるかもしれない。
ホテルなんか泊まるほうが悪いと言われそうだが、旅館や民食の多くは、山間
でも夕食は魚の刺身という訳の分からない状態が普通であるかの状況があまり
に長すぎた。だから、そんなところにわざわざ出かけたくはないというのが私
の信念である。これは、私自身が刺身を食べられない事が影響しているのでは
なく、山間には川魚は泳いでいるかもしれないが、絶対に海の魚は泳いでいる
はずがないということを言っているのである。
元来狭い日本と言っても地域ごとに様々な風情があったはずなのに、画一的な
観光状況は興醒めさえする。折角の自然を人工的に切り崩してしまったがため
に風情の根元である気の遠くなるような時間が作り出した秩序が崩壊し、どこ
も似たような雰囲気になってしまったから、国内旅行は敬遠されてしまったの
ではないだろうか。団体バスで出かけて世界のショーを見て、朝まで麻雀して、
帰りのバスで爆眠という観光パターンが少数派となってしまったのも影響して
いるのかもしれない。例えが悪いが、演歌世代の激減に象徴されているような
気さえする。
それじゃ何処にいったらいいのか? という問題よりも深刻なのが日程調整だ。
なぜなら、フリーの夏休みは基本的に根回しとの格闘だからである。うっかり
突然休んでしまったりすると、次の仕事に影響が出てしまったりする。普段の
仕事でなまじブロードバンドの恩恵に与り、インターネットでリアクションの
良い対応を繰り返している者が突然起こす4~5日のブランクの後遺症は想像以
上に大きい。
かくして前倒しで仕事を処理し、担当者には夏休みの日程を事前に告げておく
のだが、チームワークで仕事をしているデザイナーやイラストレータなどは全
員が同時に仕事をしているとは限らないので、当然予定通りに事は進まなくな
ってしまう。つまり、誰か1人が必ず夏休みだったりするからだ。
そのため旅行先にノートパソコンを持ち込んで、仕事の続きを深夜のホテルで
繰り広げるなどということも珍しくなくなってしまう。ただ、キャンピングカ
ーのエンジンをかけて深夜にのキャンプ場でノートパソコンでシコシコと仕事
をするようなことはしないつもりだ。だってこのシーンは相当哀れだからだ。
もちろん私はこんな事をしたことはないが、私でさえ何度も目撃していたりす
るので、いまではさして珍しい光景ではないのだろう。かくいう私もメールチ
ェックだけは行える態勢で出かけることを心掛けているのだが、そんな時に限
って深夜のホテルの一室にはろくなメールが届かないのである。
そして昨年は、ついに大チョンボをしてしまったのである。ノートパソコンの
データを整理していたことを忘れてそのままカバンに詰め込み、旅行に出かけ、
消灯前の深夜にホテルでアクセスしようとしたが通信設定が分からず、とうと
う開き直って結果的に4泊5日の間一切通信を行わなかった。そして自宅に戻っ
た時にどんな状況が待っているのかが少しばかり怖かったが、結果的にその間
は緊急の用件もなく、納品した仕事の問題も発生していなかった。
少しばかり運が良すぎたのだろうか。でも、逆の運が固まっていたと想像する
とやはり背筋が凍り付く。世の中本当に便利になったのだろうか?
海津宜則【かいづ・よしのり】グラフィックデザイナー/イラストレーター。
<http://www.kaizu.com>
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■新刊案内&プレゼント
Webスペシャリストのための ──『情報デザイン ケーススタディ』
http://www.seshop.com/detail.asp?pid=2985
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Web制作においては、ワークフローの大切さは以前よりも増してきている面も
ありますが、仕事の流れを図表を中心に用いて説明がなされたような、いわば
絵に描いた餅のような手法だけではなかなか上手く事が運ばないのが現実です。
実際の仕事に活かせるワークフローとするためには、ワークフロー自体に点在
する様々な情報をデザインし、各々の思考で各々の環境にフィットさせていく
ことがとても大切だという観点から、本書では情報デザインというものの導入
部分から始まり、それをワークフローに寄り添わせる考え方などを示しつつ、
ヒントにつながるようないくつかのケーススタディを添えて、テキスト中心に
まとめた内容となっています。
※上記コメントは、著者Jules Yoshiyuki Tajima氏のWebページが出典元です。
担当編集者より著者に許可を得て引用させていただきました。
本書は「情報デザイン」の視点からWeb制作のワークフローへの深い理解を促
すことを主題としています。また反対に、概念レベルの理解に終始しがちな
「情報デザイン」の考え方を、実際のWeb制作のワークフローの中で具体的に
理解できる「情報デザインの実践書」としてもお読みいただける意欲的な内容
となっています。これらは著者Jules Yoshiyuki Tajima氏のWebサイト制作、
および他メディアにおけるビジネスデザインの経験に裏打ちされており、たい
へん説得力のある原稿を仕上げていただきました。
Web制作に関わるすべての皆様にぜひ御一読いただきたい一冊です。
(翔泳社 担当編集者)
Webスペシャリストのための ──『情報デザイン ケーススタディ』
Jules Yoshiyuki Tajima著/B5変/352頁/ISBN 4798101796/定価2,800円+税
http://www.seshop.com/detail.asp?pid=2985
※上記URLには書籍の目次等の基本情報や立ち読み(PDF)コーナーがあります。
●本誌を翔泳社から読者3名さまにプレゼント。ご希望の方は、プレゼントお
知らせコーナーから応募してください。締め切りは、8月20日14時。発送をも
って発表に代えさせていただきます。
http://www.dgcr.com/present/index3.html
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■編集後記(7/30)
・わたしの夏休み。「ディジタル・イメージ」の運営委員をやっていた頃は、
毎年8月は東京・大阪を3往復くらいしていた。そのついでにあちこち旅行して
いたが、昨年からはそれをやめてもっぱら自宅にこもって本の整理などをして
いる。今年はデジクリはお休みするが、写真趣味のあたらしいメールマガジン
を創刊するため、結局休めないことになるだろう(すまん、デスク)。また、
この機会にファイルメーカーとカシス パブリッシャーを本格的に独習しよう
と思う。また、タイポグラフィ関係の刺激的な出版企画に関わっているので、
こちらもお勉強が必要だ。いずれにしろお出かけはない、暑い夏。 (柴田)
・フリーって不自由業だと、つくづく思う。どこに行っても、あの仕事の進捗
状況はどうなった、仕事が順番に規則的に入ってくればいいのに、次の仕事は
どうしようか、入金がちゃんとありますように、どうやったら実力があがるか
などと考えている。一度失敗したら次はない。ミスやレベルの低い仕事は、仕
事の減少につながる。優しい担当者さんばかりではない。誰にも聞けないから、
始終勉強勉強。勉強予定本が積み上がっている。一泊旅行をするのが関の山。
それでもPCは持っていき、真夜中にメールチェックだ。休暇中のホテルで、い
きなりの修正のため徹夜したことだってある。夏休みに強制的にネットを触ら
ないようにしたら顰蹙をかったことも。メールの返事が24時間以内って誰が決
めたのぅ? 締め切りでひぃひぃ言っている時は絶対無理。ごめんなさいです。
うけたい仕事を選べるのはフリーのいいところだけど、業務だけしたいなら会
社員の方がいい。雑務多くて肝心の仕事は夜中に。雑務してても収入にはなり
ましぇーん。徹夜が続いたあとや、値引き交渉を受けたときに新聞を読んでい
ると、ふと求人欄に目がいく。そんなエアポケットを幾度か乗り越え、いつ着
陸するかわからない不安定なフライト。最近気流が荒くて大変だ。休みがあっ
ても有意義に使えない私、写真メルマガの創刊が楽しみっ! (hammer.mule)
・「イラストレーションファイル・デジタル02」シナリオ整形アプリ「太宰」
「情報デザイン ケーススタディ」をプレゼント中。詳細は1132号、1136号。
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