[1205] Segway搭乗購入記

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1205    2002/11/25.Mon発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 21236部
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         <上手な嘘つきになれれば、大丈夫>

■KNNエンパワーメントコラム
 Segway搭乗購入記
 神田敏晶

■NAKED SHORT STORY
 プレッシャー・セールス・ウーマン
 神崎詞音



■KNNエンパワーメントコラム
Segway搭乗購入記

神田敏晶
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今年のラスベガスにおけるCOMDEXは、なんとも期待の薄い中での開催でした。
しかし、実際に参加した結果としては、例年同様、なにかとおもしろい製品や
サービスと遭遇することができました。

今年はなんといっても、Segwayと呼ばれるビークルが登場したことでしょう。
セグウェイはGingerと呼ばれていた謎の乗り物です。

こんな乗り物いらないといえばいらないのですが、たった30秒レクチャーを受
けるだけで誰もが乗りこなせるという点が他の乗り物とまったくちがうところ
でしょう。

2歳の子供でも、歩ける「人」であれば誰もが乗れる点がSegwayのいいところ
です。猿でも可能かも?

最初は、こわごわ、両足をのせてスイッチをいれます。このスイッチまわりの
デザインもシンプルで、とても洗練されています。初心者用のキーで練習する
とそんなにスピードはでません。通常のキーで練習すると20Kmくらいはでるそ
うです。

レクチャーを最初に受けますが、たったの一事。「ゆっくりとつまさきに体重
をかけて…止まる時はかかとに体重を戻します…」。以上です。実際にやって
みると体重のかかり具合にあわせて前に進むのです。

感覚としては、「動く歩道」に足を乗せたあの感覚に非常に近いのです。時と
して、動く歩道が動いていない時、かなりの違和感を足が感じる時があります
ね。そのくらい前向きに体重はのっているんです。

進んでいる時もあの動く歩道の感覚に近く、左のスロットルハンドルを前にす
ると左に後ろにすると右に回ります。この動きも非常にスムースなのです。

たまたま居合わせた、Segway社の社長であるGeorge T Muller氏の説明による
と「手のひらに棒を立てていることをイメージしてみてください。その棒が前
に倒れようとすると、手のひらを前に出すことによって棒の倒れることを抑制
できます。Segwayのジャイロはこの仕組みと同じで、人間が前に倒れようとす
る微弱な力を察知してその分だけ前や後ろに進むようにできているのです」と、
説明してくれました。とってもおだやかな、いいおじさんというタイプの人で
した。

そして、このSegwayの試乗現場で、購入申し込みがAmazon.comサイトでできる
こともあり、さっそくSegwayを申し込んでしまいました! 価格は4980ドル。
頭金をクレジットカードで498ドル引き落とされるのです。amazon.comのワン
クリック購入であっという間に購入予約ができてしまいました。

しかも、5日以内に返品することができるなど、アメリカでは、いろんな購入
促進のキャンペーンが存在しますので、気にいらなければ返却です。送料は負
担になってしまいますが…。また、最初の出荷台数はそれほど多くなく、かつ
てのAIBOのようないきなりオークションということも考えられるでしょう。

さらに一番の購入理由は、一度乗って見たいという人がこんなにもたくさんい
ることです。COMDEXの会場でもSegwayに乗りたいばかりに1時間以上も会場で
並ぶ人たちがいるのですから、これはいろいろと使えます。

アメリカで最初の消費者向けの出荷が2003年の3月です。しかし、申し込み者
の中からキャンペーンで当選した人は今年の12月には入手できるそうですから、
貴重な価値があります。これに当選し日本に持ち込めれば、いろんな展示会の
ブースでの集客に役立つかもしれませんね。

また、いろんなイベントでコンパニオンつきで貸出しするだけで、4980ドルは
数日で回収できると思うのです。国内での道路上での法律が問題ではあります
が…。私有地であれば問題ないのかも…。

アメリカでもしばらくは、Segwayは珍しい存在ですから、あの「動く歩道」の
ような感覚の経験を先どりして、これから訪れるであろうジャイロセンサーの
利用方法を夢みたいと思います。

KandaNewsNetwork,Inc. http://www.knn.com/
CEO Toshi Kanda mailto:kanda@knn.com
45-14 Oyama-cho,Shibuya,Tokyo,Japan151-0065
Phone81-3-5465-6555 Fax81-3-5478-8719

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■NAKED SHORT STORY
プレッシャー・セールス・ウーマン

神崎詞音
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半年ぶりに、フルタイムの仕事にエリコはありついた。
こんな仕事見つけるのにどうして半年もかかったのかなぁ、と、仕事を始めて
3週間経った今思っている。
毎日毎日定刻でオフィスを後にして帰宅することは不可能、というのが当然で、
エリコが働いている40階建ての高層ビルを出る時刻にはオフィス街の人波はい
つもまばらだった。
どうしてこんな仕事やってるのかな、私。
漆黒の星のない夜空を見上げ、呟いていた。

エリコはずっと職種としては“販売”の括りの中で職場を選んできた。
人と接することは苦にならない、というよりも、好きだったし、立ち仕事も人
が思うほど慣れてしまえば大変じゃないし。何よりも、小さなスペースに固定
されてしまうデスクワークよりも自由度がある。
そう、少なくとも自由な感じがある、と思っていた。
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過去に遡ればエリコはさまざまなモノをさまざまな人たちに「売る」という行
為をしてきた。振り返ると、そこには常に他人にモノを手渡し、代償としての
お金を受け取る、その何千回もの繰り返しによって、賃金を得て生きてきたエ
リコがいる。
エリコは自分のお客に見せるための笑顔が好きだった。
実際営業スマイルというよりは、真面目に本当に笑っていた。
自分が客の要望にかなうモノを勧め、客がそのことにより満足の小さな笑みを
浮かべてくれた時。エリコはそういう時、めいっぱいの微笑みで客に接する。
そういうことが、日々のささやかな喜びだった。

だけど。いつしかそういうささやかな繰り返しに慣れていく自分がいた。
けっして小さなスペースに固定されているわけではないけれど、エリコにとっ
ての毎日のステージだったデパートは巨大な鳥篭のように感じられ、エリコは
自分が羽を短く切られて飛べないようにされた鳥のようだ、と思うようになっ
ていった。
今思えばそれは大いなる我侭だった、とも言える。
もとから羽など持っていなかったのだから。
でも、エリコはどうしても飛び出したかった。
エリコと同じように羽を切られた籠の中の鳥たちの中から、抜け出したかった。
行く当てもないのに。でも、どうしても。

社会人というのは、こういうことを我慢し続けて、なるべく何も感じないよう
にして、籠の中に自分のテリトリーを見つけて守るものをそのテリトリーに抱
え込んでいくやり方が、結局はスタンダードだったりする。
少なくとも今の世の中では、なんだかんだ言っても、そうだった。
籠の中のあらゆるポジションには先客がいて、スペースは誰かに確保されてい
た。行く当てのない自由を得た鳥は、もう同じ場所に戻ることはできない。

大きな鳥篭を飛び出した時のエリコの自由の瞬間。
その瞬間の高揚感を一度体験してしまったエリコは、その後、職場を転々とし
た。スタンダードから大きく外れていく自分をどこかで感じながらも、途中下
車の多い人生を経験したエリコにとって、そのデメリットを経験することにな
りそうな未来に薄々気付きながらも、後戻りはできない。

だけど大きな鳥篭から飛び出して自由に空を旋回したエリコが結局舞い降りな
ければならない場所は、小さくなった鳥篭だった。
エリコは仕事に対して以前より増して拘束感に対する時間制限の諦めを覚える
ようになっていった。
繰り返し、繰り返し、自分が何を諦めているのかがわからないくらいに、仕事
への思いは失速していくことは分かっていながらも、自分にできることを問い
ただそうとするような余裕もなかった。
そんなエリコが何度目かの新しい職場を探そうとした時、初めてカタチのある
モノを売る“販売”から目を背け、エリコにとっては未知の分野だったカタチ
のないものを売る“営業”を焦点に仕事を求めて採用されて働きはじめたのが、
今の職場だった。

心のどこかで、「モノを売る」自分にうんざりしていた。
洋服、化粧品、雑貨、宝飾品・・・・。
モノを売る自分にもうんざりしていたし、モノを欲しがる人たちにもうんざり
していた。モノを欲しがらない生き方に憧れたその反面、モノを欲しがらない
人たちに対しての敵意もあった。モノを欲しがる人たちの気楽な好奇心や単純
さ、時には浅はかさがあるからこそ、モノを売る側は利益を上げ生き延びる競
争のゲームへの参戦権を得続けることができるのは真実。
気まぐれで我侭な消費者たちが持つお金という切り札に翻弄されながら、モノ
を売る仕事をするエリコの中で、矛盾する思いがどんどん広がっていった。

「モノを欲しがる」ことは、人が生きていく上では避けられない欲求で、その
欲求がある限りモノは手を変え品を変え陳列され続ける。
しかし、すべてのモノがしかるべく人の手に渡るわけではなく、かならずそこ
には人の手に渡らない「売れない」モノが生まれる。
贅沢な私たちは、売れないモノ、すなわちいらないモノを作り続けている。
モノが溢れて溢れつづけて、それでも売り続けなければいけない。
人々にモノを欲しがらせなければ、エリコが生きていけない。
本当はこんなもの誰も欲しがらないだろうとエリコ自身が感じるモノでさえも、
売らなくてはならない。

だけどそれは、カタチがあるものでもないものでも同じことだった。
今エリコがやっているセールスは、いわゆる資格ビジネスで、これからの時代
に求められる資格を取りましょう、そのための勉強の教材を買ってもらいスク
ールに通わせるところまでの勧誘だった。
「先の見えない不安を払拭する」「将来に備えるためのアドバンスを得る」
を基本テーゼにはしていたけれど、3週間アポイントの電話をかけ続けてエリ
コが得た感覚は、優柔不断で曖昧な未来像への不安を持つ人に差し出す“藁”
を売り物にしているんだな、ということだけだった。
人々の「藁にもすがる思い」を喚起させ、その藁を掴ませる力。
それを、営業力と呼ぶのだ、ということ。

営業の仕事は、明確だった。成績が良ければその成績をキープしさらに上回る
点数稼ぎに没頭し、成績が悪ければ、お役ごめんになりクビになっていく。
エリコがその会社に入った時も、入れ違いに辞めていく人がいた。
その人とは3日間だけ机を並べて仕事の手順を教わったりして、辞める最後の
日にランチタイムを共にした。

彼女は言っていた。
「見込み客に電話していて、これはいけそうだな、って最後の詰めのところで
ね、しくじるんだよね、自分は。何もそんなところで、さらっと嘘つけばいい
のにさ、っていつも思うんだけど、正直な感情が相手に伝わっちゃってさ。」
エリコは彼女に聞いた。聞かなくてもなんとなく分かっていたけれど、聞いた。
「正直な感情って?」
彼女は続ける。
「つまり、それは本当に必要なことなのか? ってこと。そんなに必要な資格
なら勉強してあなたも持ってるんですか? とか聞かれたりして。そこで、も
ちろん、持ってますよー、で、それがものすごく自分にとって有用だったから
お勧めしてるんですよー、とかさ。なんとでも言えるはずなのに、そういうと
ころで、出ちゃうんだ、自分が。」
エリコは昔自分が美容部員として化粧品を売っていた頃を思い出した。
客の肌のことなど、本当にはわからないし、自分が勧めているパックがあたか
も劇的に美しい肌を作り上げるかのように言葉を繋げた。
客は、あなたもここの化粧品を使っているからそんなに綺麗な肌をしてるのよ
ね、と言いながら品物を手にしていたが、エリコの肌が綺麗なのは化粧品の力
ではないことはエリコ自身がいちばんよく知っていた。生まれつきなのだ、肌
は結局は。
しかし、エリコは客に微笑んだ。そうですよ。
エリコには、嘘を嘘に見せない術を相手を騙しているという罪意識を持たずに
身につけてきた歴史がある。
彼女の言葉が続く。
「私はバカ正直にそんなことでまごついちゃったけど、エリコさんはたぶん大
丈夫なんじゃないかな。頑張ってね。」
彼女はそう言いながら最後まで嘘つきになれなかった自分の正直さを誇ってい
るようにも見えた。

上手な嘘つきになれれば、大丈夫。
プレッシャー・セールス・ウーマンとしてやっていくための資格。
エリコは、その資格なら自分は持っていると思った。
半年ぶりに見つけた仕事。
こんな仕事。されど、仕事。
家路に向かうエリコの胸の中にうずまく本当の思いと、毎日出会う人々への思
いはいつもどこか裏腹だったけれど、少しだけエリコの胸元に光明が差し込む。
上手な嘘つきのプロになって、いつかまた飛び出そう。
安らぎを欲しがる人には安らぎを。
向上心を満たしたがる人には向上心を満足させる言葉を。
嘘、ついてるわけじゃないんだよね。
何が本当で何が嘘かなんて、人によって答えが違う。
自分は人が欲しがっている答えを、その相手にただ確認してるだけ。
新宿駅に近づくに連れ、人波が多くなってくる。
エリコは、その人波の中を西口の改札口へと足早になる。


++++++++仕事と名のつくものに、まったく一点の曇りもなく“嘘”が
++++++++ないと言い切れる職業って、今この地上に存在するのでしょ
++++++++うか。自分自身が精錬潔白だと思っていることが、ひとたび
++++++++時代が変わり立場が変われば全く反対の見方をされてしまう
++++++++こともある、そのサイクルの中で、でもどんなに時代が変化
++++++++しても結局は、誰もが「誰かが消費してくれるおかげでその
++++++++対価として報酬を得て生きている」ことは事実だったりする
++++++++ので、夢のような話だけど、本当に真面目に「嘘のない世の
++++++++中」を実現しようとするためには、この世に存在するお金と
++++++++か、進歩とか、成長することがもたらす未来への期待感や信
++++++++頼がすべて無価値にならない限り、あり得ないような気が。
++++++++それがいいとか悪いとかではないんですけどね。

【神崎詞音】 http://210.150.171.169/droo-d/-sion/
作詞家。露崎春女(現:Lyrico)KAZAMIなどの実力派ディーヴァから、アニメ、
ゲーム音楽まで、多岐ジャンルに渡り作品を提供。

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■編集後記(11/25)
・買い物から帰った娘がコーフンして「負けたよ~」とさわいでいる。何が?
と問うと、クリスマスのデコレーションだという。我が家も門扉や駐車場の塀
にクリスマスらしい小物が(100円ショップものか)ささやかに飾られて、道
行く人には好評だという。この日、娘が発見したのは家一軒、屋根の上までま
るまる電飾を張りめぐらし、そればかりか庭の木にも及んでいる物件だという。
見に行きました。確かにばかばかしい満艦飾だが、案外と図案はシンプルだっ
た。それでも近隣では最大級のイルミナティックイフェクツだ。じつは市内に
は毎年有名なイルミネーションがある、ト新聞で知った。2万個の電球を使い、
電気代は月に5万円超、毎日300人くらいが見に来るとか。よし、わたしもその
うち行ってみよう。今回の物件、いちおうデジカメで撮影したが、うまく撮れ
なかった。おまけに、そのときの悪寒が風邪を呼び込んで悲惨な週末。(柴田)

・この間、叔母と祖母を訪ねた。ひさしぶりだ。ふと見るとYahoo!BBのモデム
が封も開けられずに放置されていて、うずうず。気になって仕方ない。子供の
時は、妹や弟の買う雑誌の付録組み立てまでしていたくらい。おあずけを言い
渡されている犬の気分。我慢できずに聞く。「今日届いたばかりなの。」「つ、
繋げさせてっ!」嬉々として箱を開け、繋いだあとテストする。「もう使える
ようになってるよ、って何よこのスピード」。なんとうちのBBの3倍以上のス
ピードが出ていた。うちの家は局舎より遠いとは知っていたが、これほどの差
があるとは。数日後、叔母からメール関連で携帯に電話があり、結果2時間ほ
どサポートしていた。せっかくどちらもBBフォンになったというのに利点を使
いこなせない二人であった。               (hammer.mule)

<応募受付中のプレゼント>
 ノート=ウドム・テーパニット著 白石昇訳書「エロ本」1197、1202-2号。
 一週間でマスターするAdobe Photoshop Elements 2.0 1204号。
 一週間でマスターする デジカメの達人POWER+ for Windows 1204号。

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
アシスト    島田敬子 

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