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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1221 2002/12/17.Tue発行
http://www.dgcr.com/ 1998/04/13創刊 前号の発行部数 21182部
情報提供・投稿・広告の御相談はこちらまで mailto:info@dgcr.com
登録・解除・変更・FAQはこちら http://www.dgcr.com/regist/index.html
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<Webサイト構築の専門家はいらない>
■デジタルサウンズ研究室
岩石流日本音楽通史その二
モモヨ(リザード)
■web bau -蜘蛛の糸から理念を紡ぐ-(12)
体系化と個別化
UZ
■かりん島(仮)
ゴッド上野
北川かりん
【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1221 2002/12/17.Tue発行
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<Webサイト構築の専門家はいらない>
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岩石流日本音楽通史その二
モモヨ(リザード)
■web bau -蜘蛛の糸から理念を紡ぐ-(12)
体系化と個別化
UZ
■かりん島(仮)
ゴッド上野
北川かりん
■デジタルサウンズ研究室
岩石流日本音楽通史その二
モモヨ(リザード)
───────────────────────────────────
時は1960年代後半。
音楽だけでなく、舞台演劇や映画などでも、占領時代の憂さを晴らすかのよう
に、自分達独自のものを性急に生み落とそうとする。これに世界的なカウンタ
ーカルチャーブームも影響を与え、大きなウネリを描き出すことになる。
音楽も例外ではない。アングラブームと呼ばれ、第二期フォークブームと呼ば
れるものや、ニュージャズ、ハプニング芸術と呼ばれるものが登場するのであ
る。
特筆すべきは新宿西口で起きたフォーク集会だろう。フォークゲリラとも呼ば
れた参加者は、まさにバンドの機動性を生かし、路上でコンサートを開き、自
分達の主張をうったえたのだった。音楽的に稚拙なものが大半であったが、一
方、数人の鬼才が登場し、自ら路上で歌う彼らが、初めて、オリジナリティを
獲得した瞬間でも会った。
こうした動きは、アングラフォークとも呼ばれる。
この動きに魅力を感じたニュージャズの新鋭達や現代詩人達が次々と参加して、
日本古来の芸能の影響を受けたものや、自作の詩などを即興でがなりたてるな
ど、いろいろな試みが行われた。むろん、それらは素朴であり、まだスタート
でしかなかったが、海外ではビートルズなどの後に出てきた世代がロックの拡
張、実験を繰り返していた時期に、同時代性をもった動きだったといえよう。
自分達の内側にある表現衝動を主として、バンドを手段ととらえたのは、初の
試みであろう。この動きは、当時、爆発的に浸透した反体制運動、学生運動に
呼応して起こり、そうした運動と同じく、赤軍派の浅間山荘事件を機に急激に
廃れていったのだ。
基地派生形の音楽も、先に見た六十年代後期の意識発展に対して、何も感応し
なかったわけではない。しかし、上に見るような反体制的な動きは、基地を活
動拠点とする芸能プロダクション所属のバンド達が対応できるはずのないもの
だったのだ。
ただし、レコード会社各社は、海外のレコード会社がリリースするそうした新
しい音楽をアートロック、ニューロックというレッテルで売り、世の中に受け
入れられていった。しかし、旧来の芸能プロダクションシステムに依存するグ
ループサウンズには、こうした精神性を発揮する余地が少なく、どうしても、
その衰退に衆目があつまった。
一方、女性客の嬌声が絶えたジャズ喫茶やディスコティック(今日のライブハ
ウスに相当すると考えていい)では、サイケデリックな照明やアートロック系
のコピーバンドが、あるいは、そうしたなかでオリジナリティーを発揮しよう
として苦闘する人々が、かろうじて生き残っており、彼等は、後に、新しい音
楽流行の音楽部分を担うようになっていく。
と、今回でデジクリは冬休みに入るため、かなり駆け足で、一番、面白い時節
を駆け抜けた気もするが、それでも、一応の、日本のロック前史は描けている。
私のバンドキャリアは日本のロックと同時に始まっているから、ある意味、こ
れは私が音楽を「始める」までのポップス史といえる。
モモヨ(リザード) 管原保雄
http://www.babylonic.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■web bau -蜘蛛の糸から理念を紡ぐ-(12)
体系化と個別化
UZ
───────────────────────────────────
Webの世界は本当に、気付いた時には異なる流れ方をしているものだ(これか
ら書くものの言い訳めいているが、そう感じる)。
Webサイト構築というものにとって、方法の体系化がある程度可能になった、
ノウハウが蓄積されつつある、と想像し、これからは体系化がWebサイト構築
という業務のキーワードだ、と、思い立って半年。業務体系や組織体系は、各
所で叫ばれるほど必要とされず、実行に移されず、気付いたら、全く異なる次
の波が寄せてきている。個別化の波だ。
個別化の傾向は、少し前から見えていた。『インターネット白書2003』には、
利用形態が個別化に向いているという見解が掲載されている。
インターネットの使われ方は、企業や個人が発信するメディアという位置付け
から、個々のコミュニケーションのツールとしての役割が大きくなってきた。
メディアとしての地位を確立し、それを受け取る個々が多くなってくると、や
がて受け取る側が力を持ちはじめ、個々の要望が強く現れるようになってきた
のではないかと思われる。
●いるだけじゃ、我慢できない
昔からメーリングリストや掲示板は存在した。あるテーマや色にそって話題を
展開していく。なんでもありのとりとめもない話でも、誰かが掲示板を立てる、
ユーザーが書き込みたくなる、という心理のやりとりとりが発生するのは、掲
示板を立てた人物の色が、濃く打ち出されているからだろう。その色に反応し
て感情が動かされ、書き込みという行動に至る。
ところがユーザーは、最近それを求めなくなってきたように思う。はじめから
色の強いものを嫌う傾向が出てきているように思うのだ。とにかく自分の好き
なことを言わせろ。そこに必要なのは、ただの灰色の背景と12pointの文字だ
け。その掲示板がどんな色になろうが知ったことではない。言いたいことだけ
思いっきり、誰の迷惑も顧みずに言えれば、それでいい、と。
Web上での議論は、暗黙のうちに、または明示的にテーマとルールがあったか
らこそ白熱していたのだと思う。テーマの存在を押し付けとして否定し、ルー
ルの存在を必要性のないものとして追いやったことで、Webは議論の場として
成立しなくなった。残ったのはなじりあいの掃き溜め、無責任ながらくた。時
として有意義な方向に話題が進んだとしても、そこには誰かの意図や方向付け
は入っていない。全員が勝手に、自己満足のために書き込みという行為をして
いるに過ぎない。
ただそれも今では、よほどストレスを発散したい人かゆがんだ愉しみを求める
人に限られているのかもしれない。対して普通のユーザーは、あえてWeb上で
議論する必要も持たず、欲しい情報や言いたいことがあれば、個々に行動して
実現すればよいと割り切っているようだ。
今やますます、必要な情報を探すための道具として、Webは使われている。個
々のニーズは千差万別で、それに答えるために必要なのは押しでも圧しでもな
い。用意すべきは、可能な限りの数のバリエーションを揃えた「データ」か、
特定の人だけに絞った「情報」である。
分かり始めると人はわがままになる。そばにいてくれるだけでいいの、なんて
言っていたのに、気付くと要求を始めるようになる。自分のために何をしてく
れたかで、その価値を図ろうとする。Webというものに対する人々の欲求も、
今そんな段階にあるように思う。
●企業も個人も、然るべく個別化
仕事の場合、この個別化と体系化が様々に絡むからやっかいだ。企業Webサイ
トの構築の多くは、あるミッションに従って行うものだ。しかし、現在の「普
通のユーザー」にかかっては、そのミッション自体が全く違うものとして捉え
られてしまうこともある。予想ができないのだ。
インターネットのユーザーは、みんなで画面を見たりしない。モニターと自分
の間には、遮ったり介在するものが何もない。クローズドな関係である。完全
に1:1の対象でいられるのだ。わがままにもなる。
情報を取り入れることに慣れてくると、人は大抵自分の形に、情報をのパーツ
をはめ込もうとする。
必要なものがある程度そろうまでは、選択肢を無意識に与えられ、受け入れる
だろう。しかしある段階からは、情報を選択し出す。しかも自分の意志で選ん
だのだ、という、自分の存在理由みたいなものを付与しようとする。消費者と
はそうやって自分に価値を与えようとするもののように思う。
作り手に「ブロッグ」が流行っても、1サイトあたりのアクセス者は、かなり
限られた人数になるだろう。アクセスは、発信者のパーソナリティに動かされ
憧れている人か、もしくは発信者の友人知人、に限られる。アイドルが多く出
現するわけではない。おそらくは一部を除いて、ただの自己満足用、記録媒体
なのだろう。
作る側も受け取る側も、自分というものを中心にしたWebの捉え方、すなわち
個別化が始まってしまったのだ。
●にわか業務
そんな影響で、企業からの発信さえも個別的に受け取られてしまう。こんな状
況から、企業のWebサイト構築の体系を見出していくことは、はたしてこの先、
可能なのだろうか。
今、Webサイト構築のワークフローというものに体系化を図る試みが、各所で
行われている。いくつかのサイトを構築していくなかで得た、共通化できる方
法を確立し、効率的で効果の高いサイト構築を行おうというものだ。
ECやコーポレートサイトは、「利益につなげる」というある共通した目的を持
っている。企業にとってWebサイトは、ブランディングに使うものから、道具
として使うものだという認識の変化が生まれつつある。
企業は少し前までは、WebサイトはWebの専門家にやってもらうのが一番、とい
う考え方であった。それだけWebサイト構築は特殊で複雑だと思われているふ
しもある。構築する側も側で、サイトを作るためのノウハウが必要だと思われ
てきた。
しかし、よくよく突き詰めてみれば、Webサイト構築の専門家など、現在は存
在していない。この先も存在しないのではないかと思える。一番先端にいた人、
初めてWebサイト構築を行った人、はいただろう。しかし現在、Webサイト構築
に必要な能力は、すべて細分化、個別化できるということが、見えてくる。
ディレクションに関しては最たるものだ。プロジェクトマネジメントはシステ
ム構築分野にノウハウがたくさんあるし、リーダーシップは営業現場での知恵
が上手だ。Webに独特の傾向と対策は、媒体を研究してきたマーケティング分
野で網羅してもらえる。
今、個別化の傾向が強くなると、いままでベールに包まれて見えなかった「な
んだか難しそうな部分」が、現在までの技術の応用であることに気付いてくる。
そうなると、その個々に対してハイクオリティを出せないと、価値がないので
はないか。
今まで、サイト丸ごと面倒みます、プロデュースから運用までお任せください、
で走っていた制作会社は、顧客が個々のコンテンツや役割に気付き、それぞれ
に意味をもたせようとすれば、価値が薄くなる。
顧客自らが、どこに価値をおきたいかを指示できるようになれば、クオリティ
の高い専門家のみが必要とされ、曖昧なキャリアの人や会社は必要なくなって
くる。システム設計、デザイン、コピーライティング、コンテンツ企画。どれ
も「Webならでは」は多少あっても「Webの専門家」というものは、必要がなく
なってくるのではないか。
今まで、なんだかよく分かっていない顧客に対して、にわかディレクターやに
わかプロデューサーが難しい顔をして提案書を出し、にわかデザイナーやにわ
かライターが制作物を提供する。しかし個別化しタスクを切り分けていくと、
Web独自のことなんて、実はなかったということが明らかになってくるだろう。
何を実現したいのか、そこだけがコアである。そしてそれを実現するには、目
的を果たせるクオリティだけが必要だ。
Webサイトはただの手段にすぎない。デザインの世界にポスターの専門家がい
ないのと同様、マーケティングの世界にアンケートの専門家がいないのと同様、
Webサイト構築においても、専門家はいらないのではないだろうか。
●本質を見抜くことがすべて
上記はかなり極端な考え方だとも思う。しかし今、Webサイトが持つ特殊性に
特化した技術の習得にばかり注目が集まっているとしたら、危険だ。事実、も
う次の波がそこまで来ているように、Webサイトに必要な技術は瞬く間に移り
変わる。大事なのは、いつの場合にも、的確な情報、発信者のニーズ、ユーザ
ーへの意義を、道具を使って具体的に目に見える形に実現する、ということ。
その手段や道具は、どんなものでもいい。
Webサイト構築のワークフローを考えていると、Webサイトというものに合った
形に、ニーズを落とし込んでいくための体系のように、考えてしまいそうにな
る。しかし本当は逆で、ニーズがもともとあって、それをWebサイトで実現す
るのが効果的な場合に、その訴求方法を高めるための体系、であるべきなのだ。
今後、発信者側も受け取り側も要求の個別化が進む上で、この傾向はますます
強くなるだろう。
Webでの体系化は、各種技術をどのように応用すべきか、に尽きると思う。各
種技術の組み合わせを行うプロフェッショナルという意味では、Webサイト構
築のディレクションのプロ、という存在はありうるだろう。
であれば、もっと応用的な世界として捉えるべきなのではないだろうか。現在、
Webサイト構築が特殊技能のように感じている人がいるとしたら、それは間違
いかもしれない。間違っていなくても、あまり重要でないかもしれない。
“Webサイト成功のために”“Webプロデューサーになろう!”などのセミナー
に目を引かれるときも、Webというものはあくまでも手段であると考えて、臨
むべきだと思う。
社会人として最初の仕事がWebサイト制作、という人にとっては、プライドや
経験が邪魔をしてなかなか外業界へ目が向かないことも、あるかもしれない。
しかしクライアントは、共通言語を求めている。Webサイト語ではない。頼ら
れる存在とは、いかに顧客や仲間の目を見て、理解し、それぞれの専門分野の
技を磨き、Webサイトというからくりに囚われず、顧客のためのパズルを組み
立てられる人。
パズルは楽しい作業である。しかし、楽しさに溺れず、求められる本質を見抜
く目を、これからはより意識していかなければならないと思う。
【uz】
某コンピューターパッケージベンダー勤務を経て、現在はWeb系ライター、
Webサイト構築業務に携わる。
「映画を研究する人々のためのサイト Urban Cinema Squad」もよろしく。
http://www.u-c-s.org/
▼web bau -蜘蛛の糸から理念を紡ぐ-は今回を以て終了します。
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■かりん島(仮)
ゴッド上野
北川かりん
───────────────────────────────────
出勤途中、いつも通るイタリア料理店の主人が30代後半の女性と喋っていた。
彼女は大きなツバの白い帽子を被り、長くゴワゴワした黒い髪を浅黒くハリの
ない露出した肩におろしていた。無添加食品とか好きそうな人にいそうな、ノ
ーメイクの華のない顔だが、どこからくるのか妙な自信たっぷりの表情が軽い
不快感を抱かせる。白いタンクトップにベルボトムのジーパンに大きなショル
ダーバッグを抱え、超ギャルを意識し過ぎたそのスタイルは完全に浮いていた。
彼女は店主とイタリア語で会話を交わし、会得した表情をすると「チャオ!」
といってその店を立ち去った。私と彼女はしばらく同じ道を歩いた。途中、商
品を店頭に滝のように並べている雑貨店があって、彼女はそこに興味をもった
らしく、近付いて使い古されたブラジャーの山をあさり始めた。ロシア女性の
豊満な乳房を覆っていたのではないか? と思わせるデカいブラジャーが山の
ようにぶらさがっていて、真剣な表情で吟味しているようだった。
私はこの不思議な女性の行動にいつの間にか引き付けられ、遠くから彼女の様
子を立ち止まって眺めていた。するとそこへ若い小娘がやってきて、「あのー、
ゴッド上野さんのお知り合いですか?」と尋ねられた。ゴッド上野???と眉
をしかめて小娘の顔を見つめると、小娘はあの白い帽子の女の方をチラチラと
眺めて私の返事を待っている。どうやらあいつがゴッド上野らしいが、しかし、
ゴッド上野とは何者だ?
「いえ、ちがいますけど……」
しかし、彼女は信じてない様子で、本当は知ってるんでしょ? 隠さなくても
いいんですよ、という温かな眼差しでまだ私の言動を待っていた。どうやらゴ
ッド上野に仲介してもらいたいらしく、いつまでも私から離れようとしない。
ゴッド上野は彼女にとってはカリスマらしく、使い古されたブラジャーを「や
っぱりセンスがいいわー」とうっとりした目で眺めていた。
「いえ、あたし本当に知らないんで……」関わりあいになりたくなくて、足早
にそこを立ち去った。
ようやく会社にたどり着くと同僚の武田くんがやってきた。「おはよう! …
…あれ、どした? なんかあった?」と私の顔を覗き込んだ。武田くんとは友
達というよりは何だか兄弟のような感じでいつもくだらない事いいあって笑え
る気心のしれた仲だ。武田くんの顔を見たらなんだかほっとした。
「なんか、朝からエライもん見ちゃって……なんて、説明すればいいんだろう」
そんな会話をしながら、改装したばかりの総ガラス張りの白く光る会社のロビ
ーフロアを二人で歩いていると、前方にさっきの「ゴッド上野」と呼ばれてい
た女性がいた。彼女は悠然とエレベーターに乗り込むと階上へ消えて行った。
またしても、あの女……、まさかうちの社員? 不可解な顔をしている私を武
田くんは心配そうに見つめていた。
今日は顧客を招いての社の展示販売のイベントがある。朝からおばさま達に囲
まれて重い荷物を運ぶのかと思うとぞっとしたが、今日一日を乗り切るために
無理にテンションをあげて、支給された青地に社名を白く抜いてあるドリフの
ようなハッピを着て、はちまきをギュっと締めた。
「先輩とっても似合いますよぉー!」
モー娘ばりのヨウコちゃんがブカブカのハッピを自分流に可愛く着崩している。
(どんなにやってもそれを着た以上は、お前はドリフなんだよ!)
そう思いながらも「うふ、ありがとう」と白々しく愛想笑いを浮かべた。
「いらっしゃいませ!!」の掛け声と共におばさま達が猛牛のごとく突入して
きた。屋上でのイベントなので、血走って落っこちやしないかと心配になる程
の勢いだ。もう、完全に負けたと思ったが、何とか気力で踏ん張った。必死で
おばさんの相手をしている私の袖をヨウコちゃんが引っ張るので、振り向くと
「先輩、ゴッド上野がいますよぉー!!」とはしゃいでいる。
ゴッド上野!? 又あいつかー!! ヨウコちゃんの指差す方を見るとゴッド
上野は朝とうってかわって大正ロマン風の、黒に大柄の模様の和服を着て、髪
を丸く結い上げている。しかし、顔はやはりノーメイクで一重のふてくされた
下ぶくれ顔が何だか農婦のようでアンバランスだ。ゴッド上野の今度のターゲ
ットは汚い黒塗りのゲタらしく、裏表ひっくり返してシゲシゲと眺めていた。
いくら在庫一掃のためとはいえ、よくあんな汚い商品を出したなー、きっと営
業の吉岡だな、あいつ商品管理が悪いからなーと思って見ていたら、ヨウコち
ゃんの目がキラキラ輝いているのに気がついた。
「あー、あのゲタが今度の流行りなんだわー。買っておけばよかったー!!
ね、先輩あのゲタ超可愛いですよねー!! 超欲しいー!!」
若い女の子の考える事はよくわからない。
「どう見ても汚いゲタだよ……」といいかけると、額に雫があたった。雨だ!
天気予報は晴れだっていってたのに! 部長の屋外イベントでお客様にハイキ
ング気分を楽しんで頂こうなんて案を聞いた時から悪い予感がしてたんだ。
ゴッド上野に気付いた客と雨のおかげで、おばさん達が騒ぎ始めた。ゴッド上
野を中心におばさん達の騒々しい輪が出来上がっていく。「皆さん、どうぞ落
ち着いて下さーい!!」メガホンで部長が叫ぶが誰も聞いちゃいない。
ゴッド上野はこの騒々しさも何処吹く風で、優雅に天を仰ぐと「雨ね……」と
ポツリといった。そして手元にあった商品の傘を開くとそのまま帰ろうとする
ので、「ちょっと、待ったーー!!」と私は叫びながら人ゴミを掻き分けてゴ
ッド上野に近付いた。
「お客様、お会計がまだですが!!」
「……??」
ゴッド上野は首を傾けキョトンとしている。ええい、しらばっくれるな!!
「いえ、だから、それは商品ですので、お会計をして頂かないと……」
「……これは、私のです」
周りのおばさん達がキャーっと叫び声をあげる。私もあの傘欲しいーー!!
「いやいや、違うやろ、それ、値札がついとるやないか、え!?」
「……」相変わらず小首をかしげている。
「……わかりません」
「わかりませんやないやろ!! おまえ!! 金を払えーー!!」
「……帰ります、ごきげんよう」
叫ぶおばさん達に向かってゴッド上野が歩き出すと、まるでモーゼのようにゴ
ッド上野の前に道は開かれ、通った後はおばさんで埋め尽くされ行った。私は
おばさんの波に埋もれながら、
「こら、待てーー!!ゴッド上野――!! 返せーー!! 泥棒――!!」
と叫んだが、その声は虚しくおばさん達の嬌声と脂肪にかき消されていった。
ゴッド上野、お前は一体何者なんだ?
【北川かりん】 「ロボぐるみ」制作者。TASU主宰者。
TASU 北川かりんホームページ *ロボぐるみ作品集無料ダウンロード実施中。
・TASU ART WORK ロボぐるみ
http://www.h3.dion.ne.jp/~tasu/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■編集後記(12/17)
・「少林サッカー」をようやく見た。予想通りにばかばかしかった。マンガで
やってもばかばかしい表現を、実写やCG合成で作ってしまうばかばかしさに感
動した。ストーリーは思っていた通りの展開でほとんど感動しなかったけど。
でも、ヒロインをわざわざ汚くする必要はあったのか思う。お約束通り、最後
にまた現れたがあれは「スタートレック」か。バナナの皮で転ぶとか、瞳の中
の炎とかベタなギャグがじつに好ましい。ところで、周星馳は神田敏晶さんの
若い頃(いまもばか若いが)にちょっと似てると思ったけど。 (柴田)
・時間がないまま後記書いたらあかんねんけど、後記やからええか。文法めち
ゃくちゃや。意訳してくださーい。/今回のプレゼントは意外に応募が少ない。
プレゼントに頼らず、自分で購入を決めた人が多いってことかな。当選確率高
いので、ぜひご応募を!/どんどん増えるYahoo!のコンテンツ。どれだけの人
が働いているんだろ。とうとうコスメのコンテンツまでできた。「ポーチの中
身見せて」って。メイク、美容って飽くなき探求ですな。毎月たくさんの雑誌
が発行されていて、カリスマ的な人がいて、でもみんな満足しきってなくて。
毎シーズンごとに、新機能の入った商品が販売されて。これからのインは、ピ
ンクだ、ブルーだ、チークにマスカラに、マットだつや肌だ、いやいやセミマ
ットだ……ついていけない私はこの程度のメイクか。うー。 (hammer.mule)
http://beauty.yahoo.co.jp/ Yahoo! Beauty
http://www.so-net.ne.jp/women/shimadachiaki/lesson/ 嶋田ちあきのlesson
http://www.so-net.ne.jp/michiko/ 藤原美智子オフィシャル
http://www.nail-bancho.com/ 浜あゆ専属ネイリストさん
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デスク 濱村和恵
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アシスト 島田敬子
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岩石流日本音楽通史その二
モモヨ(リザード)
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時は1960年代後半。
音楽だけでなく、舞台演劇や映画などでも、占領時代の憂さを晴らすかのよう
に、自分達独自のものを性急に生み落とそうとする。これに世界的なカウンタ
ーカルチャーブームも影響を与え、大きなウネリを描き出すことになる。
音楽も例外ではない。アングラブームと呼ばれ、第二期フォークブームと呼ば
れるものや、ニュージャズ、ハプニング芸術と呼ばれるものが登場するのであ
る。
特筆すべきは新宿西口で起きたフォーク集会だろう。フォークゲリラとも呼ば
れた参加者は、まさにバンドの機動性を生かし、路上でコンサートを開き、自
分達の主張をうったえたのだった。音楽的に稚拙なものが大半であったが、一
方、数人の鬼才が登場し、自ら路上で歌う彼らが、初めて、オリジナリティを
獲得した瞬間でも会った。
こうした動きは、アングラフォークとも呼ばれる。
この動きに魅力を感じたニュージャズの新鋭達や現代詩人達が次々と参加して、
日本古来の芸能の影響を受けたものや、自作の詩などを即興でがなりたてるな
ど、いろいろな試みが行われた。むろん、それらは素朴であり、まだスタート
でしかなかったが、海外ではビートルズなどの後に出てきた世代がロックの拡
張、実験を繰り返していた時期に、同時代性をもった動きだったといえよう。
自分達の内側にある表現衝動を主として、バンドを手段ととらえたのは、初の
試みであろう。この動きは、当時、爆発的に浸透した反体制運動、学生運動に
呼応して起こり、そうした運動と同じく、赤軍派の浅間山荘事件を機に急激に
廃れていったのだ。
基地派生形の音楽も、先に見た六十年代後期の意識発展に対して、何も感応し
なかったわけではない。しかし、上に見るような反体制的な動きは、基地を活
動拠点とする芸能プロダクション所属のバンド達が対応できるはずのないもの
だったのだ。
ただし、レコード会社各社は、海外のレコード会社がリリースするそうした新
しい音楽をアートロック、ニューロックというレッテルで売り、世の中に受け
入れられていった。しかし、旧来の芸能プロダクションシステムに依存するグ
ループサウンズには、こうした精神性を発揮する余地が少なく、どうしても、
その衰退に衆目があつまった。
一方、女性客の嬌声が絶えたジャズ喫茶やディスコティック(今日のライブハ
ウスに相当すると考えていい)では、サイケデリックな照明やアートロック系
のコピーバンドが、あるいは、そうしたなかでオリジナリティーを発揮しよう
として苦闘する人々が、かろうじて生き残っており、彼等は、後に、新しい音
楽流行の音楽部分を担うようになっていく。
と、今回でデジクリは冬休みに入るため、かなり駆け足で、一番、面白い時節
を駆け抜けた気もするが、それでも、一応の、日本のロック前史は描けている。
私のバンドキャリアは日本のロックと同時に始まっているから、ある意味、こ
れは私が音楽を「始める」までのポップス史といえる。
モモヨ(リザード) 管原保雄
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■web bau -蜘蛛の糸から理念を紡ぐ-(12)
体系化と個別化
UZ
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Webの世界は本当に、気付いた時には異なる流れ方をしているものだ(これか
ら書くものの言い訳めいているが、そう感じる)。
Webサイト構築というものにとって、方法の体系化がある程度可能になった、
ノウハウが蓄積されつつある、と想像し、これからは体系化がWebサイト構築
という業務のキーワードだ、と、思い立って半年。業務体系や組織体系は、各
所で叫ばれるほど必要とされず、実行に移されず、気付いたら、全く異なる次
の波が寄せてきている。個別化の波だ。
個別化の傾向は、少し前から見えていた。『インターネット白書2003』には、
利用形態が個別化に向いているという見解が掲載されている。
インターネットの使われ方は、企業や個人が発信するメディアという位置付け
から、個々のコミュニケーションのツールとしての役割が大きくなってきた。
メディアとしての地位を確立し、それを受け取る個々が多くなってくると、や
がて受け取る側が力を持ちはじめ、個々の要望が強く現れるようになってきた
のではないかと思われる。
●いるだけじゃ、我慢できない
昔からメーリングリストや掲示板は存在した。あるテーマや色にそって話題を
展開していく。なんでもありのとりとめもない話でも、誰かが掲示板を立てる、
ユーザーが書き込みたくなる、という心理のやりとりとりが発生するのは、掲
示板を立てた人物の色が、濃く打ち出されているからだろう。その色に反応し
て感情が動かされ、書き込みという行動に至る。
ところがユーザーは、最近それを求めなくなってきたように思う。はじめから
色の強いものを嫌う傾向が出てきているように思うのだ。とにかく自分の好き
なことを言わせろ。そこに必要なのは、ただの灰色の背景と12pointの文字だ
け。その掲示板がどんな色になろうが知ったことではない。言いたいことだけ
思いっきり、誰の迷惑も顧みずに言えれば、それでいい、と。
Web上での議論は、暗黙のうちに、または明示的にテーマとルールがあったか
らこそ白熱していたのだと思う。テーマの存在を押し付けとして否定し、ルー
ルの存在を必要性のないものとして追いやったことで、Webは議論の場として
成立しなくなった。残ったのはなじりあいの掃き溜め、無責任ながらくた。時
として有意義な方向に話題が進んだとしても、そこには誰かの意図や方向付け
は入っていない。全員が勝手に、自己満足のために書き込みという行為をして
いるに過ぎない。
ただそれも今では、よほどストレスを発散したい人かゆがんだ愉しみを求める
人に限られているのかもしれない。対して普通のユーザーは、あえてWeb上で
議論する必要も持たず、欲しい情報や言いたいことがあれば、個々に行動して
実現すればよいと割り切っているようだ。
今やますます、必要な情報を探すための道具として、Webは使われている。個
々のニーズは千差万別で、それに答えるために必要なのは押しでも圧しでもな
い。用意すべきは、可能な限りの数のバリエーションを揃えた「データ」か、
特定の人だけに絞った「情報」である。
分かり始めると人はわがままになる。そばにいてくれるだけでいいの、なんて
言っていたのに、気付くと要求を始めるようになる。自分のために何をしてく
れたかで、その価値を図ろうとする。Webというものに対する人々の欲求も、
今そんな段階にあるように思う。
●企業も個人も、然るべく個別化
仕事の場合、この個別化と体系化が様々に絡むからやっかいだ。企業Webサイ
トの構築の多くは、あるミッションに従って行うものだ。しかし、現在の「普
通のユーザー」にかかっては、そのミッション自体が全く違うものとして捉え
られてしまうこともある。予想ができないのだ。
インターネットのユーザーは、みんなで画面を見たりしない。モニターと自分
の間には、遮ったり介在するものが何もない。クローズドな関係である。完全
に1:1の対象でいられるのだ。わがままにもなる。
情報を取り入れることに慣れてくると、人は大抵自分の形に、情報をのパーツ
をはめ込もうとする。
必要なものがある程度そろうまでは、選択肢を無意識に与えられ、受け入れる
だろう。しかしある段階からは、情報を選択し出す。しかも自分の意志で選ん
だのだ、という、自分の存在理由みたいなものを付与しようとする。消費者と
はそうやって自分に価値を与えようとするもののように思う。
作り手に「ブロッグ」が流行っても、1サイトあたりのアクセス者は、かなり
限られた人数になるだろう。アクセスは、発信者のパーソナリティに動かされ
憧れている人か、もしくは発信者の友人知人、に限られる。アイドルが多く出
現するわけではない。おそらくは一部を除いて、ただの自己満足用、記録媒体
なのだろう。
作る側も受け取る側も、自分というものを中心にしたWebの捉え方、すなわち
個別化が始まってしまったのだ。
●にわか業務
そんな影響で、企業からの発信さえも個別的に受け取られてしまう。こんな状
況から、企業のWebサイト構築の体系を見出していくことは、はたしてこの先、
可能なのだろうか。
今、Webサイト構築のワークフローというものに体系化を図る試みが、各所で
行われている。いくつかのサイトを構築していくなかで得た、共通化できる方
法を確立し、効率的で効果の高いサイト構築を行おうというものだ。
ECやコーポレートサイトは、「利益につなげる」というある共通した目的を持
っている。企業にとってWebサイトは、ブランディングに使うものから、道具
として使うものだという認識の変化が生まれつつある。
企業は少し前までは、WebサイトはWebの専門家にやってもらうのが一番、とい
う考え方であった。それだけWebサイト構築は特殊で複雑だと思われているふ
しもある。構築する側も側で、サイトを作るためのノウハウが必要だと思われ
てきた。
しかし、よくよく突き詰めてみれば、Webサイト構築の専門家など、現在は存
在していない。この先も存在しないのではないかと思える。一番先端にいた人、
初めてWebサイト構築を行った人、はいただろう。しかし現在、Webサイト構築
に必要な能力は、すべて細分化、個別化できるということが、見えてくる。
ディレクションに関しては最たるものだ。プロジェクトマネジメントはシステ
ム構築分野にノウハウがたくさんあるし、リーダーシップは営業現場での知恵
が上手だ。Webに独特の傾向と対策は、媒体を研究してきたマーケティング分
野で網羅してもらえる。
今、個別化の傾向が強くなると、いままでベールに包まれて見えなかった「な
んだか難しそうな部分」が、現在までの技術の応用であることに気付いてくる。
そうなると、その個々に対してハイクオリティを出せないと、価値がないので
はないか。
今まで、サイト丸ごと面倒みます、プロデュースから運用までお任せください、
で走っていた制作会社は、顧客が個々のコンテンツや役割に気付き、それぞれ
に意味をもたせようとすれば、価値が薄くなる。
顧客自らが、どこに価値をおきたいかを指示できるようになれば、クオリティ
の高い専門家のみが必要とされ、曖昧なキャリアの人や会社は必要なくなって
くる。システム設計、デザイン、コピーライティング、コンテンツ企画。どれ
も「Webならでは」は多少あっても「Webの専門家」というものは、必要がなく
なってくるのではないか。
今まで、なんだかよく分かっていない顧客に対して、にわかディレクターやに
わかプロデューサーが難しい顔をして提案書を出し、にわかデザイナーやにわ
かライターが制作物を提供する。しかし個別化しタスクを切り分けていくと、
Web独自のことなんて、実はなかったということが明らかになってくるだろう。
何を実現したいのか、そこだけがコアである。そしてそれを実現するには、目
的を果たせるクオリティだけが必要だ。
Webサイトはただの手段にすぎない。デザインの世界にポスターの専門家がい
ないのと同様、マーケティングの世界にアンケートの専門家がいないのと同様、
Webサイト構築においても、専門家はいらないのではないだろうか。
●本質を見抜くことがすべて
上記はかなり極端な考え方だとも思う。しかし今、Webサイトが持つ特殊性に
特化した技術の習得にばかり注目が集まっているとしたら、危険だ。事実、も
う次の波がそこまで来ているように、Webサイトに必要な技術は瞬く間に移り
変わる。大事なのは、いつの場合にも、的確な情報、発信者のニーズ、ユーザ
ーへの意義を、道具を使って具体的に目に見える形に実現する、ということ。
その手段や道具は、どんなものでもいい。
Webサイト構築のワークフローを考えていると、Webサイトというものに合った
形に、ニーズを落とし込んでいくための体系のように、考えてしまいそうにな
る。しかし本当は逆で、ニーズがもともとあって、それをWebサイトで実現す
るのが効果的な場合に、その訴求方法を高めるための体系、であるべきなのだ。
今後、発信者側も受け取り側も要求の個別化が進む上で、この傾向はますます
強くなるだろう。
Webでの体系化は、各種技術をどのように応用すべきか、に尽きると思う。各
種技術の組み合わせを行うプロフェッショナルという意味では、Webサイト構
築のディレクションのプロ、という存在はありうるだろう。
であれば、もっと応用的な世界として捉えるべきなのではないだろうか。現在、
Webサイト構築が特殊技能のように感じている人がいるとしたら、それは間違
いかもしれない。間違っていなくても、あまり重要でないかもしれない。
“Webサイト成功のために”“Webプロデューサーになろう!”などのセミナー
に目を引かれるときも、Webというものはあくまでも手段であると考えて、臨
むべきだと思う。
社会人として最初の仕事がWebサイト制作、という人にとっては、プライドや
経験が邪魔をしてなかなか外業界へ目が向かないことも、あるかもしれない。
しかしクライアントは、共通言語を求めている。Webサイト語ではない。頼ら
れる存在とは、いかに顧客や仲間の目を見て、理解し、それぞれの専門分野の
技を磨き、Webサイトというからくりに囚われず、顧客のためのパズルを組み
立てられる人。
パズルは楽しい作業である。しかし、楽しさに溺れず、求められる本質を見抜
く目を、これからはより意識していかなければならないと思う。
【uz】
某コンピューターパッケージベンダー勤務を経て、現在はWeb系ライター、
Webサイト構築業務に携わる。
「映画を研究する人々のためのサイト Urban Cinema Squad」もよろしく。
http://www.u-c-s.org/
▼web bau -蜘蛛の糸から理念を紡ぐ-は今回を以て終了します。
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■かりん島(仮)
ゴッド上野
北川かりん
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出勤途中、いつも通るイタリア料理店の主人が30代後半の女性と喋っていた。
彼女は大きなツバの白い帽子を被り、長くゴワゴワした黒い髪を浅黒くハリの
ない露出した肩におろしていた。無添加食品とか好きそうな人にいそうな、ノ
ーメイクの華のない顔だが、どこからくるのか妙な自信たっぷりの表情が軽い
不快感を抱かせる。白いタンクトップにベルボトムのジーパンに大きなショル
ダーバッグを抱え、超ギャルを意識し過ぎたそのスタイルは完全に浮いていた。
彼女は店主とイタリア語で会話を交わし、会得した表情をすると「チャオ!」
といってその店を立ち去った。私と彼女はしばらく同じ道を歩いた。途中、商
品を店頭に滝のように並べている雑貨店があって、彼女はそこに興味をもった
らしく、近付いて使い古されたブラジャーの山をあさり始めた。ロシア女性の
豊満な乳房を覆っていたのではないか? と思わせるデカいブラジャーが山の
ようにぶらさがっていて、真剣な表情で吟味しているようだった。
私はこの不思議な女性の行動にいつの間にか引き付けられ、遠くから彼女の様
子を立ち止まって眺めていた。するとそこへ若い小娘がやってきて、「あのー、
ゴッド上野さんのお知り合いですか?」と尋ねられた。ゴッド上野???と眉
をしかめて小娘の顔を見つめると、小娘はあの白い帽子の女の方をチラチラと
眺めて私の返事を待っている。どうやらあいつがゴッド上野らしいが、しかし、
ゴッド上野とは何者だ?
「いえ、ちがいますけど……」
しかし、彼女は信じてない様子で、本当は知ってるんでしょ? 隠さなくても
いいんですよ、という温かな眼差しでまだ私の言動を待っていた。どうやらゴ
ッド上野に仲介してもらいたいらしく、いつまでも私から離れようとしない。
ゴッド上野は彼女にとってはカリスマらしく、使い古されたブラジャーを「や
っぱりセンスがいいわー」とうっとりした目で眺めていた。
「いえ、あたし本当に知らないんで……」関わりあいになりたくなくて、足早
にそこを立ち去った。
ようやく会社にたどり着くと同僚の武田くんがやってきた。「おはよう! …
…あれ、どした? なんかあった?」と私の顔を覗き込んだ。武田くんとは友
達というよりは何だか兄弟のような感じでいつもくだらない事いいあって笑え
る気心のしれた仲だ。武田くんの顔を見たらなんだかほっとした。
「なんか、朝からエライもん見ちゃって……なんて、説明すればいいんだろう」
そんな会話をしながら、改装したばかりの総ガラス張りの白く光る会社のロビ
ーフロアを二人で歩いていると、前方にさっきの「ゴッド上野」と呼ばれてい
た女性がいた。彼女は悠然とエレベーターに乗り込むと階上へ消えて行った。
またしても、あの女……、まさかうちの社員? 不可解な顔をしている私を武
田くんは心配そうに見つめていた。
今日は顧客を招いての社の展示販売のイベントがある。朝からおばさま達に囲
まれて重い荷物を運ぶのかと思うとぞっとしたが、今日一日を乗り切るために
無理にテンションをあげて、支給された青地に社名を白く抜いてあるドリフの
ようなハッピを着て、はちまきをギュっと締めた。
「先輩とっても似合いますよぉー!」
モー娘ばりのヨウコちゃんがブカブカのハッピを自分流に可愛く着崩している。
(どんなにやってもそれを着た以上は、お前はドリフなんだよ!)
そう思いながらも「うふ、ありがとう」と白々しく愛想笑いを浮かべた。
「いらっしゃいませ!!」の掛け声と共におばさま達が猛牛のごとく突入して
きた。屋上でのイベントなので、血走って落っこちやしないかと心配になる程
の勢いだ。もう、完全に負けたと思ったが、何とか気力で踏ん張った。必死で
おばさんの相手をしている私の袖をヨウコちゃんが引っ張るので、振り向くと
「先輩、ゴッド上野がいますよぉー!!」とはしゃいでいる。
ゴッド上野!? 又あいつかー!! ヨウコちゃんの指差す方を見るとゴッド
上野は朝とうってかわって大正ロマン風の、黒に大柄の模様の和服を着て、髪
を丸く結い上げている。しかし、顔はやはりノーメイクで一重のふてくされた
下ぶくれ顔が何だか農婦のようでアンバランスだ。ゴッド上野の今度のターゲ
ットは汚い黒塗りのゲタらしく、裏表ひっくり返してシゲシゲと眺めていた。
いくら在庫一掃のためとはいえ、よくあんな汚い商品を出したなー、きっと営
業の吉岡だな、あいつ商品管理が悪いからなーと思って見ていたら、ヨウコち
ゃんの目がキラキラ輝いているのに気がついた。
「あー、あのゲタが今度の流行りなんだわー。買っておけばよかったー!!
ね、先輩あのゲタ超可愛いですよねー!! 超欲しいー!!」
若い女の子の考える事はよくわからない。
「どう見ても汚いゲタだよ……」といいかけると、額に雫があたった。雨だ!
天気予報は晴れだっていってたのに! 部長の屋外イベントでお客様にハイキ
ング気分を楽しんで頂こうなんて案を聞いた時から悪い予感がしてたんだ。
ゴッド上野に気付いた客と雨のおかげで、おばさん達が騒ぎ始めた。ゴッド上
野を中心におばさん達の騒々しい輪が出来上がっていく。「皆さん、どうぞ落
ち着いて下さーい!!」メガホンで部長が叫ぶが誰も聞いちゃいない。
ゴッド上野はこの騒々しさも何処吹く風で、優雅に天を仰ぐと「雨ね……」と
ポツリといった。そして手元にあった商品の傘を開くとそのまま帰ろうとする
ので、「ちょっと、待ったーー!!」と私は叫びながら人ゴミを掻き分けてゴ
ッド上野に近付いた。
「お客様、お会計がまだですが!!」
「……??」
ゴッド上野は首を傾けキョトンとしている。ええい、しらばっくれるな!!
「いえ、だから、それは商品ですので、お会計をして頂かないと……」
「……これは、私のです」
周りのおばさん達がキャーっと叫び声をあげる。私もあの傘欲しいーー!!
「いやいや、違うやろ、それ、値札がついとるやないか、え!?」
「……」相変わらず小首をかしげている。
「……わかりません」
「わかりませんやないやろ!! おまえ!! 金を払えーー!!」
「……帰ります、ごきげんよう」
叫ぶおばさん達に向かってゴッド上野が歩き出すと、まるでモーゼのようにゴ
ッド上野の前に道は開かれ、通った後はおばさんで埋め尽くされ行った。私は
おばさんの波に埋もれながら、
「こら、待てーー!!ゴッド上野――!! 返せーー!! 泥棒――!!」
と叫んだが、その声は虚しくおばさん達の嬌声と脂肪にかき消されていった。
ゴッド上野、お前は一体何者なんだ?
【北川かりん】 「ロボぐるみ」制作者。TASU主宰者。
TASU 北川かりんホームページ *ロボぐるみ作品集無料ダウンロード実施中。
・TASU ART WORK ロボぐるみ
http://www.h3.dion.ne.jp/~tasu/
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■編集後記(12/17)
・「少林サッカー」をようやく見た。予想通りにばかばかしかった。マンガで
やってもばかばかしい表現を、実写やCG合成で作ってしまうばかばかしさに感
動した。ストーリーは思っていた通りの展開でほとんど感動しなかったけど。
でも、ヒロインをわざわざ汚くする必要はあったのか思う。お約束通り、最後
にまた現れたがあれは「スタートレック」か。バナナの皮で転ぶとか、瞳の中
の炎とかベタなギャグがじつに好ましい。ところで、周星馳は神田敏晶さんの
若い頃(いまもばか若いが)にちょっと似てると思ったけど。 (柴田)
・時間がないまま後記書いたらあかんねんけど、後記やからええか。文法めち
ゃくちゃや。意訳してくださーい。/今回のプレゼントは意外に応募が少ない。
プレゼントに頼らず、自分で購入を決めた人が多いってことかな。当選確率高
いので、ぜひご応募を!/どんどん増えるYahoo!のコンテンツ。どれだけの人
が働いているんだろ。とうとうコスメのコンテンツまでできた。「ポーチの中
身見せて」って。メイク、美容って飽くなき探求ですな。毎月たくさんの雑誌
が発行されていて、カリスマ的な人がいて、でもみんな満足しきってなくて。
毎シーズンごとに、新機能の入った商品が販売されて。これからのインは、ピ
ンクだ、ブルーだ、チークにマスカラに、マットだつや肌だ、いやいやセミマ
ットだ……ついていけない私はこの程度のメイクか。うー。 (hammer.mule)
http://beauty.yahoo.co.jp/ Yahoo! Beauty
http://www.so-net.ne.jp/women/shimadachiaki/lesson/ 嶋田ちあきのlesson
http://www.so-net.ne.jp/michiko/ 藤原美智子オフィシャル
http://www.nail-bancho.com/ 浜あゆ専属ネイリストさん
http://www.cosme.net/ @cosme 影響力あります。
<応募受付中のプレゼント>
Shade 6 デザインマスター 1218号。
ここまでできる QuarkXpress3.3-4.1ヒント&テクニック 1219号。
Photoshop技芸全書 1220号。
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編集長 柴田忠男
デスク 濱村和恵
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アシスト 島田敬子
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