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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1246 2003/02/06.Thu発行
http://www.dgcr.com/ 1998/04/13創刊 前号の発行部数 21104部
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<今日の芸術は上手くあってはならない>
■Powerbook Publishing Project ~ (41)
iPhoto、豹変す
8月サンタ
■笑わない魚 55
ヘタであること
~絵がヘタだ、と劣等感に悩んでいるアーティストに希望を
永吉克之
■Powerbook Publishing Project ~ (41)
iPhoto、豹変す
8月サンタ
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●素晴らしいアップデート
「豹変」という言葉の意味は、前にも書いたが、「人が突然、目を見張るほど
立派に成長するさま」をいう。先週末、ひっそりと(?)Macintoshの純正ア
プリケーションの「iPhoto」が、新しいバージョン「iPhoto2」にアップデー
トされたのだが、これがまさに豹変といえるほど素晴らしいものだった。今週
は、この豹変した「iPhoto2」について。
・iPhoto2(MacOS 10.1.5以降~無償でダウンロード可)
http://www.apple.co.jp/iphoto/download/
iPhotoとは、AppleのMacintoshに標準で付属するアプリケーション群、「iア
プリ」のひとつで、写真を管理・加工するソフトである。
●iアプリ、「iTunes」の大成功
最初に成功を収めたiアプリ、音楽管理ソフトの「iTunes」は、最も扱いやす
い音楽プレーヤーとして定評がある。眠っていたCDを全てMacに入れてiTunes
で聴き始めたら、音楽の楽しみ方がすっかり変わってしまったというユーザー
は本当に多い。使ったことのない人がiTunesを手に入れると、皆興奮して、家
中のCDをMacに詰め込んでしまうようだ。
先日、お世話になっている方の娘さんが、タヒチのホテルに単身で就職するに
あたり、現行iBookの800Mhzを購入したのだが、iTunesの使い方を教えた途端、
数日間で部屋の中にあった100枚以上のCDをiBookに入れてしまい、これで一年
間は帰って来られない生活が、少し楽しくなったと大喜びしていた。100枚の
CDを鞄に詰めていくことを思えば、まるで魔法のようだろう。
他にもiアプリにはiMovie、iDVDという動画処理ソフト、オリジナルDVD作成ソ
フトがあるが、それぞれ機能はシンプルだが、抜群の操作性が評判になってい
る。(申し訳ないが私は動画系には全く無知なので、その辺は専門家にお任せ
します… )
●「iPhoto」~初代は今ひとつだった
初代iPhotoは何度か試してみて、使いにくいところが多すぎ、使用をあきらめ
ていた。周りの評判を聞いても同様だった。まず、動作が遅い。数百キロバイ
トの、Webで拾ってこられるような画像ですら、サムネイルの大きさを変える
だけでも動作に引っかかりがあった。OS10.1環境による相対的な遅さもあるだ
ろうが、「iPhotoが重たい」というのは、当時、誰に聞いても、返ってくる反
応だった。
その他、画像ビューアとしても、取り込み場所の変更が出来なかったり、キー
ワードの追加機能がいまいちあか抜けなかったりと、たまりにたまった画像を
安心して預けられるほどには、あまり魅力的ではなかった。おまけに、画像の
フォルダを読み込むと、iPhotoはそのフォルダを丸ごと自分のライブラリにコ
ピーするので、単純にハードディスク内で画像の容量が二倍になるという、勿
体ない仕様だった。これでは数千枚、数万枚なんてとても駄目だろうと思った
ものだ。
●今回は、これぞ「iアプリ」という出来栄え
さて、iPhoto2である。実は初代からの変更箇所は数としては余りないのだが、
使い勝手はまさに豹変と呼べるほど、改善されている。「これって、こんなに
使いやすかったっけ?」と正直驚いた。
インストールした機械はPowerBookG4 550Mhz、ちょうど一年前のモデルである。
試しに1MB程度のJpeg画像が、500枚程度入ったフォルダを、マニュアルも何も
見ずに、いきなり読み込ませてみた。すると専用ライブラリに画像を、全て複
製して保存するところなどは、全く変わっていない。
しかし、整理作業を始めると、反応速度が軽快である。サムネイルを大きくし
たり、小さくしたりも、ひっかかりなく、普通に出来る。この速さなら、簡易
ビューアとして実用的な速度だ。とりあえず、あまりに面倒くさいので放って
おいた縦位置撮影で横になっている画像を、90度回転して起こす作業から始め
た。一枚一枚開いて、回転して保存というのが、特に重要でない画像の場合億
劫で、放置してしまっているのだ。この作業が「おおっ、快適だ!」である。
SHIFTキーかCOMMANDキーで複数の画像を選択、一括して縦起こしが可能である。
しかも速い。一括縦起こしがこれほど楽で速いソフトはないのではないか。
(その速さには理由があるのだが)調子に乗って、さくさく全画像の向きを調
整する。
●これは「優れたデータベースソフト」である。
次は画像を整理する作業。各画像は、読み込み時に、時間軸で後から後から、
「ピクチャ」フォルダ内のiPhotoライブラリにコピーされていく。デジカメ画
像やWebの画像だから、たいてい画像名はP101324553といった記号で、同じ名
前が重複する場合すらある。
この名称そのままでは扱いにくいので、従来のスタイルでは、この画像群にそ
れぞれ「サムネイル」という小さな画像と名前を付けて、フォルダなどで分類、
取り出しやすいように整理していくわけだが、この命名のノウハウで皆、大変
な苦労をしてきた。ファイル・リネーマーを使い、撮影・保存の都度、一括し
てきちんと名前を変更してゆくなど、ある種の方針を定めておかないと、画像
の増え方が速い場合、あっという間に大混乱に陥ってしまう。
iPhoto2に読み込まれた状態では、画像は読み込んだフォルダごとに「フィル
ムロール」という目印が付けられる他は、一つのバケツに放り込んだように、
全てのサムネイルがずらりと並ぶだけである。
だがここからの、分類・整理作業がまさにiPhoto2の白眉なのだ。
「キー・ワード」と呼ばれる機能で、各画像に単語を割り当てていく。まず自
分でキー・ワードを作成、その後該当画像を選択して、「割り当て」ボタンを
押していく。各画像に複数のキーを割り当てられる。キー・ワードさえ割り当
てておけば、画像名を表示させなくても大丈夫である。
画像検索時にはキー・ワード、あるいは検索窓にキー・ワードの一部を打ち込
むと、該当画像はスルスルと出てくる。たとえば"2002""London""Night"など
と複数のキーを付けておけば、その選択分だけが画面に現れる。
このスタイルだと、もはや画像に名前はいらない。キー・ワードを打ち込むだ
けだ。この解決法は皆、うすうすわかってはいたが、実際にばりばり使える手
段として現実化すると、その便利さに唖然とする。これは実に良くできたデー
タベースの操作感である。自分が打ち込んだキー・ワードに従って、一つの大
きな写真群が、選択されたリストとして、自在にかたちを変えて浮かび上がっ
てくる様は興奮ものだ。夢中でキーを打ち込み、データを作り上げてしまった。
●Photoshopと連携して使える
このキー・ワードで整理する仕組み自体は、前のバージョンから存在したが、
今回は細かい部分でリファインされていて、使い心地は全くの別物といってい
い。では楽に画像を取り込み、分類整理が可能だからといって、本格的に画像
管理専用データベースとして、ハードディスク内の画像を全部、預けていいも
のだろうか。答えは今まさに検証中だが、手応えはかなりある。
新しく、画像の加工機能が追加されているが、それだけでなく、Photoshop等
の、外部アプリケーションを指定出来ることがありがたい。.psdデータも画像
データとして読み込めるし、レイヤーも保持されているので、Photoshopや
Graphic Converterなどの画像加工ソフトと、シームレスに、iPhotoをファイ
ルブラウザ代わりとして連携可能になっている。
それならといろんな種類のファイルを読ませてみたら、aiやepsは駄目、pdfは
前バージョンではOKだったものの、このiPhoto2では駄目なようである。gif、
jpeg、psdなら自在に扱える。これはかなり使えるかもしれない。
現在1950枚、うち一枚平均15MBのpsdデータを50枚程度読み込ませてみたが、
操作は特に重くなった様子はない。どの程度までハンドリング出来るのかはテ
スト中だが、10000枚程度が楽にこなせるなら、どんなにいいだろう。(結果
は続報します)あとは安定性が良く、共有可能で、メタデータが扱えれば完全
な業務用で使えてしまうだろうが、さすがにサーバ・クライアントな共有は出
来ない。安定性も、しばらく試してみないとわからない。
メタ・データ、各画像に付随するExifなどのデータが利用できるかどうか、こ
れにはかなりの期待が持てる。iPhoto2はファイル名、ファイルのパスといっ
た画像に付随する情報を、XMLで記述している。これは収容画像1950枚でだい
たい1MB程度のテキストファイルで、開くとiPhotoのライブラリの内容が整然
と記述されている。XMLで記述されていることで、他のアプリケーションに情
報を引き渡すことは簡単だし、取り込みに関しても道が開けるかも知れない。
ハイエンドデジカメをつなげば、表示はされないものの、全てのメタ・データ
を保持してくれるのかもしれない(これは今度確認します)。とにかく、今後
の展開に非常に期待が持てる仕様になっているのだ。
●ハードディスクを湯水のように消費する
細かい欠点はやはりある。いきなりキー・ワードを30くらい作ってみたが、こ
のキー・ワードのソートが出来ない。まだまだ拡張したいので、これでは物足
りない。その他いろいろあるが、一番の問題は「とにかくハードディスクを食
いまくる」という点だ。
iPhoto2は画像を加工する際に、キャッシュとかバッファとかでなく、単純に
コピーして対応している。画像を縦に起こして保存するスピードが速いと書い
たが、実は縦にされた画像は、その時点で新たに生成された画像であって、オ
リジナル画像も全てライブラリに残されているのである。つまり縦画像を作っ
たぶんだけ、またハードディスク容量を食っているわけだ。
それだけでなく、トリミングや補正した画像も同様である。iPhotoのメニュー
に「オリジナルに戻す」というものがあって、これを選択すると加工した画像
をいつでも、取り込んだときの状態に戻すことが出来る。これは、オリジナル
画像を常に、別ファイルとして保持しているためである。
これは一見贅沢で無駄な仕様ではあるが、iPhotoからiPhoto2に全く変更なく
引き継がれていることを考えると、実は大変頭のいい解決策なのでは、と思う
ようになった。要はふんだんにハードディスクの容量があればいいのである。
完全な物量作戦だが、これは考え方かも知れない。ハードディスクほど安定し
て容量・スピードが上がる一方、値段が下がり続けている記憶媒体はないから
だ。以前はこんなことは思いつきもしなかったものだが、この割り切り方は、
何か考えさせるものがある。
その他まだ根元的なところで何かあるかも知れないが、とりあえずは、初めて
iTunesを使ったときのような興奮が続いている状態だ。何かあったらすぐにご
報告したい。
●「iFile」というのは出来ないだろうか
このiPhoto2のインターフェイスはとても期待させるものを持っている。思え
ば「iTunes」が生んだマジックは、単純極まりないエンコーダー/プレーヤー
と、本当に優れた操作性のデータベースの組み合わせがもたらしたものだった。
PDFファイルが使えないというのも、逆にこの先、なにかあるのかも知れない。
iFile、あるいはiBreifといった名称の文書管理ソフトも考えられる。このソ
フトの本来のライバルはファイルメーカーやSONYのPictureGearなのだろうが、
それだけに終わりそうにない、迫力が感じられる。もしかして、MacOS Xのフ
ァインダの操作感の悪さを、iアプリがフォローするようになっているのだろ
うか。
とりあえず、百聞は一見にしかず、是非一度触ってみてください。触るのがと
ても楽しいんですよ。
【8月サンタ】ロンドンとル・カレを愛する34歳 santa@londontown.to
・12インチのPowerBook。私は全然魅力を感じない。メモリがより高価なもの
であることを考えれば、差額は相当なものだし(約8万円?)、12インチPBを
買って得られるスピードと軽さより、iBook買って、差額で環境整えるか、デ
ジカメでも買って旅行に行った方が、よほど豊かな生活が出来ると思うなあ。
・今週の一曲は… やっぱりフィル・スペクター、かなあ… ロネッツの
"Be my baby"、歴史的名曲です。
・ロンドン好きのファンサイト
http://www.londontown.to/
・投稿ロンドン写真館に写真よろしく~
http://www.londontown.to/cgi-local/upppu/upppu.cgi
・デジクリサイトの「デジクリ・スターバックス友の会」
http://www.dgcr.com/
▼「MacWIRE Express」。iBook2台目買っちゃいました。
http://www.zdnet.co.jp/macwire/0301/07/nj00_digicre.html
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■笑わない魚 55
ヘタであること
~絵がヘタだ、と劣等感に悩んでいるアーティストに希望を
永吉克之
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「変な音楽だから聴いてみ」と薦められて CAPTAIN BEEFHEARTというミュージ
シャンの"TROUT MASK REPLICA"(1969)というCDを聴いていたら、今回のよう
な文章が書きたくなった。
■
様々な形式のアートの中でも、美術ほど「ヘタ」であることに寛容なアートは
ない。違う言い方をすると、美術ほど「上手い」という褒め言葉が重みをもた
ないアートはない。
ここでいう「上手い」とは、物的対象の外観を正確に描出する能力、例えば、
人間を、人間らしいプロポーション(頭部、胴部、四肢の長さ太さの比率)で、
描く能力。骨や筋肉の付き方などを、解剖学的に妥当な精確さをもって描出す
る能力。
あるいは、物体、例えば絹のもつ軽さ、柔らかさ、ツヤなどを描出する能力。
要するにデッサン力である。
■
「ヘタだが、いい作品」
この言葉は、美術のためにあるようなものだ。
もちろん、これは作風やジャンルにもよるのであって、実写としか思えないよ
うな、リアルな3D美少女キャラを作ろうという人のモデリングした美少女が、
ビキニを着た短足の鉄人28号のようになっては困る。こういう作品を目指す人
は「上手く」なくてはならない。そんな作品が作りたいのなら、指から血が出
るまで、デッサンの訓練を積んでいただきたい。
しかし「上手い」というのは、美術において本質的なことではない。ヘタなら
他の要素でカバーすればいいのである。勉強が苦手なら体育でカバーする。議
論に弱く、すぐ言い負かされてしまうなら、暴力でカバーする。女にモテなか
ったらホモになる。背が低いなら体重を増やす。それと同じことだ。
「ヘタ」でありながらも、歴史に名を残した美術家はワンサといる。例えば、
フランスの画家アンリ・ルソーだが、彼の描く人物は、一見してヘタなのが分
る。どう見ても私の方が上手い。しかし、森やジャングルを描く時、木の枝を
小枝にいたるまで一本一本、木の葉を一枚一枚丹念に描き込んでいくという、
馬鹿正直画法で独特のイメージを創造し、デッサン力不足をカバーしたのだ。
かのゴッホも、自画像をいっぱい描いているくせに、人物画を見るとヘタなの
が分る。しかし独特のフォルムと色彩と筆のタッチを見ていると、デッサン力
の有無など、瑣末なことのように思えてくるのだ。
■
知的障害者、人格障害者が作った作品は大半が「ヘタ」で作家も無名である。
しかし時として、その中にとんでもない発想を見い出すことがある。また彼ら
の作品を集めた展覧会や画集すらある。こういうことは、私の知る限り、美術
の世界でしか、お目にかかれない。
日本で、知的障害を背負った画家といえば、故山下清氏が思い浮かぶ。そして、
NHK でも紹介された岩下哲士氏がいるが、やはり二人とも、いわゆる「上手い
絵」は描けない。しかし、それを独創性でカバーしているのである。
また、障害者ではないが、丸木スマ氏は、74歳のときに初めて絵筆をとったと
いう超遅咲きの画家である。当然、上手くはないが「母猫」は感動的だ。
山下清放浪博物館 / http://www.dcn.ne.jp/~sky/yamasita/
岩下哲士氏のサイト / http://www.nhk-p.co.jp/tetsu/
丸木スマ展 / http://www.aya.or.jp/~marukimsn/kikaku/2001/suma.htm
『美術手帖』の今月号には、このような、いわゆる「アウトサイダー・アート」
の特集が載っている。技巧をハリ倒して突進する恐るべき感性が、今年のトレ
ンドになって・・・しまったらその本来の価値を失うだろう。
■
彼らの作品を見ていると、「上手く」描くことが悪徳のような気がしてくる。
ちょっとでも上手く描こうものなら「ひとでなし」といわれそうで不安だ。
実際、故岡本太郎氏の信条で「今日の芸術は上手くあってはならない。きれい
であってならない。心地よくあってはならない」というのがある。
上手くなくてもいいどころの騒ぎではない。上手くあってはいけないのである。
先生「あ、こら! ちょっと目を離すとこれだ。何度いったら分るんだ」
生徒「・・・すいません・・・」
先生「まったく、こんな上手に描いて、一体どういうつもりだ。この学校に不
満でもあるのか」
生徒「そうじゃなくて、子供の頃から写生の訓練を積んできたんで、どうして
も上手に描いてしまうんです・・・」
先生「それにしても、ひどすぎる。お前の描いているレモンは、質感まで的確
に表現してあり、手にとってかぶりつきたくなるような瑞々しさに充ち
ているじゃないか。しかも輝くばかりの美しい色彩。なんとかしろ!」
生徒「僕には、もう分りません! どうすればいいのでしょうか?」
先生「仕方ないな。じゃ、そのレモンを四角くして、真っ黒に塗れ」
生徒「え! そんなことしたら、レモンに見えません」
先生「レモンがレモンに見えなければならないなんて、誰が決めたんだ。その
法案は衆議院を通過したのか。え?」
生徒「では、このクチナシの花を描いた部分はどうですか?」
先生「話にならん。クチナシの甘い香りが漂ってきて、遠い昔のロマンスを呼
び起こすかのような趣があるじゃないか。その部分はガスバーナーで焼
いてしまえ」
生徒「先生、絵が全部燃えてしまいました! どうしましょう」
先生「知らん」
こんな学校はない。
■
絵の場合、デッサン力というのはひとつの才能で、その才能がなければ、どん
なに努力しても、ある程度以上には上手くならない。だから、その才能に敬意
を表しても、神の怒りには触れないだろう。
しかし芸術家が、作品の「上手さ」を見せるつけるのが目的で発表するとすれ
ば、それは曲芸を見せるのと同じで、「どうだ、俺はこんな凄いことができる
んだぜ。驚いたかい娘さん」と自慢するようなものだ。そして、それを観る方
も「すごい。あんなこと、私できないわ~」とワープロ検定一級の人のタイピ
ングの速さに見愡れるような目で見ることになるだろう。独創性やら芸術性と
いったものは、そこにはない。
■
そこで、常日頃、問題意識を持って人生を歩んでいる人なら、同じことが音楽
にもいえるのだろうかという疑問が湧いてくるはずである。つまり、
「ヘタだが、いい演奏」
というのが可能かどうかということである。私がライブで音楽を聴くといえば、
厚生年金会館や大阪フェスティバルホール、なんばグランド花月といった大ホ
ールに出るような一流ミュージシャンばかりなので、ヘタなライブ演奏という
のを聴いたことがない。
ぜひ聴いてみたかったのだが、まさか、大阪中のライブハウスに問い合わせて
「今夜出演のバンドはヘタですか?」と聞くわけにもいかないし、仮に聞けた
としても、先方も商売だから「今夜のバンドはひどいワ、聞いてられまへんで」
なんて正直には言うまい。
ましてや、スタジオ録音でCDになって発売されているヘタな演奏なんてあるも
んかと思っていたら、あった。それが冒頭で紹介した CAPTAIN BEEFHEART だ。
今改めて聴きながらこれを書いている。聞くところによると、ド素人を短期間
で特訓して作ったバンドらしいのだが、なるほど演奏は各パートばらばらで、
中途半端なところで、演奏を放棄したかのような終わり方をする。リード・ギ
ターも耳障りだ。多分、ヘタに見せているのではなく、本当にヘタなのだろう。
ローリング・ストーンズが、わざとチューニングを狂わせたギターを使ってい
たという話を聞いたことがあるが、そんな生易しいものではない。このCDには、
どういうつもりか、そんな曲が28曲も収めてあるが、実は私は、まだ全曲聴い
ていない。この記事を書くにあたって、なんとか全曲聴こうと思ったが、18曲
目で忍耐の限界が来て、ヘッドホンを床に叩き付けてしまった。
しかし1969年に発表されたこのレコードがCD化されて、今でも聴けるというこ
とは、ファンがいるということで「ヘタだが、いい演奏」なのだろう。きっと。
【永吉克之/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
かつて『GORO』という男性雑誌があった。それに『青春の尻尾』という、諸葛
孔明を主人公にしたマンガ連載されていた。といっても歴史物ではなく、仙人
や妖怪や神様が出没する、不思議な物語だった。その漫画は単行本になったが、
今でも読めるのだろうか? ご存じの方は教えてくださらんかのう。
EPIGONE / http://www2u.biglobe.ne.jp/~work/
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■編集後記(2/6)
・宝島社新書「水で血液サラサラ」を読む。ブックオフで200円で買った本だ。
いきなり、ドロドロ血液になると全身に障害が! というショックな見出し。
ドロドロ血液ってなんだ? それは定義されていない。水をたっぷり飲んでサ
ラサラ血液に、という。サラサラ血液ってなんだ? それは定義されていない。
って、かなりいいかげんじゃないのかなあ。とにかく、血液のためにいい水を
飲みましょう、という。いい水とは常温の真水(水道水)が基本。自然の湧き
水、ミネラルウォーターもおすすめ。1日2リットル、これで血液がサラサラに
保てること間違いなしなのだ。という話をいろんな人が言っている本。あっと
いうまに読み終える。水飲んで健康ならけっこうなことでさっそく開始。寝る
前にコップ1杯ってききますよ~。夜中にトイレに行くことになる。 (柴田)
・浦東空港と市内を結ぶ道路の横を、リニアモーターカーのレールが走ってい
る。実際に走るところを見てみたかった。日本も昔から開発していたはずなの
に、いまだ実用化には至っていない。こういうところでも中国のパワーを感じ
てしまう。宿泊したホテルは4つ星。規模が大きく豪華。ホテルとしてはまぁ
まぁな感じ。この豪華さとは裏腹に、壁に埋め込まれている電気配線パネルの
カバーとくり抜いた壁の間には、左上、左下、右下に三角の隙間。水平という
概念はないのかと思うくらいナナメについている。日本なら作り直しになるよ
うな造り。なんてアバウトな中国人。Mさんは部屋に入るなり「まだ荷物広げ
ないで」と言い放ち、お湯が出るかどうか確かめていた。出なければ部屋を変
えてもらう必要があるからって。さすが旅慣れている。 (hammer.mule)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030122-00000002-wir-sci リニア
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