[1317] カタカナ言葉はヨイか

投稿:  著者:


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1317    2003/05/29.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 21125部
情報提供・投稿・広告の御相談はこちらまで mailto:info@dgcr.com
登録・解除・変更・FAQはこちら http://www.dgcr.com/regist/index.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

      <小学校から行き直しやがれ、こんちくしょう>

■笑わない魚 70
 カタカナ言葉はヨイか
 永吉克之

■Powerbook Publishing Project~(53)
 ファイルメーカー逆引き事典のご紹介(だけ…)
 8月サンタ



■笑わない魚 70
カタカナ言葉はヨイか

永吉克之
───────────────────────────────────
日本のデザイナーは宇宙一偉大だと思う。なにしろ漢字、ひらがな、カタカナ、
数字、アルファベットなどが混在しているうえに、タテ組ヨコ組のある文を扱
うのだから、それをバランスよくレイアウトする超高度な美技は神の域に達し
ているといっても過言ではあるまい。そんな神業を前にして、アルファベット
と数字しか使わない欧米のデザイナー連中は、ただひれ伏すしかない。日本の
デザイナーが松坂牛のステーキなら、欧米のデザイナーは素うどんだ。日本の
デザイナーが徳川家なら、欧米のデザイナーは中川家だ。

そんなことはどうでもいい。今回問題にしたいのはカタカナ語、なかでも外国
語である。私は外国文化排斥論者ではないが、外国語の無意味な使用、誤った
使用は根絶しないと、日本人の民度の低下にいっそう拍車をかけることになる。

                 ■

最近テレビなどで、よく耳にするのが「ベター」の誤用である。「最もベター
な方法」なんて悪びれもせずに言っている。「ベター」とは「~と比較すると
よい」という意味だから「最もベター」を言い換えると「最も比較的よい」と
いう形容矛盾を犯していることが解る。なら「ベストな方法」でええやんけと、
テレビを観ながらいつもツッこんでいるのだが、一向に反省する様子がない。

またこの「ベスト」だが、これも変種が出回っていて、「こっちの方がもっと
ベストですね」とか「体調はある程度ベストです」なんてのがある。ベストと
いうのは「最高」ということだから、ひとつしかないわけで、「ルイヴィトン
は最高だが、シャネルに比べると最高ではない」とか「ちょっぴり最高」なん
ていう状態は存在不可能だ。

これらは「ほぼ永吉」「70%本人」「比較的一位」「かなり横綱」というのと
同じくらい変な表現なのである。小学校から行き直しやがれ、こんちくしょう。

そのうち、こういう傾向がエスカレートして「宇多田ヒカルは浜崎あゆみより、
もっとベターだけど、あゆみも最高にベストだな。それと北島三郎もベストだ
けど、あゆみほどベターじゃないね。氷川きよし? せいぜい10番目にベスト
ってところじゃない」などと平気でいう人類が出現しそう、というか、もうす
でにいるような気がする。

これら変な英語はきっと、誰か不見識な人がいい始めたのを、同じく不見識な
人たちが聞いて「お、かっこいいじゃん」とマネしたのが広がったのだろうが、
公共の電波を使って不見識の連鎖を広げるのはやめていただきたい。個人的な
場では、どんなむちゃくちゃで支離滅裂、犯罪的な暴言を放ってもかまわない
が、テレビはよい子のみんなも観ているのだ。子供にウソ教えたらあかんがな。

                 ■

仮に使い方は正しくても、横文字を乱発するのはいやらしい。テレ朝の『朝ま
で生テレビ』では、ポテンシャル(潜在能力)、ヘゲモニー(主導権、覇権)、
インセンティブ(誘因)といった外国語を、適当な日本語があるにもかかわら
ず、わざわざ使う売国的パネラーがたいてい何人かいるので、いつも立腹しな
がら観ている。

5/24の放送でも「イラク攻撃のほんとうの目的はレジーム・チェンジだ」なん
てほざいたパネラーがいた。これが専門用語で、こう表現するしかないのなら
赦してやるが、ちゃんと「政権交代」とか「新政権を作る」など、誰でも解る
日本語があるというのに "regime change"なんて英語を使うのは、パネラー同
士が解りあっていればいいのさ、という気持ちの表れだ。視聴者である国民を
軽視する文化人には天誅を加えねばならない。

                 ■

しかし国語というものは、意識して守ろうとしない限り、より拡大力の強い外
国語に侵蝕されてしまう。例えば「エスカレート」だが、「他愛もない夫婦間
のいざこざがエスカレートして離婚調停に至った」という場合、この言葉に代
わるピッタリの日本語があるだろうか。「発展して」「高じて」というのもあ
るが「エスカレートして」の方が、いかにも夫婦関係が悪化したような響きが
ないだろうか。

 仲のいい新婚夫婦だったが、あるとき夫が妻の手作りの夕食をひと皿残した。

「食べないの? 残すなんて初めてね。おいしくなかった?」
「いやそうじゃなくて、実は夕方、喫茶店で仕事の打合せをしていて、なんと
 なく隣のテーブルを見ると、うまそうにカレー食べてる客がいるんだよ。で、
 ぼくも腹ペコだったんで、ついカレーの大盛りを食べちゃったから腹がへっ
 てなかったんだ。でも、君の料理も頑張って、これだけ食べたじゃないか」
「・・・無理に食べてくれなくてもいいのよ・・・」

 結局、気まずい沈黙に支配されたまま一日が終わり、ふたりはベッドに入っ
 たが、気まずさが尾を引いて、毎日していたこともできずに眠りに落ちた。

 翌日、夫がいつもの時間に帰宅すると、食卓には生のカボチャがひとつ置い
 てあるだけだった。

「なにこれ? このカボチャ。食事はできてないの?」
「どうせまた食べてきたんでしょ。まだ何か食べたいなら、そのカボチャでも
 食べといてよ」
「生のカボチャなんか食えるか! ・・・わかったわかった。きのうのこと、
 まだ怒ってんだな。執念深いやつだなあ。じゃ明日は昼食を抜いて、晩飯を
 バケツ一杯喰ってやるよお」

 翌日、夫が帰宅すると、食卓には掃除用のバケツが置いてあり、カレーが溢 
 れんばかりに溜めてあって、表面張力でやっと均衡を保っていた。

「おれはウマか! それとも給食当番か! もう頭にきた」

 夫はバケツを掴むと、ソファに寝ころがってテレビを見ていた妻にカレーを
 ぶっかけた。妻は熱さで「ぎゃー」と叫びながらも、カレーまみれの体で夫
 に突進しようとしたが、カレーのぬかるみで足を滑らせて転倒し、床に頭を
 打ちつけて、泡を吹いて失神した。

 翌日、両家の家族を交えて話し合い、離婚調停に持ちこむことになった。

…と、こんな経緯が「エスカレートして」という表現に凝縮されているのを、
読者は感じとることができるにちがいない。

                 ■

同様に、「走者がスタートする」「ペースを上げる」「ブームが去る」「イメ
ージを掴む」「ニュアンスが伝わる」なども、外国語で言う方が、よくニュア
ンスが伝わる。陸上のトラック競技の実況アナウンサーが「走者一斉に走り出
しました!」なんて、力が抜けますな。

このように、外国語は日本語を浸蝕し続けるのである。

【ながよしかつゆき/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
私が「お金が入る」仕事をしているのは、週に二日間だけである。後の五日間
は「お金が入るかどうかわからない」もしくは「全然お金が入らない」仕事に
費やしている。これは、制作のために仕事を週二に抑えているのではなく、単
に仕事がないだけである。この記事を読んでおられる大学関係の方々、教授の
口はないものだろうか。便所掃除でも、窓拭きでもやるから、私を教授に推挙
していただきたいのだ。どうしてもムリなら名誉教授でもかまわない。
EPIGONE / http://www2u.biglobe.ne.jp/~work/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■Powerbook Publishing Project~(53)
ファイルメーカー逆引き事典のご紹介(だけ…)

8月サンタ
───────────────────────────────────

●ファイルメーカー関連の新刊のご紹介

とにかく、シンプルに「いい本」なので、茂田さんの本をご紹介するのはいつ
も大変楽しい。今週は、一昨日店頭に並んだという、出来たてほやほや、書き
下ろしの新刊をご紹介する。今回ももちろん「アタリ」である。

 「やりたいことからすぐ引ける・ファイルメーカー逆引き事典」
 茂田カツノリ著 ラトルズ刊
 本体2,500円/ISBN4-89977-050-2
 四六版/384ページ/2色刷
 http://www.rutles.net/top/books/050.htm

●全編プラクティカルなガイドブック

ファイルメーカーの本にハズレなし、と以前に書いた。もともとファイルメー
カーというソフトが、使い方次第でまだまだ面白いことが出来そうな、途方も
ない可能性を持っていて、アイディア一つ一つが現金のようなものだから、ど
の本も「買って損した」というようなものはない。結局後で参考(文字通りの
参考)にして、モトを取ることは出来る。Photoshopの本に比べれば、よほど
費用対効果はいい。

ただし、本の密度、出来栄えはまた別の話。その多々ある解説本の中でも、茂
田さんの本は他のガイド本とは、他の方には悪いが、全く違うレベルの出来な
のだ。

まず茂田さん自身がデータベースというもののあり方に明快な指針を持ってい
て、またファイルメーカーというソフトの機能ひとつひとつを理解し、その上
で優秀な編集力をもって本を構成している。目的が良くて内容が良くて編集が
良い、これなら駄本が出来ようがない。事実、茂田さんの本は全て「手に馴染
む」のだ。

ガイドブックというのはみな、こういうものでなければならないと思うが、な
かなかそういう具合には行かないものである。褒め過ぎか? いや、これは是
非店頭で手にとって、確認してみて欲しい。最近の普通の本屋は、店頭在庫が
当てにならないので、ビックカメラなんかのパソコン書籍コーナーなどの方が
すぐに見つけられるかも知れない。

●買って損はなし、が…

書店でなく、通販で入手しようとされる方のために、概要をご紹介したい。

「ファイルメーカー逆引き事典」は、B6サイズの、小さくて厚い本である。
『1-1 入力を取り消したい』から、『10-10 バックアップを自動化したい』ま
で、ファイルメーカーというデータベースソフトの基本操作の解説、小技など
のTips、途中には『効率よくデータベースを設計したい』などの、考え方に関
するもの、バーコードと組み合わせた活用法などの具体的な事例まで、全10章、
185項目の「目的に対する回答」が逐一記述されている。

もちろんこれは便利である。現実の業務で日々悩むユーザーであれば、「ああ、
これはこうやれば良かったのか!」とすぐに役立つので即買いである。ただし、
この本が提供してくれるのはあくまで「こういう問題には、この解決法が定番」
という「セオリー」である。それこそ初心者がのどから手が出るほど欲しいも
のではあるが、本当にヘビーなユーザーになりたいのなら、同じラトルズから
出ている『ファイルメーカー関数・スクリプト事典』を横に並べての使用をお
すすめしたい。

同じ茂田さんの手がけた『関数・スクリプト事典』の方には、関数とスクリプ
トと、その意味しか載っていないが、本当に手放せなくなるのはこちらの方で
ある。『関数・スクリプト事典』は『逆引き事典』のセオリーに対する、法典、
ルール・ブックだ。

茂田さんご本人が今回の『逆引き事典』に関して「ちょっと不満が残ってます
ね」とおっしゃっていたのは、逆引き事典が他の本を補完はするけれど、単体
で手放せなくなるような奥行きの深さは、あまりないからだと思う。そういう
意味では、判型はもっと平べったいものでも良かったかも知れない。勝手なこ
といってますが…

●というわけでプレゼント!

茂田さん、出版社さん、その他諸々の方々のご好意で(ありがとうございます)
この本をデジクリ読者3名の方に、プレゼント出来ることになりました。
ご応募は下記のURLより。発送をもって発表に代えます。応募締切は、6月12日
14時。
http://www.dgcr.com/present/p_fmpro.html

次週こそは、デジクリ仮想編集部、また復活の巻と言っておこう…

【8月サンタ】LondonとLyallとLeCarreを愛する34歳 santa@londontown.to
・完全パンク第三週目。平身低頭の日々。そんな中にもお仕事をいただけて、
大変申し訳なく思っています。昨年出来なかった仕事で、今年は出来る、とい
うものもあるし、頼ってもらえるうちが幸せですね…。 というわけでかなり
面白い案件と格闘中。
・久々に日本漫遊 http://www.e-japannavi.com/ の石(セキ)さんに会う。
SARS騒ぎで北京に帰れなくなったので、逆にお会いするチャンスも増えたのだ
が、全くめげてないのに感心した。今中国でシェパードの番犬が一頭75万円で
予約待ちだとか、訳のわからない凄い話を一杯聞いた。その辺はまた本誌で。
・今週の一曲。とうとうiBookのハードディスクが一杯になって、仕事に必要
なiPhotoライブラリの画像の方を優先、iTunesライブラリを削除してしまった。
(これで8GBの空き…)ハードディスク買い換えるまでは会社に置いてあるCD
を引っ張り出して聴く日々である。Santanaの"Abraxas"より、"僕のリズムを
聴いてくれ"。しかしこのジャケットは今見ると結構エロい。

・ロンドン好きのファンサイト
http://www.londontown.to/

・投稿ロンドン写真館に写真よろしく~
http://www.londontown.to/cgi-local/upppu/upppu.cgi

・デジクリサイトの「デジクリ・スターバックス友の会」
http://www.dgcr.com/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■編集後記(5/29)
・藤原新也写真集「花音女」を見る。被写体は、深いまなざしを持つ12人の少
女(と呼べぬ人もいる)。「深いまなざし」とは藤原新也や編集者たちが標榜
するもので、わたしにはそう深いとも力強いとも思えないのだが。そんな普段
の(普段がこれかよ、というのも)彼女らをわりと無造作に撮っている(よう
にみえる)。かわいいアイドル写真だったら楽しいのだが、あいにくとこれは
ノンフィクション、ドキュメンタリー写真で、全然楽しくなんかないのだ。見
ていて元気が湧いてくる? そんなことはない。少女写真だけでなく、風景や
植物、動物なども写されている。こっちがさすがにさすがに藤原調。濃密な植
物相や、水平を排して斜めに切り取られた建物や風景。ちょっと不安な雰囲気
だ。そして、長いあとがき。それを読むと、なぜいま少女写真なのか、なんと
なくわかるような気もする。じつは、他人に借りて眺めたのだ。いまどき2500
円の写真集などなかなか買えるものじゃない。この写真集を自分のものにした
いかというと、別に欲しくないのであった。           (柴田)

・明日のセミナー。これ書いている時点で残席1。会場の関係でこれ以上は席
を用意することが難しい。告知協力してくださった皆様ありがとうございます。
当日キャンセルがでませんように。講師もいま練ってくれてはります。/セグ
ウェイに乗った。おとといは事務所のお引っ越しだったのだが、その引っ越し
先であるMebic扇町で神田さんが試乗会をしていたのだ。東京都知事にも指導
した神田さんの説明はさすが。「鼻をひっぱられているような感じで」といい
ながら、離れたところでマジシャンのような手つきで鼻をひっぱる仕草をする。
と、何故か前に進む。「次は押されている感じで」と押す仕草。後退する。超
能力者のようだ。うまく操られ、乗れるようになった。少しの体重移動で動け
るのは面白かった。/野々下さんとの再会も! わーい。  (hammer.mule)
http://www.1stsegway.jp/  セグウェイ
http://www.impress.tv/im/article/knn.htm  乗り方
http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/B00007EPJ6/ 購入可。ムービーも
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200305220900000000000122000
↑野々下さんの最新コラム。あっ! KIPでセミナー告知してくれてない~!

<応募受付中のプレゼント>
 PHOTOSHOP 7.0の仕事術 1309号。
 やりたいことからすぐ引ける・ファイルメーカー逆引き事典 本日号。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
発行   デジタルクリエイターズ <http://www.dgcr.com/ >

編集長     柴田忠男 <mailto:tdo@green.ocn.ne.jp >
デスク     濱村和恵 <mailto:zacke@days-i.com >
アソシエーツ  神田敏晶 <mailto:kanda@knn.com >
アシスト    島田敬子 <mailto:keiko@days-i.com >
リニューアル  8月サンタ <mailto:santa@londontown.to >

情報提供・投稿・プレスリリース・記事・コラムはこちらまで
                        <mailto:info@dgcr.com >
登録・解除・変更・FAQはこちら <http://www.dgcr.com/regist/index.html >
広告の御相談はこちらまで   <mailto:info@dgcr.com >

★等幅フォントでご覧ください。
★【日刊デジタルクリエイターズ】は無料です。
お友達にも是非お奨め下さい (^_^)/
★日刊デジクリは、まぐまぐ<http://mag2.com/ >、
E-Magazine<http://emaga.com/ >、カプライト<http://kapu.biglobe.ne.jp/ >、
Pubzine<http://www.pubzine.com/ >、Macky!<http://macky.nifty.com/ >、
melma!<http://www.melma.com/ >、めろんぱん<http://www.melonpan.net/ >、
MAGBee<http://magbee.ad-j.com/ >、posbee<http://www.posbee.com/ >、の
システムを利用して配信しています。

★携帯電話対応メルマガもあります。<http://dgcr.com/i/ >
★姉妹誌「写真を楽しむ生活」もよろしく! <http://dgcr.com/photo/ >

Copyright(C), 1998-2003 デジタルクリエイターズ
許可なく転載することを禁じます。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■