[1394] 「誤解も六階もあるか!」という言い回しは陳腐か

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1394    2003/10/02.Thu発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 20149部
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           <学校の教室は誤解の宝庫>     

■笑わない魚 86
 「誤解も六階もあるか!」という言い回しは陳腐か
 永吉克之

■Powerbook Publishing Project ~ (63)
 京都で暮らそう・前編
 8月サンタ

■ライフスライス研究所
 オリジナルデジカメ開発奮闘記(2003年10月2日木曜日)
 第31回「昨日の空の色を覚えていますか?」
 ユビキタスマン





■笑わない魚 86
「誤解も六階もあるか!」という言い回しは陳腐か

永吉克之
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「誤解されたっていいじゃないか、人間だもの」(永吉克之)

先日、千葉市立美術館で「相田みつを展」を観た。相田氏の詩は、その独特の
書の筆致と不可分なので、テキストではその感動が伝わらないから、原本を見
たいと思っていたのである。

上の格言は「つまづいたっていいじゃないか、人間だもの」という氏の詩を、
盗用したものである。恥知らずとでも何とでも申されよ。

                 ■

そんなことはどうでもいいのだが、諦観の境地に達したのか、それとも単に鈍
麻したのか、最近、他人から誤解されることがあまり気にならなくなってきた。
あるいは、そんなことを気にするのに疲れたのかもしれない。

「あーもう、好きなように思ってちょうだい。極道、変質者、陰獣、通り魔、
男妾、詐欺師、守銭奴、売国奴、農奴、半魚人。どないなっといいなはれ!」

こんな風に思うようになったのは、専門学校の講師という仕事を始めてからの
ような気がする。卒業も間近になって生徒たちとカラオケで歌うくらい親しく
なったころ、ある女子生徒から「入学してからしばらくは、先生のこと敵だと
と思ってました」と言われて、ショックのあまり、なんとなく和歌山県に行っ
たのを憶えている。

授業中、彼女に後ろからいきなり抱きついたこともないし、金づちで殴ったり、
バッグから金を盗んだこともない。とにかく彼女を不快にするような言動に及
んだ記憶が私にはまったくなかったので、和歌山から戻ってから、なぜそう思
ったのか尋ねると「そんな印象だったから」という簡単明瞭な答が返ってきた。

幸い、このクラスは一年と一学期間にわたって担当して、接触も多かったので
誤解が解けたからよかったものの、一学期間しか担当しなかったクラスもたく
さんあり、私を屍体愛好者だと思いこんだまま卒業していった生徒も少なくな
いはずだ。

                 ■

学校の教室は誤解の宝庫である。特に新入生の授業が始まってからしばらくは、
生徒たちも、講師の態度や発言の端々から「こいつは若いから頼りにならない
だろう」「苗字が鈴木だから鈴木宗男の親戚に違いない」「この講師は目つき
が悪いから族だろう」「どこがどうというわけじゃないけど、あの人なんだか
変だわ。絶対ストーカーやってるわよ」などなど勝手な憶測を振り回している。

しかし、それがなかなか講師側に伝わってこないのが現状である。断固として
自分を主張できる生徒なら、

「僕は先生が、見下げはてた犬畜生だと思うんですが、実際はどうなんですか」

と問い質してくるだろうから、その場で誤解が解けるのだが、普通の生徒は、
こちらから執拗に尋ねない限り、なかなか忌憚のない意見は聞かせてくれない。
そもそも誤解しているかどうかもわからないのである。

日が経つにつれて偏見を改める生徒もいれば、最初の印象に固執する生徒もい
るだろうし、逆に、彫りの深い精悍な顔立ちで頼りになりそう、と期待してい
た講師の化けの皮が剥がれて、生徒を私物化し個人的目的で使役するヘビのよ
うな人物だということが明るみに出ることもある。

しかし、誤解をしやすいという点では、講師の側も同じで、スキンヘッドに蝶
の入墨、眉毛を剃り落して、手にはメリケンサックをはめ、声をあげながらチ
ェーンをぶん回しているだけで、この生徒は不心得者だと安易に決めつけてし
まうような傾向は改めなければならない。

                 ■

誤解されないでいるのは不可能だ。少しばかりそっけない態度をとられたから
といって「私は嫌われている」と思いこんだり、逆に、これは男に多いのだが、
異性にちょっと親切にされただけで「惚れられた」と確信してしまう人たちは
無尽蔵にいる。

ここでまた私生活を暴露するが、私は七年前から、母親と二人暮しをしている。
この事実だけで、誤解を大量生産するには充分である。

・老いた母親の年金で生活している寄生虫だ。

・独身なのは、乳離れできない MOTHER FUCKER だからだ。

・七年前に母親が難病に倒れ、その介護のために仕事も妻も子供も愛人も放り
 出して実家に戻って来た孝行息子だ。

・実は父親は痴呆を発症して、今、地下牢に幽閉されている。老い先短い父の
 遺産分与を有利にするために、息子が実家に押しかけてきて居座っている。

・母親は七年前にすでに死んでいるのだが、マザコンの息子(A.パーキンス)
 は、その死を認めることができず、ミイラ化した母親をイスに座らせて、あ
 たかも生きているように扱っている。そして自分が経営するモーテルに泊ま
 った美女(j.リー)の着替えを覗いて性的興奮を覚えると、自分の中に住む
 母親の人格がが目覚め、性欲の対象を排除するために、その女性を包丁で切
 り刻んでしまった。

といったところが典型的な誤解の形態である。実際の経緯は記事にしても面白
くないので書かない。一緒に暮らし始めたころは多少、外聞を気にして、こう
なった経緯をいちいち人に説明していたが、もう気にするのも疲れた。

                 ■

すこし芝居がかった言い方になるが、「あなたには失望したわ。この人だけは
違うと思ってたのに、ただの男だったのね」といったようなことを言われるこ
とがある。特にプライドの高い男が、こういうセリフを女に言われると辛い。

「オレをそこいらのケチな男どもと一緒にするんじゃねえ。オレの眼を見ろ。
そして黙ってついて来い」

とかなんとかデカいことを言ってしまったのならアンタが悪いが、たいていは、
相手が都合よく誤解して、勝手に期待を押しつけているのだろうから、何を言
われても無視しているのが賢明というものだ。ヘタな言い訳は見苦しい。もし
何かひとこと言うとしても「ボケが何ぬかしとんねん。おのれで勝手に惚れと
いて、こんどは失望かい。そないやって次から次から男に猫なで声で擦りよっ
ては飽きたらポンポンほかしとんねやろ、淫売が」といったようなウイットの
利いたセリフでチクリと刺すのが、器の大きい男というものだ。

・取材協力/S.M.さん(専門学校で生徒経験豊富なプログラマー)

【ながよしかつゆき/アーティスト】
2D作品を二点、サイトにアップした。サイト自体のデザインもリニューアルを
計画中であるが、今のシンプルな構成がとーっても気に入っているので、色を
変えて、グラフィックを差し替える程度で終わりそう。

E-MAIL / katz@mvc.biglobe.ne.jp
W.SITE / http://www2u.biglobe.ne.jp/~work

相田みつを美術館 / http://www.mitsuo.co.jp/

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■Powerbook Publishing Project ~ (63)
京都で暮らそう・前編

8月サンタ
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今、東京では、書店の店頭、コンビニの書棚、笑えるほど「秋の京都」本が並
んでいる。旅行会社の宣伝もスゴイ。間違いなく、空前の京都ブームである。

私も一昨年くらいから、真剣に故郷の京都で暮らすことを考えていた。10年間
東京に住んで、もう都会生活というのはいいところも悪いところも、存分に味
わった。確かに24時間、もの凄くエキサイティングな街だが、そろそろ落ち着
いた暮らしをしたくなってきた。

かといって、仕事場としての都心は離れられない。気軽に人が来て、気軽に人
の事務所にお邪魔できる。いろんな人のつながりがあるから、仕事が切れず生
きて来られた。本当に能無しな私だが、「街に助けられてきた」と正直に思う。

そこで、週末の生活だけを、京都に移すことを考えた。これはかなり冴えたア
イディアである。というのも、京都は極上環境の住居の家賃が、結構安いのだ。
東京圏に比べれば、数倍の価値があると言っていい。

●東京の10万円、京都の10万円

ノーベル賞受賞者の、田中耕一さんの暮らしている、嵐電(市内北野白梅町か
ら嵐山へと続く、京福電鉄嵐山線の略。住民は”らんでん”と呼ぶ)沿線の一
戸建てが、月額家賃10万円というのが話題になっていた。東京のマスメディア
はその家賃を「質素」というニュアンスで伝えていたようだ。

しかし、たぶん関東の人が想像する一戸建て10万円家賃の生活より、ずっと贅
沢で享楽的な生活なのは間違いがない。京都の住宅街の小さな一戸建てって、
それは上質で楽しいものである。少なくとも関東の10万円一戸建てにイメージ
される、貧乏くさいイメージはない。(いや、本当のことをいうと、もの凄く
「小市民的」なので、究極的貧乏くささだと、いえないこともないんだけど)

京都の家賃の10万円の中には、その地所に根ざした町の象徴の値段が入ってい
る。家一軒だけではなくて、その生活圏のなかの、ランドマーク、町並み、市
場といった、「京の暮らしインフラ」料金が込みである。そのインフラも、一
朝一夕に出来上がったものではなく、千二百年の年季が入った豪華なものだ。

住んでいて、時々ふっと数百年前にタイムスリップすることがある。空気の中
に霊の息づかいを感じることがある。右も左もペンキもコンクリもアスファル
トもない日本家屋の中で、エアコンでない縦に吹き抜ける風に当たり、茄子と
か大根とか、「あたりまえのもん」を食べたりしている瞬間、あるいは近所を
散歩中、何年たっても、全く変わらない風景の中に身を置いている瞬間、突然、
泣きたくなるような時間の重さを感じるときがある。

京都にいるときは、それが普通のことだと思っていたけれど、東京に暮らして、
はじめて、それはとても特別な場なのだと気が付いた。「~だった」ではない。
帰るたびに思うが、京都効果は未だ現役である。

●旧跡の中で暮らすと言うこと

町と町の間に寺がある。寺の間に神社、神社の間にまた寺、町の間に山(田舎)、
山の間にまた町がある。京都の町は神様と墓場の迷路状態である。

京都の語り方はいろいろあるけれど、一番おおざっぱで明快な切り方は、「名
所旧跡観光地としての京都」と、「100万生活都市としての京都」だろう。私
が知っていて、なおかつ「愛している」のは「生活都市としての京都」のほう
である。

私は京都で25年間育って来たけれど、たとえば観光バスが一日中横付けされる
東寺、本願寺、金閣寺、知恩院にはまだ一度しか行ったことがない。三十三間
堂には一度も行ったことがない。むしろ奈良の東大寺の方が(遠足で)何度も
行っているだろう。親も同級生たちも、近くで育った京都人達の経験は、だい
たい似たようなものだと思う。京都市民は、基本的に市内の観光名所にあまり
興味がない。

それよりは、自分の生活圏にある、生活の一部としての古い建物、古い場所を
愛している。「きんじょにあるから」「うちのちかくにあるから」●●寺が好
き、●●神社が好き、「●●さんはうちのところや」ということになる。「愛
している」と簡単に書いているが、本当に「にくたらしいくらい、自分の体の
一部のように」愛している。それが京都人というものである。

たとえば私が育った一条の新町、つまり一条通と新町通りの交差点あたり、で
は、それは御所であり、戻り橋の晴明神社であった。(これだけは覚えておこ
う。京都御苑のことを、「きょうとぎょえん」と呼ぶ京都人は一人もいない。
「ごしょ」である。タクシーの人にもそう言おう)

自分の生活圏にある神社仏閣は、「名所旧跡」ではなくて、「自分の庭」、生
活の一部である。日々の暮らしの中に配置される。それがどれほど贅沢なこと
なのか、東京に来るまでさっぱりわかっていなかった。

●誰でも京都人になれる

京都を好きになってくれた人には、そういう京都人の目線を知って、京都人の
楽しみを真似て欲しいと思う。どうしても、京都人には「ほんまにええもんは、
うちだけで食べて、よその人には見かけだけ立派なもん出して喜んどいてもろ
たらよろし」と思っているところがあるから、表だけみて、通り過ぎるのは、
余りにもったいないのである。

その「よその人」と「身内」を分ける壁なんて、本当は実にたわいのないもの
なんだし、もっと積極的に入っていくべきである。タブーなどなにもない。断
言する。京都人とは、「まなざしの持ちよう」である。

「ほんまの京都人」と「よそさん」には、とてつもない壁がある、という神話
があって、それが町の神秘化にずいぶん役立っていた。ところが、ようやく、
そのへんをきっちりわかりやすく、「ほんまの京都人の目線」で書いた本が登
場した。

・京都人だけが知っている 入江敦彦著 洋泉社 新書版 680円+税
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4896915372/ref=sr_aps_b_1/250-3022801-1568210

これから京都へ行って、市内を散策したい、あるいは暮らしたい、という人は、
この本を読んで出かけて欲しい。この本は、良くある類書のようでいて、はっ
きりと違う、京都本の「新しい風」である。

著者は公家文化と商人文化と水商売の文化と職人文化の混じり合う、上京の西
陣っ子、誰よりも狭くて閉鎖的な京都観を持つ「ほんまもんの京都っ子」であ
る。その自認する京都人の中の京都人が、一見もったいぶりつつも、そのメン
タリティと生活目線、京都人の京都人たる部分を、惜しむことなく公開してく
れている。

というわけで、今週だけではスペースが足りない。この本にも出てくる、京都
のちょっとした秘密を紹介しながら、来週はsanta8的京都の楽しみ、暮らし案
内をしたい。

・折角なので、santa8的京都写真ギャラリーもつくってみました。
http://homepage.mac.com/santa8/Menu5.html
本当に、街がひねり出す色って、なんだろうね…

●京都に週末帰る生活を夢見て…

ところで、冒頭の計画であるが、家賃10万円台で、市内に小さな庭付きの、下
二部屋上二部屋くらいの、可愛い家が借りられる。各週末に二日間、月に八日
帰るとしても、ホテル暮らしよりよほど安い。紅葉の季節、あるいは大文字の、
桜の、最高の時に高額料金を取られたりしないし、そもそも満室ということが
ない。友達呼ぶには最高だ。京都に家があると思うだけで、東京の部屋なんて
最低のもので耐えられる。

敵はただ一つ、東海道新幹線の料金である。10月1日のダイヤ改正からは、ま
すます2万円を切って京都~東京を往復することが難しくなった。月4回帰って
10万円である。これは、きつい。

こればっかりはどうにもならない。なぜなら、数少ないJRグループの黒字路線
であり、収益源の中心だからだ。携帯の音声通話料が下がらないように、東京
から京都までの鉄道料金も下がらない。つまり、その新幹線代が気にならない
くらい、稼げということかい。

もうひとつ、今東京では、都心から通勤できる(アクセスのいい)あらゆる街
は、全て似たようなマンション、ビル、スーパー、デパートで、個性のない塗
り壁のような街へとものすごい勢いで変貌している。少しは風情があった、横
浜だってやばい。(中華街まで地下鉄が乗り入れてしまうけど、どうなること
だろう…)関東全域は、今やプチ都心へと変貌中である。

のぞみの京都まで二時間、というのは、もし交通費が安ければ、「関東圏」に
飲み込まれかねない微妙な距離である。「簡単に東京から行けない」ことが、
京都を、たとえば鎌倉のような容赦ない東京化状態から、少しは救っているの
かも知れない。

ではまた来週!

【8月サンタ】LondonとLyallとLeCarreを愛する35歳  santa8@mac.com

・ロンドン好きのファンサイト
http://www.londontown.to/

・投稿ロンドン写真館に写真よろしく
http://www.londontown.to/cgi-local/upppu/upppu.cgi

・デジクリサイトの「デジクリ・スターバックス友の会」
http://www.dgcr.com/

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■ライフスライス研究所
オリジナルデジカメ開発奮闘記(2003年10月2日木曜日)
第31回「昨日の空の色を覚えていますか?」

ユビキタスマン
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2004年3月3日に独自仕様のコミュニケーションツールカメラを発売することを
目標に、それまでの道のりをレポートする本連載。今回は、私たちが忘れてい
る日常のことです。

水曜の昨日の夕方に、すばらしい鱗雲が出ていました。私は、それをあるビル
の屋上で見たのですが実に美しく感じました。空を見上げるという行為は、日
常の忙しさの中で忘れてしまっていることかもしれません。子供のころ、街の
17時のメロディが流れると、「あっ、もうこんな時間だ!」と腹ペコのおなか
を抱えて帰ったことは誰の記憶にもあるところです。

私が原稿を書いているのは、ある大学病院の深夜の面会室です。私は、突然の
腹痛から火曜日に小さな病院に行ったところ、これはすぐ大きな病院に行きな
さいと言われ救急車で運ばれ急性虫垂炎(いわゆる盲腸)と分かり、その日の
夕方に手術になったのです。かなりの激痛が走りつつも歩くことはできたので
すが、診断が出た瞬間から車椅子になりました。慌しく病状説明やリスク説明
を聞き手術同意書にサインして、睡眠誘導剤入りの点滴をつけると私はすぐに
眠くなりました。

次に起きると私はすでに病室のベッドに寝ていました。

下半身に意識はなく、体からいろいろなチューブが伸びています。右腕からは
点滴が、背中からは鎮痛剤の細い管が、そしてなにか股間からも管が伸びてい
るようです。よく見ると黄色い液体が出ています。看護婦さんの説明を聞くと
3日間は点滴のみで、食事も水も口にしてはいけないと言います。

病院の消灯は夜の9時でした。動けず、食べれず、痛む夜はまるで一週間くら
いあるかと思われました。たった一夜のことなのですが、自分にとって病院の
白い壁のシミのひとつひとつまで記憶に刻まれ、黄色いカーテン、深夜のナー
スコールの音、他の患者さんの嘔吐の音などが永遠に続く時間のように感じた
のです。

朝になると足がうっすらと動き始め、下半身のチューブもとることができまし
た。オムツのようなものを開くと、自分のあそこにマックシェイクのストロー
みたいなものが刺さっているではありませんか! 麻酔中に入れてもらったと
はいえ、それを刺すことを想像したら卒倒しそうになりました。

私は、調子が悪くなった朝からもいつもどおりスライスをしていました。手術
中はさすがに持ち込めなかったのですが、院内でも装着することは許されまし
た。看護婦さんは不思議そうな顔をしていましたが、「デジカメです。私、映
像の仕事をやっていて、入院が生まれて初めてなんで珍しいもの写したくて」
と説明したのです。

今日はライフスライスを首からかけたまま、入院後初めて外に出ました。病院
の屋上です。すでに屋上には何人かの患者さんが、タバコを吸ったり、リハビ
リなのか杖をつきながらグルグル歩いて回っていました。私は点滴棒を支えに、
まだくっつていない腹をさすりながら能の舞台の太郎冠者のようにすり足で歩
いていると、空に美しい鱗雲が広がっていたのです。

「こんな、美しい空は見たことがない!」

そんなときに、首からかけたライフスライスが相槌を打つように「ピピッ」と
シャッターを切りました。私は、このスライスを見るたびに思い出すことでし
ょう。健康であるから自分の日常に無意識になれる。でも、それはいつでも奇
跡であるということを。(ちょっとくさいかしら? 風呂入ってないもんで)

ライフスライスブランドカメラ発売まであと156日!

※入院スライスは筆者の退院後、来週に公開予定です。

~「情報伝達」から「体験伝達」の時代へ ~
L I F E S L I C E . N E T > > http://www.lifeslice.net/
ライフスライス研究所 主任研究員 川井 拓也
jp_kawai@lifeslice.net

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■編集後記(10/2)
・「サライ」を買った。創刊14周年記念特大号「京都」で630円。かつてはよ
く読んでいたが、ここ数年は手にもとらなかった。今回ばかりはほとんど発作
的に買った。付録にきれいな「京都大地図」がついているからだ。唯一それが
理由だ。地図が好きでたまらない。飽きずに眺めていられる。ただし、文字の
配置や大きさなどのデザインが問題で、なかなか気に入った地図がみあたらな
い。昔はサイクリングのときに武揚堂の道路地図を使っていた。これはきれい
な地図だった。さいきんは昭文社のものがいい。さて、「サライ」付録の地図
は拡げるとB2判で、表が京都市街図15000分の1で北は上賀茂神社、南は伏見稲
荷まで入っている。裏は京都中心部5000分の1と郊外のポイントや鉄道路線図
など。この地図一枚あれば、なんだか京都中は全部歩いて回れるような気がし
てしまう。10年くらい前はずいぶん関西に出かけて、京都も相当歩き回ったが、
じっさいはそんなに狭い都市ではなく歩いていて後悔したものだ。昔歩いた道
を地図上でたどるのは楽しい。やはり大きく拡げて見るのが地図の醍醐味だ。
で、近く京都に行くのかというとその予定はまったくないのであった。(柴田)

・劇団☆新感線の「阿修羅城の瞳」を見てきた。この話は新感線の中で一番好
き。前回は染五郎がはまり役でかっこ良く、今回も楽しみにしていたのだが、
出ましたよ怪物が。天海祐希に華がありすぎて染さんが目立たない。富田靖子
の時は染さんは文句なく主役だったんだけど、天海だと目が泳ぐ。オーラばし
ばし、踊り余裕ありすぎ、タカラヅカ目線健在。とにかく目の演技が素晴らし
い。主役を食う女優だよなぁ、こわ~い。涼風真世さんがトップの時、それほ
ど天海にずば抜けた華があるようには思わなかった。華のある人なんだけど、
他のトップさん達も華やかだったので。そしてやはり天海はドラマにはもった
いない。舞台で大きく見える女優さんってそう多くない。夏木マリさんも存在
感あって素敵だった。飛び道具橋本じゅんさんも良かった。富田靖子の「恨み
まするぞ」は納得。でも天海のは違和感あった。だって恨むというマイナス感
情で収まりそうにない。「お前を呪い殺してやる~」って空気。幽霊よりも魔
女に近いというか。微妙にネタバレ避けてるので興味のある人はぜひと書きか
けたがもう終わっちゃったのね。ビデオじゃあの空気わかんないだろうなぁ。
再演希望!/しつこくセミナー参加者募集中~。      (hammer.mule)
http://www.shochiku.co.jp/play/enbujyo/0308.html  阿修羅城の瞳
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/column/stage/2003/30.html 採点
http://www.vi-shinkansen.co.jp/  新感線公式
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