1月の最後の土曜日になってようやく、今年初めてメイド喫茶に行けた。
一種の初詣である。本当はもっと早く行きたかったところだ。出遅れてはメイドの神様に見放される。が、1月3日に行った秋葉原のお店は、外階段まで続く待ち行列を見てあきらめざるをえなかったのである。あれじゃ閉店時間までに入れるかどうかも疑わしい。萌えそこなって、ずっとくすぶっていた。
今回行ったのは中野にある "TeaRoomAlice" というお店である。オープンしたのは去年の8月だったらしいが、不覚にもつい最近になって知った。"COSMODE" というコスプレ情報誌に広告が出ていたのを見たのである。ウチから徒歩15分のところにメイド喫茶があると知っては矢も楯もたまらず、仕事を休んでも行きたいくらいであった。
(威張るほどのことでもないけれど)若者文化の最新のトレンドを探って来ようなどというジャーナリスト根性からではなく、純粋に客として自分が楽しむために行ったのである。
そうは言っても、「メイド喫茶って何?」という方も多いでしょうから、まずは一般論的な解説から入りましょう。
一種の初詣である。本当はもっと早く行きたかったところだ。出遅れてはメイドの神様に見放される。が、1月3日に行った秋葉原のお店は、外階段まで続く待ち行列を見てあきらめざるをえなかったのである。あれじゃ閉店時間までに入れるかどうかも疑わしい。萌えそこなって、ずっとくすぶっていた。
今回行ったのは中野にある "TeaRoomAlice" というお店である。オープンしたのは去年の8月だったらしいが、不覚にもつい最近になって知った。"COSMODE" というコスプレ情報誌に広告が出ていたのを見たのである。ウチから徒歩15分のところにメイド喫茶があると知っては矢も楯もたまらず、仕事を休んでも行きたいくらいであった。
(威張るほどのことでもないけれど)若者文化の最新のトレンドを探って来ようなどというジャーナリスト根性からではなく、純粋に客として自分が楽しむために行ったのである。
そうは言っても、「メイド喫茶って何?」という方も多いでしょうから、まずは一般論的な解説から入りましょう。
●定義……のようなもの
メイド喫茶とは何かと言えば、ウェイトレスがメイドの格好をした喫茶店である。「そのまんまじゃん」と突っ込まれそうだが、他に何があるというわけでもない。
実際「それだけ」と言えば「それだけ」なのである。もし、いかがわしい期待に鼻の下を伸ばした中年のおっさんが行ってみれば、「これのどこがいいんだ、だまされた」と期待はずれに怒り出しそうである。そういう見え見えの本能に餌をやるような要素は限りなくゼロに近い。きわめて健全なのである。
では、メイド喫茶が、どこにでもある普通の喫茶店と一線を画するものは何か。
まずターゲットとする客層が違う。メイド喫茶の草分けとして歴史に名を残す店は "Cure Maid Cafe" と "Cafe Mai:lish(カフェ メイリッシュ)" であろうが、どちらも秋葉原にある。付近には漫画、アニメ DVD、ゲーム、同人誌、コスプレ用のコスチューム、フィギュア、ガシャポンなどの店が立ち並ぶ。
そこへ集まってくるいわゆるオタクたちがメイド喫茶にとってもお客さんとなる。だから、一般の通行人がそれと知らずに立ち寄ってしまうことはありえないような奥まった場所にある。居酒屋のように駅前でビラを配ったりもしない。それでいいのである。
メイド喫茶に求められるものは、サラリーマンが駅前の喫茶店に求めるものとはわけが違う。単なる休憩ではなく、もっと深~い魂の休息である。
メイド喫茶は不健全な要素はほぼゼロでありながら、「萌え」の要素は、これ100%全開である。やはりこのキーワードを抜きにしては語れない。
メイドさんと聞くだけで、ああ切ない、ううたまらん、おお悶絶死する~と反応してしまうほどの強い思いを抱いていることを「メイド萌え」と言い、メイド萌えな要素を持っていることを「メイド属性がある」という。これをチェックするサイトがある。
http://www.netlaputa.ne.jp/%7Eannie/maidcheck1.html
ちなみに私は「もうあなたはメイドさんにメロメロ」と判定された。ハイ、異論の余地もございません。
このメイド属性をぶら下げてメイド喫茶に足を踏み入れれば、長い間イメージに描いていたメイドさんのいる空間が眼前に実現され、ついにそこにわが身を置くことができたという安堵感に涙がどっと溢れ出す。(オイオイ、泣かんでも……)
詮ずるに、メイド喫茶とは、漫画、アニメ、ゲームなどをこよなく愛するいわゆる「オタク」をターゲットの客層とし、彼らの夢想する「萌え」の対象としてのメイドのイメージを具現化することによって、くつろぎや癒しを提供する空間として営まれる喫茶店である、と言えよう。
●謎に包まれたルーツ
さて、メイド喫茶を楽しめるかどうかを分かつのは、メイド属性を持っているか否かにかかっている。ということは、好んで行く人たちは、あらかじめどこかでメイド属性を培っていたことになる。
では、メイド属性は何を肥しにして育ったのか。言い換えると、メイド萌えの根っこ(ルーツ)はどこに求めるべきか。これが、意外にはっきりしない。
ホンモノのメイドが文化として根付いていたのは19世紀の英国ヴィクトリア朝時代であるが、その頃からずっとメイド喫茶のできる日を心待ちにしてました、って人はあまりいなさそうである。とすると、そこから直接影響を受けてメイド属性が育ったのではなく、ここ数年の間に漫画やアニメやゲームといったメディアによって再生産されたメイドを通じて育まれたと考えるのが妥当なところだろう。
ところが、それは何か、といろいろな人に聞いて回ってみても、異口同音に「これだよ」と即答できるものがなく、「これかな」ぐらいで提示されたものが、みなばらばらであった。
メイド喫茶自体が最初にオープンしたのが2000年ごろなので、それよりも前に遡らなくてはならない。単純に、メイドをテーマとした作品(漫画、アニメ、ゲームを総称してここでは「作品」と呼ぶことにする)の中で一番古そうなところと言えば、「殻の中の小鳥」('96年2月)とその続編「雛鳥の囀」('98年8月)あたりに行き着く。もう少し下れば「デスクトップのメイドさん」('98年8月)がある。これらはパソコン上で走る18禁ソフトである。
これらは確かにメイド萌えの最初の萌芽と位置づけてよさそうである。実際、コミケで「殻の中の小鳥」の「結城 恋(れん)」のコスをしているコを見たことがあるので、ある程度の反響はあったのであろう。
しかしながら、これらは実のところあまり広くは知られていない。世の中に及ぼす影響力としては、大したことはなかった模様である。
もう少し広く知られているものとしては、コミック作品「まほろまてぃっく」('99年9月)がある。これはメイド物の代表作と称していいかもしれない。主人公の「まほろ」さんは、独り暮らしの中学生であるご主人様「美里 優」に徹底的に尽くし、仕事の手際も超人的な優等生メイドである。その実、秘密裏の地球防衛に大活躍した後に引退し、短い余生を送る戦闘用アンドロイドであったりする。ストーリー展開にほろりとさせられる。
メイドを愛でる文化を世に広めた代表としての作品はなかったとする説もある。つまり、特定の作品とは切り離され、独立した潮流としてメイド萌えがあったとする説である。
確かに、コスプレイベントに行くと、ほとんどのレイヤー(コスプレイヤーのこと)さんたちは何らかの作品のキャラクタに扮している中で、メイドコスだけは例外的で、聞いてみると「オリジナル」との答えが返ってくることがほとんどである。
そうだとすると、メディア制作側が仕掛けた流行に消費者が乗っかったという構図ではなく、メイド萌えが消費者の側から自発的に育ったという構図になる。それがいかにして広まったのか、私にはつかみきれていない。
●台湾にもあった
なんと、台湾にもメイド喫茶があった。その名も「カフェ アニメイド」。'04年6月にオープンしていたらしい。
しかし、残念ながら約半年後の11月30日に閉店している。もったいない~。開いてたら今度の出張のついでにぜひ行きたかったのにー。
ホームページは残してある。
http://www.animaid.net/
詳~しくレポートしてくれてるページを見つけ。
http://www.yks.ne.jp/%7Etakaxo/animaid/animaid.htm
制服は苺のイメージなんだね。カワユイ。萌え~。
メニューも楽しいし。柚子茶が「柚姫(ゆずき)の微笑み」。柚姫って「ちょびっツ」に出てくるメイドパソコンではないか。ブルーベリーソーダが「紫の上」。あの源氏物語の? 子供の頃、光源氏に連れ去られ、源氏の思い通りの女性に育て上げられ、後に源氏の妻となるという……。イカ墨のスパゲッティが「死亡筆記本」。それって「デスノート (Death Note)」なんだー。黒いっ!
……とまあ、日本のオタク文化のトレンドをよくキャッチしとるわいな、と感心させられる。台湾で日本のトレンドを熱心に追いかける人たちを「哈日族」(ハーリィズゥ)という。
日本国内でさえ一般にはまだあまり知られていない「萌え」の文化が、哈日族によって発掘され、海外に広められていく(台湾でもまだ知る人ぞ知る、ぐらいの存在だが)。
●TeaRoomAlice
前置きが長くなったが、中野のメイド喫茶に行ったという話。
TeaRoomAlice は中野ブロードウェイ(ショッピングセンター)の四階にある。
ちなみにブロードウェイはガキの頃からの遊び場だった。エスカレータを逆行してるとこをガードマンに見つかり、さんざん絞られて帰ったこともあったっけな。あれから歳月を経て、おかげさまで道をはずすこともなく、まっとうな大人になることができた。
思い出のエスカレータで三階まで行き、そこからは階段。踊り場の左右の壁に上下の階の見取り図が掲げられているが、TeaRoomAliceは四階のどこにも表示がない。潰れたのかと不安に思いつつ、ともかくも四階へ。
人形屋さんやコスチューム屋さんのある一角は賑わっているが、そのはずれに、両サイドに閉まったシャッターがひたすら並んでいるだけの静まり返ったストリートがある。その奥の方の右側から光がもれている。あれだ。この現実感の希薄なこと、まるでパソコンのアドベンチャーゲームのようである。よいなぁ。店から出て振り返ると、もう消えてたりしそうな……。
20席ほどのこぢんまりとしたお店。ヴィクトリア朝というよりは「不思議の国のアリス」風の可愛らしい内装。CLAMP 週間だそうで、3人のウェイトレスさんは「カードキャプターさくら」のキャラになってる(その日はメイドではなくコスプレだった)。
ところで、行く前に近くの書店で「ローゼンメイデン」のコミック第1巻を買っておいた。この作品のコスを去年の冬コミで初めて見かけ、チェックしておかねばと思っていたのである。主人公の人形「真紅」は真紅のベルベットのロングドレスに緑の大きなリボンを組み合わせた衣装に、身の丈より長い金髪が映え、典雅な趣きを醸してすばらしい。
これを持ち込んで読んでたのが好評で、ウェイトレスさんたちと話がはずんだ。つい最近まで深夜テレビでアニメ版を放送していたが、一人は最終回を見て泣いてしまったとか。
こういうとこがメイド喫茶のいいところ。私のようなおっさんが少女漫画を読んで過ごしても、怪しまれるどころか、ウケがよいという……。お互いにある種のメンタリティをよーく理解しあっているという共犯者みたいな連帯感。オタクが安心して自分に返れる空間。癒される~。
初めは私のほかにもう一人しかいなかったのに、だんだんと混んできて、夕方には満杯になったので、そろそろと思い、店を出た。下の階の雑踏はそれまでとの対比があまりに著しく、どちらも互いに近接しあった現実の姿だと認識するのが困難であった。今度はこっちの方が虚構のように見えてきて、呆然となった。
帰りがけに2~4巻を買い、翌日も行った。そして翌週末も、その次も……。もう、メイド喫茶なしには生きられない体になってしまった。
【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
バレンタインデー前の週末には、愛のメッセージ付き手作りチョコがもらえた。私にだけ、なら最高だが、実際は来店者全員に。それでも天にも昇る心地である。42歳、サラリーマン。仕事を辞めて、毎日行けたら。
http://i.am/GrowHair/
メイド喫茶とは何かと言えば、ウェイトレスがメイドの格好をした喫茶店である。「そのまんまじゃん」と突っ込まれそうだが、他に何があるというわけでもない。
実際「それだけ」と言えば「それだけ」なのである。もし、いかがわしい期待に鼻の下を伸ばした中年のおっさんが行ってみれば、「これのどこがいいんだ、だまされた」と期待はずれに怒り出しそうである。そういう見え見えの本能に餌をやるような要素は限りなくゼロに近い。きわめて健全なのである。
では、メイド喫茶が、どこにでもある普通の喫茶店と一線を画するものは何か。
まずターゲットとする客層が違う。メイド喫茶の草分けとして歴史に名を残す店は "Cure Maid Cafe" と "Cafe Mai:lish(カフェ メイリッシュ)" であろうが、どちらも秋葉原にある。付近には漫画、アニメ DVD、ゲーム、同人誌、コスプレ用のコスチューム、フィギュア、ガシャポンなどの店が立ち並ぶ。
そこへ集まってくるいわゆるオタクたちがメイド喫茶にとってもお客さんとなる。だから、一般の通行人がそれと知らずに立ち寄ってしまうことはありえないような奥まった場所にある。居酒屋のように駅前でビラを配ったりもしない。それでいいのである。
メイド喫茶に求められるものは、サラリーマンが駅前の喫茶店に求めるものとはわけが違う。単なる休憩ではなく、もっと深~い魂の休息である。
メイド喫茶は不健全な要素はほぼゼロでありながら、「萌え」の要素は、これ100%全開である。やはりこのキーワードを抜きにしては語れない。
メイドさんと聞くだけで、ああ切ない、ううたまらん、おお悶絶死する~と反応してしまうほどの強い思いを抱いていることを「メイド萌え」と言い、メイド萌えな要素を持っていることを「メイド属性がある」という。これをチェックするサイトがある。
http://www.netlaputa.ne.jp/%7Eannie/maidcheck1.html
ちなみに私は「もうあなたはメイドさんにメロメロ」と判定された。ハイ、異論の余地もございません。
このメイド属性をぶら下げてメイド喫茶に足を踏み入れれば、長い間イメージに描いていたメイドさんのいる空間が眼前に実現され、ついにそこにわが身を置くことができたという安堵感に涙がどっと溢れ出す。(オイオイ、泣かんでも……)
詮ずるに、メイド喫茶とは、漫画、アニメ、ゲームなどをこよなく愛するいわゆる「オタク」をターゲットの客層とし、彼らの夢想する「萌え」の対象としてのメイドのイメージを具現化することによって、くつろぎや癒しを提供する空間として営まれる喫茶店である、と言えよう。
●謎に包まれたルーツ
さて、メイド喫茶を楽しめるかどうかを分かつのは、メイド属性を持っているか否かにかかっている。ということは、好んで行く人たちは、あらかじめどこかでメイド属性を培っていたことになる。
では、メイド属性は何を肥しにして育ったのか。言い換えると、メイド萌えの根っこ(ルーツ)はどこに求めるべきか。これが、意外にはっきりしない。
ホンモノのメイドが文化として根付いていたのは19世紀の英国ヴィクトリア朝時代であるが、その頃からずっとメイド喫茶のできる日を心待ちにしてました、って人はあまりいなさそうである。とすると、そこから直接影響を受けてメイド属性が育ったのではなく、ここ数年の間に漫画やアニメやゲームといったメディアによって再生産されたメイドを通じて育まれたと考えるのが妥当なところだろう。
ところが、それは何か、といろいろな人に聞いて回ってみても、異口同音に「これだよ」と即答できるものがなく、「これかな」ぐらいで提示されたものが、みなばらばらであった。
メイド喫茶自体が最初にオープンしたのが2000年ごろなので、それよりも前に遡らなくてはならない。単純に、メイドをテーマとした作品(漫画、アニメ、ゲームを総称してここでは「作品」と呼ぶことにする)の中で一番古そうなところと言えば、「殻の中の小鳥」('96年2月)とその続編「雛鳥の囀」('98年8月)あたりに行き着く。もう少し下れば「デスクトップのメイドさん」('98年8月)がある。これらはパソコン上で走る18禁ソフトである。
これらは確かにメイド萌えの最初の萌芽と位置づけてよさそうである。実際、コミケで「殻の中の小鳥」の「結城 恋(れん)」のコスをしているコを見たことがあるので、ある程度の反響はあったのであろう。
しかしながら、これらは実のところあまり広くは知られていない。世の中に及ぼす影響力としては、大したことはなかった模様である。
もう少し広く知られているものとしては、コミック作品「まほろまてぃっく」('99年9月)がある。これはメイド物の代表作と称していいかもしれない。主人公の「まほろ」さんは、独り暮らしの中学生であるご主人様「美里 優」に徹底的に尽くし、仕事の手際も超人的な優等生メイドである。その実、秘密裏の地球防衛に大活躍した後に引退し、短い余生を送る戦闘用アンドロイドであったりする。ストーリー展開にほろりとさせられる。
メイドを愛でる文化を世に広めた代表としての作品はなかったとする説もある。つまり、特定の作品とは切り離され、独立した潮流としてメイド萌えがあったとする説である。
確かに、コスプレイベントに行くと、ほとんどのレイヤー(コスプレイヤーのこと)さんたちは何らかの作品のキャラクタに扮している中で、メイドコスだけは例外的で、聞いてみると「オリジナル」との答えが返ってくることがほとんどである。
そうだとすると、メディア制作側が仕掛けた流行に消費者が乗っかったという構図ではなく、メイド萌えが消費者の側から自発的に育ったという構図になる。それがいかにして広まったのか、私にはつかみきれていない。
●台湾にもあった
なんと、台湾にもメイド喫茶があった。その名も「カフェ アニメイド」。'04年6月にオープンしていたらしい。
しかし、残念ながら約半年後の11月30日に閉店している。もったいない~。開いてたら今度の出張のついでにぜひ行きたかったのにー。
ホームページは残してある。
http://www.animaid.net/
詳~しくレポートしてくれてるページを見つけ。
http://www.yks.ne.jp/%7Etakaxo/animaid/animaid.htm
制服は苺のイメージなんだね。カワユイ。萌え~。
メニューも楽しいし。柚子茶が「柚姫(ゆずき)の微笑み」。柚姫って「ちょびっツ」に出てくるメイドパソコンではないか。ブルーベリーソーダが「紫の上」。あの源氏物語の? 子供の頃、光源氏に連れ去られ、源氏の思い通りの女性に育て上げられ、後に源氏の妻となるという……。イカ墨のスパゲッティが「死亡筆記本」。それって「デスノート (Death Note)」なんだー。黒いっ!
……とまあ、日本のオタク文化のトレンドをよくキャッチしとるわいな、と感心させられる。台湾で日本のトレンドを熱心に追いかける人たちを「哈日族」(ハーリィズゥ)という。
日本国内でさえ一般にはまだあまり知られていない「萌え」の文化が、哈日族によって発掘され、海外に広められていく(台湾でもまだ知る人ぞ知る、ぐらいの存在だが)。
●TeaRoomAlice
前置きが長くなったが、中野のメイド喫茶に行ったという話。
TeaRoomAlice は中野ブロードウェイ(ショッピングセンター)の四階にある。
ちなみにブロードウェイはガキの頃からの遊び場だった。エスカレータを逆行してるとこをガードマンに見つかり、さんざん絞られて帰ったこともあったっけな。あれから歳月を経て、おかげさまで道をはずすこともなく、まっとうな大人になることができた。
思い出のエスカレータで三階まで行き、そこからは階段。踊り場の左右の壁に上下の階の見取り図が掲げられているが、TeaRoomAliceは四階のどこにも表示がない。潰れたのかと不安に思いつつ、ともかくも四階へ。
人形屋さんやコスチューム屋さんのある一角は賑わっているが、そのはずれに、両サイドに閉まったシャッターがひたすら並んでいるだけの静まり返ったストリートがある。その奥の方の右側から光がもれている。あれだ。この現実感の希薄なこと、まるでパソコンのアドベンチャーゲームのようである。よいなぁ。店から出て振り返ると、もう消えてたりしそうな……。
20席ほどのこぢんまりとしたお店。ヴィクトリア朝というよりは「不思議の国のアリス」風の可愛らしい内装。CLAMP 週間だそうで、3人のウェイトレスさんは「カードキャプターさくら」のキャラになってる(その日はメイドではなくコスプレだった)。
ところで、行く前に近くの書店で「ローゼンメイデン」のコミック第1巻を買っておいた。この作品のコスを去年の冬コミで初めて見かけ、チェックしておかねばと思っていたのである。主人公の人形「真紅」は真紅のベルベットのロングドレスに緑の大きなリボンを組み合わせた衣装に、身の丈より長い金髪が映え、典雅な趣きを醸してすばらしい。
これを持ち込んで読んでたのが好評で、ウェイトレスさんたちと話がはずんだ。つい最近まで深夜テレビでアニメ版を放送していたが、一人は最終回を見て泣いてしまったとか。
こういうとこがメイド喫茶のいいところ。私のようなおっさんが少女漫画を読んで過ごしても、怪しまれるどころか、ウケがよいという……。お互いにある種のメンタリティをよーく理解しあっているという共犯者みたいな連帯感。オタクが安心して自分に返れる空間。癒される~。
初めは私のほかにもう一人しかいなかったのに、だんだんと混んできて、夕方には満杯になったので、そろそろと思い、店を出た。下の階の雑踏はそれまでとの対比があまりに著しく、どちらも互いに近接しあった現実の姿だと認識するのが困難であった。今度はこっちの方が虚構のように見えてきて、呆然となった。
帰りがけに2~4巻を買い、翌日も行った。そして翌週末も、その次も……。もう、メイド喫茶なしには生きられない体になってしまった。
【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
バレンタインデー前の週末には、愛のメッセージ付き手作りチョコがもらえた。私にだけ、なら最高だが、実際は来店者全員に。それでも天にも昇る心地である。42歳、サラリーマン。仕事を辞めて、毎日行けたら。
http://i.am/GrowHair/