[1731] 私はお金が欲しい

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1731    2005/04/14.Thu.14:00発行
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          <なにを隠そう、私は貧乏なのだ>         

■笑わない魚(151)
 私はお金が欲しい

■カラーマネージメント三角絞め…(2) 
 色を正確に表し、伝えるために
 上原ゼンジ

■セミナー案内 JPCセミナー
 低予算でもここまでできる! サイト簡単管理術



■笑わない魚(151)
私はお金が欲しい

永吉克之
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「一銭を笑うものは一銭に泣く」(日本の諺)

吾妻ひでお氏の『失踪日記』を読んだ。正直いって吾妻氏の画風は好きではな
かったのだが、デジクリの編集長後記でその内容を知って、とても他人事とは
思えなかったので、本を買ってしまったのだ。

実は、作品が売れなくなった作家がホームレスに転落するケースに興味があっ
たのだが、吾妻氏の場合は仕事や金に困っていたわけではなく、現実逃避から
ホームレス生活に入ったので、そういう意味では参考にならなかった。しかし
路上生活をする際のノウハウは近い将来、役に立つかもしれないので、必携の
書にはなるだろう。ただ、そういったことを抜きにして見てもそれなりに面白
い作品である。

なにを隠そう、私は貧乏なのだ。最近まではそれほど貧乏でもなかったのだが、
身の程知らずな金の使い方をしたために貧乏になってしまった。去年は四回も
個展をするという非常識なことをしたために、今年は一回できるかどうかも分
らないほどの資金難に陥っている。会場に関しては、企画展をしてもいいとい
うオファーを下さっている画廊もあるのだが、作品を高いクオリティで大判出
力する資金がないのである。

しかし、それもこれもあれもどれも何もかも、私が金銭を賎しいものと見下し
てきた報いなのだ。これまでは、たとえばタクシーの料金が890円と中途半端
なとき、110円の釣りをもらうなんて破廉恥なことできるか、俺は物乞いじゃ
ないんだと、千円札を押しつけて、「釣りはいらねえ、それでガキにアメでも
買ってやんな」と時代錯誤なことをいいながら、さっさと降りていたものだ。

金は天下の回りものと、これまた時代錯誤な発想で金を使っていたのだが、こ
ちらから金を回すばかりで、ぜんぜんこちらの方には回ってこないので、これ
からはもう、なるべく回さないことにした。

私がどれほど貧乏なのかを自慢する気はない。下には下がいるからだ。ヘタに
自慢なんかすると、もっと貧乏な読者から「これだからシロートはイヤなんだ
よな。借金もないくせに、一人前に貧乏人面するんじゃないよ」と言われてし
まうだろう。

しかし、たまに飲みに行く店の常連客のひとりに生活保護を受けている男性が
いるのだが、その人の平均月収が私より多いことが分ったときは、さすがショ
ックだった。これは自慢してもいいだろう。

ひょっとしたらデジクリ読者は、ひとりの芸術家がホームレスに転落するか、
チャンスを掴んで、どん底から抜け出すか、単に貧乏な状態を延々と続けるか、
このいずれかを、リアルタイムで観察することができるかもしれない。

●無料であるべきもの

何の因縁か、この原稿を書いている最中に歯が抜けた。正確に言うと、歯の根
っこが折れた。糸楊子でガシガシやっていたら、奥から三番目の歯が飛び出し
てきたのだが、それを医者に言うと、糸楊子くらいで歯は抜けませんよ。歯自
体がもろくなっとるんですワ、と分りきった説明をしてくれた。

義歯を入れたら、大金が出ていくに決まっているので、できれば放置しておき
たいのだが、そらいかん、絶対にいかん、そんなことしたら後でこんなことや
あんなことになる、と医者の口車にのせられて、義歯を入れる羽目になった。
もう10年近くのつき合いで顔なじみになっている私から大金をせしめようとい
うのだから、金の前では人情など塵芥も同じである。

本来なら生きていくうえで必要不可欠なもの、それがなければ死んでしまうも
の、たとえば、医療、電気、水、食事、住居、郵便、酸素、友達、サボテンな
どは、すべて無料にすべきなのだ。

しかしそれに逆行するように、郵政は民営化へと進んでいる。もし郵便事業が
完全に民間企業化してしまったら、競争が激化し、それに敗れた手負いの郵便
局は、生き残るためにどんなことでもするだろう。

新宿の歌舞伎町あたりに局をかまえて、酔客を拉致同然に連れ込み、脅して、
まだ春だというのに、郷里の友人に年賀状を書かせ、特別年賀ハガキ代、場所
使用代、手数料、紹介料、礼金、保証金などの名目で26万円も請求し、払えな
いと言うと、身ぐるみ剥がして川に投げ込むことは目に見えている。

また各郵便局は、一通でも多く郵便を扱おうと、自局の郵便ポストを乱立させ
るに違いない。その結果、5メートルおきにポストが並んでいる歩道も現われ
るだろう。なかには、目立ちたいがために、東京ドームの客席の最前列や、大
阪城の天守閣、山手線の電車のなかなどに違法ポストを立てる悪質業者も出て
くるだろう。

郵便を全面的に無料にしてこそ、民営化に意義が生まれるのである。

●荒廃する人心

現代は、生きている人間を見つけると、なんとかして金を取ろうと、ピラニア
のように群がってくる連中が跋扈しているから気をつけなければならない。戸
別訪問や電話でのセールス、郵便受けに毎日どっさりと入っているチラシ、未
承諾広告メールなどは改めて言及するまでもないだろう。

今、私の目の前には、電話と携帯電話の請求書、国民年金の納付書がある。他
にも電気、ガス、水道、クレジットカード、保険やNHKの銀行引き落とし、新
聞代の集金、父の命日にあげるお経のお布施、などなどが次から次へと押し寄
せてくることになっている。

連中の関心は私の金だけなのである。交際していた女性との悲劇的な別れ、高
校のときの校内柔道大会での屈辱的な敗北、こんなできそこないをここまで育
ててくれたのに、生きている間に父にありがとうを言えなかったという後悔。
そんなことに連中は、爪の先ほどの興味もないのだ。

私の描いた絵が見たいと言ってくれる水道局や、私の詩『能登半島の貿易収支』
の朗読が聴けたら料金はいらないと言ってくれる電力会社などない。また、保
険に契約してくれなくてもいいの、だから抱いてと言ってくれる保険外交員な
ど、もういないだろう。

まったく殺伐とした世の中になったものだ。

【ながよしかつゆき/アーティスト】katz@mvc.biglobe.ne.jp
心斎橋Apple Storeでやっている無料のレクチャーで、ホームページ、Webペー
ジ、Webサイトの違いが分った。「無料」か。いい響きだ。

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■カラーマネージメント三角絞め…(2) 
色を正確に表し、伝えるために

上原ゼンジ
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色を正確に表し、伝えることは容易ではない。たとえば「赤」という言葉で括
られる色には多くの種類があるし、一つの色名からイメージされる色には個人
差もある。明るさやあざやかさの形容詞をプラスしたとしても、正確に色を伝
えるのはなかなか困難なことだ。そこで色を定量化して表す方法が数多く考案
されてきた。つまり、長さや重さのように、色を数値で表す方法である。

長さや重さの単位というのも元々はローカルなものだった。たとえば手のひら
を基準とした「尺」。ひじから中指の先までの「キュービット」。両手を横に
広げた長さの「尋」等々……。個人個人で手の大きさや長さは違うわけだから、
それぞれの基準で測ればデバイス依存値ということになる。

実際にはキュービッドや尺といった長さは、きちんと定義づけがされていたた
めに、歴史的な建造物を作ることも可能だったわけだが、キュービッドという
単位は国によって1キューピッドの長さが違ったり、尺にしても曲尺、鯨尺と
いった種類のあるローカルルールであったために、国際的な標準化が必要だっ
た。そんな中から生まれてきたのが、国際単位系である「SI」だ。SIでは現在
の我々に馴染み深いメートルやキログラム、秒などといった単位が厳密に定義
されており、さまざまな分野の国際的な基準となっている。

このSI単位系に相当する色の国際的標準がCIE表色系だ。CIEはCommission
Internationale de l'Eclairageの略で国際照明委員会のこと。光に関する標
準の研究・勧告を行なっている。表色というのはは色を定量的に示すこと、表
色系というのは表色のための一連の規定と定義からなる体系を指す。

前述のデバイスによって見た目の色が変わってしまうデバイス依存値に対し、
色を正確に表し、伝えることのできる色の物差しとも言える数値がCIEカラー
だ。CIEカラーはCIEで過去制定されてきた表色系であるCIEXYZやCIELABに基づ
く数値でxy値やL*a*b*値がある。 

カラーマネージメントの概念を理解するにはこのデバイス依存値とCIEカラー
の違いを正しく認識することが重要だ。

◇デバイス依存値 
モニタ、プリンタ、印刷機などの機器によって変わってしまう、RGBやCMYK等
の数値。正確に色を表したり、伝えたりすることには向いていないのでCIEカ
ラーに換算して計算を行う。device-dependent color(デバイスディペンデ
ントカラー=機器依存色)

◇CIEカラー
色を正確に表したり、伝えたりする場合の絶対的な尺度となる、xyやL*a*b*の
数値。色彩計で測った測色値はこのCIEカラーで、色の物差しとも言えるもの。
device-independent color(デバイスインディペンデントカラー=機器独立
色)

●カラーマネージメントとは?

カラーマネージメントという言葉は現在いろんな意味で使われているので、厳
密な定義は難しいが、おおむね以下のような意味で使われることが多い。

(1)コンピュータを使ったメディア間での正確な色の伝達
(2)CIEカラーをベースにした入力から出力にいたるまでの色の管理
(3)プロファイルを使った色変換

(1)コンピュータとネットワークを使うことにより、さまざまな情報の交換
をすることが可能だ。文字、静止画、動画、音声など……。これらのデータは
デジタル化され、テレビ、Web、印刷物等のメディアで再現されるわけだが、
メディア間で色情報を正確にやりとりすることをカラーマネージメントと呼ぶ。

(2)単に手近なモニタとプリンタの色合わせをするだけであれば、そんなに
大変なことではないが、デジタルカメラで撮影した画像を印刷するまでの工程
を管理しようとすれば、きちんとしたワークフローを組んだ色の管理をしなけ
ればならない。そこには作業をする場の環境光の整備や、プリンタ、印刷機等
のデバイスを安定して運用するためのキャリブレーション、作業に使うアプリ
ケーションとそのカラー設定の統一、といった問題も含まれる。

よく「カラーマネージメントとカラーマッチングは別物である」という言い方
があるが、それは単に色合わせをするだけでなく、デバイスのキャリブレーシ
ョン等も含めたシステムを構築することがカラーマネージメントである、とい
う意味だ。あるいはカラーマッチングというのは単に色合わせのことで、その
手法を問わない。一方、カラーマネージメントの場合は測色機を使い、正確に
色をマッチングさせる方法だということを言っている。

(3)Photoshopで「カラーマネージメントをする」と言えばプロファイル変換
のことを指す。つまり、ある色空間から別の色空間へ、CIEカラーを介し色変
換することだ。また「カラーマネージメント・オン」というのは、画像ファイ
ルにプロファイルを埋め込んで運用するという意味だ。つまり(1)や(2)と
比べ、かなり限定した意味に使っているということになる。
 
【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
写真撮影からデザインまでを生業とする。JPCカラーマネージメント委員会副
委員長。MD研究会所属。

カラーマネージメント情報室
<http://www.digitalimage.jp/CMI/>

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■セミナー案内
JPC ウェブ・パブリッシング委員会定例セミナー
「低予算でもここまでできる! サイト簡単管理術」
<http://www.jpc.gr.jp/>
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日時:4月27日(水)13:30~17:00
会場:アップルコンピュータ 48Fセミナールーム
<http://www.operacity.jp/map.html>
参加費:JPC会員・団体会員無料、一般10,000円(税込)

内容:サイトが肥大化するに従い、導入が求められるウェブCMS(コンテンツ
管理システム)。大規模なサイトを管理する本格的なCMSから業務を絞った業
界向けCMSまで様々な製品が存在しますが、制作者の立場からするとどうもシ
ステム寄りで分かりにくいというのが正直なところではないでしょうか。
今回は、CMSの製品の中からより制作者の視点に近く、低価格で導入しやすい
製品を選定し、事例を交え低価格なCMS製品によるサイト管理の実際とその構
築法を追求します。

プログラム:
13:30~14:15
「ブログによるサイト構築の実際とCMSの選択基準」
メディアプローブ株式会社 代表取締役 渡辺泰(ウェブ・パブリッシング委員
会委員長)
14:15~15:00
「Dreamweaver、Contributeで行うWebサイト管理」
マクロメディア株式会社 林岳里(テクニカルエバンジェリスト)
15:15~16:15
「サイトの運用を今すぐ効率的に! Contribute3+CMSの最新事情」
株式会社ネットドリーマーズ 吉田謙(ビジネスソリューション部R&Dグループ
グループ長)
16:15~17:00(45分)
パネルディスカッション「CMS導入の理想と現実」
モデレータ グローバルデザイン株式会社 白旗保則(ウェブ・パブリッシン
グ委員会副委員長)
パネラー 渡辺泰、林岳里、吉田謙


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■編集後記(4/14)
・品川のキヤノンサロンSで開催中の「河口洋一郎展 生命宇宙の世界」を見
に行った。高画質映像、立体視ハイビジョン、3D画像、インタラクティブ・ア
ート、ケータイ・アートなど、見て、さわって楽しめる体験型アートの世界だ。
「生々しいまでのサバイバル空間」とDMにあったが、サバイバルとは河口さん
のキャッチフレーズで、あの天衣無縫の表情と語り口で「芸術はサバイバルだ」
と言われると、意味は不明だがなんとなくそんな気になるから不思議。河口さ
んのここ15年くらいの作品が並ぶ空間は、やっぱり生々しく圧倒的な迫力だ。
Drawing 4DFishは初見だったが、ユーモラスで意外な感じ。趣味から言うと、
最近のやや渋めのものより、かつての色彩ドロドロのものが好きだ。それから、
エイリアンの死体を収容した箱みたいな鮮やかな電光3D画像群や、立体視ハイ
ビジョンがたまらなくイイ。3Dメガネをかけて見る立体視映像は、なんとも形
容しがたい色と形態の物体(生命体?)が回転し、近寄り、離れ、止まること
がない。音響はどちらかというと不気味。気持ちを集中して見ていると、その
世界にぐいぐい吸い寄せられる。キケンだ。「無間地獄」なんて言葉が浮かん
だ。その時間ギャラリーは空いていて、イベントは全部一人占め状態。万国博
河口館だ。ところで、ギャラリーに至るエスカレーターから見た会場ガラス面
いっぱいに、林か川か骨かというような異様なモノトーン巨大パターンが見え
た。これは河口さんの新境地かと思ったら、じつは大きな布地にプリントした
作品の裏面で、光を通すとインクの濃淡でそう見えるのだった。  (柴田)

・月曜日は朝から打ち合わせ。土日に入らなかった携帯の電波が、同じ部屋な
のに入るようになっている。何故だ? 母親から携帯メールが入っている。地
震があったが大丈夫なのかと。地震? いつどこで? テレビをつけるとニュ
ース。お風呂に入っていて気付かなかった。そんなに揺れたのか。電車は遅れ
てるし、前の電車がつまっていて発車しないし、混みまくり。無事打ち合わせ
が終わり、日本橋のコレドへ連れて行ってもらう。渋谷と年齢層が全然違うな
ぁ。悩んだ挙げ句「古奈屋」でえび天カレーうどん。初めて食べたが、うーん
微妙。確かに他にない味だと思う。そういや渋谷に「神座」ができてて、花輪
をチェックしていたのであった。銀行名やビール会社名などでいろいろわかっ
たりする。「神座」は微妙と思う人もいるだろうが、私は美味しくて好きだ。
コレドではおもちゃや雑貨を見てまわる。「サンタ・マリア・ノヴェッラ」が
入っていたので、思わずコロンを衝動買い。予算大幅オーバー。今回の東京出
張は疲れたけど楽しい時間が過ごせたなぁ。宮益坂の読み方を覚えられたのも
収穫だ(笑)。                     (hammer.mule)
http://www.coredo.jp/  コレド日本橋
http://www.konaya.ne.jp/  古奈屋
http://www.kamukura.co.jp/  神座
http://www.santamarianovella.jp/  サンタ・マリア・ノヴェッラ
http://www.santa-maria-novella.co.jp/  こっちも?

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
リニューアル  8月サンタ
アシスト    鴨田麻衣子

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