Otaku ワールドへようこそ![14]テレビ出演者募集:英会話ができるコスプレイヤーいませんか?
── GrowHair ──

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デジクリに書くようになってから、たま~に見知らぬ読者の方からメールを頂戴することがある。今までのところ、例外なく共感を表明する内容で、嬉しいやら恥ずかしいやら、読んでいただけるだけでもありがたいことなのに、わざわざ感想を送っていただけるなんて感謝感激、本当に励まされる思いです。

あんまり褒められてばかりいると堕落しそうなので、これからはお叱りのメールがいただけるよう、がんばってみましょうか。オタクの立場から、パンピー(一般ピープル)を挑発してみたりして。……悪い冗談はさておき。

●テレビ番組制作会社からメールが来た

10月12日(水)にテレビの制作に携わる方からメールが来た。オーストラリアの旅情報番組で東京を取り上げ、その中でコスプレを扱いたいのでいろいろと教えて下さい、という依頼だった。旅のガイドブックで「ロンリープラネット」というのがあり、世界で広く読まれているそうだが、それのテレビ版、60分の番組だそうである。来年放送予定の一回分で東京にスポットを当て、その中で10分ぐらいをコスプレに割きたいとのこと。

それは面白そうだし、趣旨には大いに賛同するものである。しかし、今までメディアがオタクを扱ってきた姿勢にはバイアスがかかっていないとは言い難いものも少なくなく、複雑な思いがある。宮崎勤連続幼女誘拐殺人事件が世を震撼させた1989年以降は、オタク全般がまるで犯罪者予備軍のように扱われることもあったし、メイド喫茶が世に知られ始めた去年ぐらいからはよくて珍獣扱いだし、今年になって電車男が話題になってようやく「いい人」の地位に片手でぶら下がれる程度にはなった。

このように、オタクの株が辛うじて上昇の途上にあるのは、オタク自身が変化したことよりも、メディアの扱いが変化したことによる要因の方が遥かに大きいように感じられる。この調子でいくと、遠からず賢者とか聖人君子とかネ申といった正当な評価に到達する日が来るような気がしなくもないが、今はまだまだである。結果的に、私自身がオタクをメディアに売り飛ばす裏切り者になっては申し訳が立たない。

そのあたりの思惑はメールで伝えた上で、会って話をしましょうということになった。10月15日(土)の午後、担当の横川芙美枝氏(仮名)に中野駅まで出向いてもらい、近くの喫茶店で小一時間ほど説教、ではなく打合せ。


その方は、やや小柄ながら元気いっぱいな印象だ。担当する仕事の責務からしてそれなりの年齢だと思うが、かなり若く見える。私がどちらかというとシャイなのと対照的に、積極的に人と関わり、どんなことにもばりばりと前向きに取り組んでいく力強さが感じられる。さすがはテレビの国の住人である。だけど気やすい感じで、気取ったところがまったくない。企画の人って、わけの分からんカタカナ言葉をやたらと多用する気取り屋なんじゃないかって、勝手にイメージ作り上げてたかも。

番組の趣旨について聞くと、基本的には旅の情報番組なので、見た人が「楽しそう」、「行ってみたい」と思えるようなものを意図しているが、観光客の物見高さという視点から一歩踏み込んで、文化を紹介するものにしたいという。

コスプレについても、「ほら、びっくりでしょ」で終わりではなく、そこに駆り立てる原動力は何かといったメンタリティに迫りたいという。また、今はまだそんなに詳しくないが、番組作りには、まず制作側がテーマを深く理解することが重要なので、これから調べたり、歩き回ったり、人に聞いたりしてよく知りたいという。それに、いまどき「オタクは気持ち悪い」なんて言っているような人に明るい未来はないだろうという。その言葉が心強く響き、積極的に協力したいと思った。

コスプレの世界の概略を説明し、まずどこを歩いてみるべきか助言した。秋葉原とかコスプレや同人誌のイベントとか。翌日さっそく行ってみるという。実のところ、一番のハードルは出演者探しである。ロンリープラネットの創始者であるトニー・ウィラー氏と気やすく話をするシーンから入りたいので、英会話ができることが必須とのこと。英語の話せるコスプレイヤー。う~ん。耳で飛べる象を探すような話ではないか。

というわけで、出演者募集中。自薦他薦を問わず、下記のアドレスから私宛てにメールをいただければ、横川氏にお取次ぎいたします。

●こういう具合にしやしゃんせ

テレビ番組の制作に関わった経験はないけど、もし、コスプレをテーマに番組を作ってくれ、と言われてすべてを任されたら、私ならどんなふうにするだろうと空想してみる。

まずはコスプレイベントの実態を映し出すところから入りたい。遊園地系のイベントを俯瞰して撮ってみるとか。きっと一般の人々から見れば異様な光景であり、衝撃的に映るかもしれない。一回のイベントの来場者数は2,000人程度であり、すごい数のコスプレイヤーがド派手な衣装を着て、ごちゃっといるのは壮観である。

しかし、それだけで終わっては珍獣扱いの域を出ないので、その「なぜ?」に迫りたい。コスプレイヤーをピックアップして、インタビューしてみる。何の作品の何というキャラか、衣装はどうやって調達したのか、作ったのなら材料費はいかほどで、制作にかかった時間はどれほどか。そして、そこまで入れ込ませる原動力は何か、ということで、原作の面白さを語ってほしい。

できれば、その原作の映像を流せるといい。人気の出る作品は、大人の鑑賞にも十分耐えるストーリーの面白さがあり、心の機微をうまく描写し、絵のクオリティが高く、声優さんの声の演技が洗練されている。作品に感動し、キャラにぞっこんほれ込むとき、それが虚構の世界であることが苦痛に感じられ、現実側に引っ張り出したいという思いが起きる。キャラクタの不在を脳内で補完する行為こそが、いわゆる「萌え」の正体だとする向きもある。コスチューム制作という途方もなく手間のかかる儀式を通じて感動が完結する感じ。それが伝えられたら。

作品の映像の中のキャラから、それに扮する実在のコスプレイヤーへとモーフィング(morphing、連続変形)の手法で移行させる映像が作れたら面白そうだ。できればコスプレイヤーの衣装作りの場面も入れたい。ひと針ひと針縫っていく作業の地味さと、イベントでのお披露目の華々しさとの対比は面白かろう。

●海外を啓蒙してさしあげたい

海外から見ると、日本の文化は謎に満ちていたり、前近代的に映ったりすることもあるようである。

ひとつの固定観念として、漫画やアニメは子供向けのものというのがある。ストーリーが単純で、絵も落書きの域を出ないものだ、と。だから、いい歳をした大人がそんなものに熱を上げるのは、精神的に幼稚であることの現れだ、かっこ悪い、気持ち悪いという見方をされがちである。

まあオタク自身の側からもそれを認めているところがあり、自虐的に駄目人間呼ばわりすることがあるので、完全に間違ってはいないけど。好きなことに徹底的にのめり込んだ結果、その世界にはやたらと詳しくなった、だけどそういう知識は実用の役にはまるで立たなかった、気がついてみたら社会的には競争力に欠ける人間になってた、だめじゃん、みたいな。だけど、作品が決して子供向けではないクオリティの高さを備えていることは、伝わってほしい。

いい例が、8月20日(土)、21日(日)と文京シビックホールで開かれた「TBSアニメフェスタ」である。同局で放送するアニメ番組が紹介され、声優さんの生のトークと歌で盛り上がった。7時間以上にわたるこのイベントで1,800席の会場を埋め尽くしたのは、ほんの数人の子供を除いては「大きいお友達」ばかりであった。私が行っても、ちっとも恥ずかしくないのである。

私の目当ては、言わずと知れたローゼンメイデンである。ロビーに試作品として展示されていた真紅のスーパードルフィーは12月の発売が楽しみだし、水銀燈の「中の人」である田中理恵さんが自作の水銀燈コスでステージに現れたのは大拍手とどす黒い歓声があがったが、語り出すと止まらなくなるので、置いといて。10月20日(木)より第2期の放送が始まったが、深夜1:55amからという放送時間を見ても、子供向けでないことがよく分かる。堅気のサラリーマンにとってもツラいけど。

もうひとつ、海外から見たときに、コスプレは女性蔑視の現れのように見られてしまう恐れがある。美人コンテストみたいなものに風当たりが強くなってきているのだ。

10月16日(土)付けのJapan Timesに、東京で開かれたモデル撮影会の記事が載っていた。スウェーデン出身で日本在住歴5年の男性記者が潜入して書いたもので、「(男性の興味の対象として)利用された女性たちの苦境に怒りを覚えた」とあるのだが、どこをどう見るとそういうふうに見えるのか、私には「は?」という感じであった。

UNDP(United Nations Development Programme, 国連開発計画)による2003年の調査結果によると、対象159か国または地域のうちで、日本は総合評価であるHDI(Human Development Index、人間開発指数) では11位と健闘しているのに、女性の地位を示すGEM(Gender Empowerment Measure、ジェンダーエンパワーメント指数)では43位と低い。

その記事ではこれを引き合いに出して、日本は遅れていると言いたいようであった。しかし、UNDPのレポートを見てみると、GEMは働くの女性の地位に基づいた指標である。だから、労働環境に改善の余地が多々あるだろうというのはよく理解できる。だけど、モデル撮影会が何やら差別社会の権化のように言う論拠としては、関連性が薄くないか?

10月2日(日)に茨城のポティロンの森で撮らせてもらった写真をホームページに載せたところ、2人のレイヤー(コスプレイヤー)さんからメールをもらい、どちらも「きれいに撮ってもらえて感激した」という内容だった。また、7月10日(日)の声優コンサート「ネオロマンスフェスタ」で撮らせてもらったレイヤーさんたちとは個人撮影話が持ち上がり、先日都内の日本庭園へロケハン(location hunting、撮影場所探し)に行ってきた。

撮るときはいつもレイヤーさんに喜んでもらえることを第一に考え、本人の魅力を引き出すとともに、キャラのイメージを壊さないようにと心がけている。その辺のことも誤解なきよう伝わるといいのだが。

●世界に広がるコスプレの輪

というわけで、はらはらする要素は多々あるのだが、着眼点はすばらしいので、ぜひとも一歩踏み込んだ深みのあるルポルタージュを期待したい。放送を見た人が東京へ行ってみたいと思うだけでなく、漫画を読んでみたい、アニメを見てみたい、さらにはコスプレしてみたいと思ってくれるような番組に仕上がったら嬉しい。それが呼び水となって、次から次へと取材攻勢がかかり、日本のポップな文化が世界に広がるのにいっそう勢いがつくといい。

なので、英語のしゃべれるレイヤーさん、ぜひともご一報下さい。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。今日のテーマとは関係ないが、やっぱりBabyのロリ服を着て書いてみた。はぁ~ん♪(← 癖になってる)可愛いお洋服が着れるようダイエットを始めようと思ったが、その瞬間に食べ物がみんな美味しそうに見えてきて、始める前からリバウンドしそうな勢いの42歳。
< http://www.geocities.jp/layerphotos/
>