Otaku ワールドへようこそ![22]アレ喫茶コレ喫茶:メイド喫茶の派生系
── GrowHair ──

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メイド喫茶の派生系とでも言うべきお店が、あれやこれやと出現している。上を残して「メイドなんちゃら」は以前からだが、下を残して「なんちゃら喫茶」が活気づいてきている。特に池袋が面白く、最近立て続けに3軒ほど行ってきた。

●乙女喫茶で愛の旋律

秋葉原がオタクの街ならば、池袋は乙女の街として発展を遂げつつある。ここでいう「乙女」とは、「女性オタク」の婉曲表現みたいなもんで、少女漫画などを愛好し、授業中、ノートの余白にぱっちりお目目の少女を描くのに余念がないような娘たちを指す。特に、BL(ボーイズラブ、男の子と男の子の恋愛もの)にハマると、「腐女子(ふじょし)」と呼ばれる。

池袋にも、秋葉原にあるような漫画・アニメ関連のお店の系列店が立ち並ぶ通りがあるが、客層は圧倒的に女性が多く、通称「乙女ロード」と呼ばれ、男性にとってはちょっといたたまれない空間が形成されている。その近くに、今年になって、乙女カフェ "B:Lily-rose" がオープンした。メイド喫茶の女性向け版とでも言うべきお店である。コンセプトは、ずばりBL。男装の麗人が給仕してくれるという。
< http://lilyrose.bufsiz.jp/
>

好奇心と羞恥心が激しく葛藤したが、「メイド喫茶で女性客を見かけるのは普通のことだから、乙女カフェにおっさんが行ったって悪いはずがなかろう」と言いくるめた好奇心が勝ち、行ってみた。2月4日(土)、夜の時間帯は男性だけでは入れてもらえないので、いつも撮らせてもらっているコスプレイヤーさんに一緒に行ってもらった。いい感じに腐ってる乙女である。


60階通りを東急ハンズのところで左に曲がり、しばらく歩いた左手、大通り沿いの一階にそれはあった。道側はガラス張り。カーテンやスノースプレーによる装飾の隙間ごしに中の様子をうかがうと、黒スーツにびしっと身を固めたウェイターが颯爽と立ち働くのが見える。お客さんは、ゴシック系に美しく着飾った淑女たち。(行ったことないけど)ホストクラブってこんな感じかな?

自己の内部でワイングラスが床に落ちて砕け散るような人格破壊感を覚えつつ、禁断の扉を開ける。「ようこそ!」の声に迎えられる。低音の、芝居がかった口調。

5~6人分のカウンター席と、10数人がけの大テーブルと、4人分ほどの小テーブル。椅子は赤と黒のが交互に置かれている。大テーブルの末席に着く。壁は打ちっぱなしのコンクリート。大きなガラス窓には分厚いビロード生地の赤と黒のカーテンがかかり、赤い薔薇や白い薔薇が挿してある。目くるめくBL空間。

ギャルソンは5人ほどいて、ジャケットだったりベストだったり、シャツの色は黒だったり白だったり、ネクタイの色は赤だったりグレーだったり。スーツは、肩幅などを合わせるため、オーダーで作ったそうで、後ろ姿など、どことなく線がなまめかしい。「攻め」と「受け」の役割が服装で区別できるらしい。妖しさ満点。

10人ほどいる他のお客さんたちは、すでにすごいハイテンションで盛り上がっている。嬉しくてたまらない風情でずっとしゃべっていて、時おり、わっと笑い声が起きたり、きゃーと奇声を発したりしている。

メニューがまた妖しくて。カクテルの名前が「愛の旋律」「悪魔のささやき」「禁断の果実」など、ケーキが「薔薇の園」「麗しき休日」「百合の誓い」など。カクテルを頼むと、ギャルソンがシェーカーを客席まで持ってきて、目の前でシャカシャカしてくれる。

「愛の旋律」は、もちろん少年と少年の奏でる愛の旋律。軽めの炭酸がちょっとだけぴりぴりっと。せつなく、甘美。さらに、「禁断の果実」や「真紅のドレス」をいただき、ほどよく酔いが回りかけたところで、そろそろ、と思い、店を後にした。「またお会いしましょう!」と送り出される。

現実のホモセクシュアルに興味があるわけではないのだが、乙女の空想上のそういう世界って、なんとなくいいなぁ、とは思える。

●声優カフェで童心に返る

これまた池袋。声優カフェ「もえっ娘」は声優志望の女の子が給仕してくれるところに特徴がある。60階通り沿いの右側にある。昨年8月にオープン。
< http://www.moekko-cafe.com/
>

行く前に想像していたのは、秋葉原にあるメイド喫茶の老舗 "cure maidcafe"のようなところだった。というのも、そこでは土曜の夜にメイドさんが、ハープとフルートとバイオリンの見事な演奏を聞かせてくれるので、ここもきっとその派生系で、楽器演奏の代わりに声で芸を見せてくれるのかな、と思ったのである。

最近、声優の人気の高まりはすさまじいものがある。表芸からすれば無駄に容姿端麗だったりするが、大規模なコンサートでは声のお芝居を見せてくれるだけでなく、歌手顔負けの歌いっぷりを披露してくれたり、トークで笑わせてくれたりと、総合エンターテイナーの性格を呈している。だから、声優の卵としては、メイド喫茶のようなお店で芸を披露することで、修養の場とするのだろう、きっと。

想像するに、店内の造りはヴィクトリア朝時代の大邸宅を模して、上品なくつろぎ空間を演出し、メイドさんはくるぶし丈の黒のエプロンドレスをエレガントに着こなし、よくしつけられ、身のこなしも洗練されている。上演の時間には、声のお芝居で楽しませてくれる。知性と教養の空間、かな?

全然、違った。

2月9日(金)の夜、乙女喫茶のときとは別のコスプレイヤーさんと行ってみる。8階でエレベーターを降り、中の見えない重い扉を恐る恐る開けると...。

「ラブやん」という漫画をご存知の方は、そこに出てくる「めがね喫茶『委員長』」と言えば「げ、それかよ」と思っていただけるだろう。小学校の教室。小さな机が整列し、座っているのは、机のサイズとの不均衡著しい、大きな生徒たち。前に立つ先生の姿は、「ラブやん」と違って、アニメキャラのコスプレ。

すでに十数人ほど生徒がいて、一番後ろの空いた席に座り、ほぼ満員になった。机にはマジックで落書きしてある。アニメキャラ的な絵ばかり。前方にはホワイトボードとカラオケマシンが置いてある。

コンセプトは「小学校の教室で、先生も生徒も一緒にカラオケを楽しみましょう、もちろんアニソン(アニメの主題歌)中心で」ということらしい。童心に返れるところ。いや、もともと童心の大人が本領発揮するところか。

猫耳カチューシャが渡される。自分につけてみる。似合うと言われ、ちょっとうれしい。希望すれば、店の用意した衣装を着ることもできる。私の前の列の女性3人組のうち2人は、メイドさんとロリータになった。

3人の声優さんたちが、代わる代わるアニソンを歌ってくれる。ゲーム「サクラ大戦」の主題歌「檄・帝国歌劇団」のサビのところでは、「みなさんご一緒に」ということで、大合唱になる。音楽の授業みたい。

声のお芝居も見せてくれた。たわいもないほのぼの系コメディー。友人の家に遊びにいった2人が名古屋料理を振舞われるのだが、何でもかんでも味噌づくしで、本当にあるのか疑わしいのまで次から次へと出されて、辟易してくるという話。声だけでリアリティを演出する芸当、学芸会よりはずっとレベルが高い。

以前、(株)コーエー主催のイベントでベテランの声優さんたちの寸劇を見たことがあるが、一言「寒いなぁ」だけの台詞にさえリアリティを超えたリアリティが感じられてすばらしかった。我々の現実の会話の方が棒読みに聞こえてきそうなほど。そこまで芸を磨くのは、きっととてつもなく大変なんだろうな。もえっ娘の娘たちも、がんばってほしいなー。

選曲パネルが客席にも回ってくる。前に立って歌う人もいて、みんななかなか上手い。もう、誰が客だか店員だか。はしゃぐ子供たち。大騒ぎ。ここは退行の解放区。心ゆくまで小学生になりきって楽しめる。いやはや、こんな店まで出現したとは! オタクをここまで甘やかして、いいのか?!

●魔法学院カフェはコスチュームに萌え~

もういっちょ池袋で、「王立アフィリア魔法学院」。ホームページによると、「コスチュームテーマカフェ」なのだそうで。昨年10月にオープン。
< http://www.afilia.jp/
>

背後にファンタジー系のストーリーがあって、それに基づいて作られたテーマパークのようなところ。コンセプトはディズニーランドっぽいが、制服のデザインがどこかロリっぽかったりして、オタク好みに趣向が寄っている。ああ、絶対領域の目にまぶしいことよ。あ、「絶対領域」とは、短いスカートの裾とニーソ(オーバーニーソックス)のトップとの間に存在する、太ももの露出部分のことです。絶対的な効力があるかららしい。

地中海にあったとされる、古代魔法文明、アフィリア。現代の科学では解明できない多くの謎を秘めた高度な文明で、上下水道をはじめ、飛行技術(箒で?)まであったと言われる。が、ある日、忽然と姿を消してしまった。

そして、なぜか現代の池袋に突如として出現したのが、「王立アフィリア魔法学院」。もともと王国の東部に位置する魔法学校であった。学院内のカフェテリアで働くのは中等部の2年生、つまり見習いの魔法使い。

この王国の厳しい規律としてある「誰かのための自分」というご奉仕精神を実践する。カフェを訪れる学内の先輩にまごころいっぱい、一生懸命尽くすけど、まだ魔法らしい魔法も使えない未熟者たちなので、ときどきドジったりもする。……ということらしい。

これを見たら、矢も盾もたまらず、今回はひとりで行ってみる。2月12日(日)60階通りから右へ入った路地の右側、音ゲーで有名なゲーセンの4階。入ると「いらっしゃいませ、先輩」の声に迎えられる。

初回は「先輩」たる資格を得るための学院証の発行に300円かかる。料金は1時間フリードリンク制でノンアルコールが1,900円、アルコールが2,900円と、ちょっと高め。

内装はハリポタのホグワーツ魔法学校のような重厚さ。ろうそく型の照明で室内は暗め、分厚い蔵書がぎっしりと並ぶ書棚は壁に描かれた絵。大きなスクリーンには、ヨーロッパの古城と宮殿の映像が流れる。広くて余裕のある空間。「他国ではコーラとも呼ばれている炭酸飲料」がここでは「ザ・ブラックマジシャンソーダ」だったりして、慣れが必要。

制服は期待通り、めっちゃかわいい。「後輩」に放課後の過ごし方を聞いてみると、予想にたがわず、ゲーマーでコスプレイヤーなんだそうで。実は住んでる世界が、近かったり。やっぱオタクにとってはこの親近感が一番うれしい。

●おまけ

乙女に朗報。3月24日(金)には執事喫茶がオープンするそうで。やはり池袋に。店名は "Swallowtail"。意味は「燕尾服」ね。
< http://butlers-cafe.jp/
>

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。新大久保のメイドバー「エデン」は昨年末をもって中野店に一本化され閉店。最終日は名残を惜しむ常連客で賑わった。が、2月18日(土)、跡地に再びメイドバーがオープン予定。わーい! 店名は "Especially Kiss"。
< http://www.e-kiss.jp/
>
店長の朔にゃんさんは、ついこの前まで、アフィリア魔法学院の「後輩」だったそうで。
< http://www.geocities.jp/layerphotos/
>