[1962] レトロなレンズを求めて

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1962    2006/04/20.Thu.14:00発行
http://www.dgcr.com/    1998/04/13創刊   前号の発行部数 17878部
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     <結局人の一生分の怒りパワーは一定であるという法則>    

■デジアナ逆十字固め…[3]
 レトロなレンズを求めて
 上原ゼンジ
 
■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[103]
 会社設立するとき考えておくべきことなど
 茂田カツノリ

■ショート・ストーリーのKUNI[18]
 兄弟
 やましたくにこ
 


■デジアナ逆十字固め…[3]
レトロなレンズを求めて

上原ゼンジ
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私がトイカメラの存在を知ったのは操上和美さんの写真集「陽と骨」(PARCO
出版、1984年)によってだ。この写真集は函入りで、ハードカバー、クロス装
のカラー写真集とソフトカバー、平綴じのモノクロ写真集の二冊で構成されて
いる。

カラーの方は、ちょっとアンダー目で濁ったような色合いがひじょうに美しい
写真集。一方のモノクロ写真集の方の撮影がすべてトイカメラによるものだ。
ピントが甘く、粒子が荒れ、現像ムラやネガ傷があるような写真なのだが、静
かで暴力的でレトロで不思議なイメージを醸し出している。

これがカッコ良くて、真似してみたいと思ったのだが、トイカメラというのが
何だか分からない。まあ直訳すれば玩具写真機だから、子供向けではあるが、
一応写真を撮る機能は備えているもの、というのが当時のイメージだ。本人の
インタビューによれば、胸ポケットに入るような小さなもの、とのことだった
ので、今ブームになっている旧共産主義国製カメラとはまた違った、本当にオ
モチャみたいなものだったのではと考えている。

ただ残念ながら、本当に撮影ができるオモチャカメラは探しだすことは出来な
かった。その代わりと言ってはなんだが、今度は「ベス単」というものの存在
を知った。これは「ベストポケットコダック」(VPK)という1912年生まれの
カメラのレンズのことだ。

ベストポケットというのはポケットに入るような小さなカメラという意味。高
さ12センチ、幅6.5センチ、たたむと2.5センチの厚さになり、重さが260gとい
うのは、現代でも十分にポケットサイズと言えるだろう。

そしてこのカメラのレンズが単玉(1群2枚)だったことから、「ベス単」とい
う愛称がついた。ベス単の特徴は、レンズ前に付いているフードを外してしま
うことにより、独特のソフト効果がでてくるところにある。フード外しにより
球面収差が出て軟焦点になってしまうのだ。

通常はこういった球面収差をいかに抑えるか、といったことが重要になるわけ
だが、このソフトフォーカス効果が味として楽しまれたというわけだ。小さく、
安く、庶民に愛されたベストセラー機種だったが、一方でフード外しのテクニ
ックは写真愛好家の間でも流行し、そのソフトな描写から「朦朧写真」などと
呼ばれたようだ。

VPKはベストフィルムというサイズのフィルムを利用する。ブローニー判より
少し小さく現在では入手困難だ。シャッターもバルブと1/25、1/50秒しかない
ので、レンズだけ外して、6×6や35mmの一眼レフに付けて使うのが一般的だ。

ただ、私自身は興味はあったものの、わざわざ骨董品のようなカメラを探し出
してきて、レンズを取り外して一眼レフにくっつけるなどということまでは、
やらなかった。そんな時、目に留まったのがカメラ雑誌に掲載されていたキヨ
ハラ光学のVK70Rというレンズだ。

このレンズはベス単のフード外し状態を一眼レフカメラで楽しむために開発さ
れたものだ。各社のマウントが用意されていたので、当時コンタックスを使っ
ていた私はヤシカマウントの製品を早速注文した。

で、どんな描写になったのかは以下のページの写真をご覧いただきたい。わず
かな滲みやボケ具合にレトロっぽさが出ているのが、お分かりいただけるだろ
うか?
<http://www.k5.dion.ne.jp/%7Ecolor/gallery/galindex.html>

絞りを開けるとソフトフォーカス効果がかかり、幻想的というか甘ったるい写
真になる。これが本来の「ベス単」の使い方であり、「ベス単」というキーワ
ードで検索すれば色んな写真を見ることができる。ただ私はあんまりソフト過
ぎる描写というのは好きではないので、ちょっと絞り気味に撮影を行なった。
しかし、思いっきり絞ってしまうと今度はソフト効果のかからない普通の写真
になってしまうので、自分の好みの絞り値を見つけ出すというのが、このレン
ズを使う場合のポイントだ。

最近ではレンズベビーというトイレンズが人気になっている。一眼レフカメラ
で利用できるチューブ状の蛇腹レンズで、蛇腹の伸縮によりピント合わせを行
なうところがユニークだ。最大の特徴はレンズ自体を曲げてしまうことができ
ること。要するにアオリ操作ができるわけだが、この操作によって画面の中に
ピントが合っている所と合っていない所ができ、その描写が面白いのだ。
<http://lensbaby.jp/>

これはPhotoshopでは出せない味わいなので、その愛嬌のあるルックスに惹か
れて、すぐに買ってしまおうとしたのだが、色んな人が撮っているサンプル写
真を見ているうちに、ちょっと気が萎えてきた。面白いのは面白いんだけど、
ちょっとレンズが主張しすぎという感じなのだ。ちょこっとレトロ、というぐ
らいならいいんだけど、いかにもという感じはちょっといただけない。

ただ、またチープなレンズで遊んでみたいという欲求が生まれてしまった。そ
して思いついたのは、「自分で作っちまえばいいのか?」ということだ。オモ
チャカメラというのは見つけることはできなかったけど、チープなレンズとい
うのは世の中に色々ある。それに蛇腹を付けてみたらどうだろう?

デジタルカメラを使えば、工作しながらすぐに撮影した写真のチェックもでき
るし、紙やプラスチックを使えば工作も簡単だ。そう思い至ると、私は自転車
に飛び乗り、100円ショップへと、カッ飛んで行ったのだった……。(つづく)

【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com
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せの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ)が発売中。
<http://book.mycom.co.jp/book/4-8399-1937-2/4-8399-1937-2.shtml>

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■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[103]
会社設立するとき考えておくべきことなど

茂田カツノリ
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こんにちは、調子がいいんだか悪いんだかわからない茂田です。いろいろ楽し
いネタは多いんだけど。今日は、会社運営にからむ実体験話です。

●クルマの名義変更で右往左往

先週書いたとおりクルマをヤフオクで買ったわけだが、名義変更が終わるまで
3万円預けてください、という条件だった。

こうする事情は、名義変更がメンドイからと放置しちゃう人が多く、違反して
出頭しなかったり税金を滞納したりすると、旧所有者に支払義務が生じてしま
うなど問題あるから、ということだそうだ。

というわけで、クルマを有限会社アモニータ名義に変更したわけだけど、この
手続きが実にややこしかった。普通よりややこしくしている要因は、アモニー
タの本店所在地が、クルマの使用場所とは別のところにあるから。

創業時に幡ヶ谷の賃貸住宅を本店登記したのだが、引っ越しするときに本店移
転登記+役員の住所変更でたしか5万円くらいふんだくられた。それがアホら
しいので移動することのない住所を本店にして、その後ウチを買ってもそのま
まにしてたのだ。

これ自体は、みんなやってること。しかしこれって、実際の事務所の所在を公
的に証明するのが大変とか、いろいろと面倒はある。しかしその中でも、クル
マの登録は一番めんどくさかった。

運輸局のテレホンサービスからオペレータを呼び出し問い合わせしたのだが、
法人の本店でないところで使用、という形は難しいらしく、何度か保留されて
の確認になった。

で、言われたとおりに書類揃えて品川の運輸局まで行ったわけだが、そっから
が大変だった。

車庫証明でまず引っかかった。警察には本店が別だっていうことを説明した上
で、指示通り所有者・使用者とも現事務所としたのだが、正しくは所有者を本
店、使用者を支店とすべきだそうだ。

運輸局の窓口の人が「警察の人はあんまりわかってないのよ」などとおっしゃ
られる始末。

●委任状攻撃

もう一つの複雑化要因は、法人の代表は僕の妻で、申請自体は僕だけで行って
ること。電話で聞いたときは、会社名義の場合は委任状不要で、誰が来てもい
いとゆってたが、実際には必要だった。

で、車庫証明の所有者住所が渋谷になってるということは、同じ法人でも別扱
いになるから、厳密には本店→渋谷支店(?)の委任状も必要になると窓口で
言われる。そんなものは持ってきてないから、さあ困った。

そしたら窓口の人が「渋谷支店の支店長のような方はいるのですか?」と聞い
てきたので、反射的に「僕です」と答える。そしたら、その形であれば委任状
は代表取締役→僕個人のものだけで受領可能とのこと。

これにあわせて書類を書き直し、なんとか受理される。これっておそらく、窓
口の人が受理できる形をわざわざ考え出してくれたのだろうと推測。いわゆる
助け船ってやつだ。

ふぅ、終わったと思ったら、次は都税事務所に納税責任者の移転を申し出。こ
れも書類の書き方わかんないところがあったが、窓口の人が書き足してくれた。

そしてナンバープレート自分で外して返納し、新しいナンバーを1,440円で買
ってネジ止め。最後に検査官が車台番号と車検証を照合して、ナンバー封印し
て手続き終了。あ~疲れた。

代表取締役以外が法人関係の手続きする場合、なにかと委任状が必要になる。
これはクルマの登録に限らず、たとえば法人名義で携帯電話契約するときも、
最初の契約時だけ委任状が必要(詳細は自分で確認してね)。

仲間なり家族なりで会社起こす場合、誰を社長にするかというのはこういう点
でも影響がある、というわけだ。アモニータの場合は、社長であるカミさんが
手続きとか動いてくれるし、僕はサラリーマン扱いとして住宅ローン通ったし、
この形のメリットは大きかったのだ。

●補足

クルマの登録で、アモニータのように本店と事務所が異なる場合は、現事務所
の所在を証明するためには、郵送されてきた電気もしくは固定電話の領収書が
必要。これコピーを渡す必要があるので、事前に取っておこう。

あと任意保険は、クルマの名義自体が誰であろうと自分名義でかけることがで
きるので、名義変更を待たずにすぐかけられる。ただ、法人名義で申し込み可
能な保険会社はちょっと高く、個人のときからの等級を引き継ぐにはちょっと
したテクニックが必要だったりする。

ああ、それにしてもお役所を相手にするってメンドクサイなあ。もちろん厳格
にやってもらう必要はあるけど、もうちょっとシンプルにできるはずだよ。ま
あ一昔前と違って窓口にいる人が親切なのが、せめてもの救いかな。

▼来週金曜はCreator's Table vol.4です(満員御礼!!)

▼【FileMaker Fun Night at AppleStore銀座】
5月14日(日)17:00~18:00「開発事例シリーズ2 よくある業務系」
sevensdoorの竹内さんが実際に手がけたソリューションを例にとり、受注から
工場での製造指示、在庫の管理や請求処理など、現場で使える機能をTipsも交
えてご紹介します。

【しげた・かつのり】shigeta@amonita.com
Webプロデューサー/テクニカルライター。
最近、子供と遊ぶ時間が減ってしまっていることを突然猛烈に反省している40
歳。せめて週末は休もう。

[Max_blog ―“インターネット拾いモノ”でも執筆中]
<http://www.maxwald.co.jp>

[mixi ―“永吉克之Fan☆Club”コミュニティ]
<http://mixi.jp/view_community.pl?id=94983>

[有限会社アモニータ(Web制作/プランニング/出版プロデュース)]
<http://www.amonita.com/>

[有限会社レクレアル(FileMakerソリューション開発)]
<http://www.recrear.jp/>

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■ショート・ストーリーのKUNI[18]
兄弟

やましたくにこ
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兄はつまらないことにもすぐ怒るが、弟はなかなか怒らない。
ここは郊外のファミリーレストラン。日曜日の昼時でそこそこ混んでいる。
「おい弟、さっきのウェイトレスの言い方、むかつくなあ。『ご注文は照り焼
きハンバーグがお一つ、カリブの風サラダがお一つ、明太子スパゲッティがお
一つでよろしかったでしょうか』やで」

「‥‥普通とちゃうん?」

「どこが普通やねん! いちいち過去形で言いやがって。『よろしいでしょう
か』と、なぜ言えん。なんでも過去形でええんやったら天気予報でも『明日は
晴れでした。今週後半は冷え込むおそれがありました』でええんかい!」

「そんなことゆうてへんがな」

「うわ、後ろの席で子供が泣き出した。やかましいなー。親はどういうしつけ
しとんねん! ここを何やと思てんねん!」

「まあ、文字通りファミリーレストランやし、子供も来るやろ。親が気ぃつけ
てても泣くときは泣くやろ」

「ものわかりのええやっちゃな、おまえは。そんなことやからあかんねん! 
最近はひとの迷惑も考えへん親が多いんや。それを許してたら日本は終わりや
アメリカの属国や」

「おおげさやなあ、兄ちゃんは」

「どこが大げさやねん! おまえがおっとりしすぎやねん! あ、今度はあっ
ちの席でおっさんが煙草すい始めたがな。うわー。あそこは喫煙席とちゃうの
にすぱすぱと。どういう神経やほんま。しやけど、その煙浴びてるのがさっき
の子供やから、まあええか」

「ええことないけど‥‥」

「わ、ええ気味や思たら煙たいゆうてますます泣き出した。地獄やな。やっぱ
り、こらちょっと行ってきてガツンと」

「兄ちゃん、やめとき。あのおっさん、目つき悪いし、逆ぎれされたら」

「おっさんやのうて子供をガツンとするんやがな」

「あ、それなら‥‥いや、それも具合悪いやろ」

「おまえは窮屈なやっちゃなー。おまえとおったら気の向くままひとを殴るこ
ともできん」

「普通、そうやろ」

「なんか暑いなあ、ここの店。暖房しすぎちゃうか? もう春やのに、いつま
でも冬とおんなじ暖房してるんちゃうか? 臨機応変にいかんかい! 調節し
てもらわな。おい、ウェイトレス! あー、こんな時に限って振り向いてくれ
へん、いらんときには来るくせに、おーい」

「兄ちゃん、暑かったら、そのダウンジャケット脱いだら。店の中でそんなも
ん誰も着てへんし」

「お! ほんまや! わはは! こんなもん着てるから暑いんや! おまえ、
知っててなぜ言わん! おれに怨みがあるんか」

「だれがやねん、ほんまにもう‥‥」

「それはそうと、まだかいな。照り焼きハンバーグがお一つ、ハリスの風サラ
ダがお一つ、明太子スパゲッティがお一つ」

「兄ちゃんまでいちいち『お一つ』て言わんでもええやろ。それに、ハリスの
風やのうてカリブの風」

「冗談やがな! なんでおれが『ハリスの風』と『カスマプゲ』を間違えるね
ん」

「ますます違うてるし」

「もう注文してから10分もたってる。ひとの貴重な時間をなんやと思てる。10
分やぞ! 10分ゆうたら難波から地下鉄乗って梅田行ってまだ時間余るくらい
や。次は中津や。あ、もう11分。次は西中島南方、その次は新大阪、JR新幹線
乗り換え。わーもう」

「せわしないな。落ち着きいな」

「おれはもうがまんできん! 言うてくる! 『よろしかったでしょうか』と
過去形で言われ、長いこと待たされて、おまけに子供は泣く、おっさんは煙草
すう、暑い思たらダウンジャケット着てた、これによる精神的苦痛がどれだけ
になったと思てる。おまえがなんと言おうと言うてくる! 責任者はどこや!」

「ほんまにやかましいなー。ちょっと待ちぃな。あ、ウェイトレスが来た。な
んか気のせいか申し訳なさそうな顔してるな。え? はあ? 明太子を切らし
ているので、普通のたらこでいいか?って?」

「‥‥おい、弟。どないしたんや。へんな顔して。明太子スパの代わりにたら
このスパでもええやろ? おまえが何かぼうぜんとしてたから、『はいはい』
と、おれが返事しといたけど」

「‥‥」

「どどどどどどどないしたんや。そんなこわい顔して」

「‥‥殺してきてええか」

「ここ、殺す? 誰を殺すねん?!」

「この店にいてるみんな」

「ななななな、何を突然言うねん、はは、ははは、落ち着けよ、弟」

「おれは明太子スパがめちゃ好きやねん。たらこスパなんか食いたくない‥‥」

「あ、そそ、そやったんか! 悪い、悪かった! しやけど、殺すことないや
ろ!」

「兄ちゃん、知ってるやろ。おれが、ふだんは滅多に怒らんけど、怒るときは
まじで怒るっちゅうこと。人間の怒りパワー一定の法則‥‥」

「ああ、そやったそやった、ちょっとずついつも怒ってる人間と、たまにしか
怒らん人間との二種類あって、結局人の一生分の怒りパワーは一定であるとい
う法則。えー、発見したのはアボガドロやったかハイドンやったかスピルバー
グやったか、いや、忘れたけど。悪かった、悪かった、頼むからそんなこわい
こと言わんと、落ち着いてくれよ。だいたい、おまえ、殺すゆうてもどないし
て殺すねん」

「こんなこともあろうかと、手榴弾持ってきた」

「ほほ、ほんまか!」

「包丁もあるし、ピストルもあるし、タリウムもトリカブトも」

「おおおおおおまえ、いつの間にそんなもん手に入れたんや。インターネット
で? 便利になったなー、そらよかった‥‥いや、違う違う! そんなこと言
うてる場合ちゃうがな! だいたいタリウムやトリカブトはすぐに効かんやろ、
まあええけど、思い直してくれ、頼む!」

「兄ちゃん、その手を離してくれ」

「離すかいな、おまえを行かせてなるかい! 長いつきあいのおまえを見捨て
てどないすんねん! しやけど、腹が減って力が入らんわ、ああ、照り焼きハ
ンバーグ食べた後やったらまだよかったんやけど」

「離してくれ!」

「離さんわい!」「離せ!」「離さん!」「あんた、何やってんの?」

不意に声をかけられ、おれは我に返った。目の前にはぶさいくなおばはんがひ
とり。ああ、おれの嫁はんや。

「遅れるから先に行って注文しといて、て言うといたら、何これ。照り焼きハ
ンバーグにカリブの風サラダに明太子スパ、どれも一人分? 自分のことしか
考えてないやん。あんたらしいわ、ほんま。それに、何やのん、さっきの? 
自分で自分の腕握って、うんうん苦しそうな声出して。あー気色悪」

おれはすっかり疲れはて、すぐに返事をする気にもならなかった。そう、おれ
の中にはやたら怒りっぽい男とふだんは怒らずおっとりしているが一旦怒ると
凶暴になる男のふたりが同居している。どちらがいつ主導権を握るやも知れぬ
スリリングな日々の中、おれは最悪の事態を避けることでせいいっぱいなのだ
が、それをこいつに説明してもわかってくれると思えない。

「ここの照り焼きハンバーグなんかよう注文するわ。何の肉使てるんやろと思
うくらいまずいのに780円もとって。あんたぐらいやで、だまされるのん。聞
いてんの?」

いかん。おれの中の兄弟がまた反応し始めた。

【やましたくにこ】kue@pop02.odn.ne.jp
みっどないと MIDNIGHT短編小説倶楽部
<http://www1.odn.ne.jp/%7Ecay94120/>

<応募受付中のプレゼント>
Web Designing 2006年5月号 本誌1960号(4/27締切)


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■編集後記(4/20)

・一昨日の新庄の引退宣言がテレビのニュースでも大きく取り上げられていた
が、見ていて不快だった。そういう人は多いだろう。前々からお調子者のパフ
ォーマンス野郎で、そのくせ活躍もしちゃうのがにくらしいと思っていたが、
どちらかというと新庄はきらいではなかった。それが、今シーズン限りでユニ
フォームを脱ぐから、「最後のユニフォーム姿を目に焼き付けて下さい。残り
のシーズンをどんどん楽しんでいきます」とかいうことをニヤニヤしながら言
うではないか。ほんと、信じられないくらいばかな言いぐさ。目に焼き付けて
下さい、なんてフツー自分から言うか。この時期に、「残りのシーズン」「ど
んどん楽しんで」なんて、チームメートの前でフツー言えるか。やはり、正真
正銘のばかだった。野球をなめるなと、こういう自己チューを相手に言っても
しょうがない。わかった、お前はもういいから、ユニフォームをすぐ脱げ、サ
ヨナラと球団やファンは声を上げるべきだろう。当然上がってる? 上がって
ない? まあ、どうでもいいです。スポーツというより芸能の話題なんだから。
プロ野球ナイトゲーム、昨日も見ていたが、相変わらずつまらん中継だ。この
回が大事とか、次の一球が大事とか、先取点をとりたいですねとか、中畑を始
めとする解説者って、100%素人でも言えることしか言わない。言えない。そ
もそも、野球で大事でない瞬間なんて、攻守交代の時間くらいだろうが。「タ
ーニングポイント」とやらを新機軸とうたっているようだが、そんなもの押し
つけられんでも、見ていりゃわかるって。芸のないへたな解説を笑うのがナイ
トゲームの楽しみだ。                     (柴田)

・今週の週刊プロレスの付録は、ノア丸藤のクリアファイル。KENTAの時は何
とも思わなかったが、丸藤のはちょっと欲しい……。結局写真集は買わなかっ
たし、この号にだって気になる記事がないのでクリアファイルに500円は高い。
そんなにかっこいい写真でもない。持っていても邪魔になるだけのような気も
する。使い道もない。わかっちゃいるんだよ、うん。/プロレスの技名と技が
覚えられない。同じ技なのに違う人が出すだけで名前が違ったりするし、微妙
な違いで違う技になってしまう。ま、わかんなくても面白い時は面白いんだよ。
頑張っている選手には声援が多くなるんだよ。などと思いつつ、日本テレビの
アナウンサー矢島学さんのエッセイ「方舟武道館」を読んで少しは勉強するか
なぁと。/探偵ナイトスクープに小橋選手が。途中からしか見られなかった。
関西以外のところでは数週間のうちにやるはず。ぜひ見て。 (hammer.mule)
<http://www.bbm-japan.com/wp/special/marufuji/>  クリアファイル
<http://www.bbm-japan.com/wp/special/kenta/>  KENTAの
<http://ja.wikipedia.org/wiki/矢島学>  ↓方舟武道館
<http://www.ntv.co.jp/announcer/new/mujina/m_yajima/060407.html>
<http://diary2.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/ja08021996/>  秋山社長の徒然日記
<http://huma573.at.infoseek.co.jp/kiken00.html>  プロレス危険技
<http://mycasty.jp/ishida/html/2006-03/03-29-315931.html> 途中からしか
<http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006041900041> 建六君は雌

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編集長     柴田忠男 
デスク     濱村和恵 
アソシエーツ  神田敏晶 
リニューアル  8月サンタ
アシスト    鴨田麻衣子

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