[2002] 車検をめぐる冒険

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<木っ端役人....、いえ、現場を支える尊敬すべき公務員の方々……> 

■デジアナ逆十字固め…[10]
 デジタルか? アナログか?(その2)
 上原ゼンジ

■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[110]
 車検をめぐる冒険〜その1〜
 茂田カツノリ


■デジアナ逆十字固め…[10]  
デジタルか? アナログか?(その2)

上原ゼンジ
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この連載の第一回で「デジタルか? アナログか?」という話を書いたが、最近なぜか「デジタルはいかん!」的意見が目に付くようになったので、再び、同じテーマで考えてみたいと思う。

私が「その1」で言いたかったのは、以下のようなこと。

デジタルというと、0と1、白と黒しかないようなイメージもあるが、現在のデジタルカメラの内部処理は12bitや14bitで行なわれている。これは、それぞれ4,096階調、16,384階調という細かさだ。これだけ細かければ人間には知覚できないほどだし、もはやアナログの対立概念と捉える必要はないんじゃないだろうか?

フィルムで撮影したとしても、印刷、DPE、WEBではスキャニングをしてデジタル化される場合がほとんどだ。デジタル化して信号処理することは、そんなに悪いことなんだろうか? 魂が抜けちゃうわけ? そんなことに拘っているよりも、デジタルを使ってアナログ的な表現をすればいいじゃん。

という感じだ。別に「フィルムよなくなってしまえ!」なんてことを言っているわけではない。ただ自分はデジタルカメラを使って表現をしていきたいと思っているので「フィルムにあらずんば、写真にあらず」的なことを言われると、困ってしまうのだ。

新しいテクノロジーが生まれて、それに対し「よく分からないけど、とにかくイヤ!」という拒否反応が出るのは、しごくまっとうなことだと思う。そして「オレはデジタルは認めんぞ。絶対に!」と宣言をすることも勝手だ。好きにして下さい。でも、「デジタルには魂がないので、まともな写真は撮れない」となると「んはあああ???」と言わざるをえない。

以下、私が見聞きした意見に対し、勝手にコメントをつけてみたい。

◆デジタル写真には実体がない
◇実体とは何だろう? 物理的なものか? 観念的なものか? 画像データに実体がないとしたら、すべてのプログラムにも実体はないし、パソコンはただの箱になってしまう。最終的に欲しいのはメディア上に再現されたイメージなのだから、中間生成物に対してとやかく言う必要はないんじゃないだろうか。

◆デジタルカメラの色はいい加減
◇よく、「デジタルカメラの色はいい加減」という言い方があるが、けっしてそんなことはない。デジタルカメラのデータには画素毎の色情報が記述されている。さらにカラースペースも定義されているので、色の尺度でもあるCIEカラーに交換可能。

1画素毎にCIEカラーに対応できるんだから、全然いい加減ではない。それが出力時に色が変わってしまうというのは、また別の問題。出力時の設定が悪いだけで、元データが悪いわけではない。

◆デジタルを使うと写真が下手になる
◇別にうまくはならないと思うけど、下手にはならないんじゃない? それよりもこういう光の状態で撮影したらどうなるのか? このレンズで絞りを5.6にした場合にどう写るのか? なんていうことを簡単に、金をかけずにテストできるし、ピント合わせ、露出の決定の仕方なんていうことも練習できるから、逆に上達は早いと思うけど。

◆フィルムでなければ写真とは言えない
◇最初に考えられたのが感光による光の記録だった。しかし、光を電気信号に置き換えることもできるようになった。撮像素子が光を受けた段階では電荷。つまり、デジタル信号に変換する前はデジタルカメラだってアナログ。なんで化学反応はオーケーで、電気はダメなんだろう?

◆いくらでも修正ができてしまう。それは写真ではなく絵画
◇絵画のように修正した写真は絵画かもしれないけど、なんの修正もしていなければ写真のままでしょ。元々可視光のすべてを印画紙上に再現できるわけがないんだから、現実のすべてをそのまま記録し、再現できると思いこむのは傲慢。それに世の中の人は、素人もプロフェッショナルもそんなに写真をいじってはいない。

◆出力は印画紙でなければ写真とは言えない
◇私が考えてみた写真の定義は「光の量により、イメージ(画像)を記録し、再現する技術」。再現メディアは印刷だろうが、インクジェットプリントだろうが、モニタだろうが、構わないと思う。かつて写真家は鶏卵紙、ゴム印画、ダイトランスファープリント、ゼロックス、シルクスクリーン等、さまざまな技法で写真表現を行なってきた。それぞれが、自分の表現に最適な方法を選べばいいと思う。

今後現われるモニタというのは、今まで見たことのないような広色域、高精細、高輝度のものだ。そんなモニタが現われたら、そのモニタでなければできない表現を追求すればいいと思う。自ら発光することのない紙とはまったく違った表現が可能になるはずだ。

バライタ印画紙にきっちりと焼いたモノクロプリントの美しさは認めます。でも森山大道の「光と影」を高輝度モニタで見たら、結構ガツンとくると思うぞ。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
「すぐにわかる! 使える!! カラーマネージメントの本〜仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ)が発売中。
< http://book.mycom.co.jp/book/4-8399-1937-2/4-8399-1937-2.shtml
>

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■子育てSOHOオヤジ量産プロジェクト[110]
車検をめぐる冒険〜その1〜

茂田カツノリ
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ども〜、最近ハラ立つこと多くて多くての茂田です。ま、これもすべて私の不徳の致すところかと。懇意にしてもらってると思ってた相手に、実は結構煙たがられてたんだなあとかいうことがわかったりすると、まだまだ修行が足らんなあと考えるのであった。

●自動車税の制度が変わった

先日買ったクルマを車検に出した。で、この4月から自動車税の扱いがちょっと変更になったのだが、その影響を受けてえらい無駄な時間を使ってしまったので、そのご報告をする。

変更になったのは、所有者変更時の月割りがなくなったという点。

いままでなら、旧所有者は払った自動車税の還付を受け、新所有者は自分の住所地で月割りで納税する、という形だった。これが、要は未納率が高いというあたりの理由で、とにかく4月1日時点の所有者に問答無用で1年ぶん請求する、というふうに変わったのだ。

だから、4月3日にクルマを買った僕は、旧所有者に1年ぶんの自動車税を払い、その方が納税した、という形になった。納税という点では、これで一件落着である。

しかし問題は車検。

車検のときは、納税がなされているかを確認するために納税証明書というものの提示が必須。そんなん陸運局と都税事務所とで情報共有すれば済むわけだが、そこは縦割りな木っ端役人....、いえ、現場を支える尊敬すべき公務員の方々のこと、そういうシステムにはなってない。

でも、陸運局と都税事務所とは隣接してるのが普通で、品川でも同じ敷地にあるから、書類足りなければそっち行って無料で納税証明再発行してもらって一件落着、だったのだ。

・東京都主税局のおしらせページ
< http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/info/20060401.htm
>

●システム上の大問題

という話ならなんの問題もなさそうだが、そうはいかなかった。僕の場合、4月1日時点では春日部ナンバーが付いていたから、今年の納税は埼玉県税事務所に対してなされたのだ。

そうすると、この納税証明書は埼玉県の旧所有者のところに郵送される。税金払ったのはこの人なんだから、それは当然のこと。

しかし困るのは車検取ろうとする僕のほうで、なんと、埼玉で納税されたことについての証明は、埼玉まで行って取らねばならないというのだ。

きょうびオンラインシステムでも、あるいはFaxというものだって存在するのに、この木っ端役人....、いえ、現場を支える尊敬すべき公務員の方々は何をやっとるのだ。

しかし、いままでの月割りの仕組みだったら、名義変更した時点で新住所にて納税するから、そこで納税証明が取れたのに、余計な変更をしてくれるから、こっちはもういい迷惑である。

木っ端役人....、いえ、現場を支える尊敬すべき公務員の方々が、いかに人民のことを考えてないかがよおおおおくわかる事例である。

ついでにいうと、こういうややこしいルール変更を、クルマ屋さんの多くは把握できてない。これはしょうがないけど、さらに県税事務所自体も思いっきり誤解している。

僕は、車検屋さんからこの件で連絡をもらったときに、すぐ埼京線乗って埼玉行って、納税証明取ってくるつもりだった。で、念のため埼玉県の自動車税事務所に電話確認したところ、「すでに品川ナンバーに変更されているので、納税証明は埼玉では取得できませんが、都税事務所で取れるので大丈夫ですよ」と言われた。

これはもちろん大ウソで、おかげで僕は希望する日に車検が取れず、必要な日にクルマを使えないという損害をこうむったのである。

ちくしょう、木っ端役人....、いえ、現場を支える尊敬すべき公務員の方々は、どこまで人民の邪魔をすれば気が済むのか。

納税証明自体は県税事務所に郵送で(笑)請求すればもらえるので、4月以降に県外から中古車買って、今年度中に車検があるという方は、旧所有者もしくは旧住所の県税事務所から、車検用の納税証明書を早めに取り寄せておこう。

●なんとも脇の甘い人たちだな

僕の知る限り、自動車税事務所というのは自動車税を取ったり管理したりしているところのはずだ。要は、その道のプロだ。

その方々が、今回この形でのルール変更をするにあたって、今年度に県外から名義変更されてきたクルマが車検を取る際に、納税証明で困るということに気づかなかったのだろうか?

もちろん、年度が変わった直後の、税金の請求が来る→支払う→納税証明が郵送される、というこの4、5月の間にしか、この問題は起きない。6月以降なら、すでに今年度の納税証明は来てるはずで、譲渡の際にそれを付けてもらい、それを車検時に提示すればいいから。

でもね、これだけたくさんクルマがあるんだから、すでにこの問題は現場ではたくさん発生しているはずだ。だからこの時期の臨時措置として、他県どうしの県税事務所でFax確認をするだとか、そういうことを考えたりはできるはずだ。

渋谷税務署の地下駐車場は、エレベータ近くの便利な場所が職員用で、そっから離れた不便なほうが来客用になっている。こんなの民間企業では考えられないこと。でも、要するに木っ端役人....、いえ、現場を支える尊敬すべき公務員の方々っていうのは、そういうアタマをお持ちだということだ。

あ〜ハラ立つ。ちょうど仕事でクルマ使おうと予定してた日に、こんな目に遭うとは....。

そして、クルマに関するネタは、あと2週ほど続く予定なのであった。

▼『RIAコンソーシアム・ビジネスセミナー』7月6日(木)13時受付開始
< http://www.ria-jp.org/information/20060706.html
>
デジクリいちのCoolな熱血漢、三井英樹さんのお話しが聞けるイベント。「インターネットの未来像」なるものに多少なりとも関心をお持ちの方なら、もう必見。あるいは、単なるビジネスソリューション屋さんにとっても、実はとても大事な話であったりするんだなこれが。
僕は当日、AppleのTシャツにオレンジのウエストバッグで見に行く予定ですので、僕のことイッパツぶん殴ってやろうという方も、ぜひご来場ください。

▼『FileMaker Fun Night! AppleStore銀座』 7月8日(土)18時〜19時
< http://www.apple.com/jp/retail/ginza/week/20060702.html
>
「開発事例シリーズ3 承認フローを考える」
FileMaker7から大きく変わったアクセス権についての解説を交えつつ、電子承認フローシステムを実際の事例をもとにご紹介いたします。

【しげた・かつのり】shigeta@amonita.com
Webコンサルタント/プランナー。
ちなみに先週は、僕のちょっとしたミスでメールを送り損ねてしまい、その後ずっと外出していたためやむなく休載となったのだった。編集部にご迷惑をおかけしてしまい反省...。

[有限会社アモニータ(Web制作/プランニング/出版プロデュース)]
< http://www.amonita.com/
>
[有限会社レクレアル(FileMakerソリューション開発)]
< http://www.recrear.jp/
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[Max_blog インターネット拾いモノでも執筆中]
< http://www.maxwald.co.jp
>
[mixi 永吉克之Fan☆Clubコミュニティ]
< http://mixi.jp/view_community.pl?id=94983
>

<応募受付中のプレゼント>
おしえて!!Flash8 本誌1996号(6/30締切)


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■編集後記(6/29)

・デジクリの新しい世紀が始まります
サイトもリニューアルオープン
< https://bn.dgcr.com/
>

・文教堂に「メカビ」を取り置いてもらい、カウンターで「電話で注文したメカブを」と言ってしまい、普通の表情で「メカビでございますね」と応じた女性店員はえらい。でも、ピンクの表紙に美少女アニメ絵「男子は皆、オタクである」とか「萌え世代のサブカルチャーマガジン」なんて書いてあるんだから、正直言ってちょっと恥ずかしい。メカビとはメカと美少女のことである。わたしの編集するWebサイト「帰ってきたCG美少女」でも定番のテーマである。これはもう、中身も見ずにとにかく買うしかないではないか。理論武装に役立ちそうだし。ざっと眺めて、どこが萌えなんじゃという印象。活字がぎっしり、養老孟司、樋口真嗣、麻生太郎外務大臣、新聞のオタク記者たち、ロマのフ比嘉、Gackt、それからライトノベル作家やアニメ脚本家、ゲームプロデューサー、漫画家など、男たちがアップでぞろぞろ。いわゆる萌えビジュアルは全然ないのだ。森永卓郎、竹内一郎、本田透、皆川ゆからがハードな論陣をはる。この雑誌がカバーする範囲はそうとう広く散漫な感じもするが、これがまさしく現代のオタク界なのだという。編集人は昼間は「ブルーバックス」をつくっている松下友一さんで(ということは、夜この本をつくっていたわけか)「自分が好きなことを仲間同士で思いっきり語り合っているときの楽しさ」を追求し、再現していくのが目的だと発刊の辞で書いている。それこそ雑誌の原点だ。うらやましい仕事だと思う。スーパーバイザーに堀田純司、本田透という強力な二人が加わっているんだから、オタク情報総合誌を編集するには最高の環境、といっても編集スタッフはあとひとり、昼間は「選書メチエ」をつくっている井上威朗さんだけ。片手間(?)でよくここまでまとめあげたものだ。ホンモノのオタク、オタクの魂を解する人に本書をおすすめする。わたしには、正直しんどいページもあったが。でもこんな特殊な本、1号で終わりかも? と思ったら重版されて、土曜日はイベントまで行われるようだ。スゴイ。「日経ビジネスオンライン」の記事がおもしろい。雑誌編集者は読むべし。 (柴田)
< http://mekabi.weblogs.jp/
> メカビのブログ
< http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20060607/103839/
> 
日経ビジネスオンライン

・昨日の編集長の後記。まったくその通り。過去の自分は恥ずかしい。読者が減った要因には、携帯版を急にとりやめたせいもあるのだが。人間って強くてしぶといと、四歳の甥を見ていて思う。服を着替えられ文字まで読めるようになったし、生意気な口まできく。トイレすら一人でできないまま産まれてきたのに。そのうち恋愛しただの、成績がどうのという話をするようになるんだろう。贅沢な(←自分のこと 笑)。周りに育ててもらわなかったら、人間は生きてこれなかったんだからねっ(笑)。大人になっても、知らないことばかりで、三歩進んで二歩下がるっ。ま、元々はこんなだったし、成長したよなと甥を見る。Iさんから、宇多田ヒカルの歌詞に「向かい風がチャンスだよ今飛べ」というのがあると教えてもらった。ありがとうございます。チャンスも危機も表裏一体だもんね。後記に書いたから、こういうことも教えてもらえるんだよね。ほんとラッキーだ。人前に出たり、営業が苦手なのだが、えいやっ! 失敗してもええわ、という気持ちで最近トライ中。玉砕しても何か得られる、かな? 面白い出会いがあればいいや。/サイトバナー広告募集中です。(hammer.mule)
< https://bn.dgcr.com/archives/20060626053427.html
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