小さいころ、「ケンちゃんチャコちゃん」というテレビドラマを見ていた。内容はよく覚えていないのだが、小学生のケンちゃんと妹のチャコちゃんが、健気な頑張りで日常のトラブルを解決していく話だったような。私の「妹萌え」の原点になっている、って話は置いといて。
その中に「ぼくの夏休み」という回があった。実はスタッフの夏休みで、ケンちゃん、チャコちゃんが、というよりその役者が夏休みに湘南へ遊びに行って、水族館などを見て回る模様を絵日記ふうに記録しただけのもの。
当時、ドラマを実場面そのものだと信じ、あの人たちにはいつも何か問題が降りかかるものだと信じていた私は、今に何か起きるはずだとずっと固唾を飲んで見ていたのに、結局何も起きなくて、ひどくがっかりした。
今回の話はそんなようなもんだと思って下さい。内容はありません。とあるオタクがこんな夏休みを過ごしましたという、平凡な日記のようなものです。
●池袋乙女ロードでデート
7月30日(日)、仕事はまだあと一週間あるが、デジクリが夏休みに入って開放感の週末。こういうときは怠りなくオタク市場動向調査のフィールドワーク。女性のオタク向けの店がひしめく池袋へ。「アニメイト」や「K-BOOKS」がある通りは「乙女ロード」と呼ばれ、周辺には執事喫茶(メイド喫茶の女性向け版)やBL喫茶(男装の麗人がウェイター)などが続々とオープンしている。一人で乗り込んでいく勇気はないので、「乙女」を一人召喚。早い話が、情報収集にかこつけたデートである。
紗有羅とは去年の8月に愛知万博で知り合った。ゴンドラの乗り口で、待ち行列が折り返し折り返し、10列ほどの四角い塊をなしている中で、私の4〜5列前に真っ白なドレスを着た、若くて美しい女性がカートを引いて並んでいるのがひときわ目立ち、列がのろのろと進むにしたがって近づいたり離れたりするのをずっと目で追っていた。
世界コスプレサミットの開演前、ステージ前の特別席に招待されたコスプレイヤーが周辺に集まっている。その中に先ほどの人を再発見。「これが私のご主人様」のメイド、沢渡瑞穂の姿になっている。さっそく声をかけて撮らせてもらう。長野県から来た高校3年生だそうで。25歳年下だ。
以来、細々とながらメールのやりとりが続いていた。卒業後、東京に出てきて服飾学校に通うようになったので、ぜひ会いたかったのだが、なかなか機会がなく、ほぼ一年ぶりの再会である。
こういうとき私は、どこぞの巨大掲示板に「ヘルプ求む」などと書き込み、人々のアドバイスにしたがって脱オタしていくようなヘタレなことはしない。カジュアルなシャツの裾をジーパンの中に入れ、背中には夢のいっぱい詰まった汚いリュック。20年来の秋葉系スタイルでビシッとキメて行った。
紗有羅はゴスロリ姿で現れた。パニエで膨らませた黒のスカートは自作だそうで、3段になっていて、それぞれの裾にフリルがひらひらとついている。ほぼ黒ロリなんだけど、首に首輪が巻いてあるあたりがゴスである。鎖がついていて、もう一端は輪になって、自身の左手首に巻いてある。その一端を私がもらって、左手で持つ。右手は彼女の左手とつないでみる。よしっ。傍目にもお似合いのカップルと映ることだろう。
通りすがりに「乙女喫茶」なる店を見つける。店名は"Cougar"。
< http://www.otomecafe.com/47224975/
>
入るとカッコいい男性ウェイター2人が迎えてくれる。1人はちょっと抜けてて可愛い感じだし、もう1人は見目麗しく、ゴスな女装で原宿を歩いたりするが、男性だと気づかれることはまずないそうである。女性向けゲームに詳しく、乙女たちと話が合いそうである。我々とはヴィジュアル系バンドのことで話が合い、大いに盛り上がる。シャズナのイザムが男性的なイメージで復活したのを喜び合ったり。ゆっくり話しができて、楽しめた。
メイド喫茶「ワンダーパーラーカフェ」も初めて入ったけど、非常にいい。
< http://wonder-parlour.com/
>
雰囲気が上品。コミック「エマ」の感覚。3人いたメイドさんの衣装は、裾丈やヘッドドレスなどがそれぞれに違えてあるが、コンセプトは、19世紀ヨーロッパ風の本格的なメイド。ロングのメイド服が見れたのが嬉しい。リッチなご主人様の気分。場所柄もあって、女性のお客さんが多い。
他に、スーパードルフィーのVolks(ボークス)のショールームを見たり、ナムコナンジャタウンを回ったりして、ベタベタ、ラブラブな一日であった。最寄駅まで送り、改札口の手前でキスして別れる。あ、キスすんのも8年8か月ぶりだなー。……ってな話を読者の方々が読みたいかどうか、心許ないのですが、今回は「ぼくの夏休み」ってことで。
●今年の世界コスプレサミットは報道陣がいっぱい
翌週末、8月5日(土)、6日(日)は名古屋で世界コスプレサミットが開かれた。初日は去年と同じく大須の商店街をパレード。2日目は場所を栄の「オアシス21」に移して、チャンピオンシップ。参加国は去年よりも2か国増えて、9か国になった。今年から外務省が後援するようになり、優勝者には外務大臣賞が贈呈される。去年に比べて報道陣がどっと増えた。
初日のパレードは3:30pmから。朝の新幹線で東京を発ち、午後から大須を下見。町全体がお祭りで、すごい人出。往き交う人々の姿の多彩さは、下町と原宿を混ぜこぜにしたよう。オタクの街でもあり、「グッドウィル」というパソコンとアニメ関連グッズの店舗があり、館内と周辺にメイド喫茶が(亜流も含め)3軒もある。
パレード前、コスプレカフェ「L@yers cafe コモック」で参加者の交流会が行われている。部外者は入れないのだが、たまたま涼をとりに下の階に降りてきているコスプレイヤーがいて、話しかけてみると、タイからの参加者だった。NanさんとAntさん。この日は「天誅」というゲームで合わせ。翌日のチャンピオンシップでは「鬼武者4」の合わせで出るそうで。
パレードの出発点である大須観音にコスプレイヤーが50人ほど集まると、撮ろうとする人でごった返した。その中には主催のテレビ愛知のカメラクルーの他にも、メジャー紙の腕章をつけた報道記者がうじゃうじゃ。私も混ざって撮る。列が動き始めると、前方の商店街の両脇はすでに黒山の人だかり。それがまばらになるところまで走り抜け、撮る場所を確保。
通りすぎるパレードを定点から撮っていると、半分ぐらい撮り逃してしまう。そこで、大半が通りすぎたところで、裏の道へ回り、走ってパレードを追い越し、先頭に出られたところで、また撮る。報道カメラマンたちもそうしている。走る、走る。猛暑の中を走る。脚立持って走る。
さっきのタイのコスプレイヤーも見つけることができて、手を振り合う。万松寺の身代わり不動明王前に海外からのコスプレイヤーが勢揃いしてキメポーズ。写真撮影タイム。私は、端っこながら、最前列に場所を確保することができた。身を投げ出して寝っ転がって撮ったりと、こっちも派手に。
●チャンピオンシップではテレビ取材受ける
翌日のチャンピオンシップも、去年に引けをとらない盛り上がりだった。「オアシス21」は吹き抜けの地下広場で、地上階からもステージを見下ろせる。さらに上方に、巨大な楕円形のガラスのひさしが、宙に浮いたように据えつけられ、上を水が流れている。
開演は6:15pmだが、午後から延々とリハーサル。この日も晴天で、暑い。5:00 pmに開場になると、350席ほどの客席があっという間に埋まり、周囲に同数以上の立ち見の人垣ができた。開演までの間、たくさんの報道陣が、客席のコスプレイヤーたちに手当たり次第に取材している。
私も客席後方のスペースで、カメコる。「ちょびっツ」の「ちぃ」のドレス姿の方を撮り終えた瞬間、後ろからテレビの取材班がすっと近づいてきた。カメラを向けられ、女性レポーターからインタビューを求められた。TBSテレビだそうで。え? カメコまで取材する? 実は私が撮っている間も撮られていたのだが、気がついていなかった。応じると、「プロですか?」「歳は?」「どちらから?」「職業は?」「撮った写真の使い道は?」等々、いろいろ聞かれ、真面目に受け答えした。
コスプレの原動力はキャラへの愛にある、カメコはそのがんばりに報いるべきもの、という自説もしっかりと主張した。なぜか緊張せず、すいすい言葉が出た。だけど、ひとつ後悔。TBSは「ローゼンメイデン」を放送した局なんだから、脳内妻の真紅のことも自慢しておけばよかった。キャラへの愛とはこういうもんだという好例になったはずだ。
まあ、しかし。私の姿なんて全国のお茶の間に流す価値ゼロだから、どうせボツよ。変わった人がいるから、インタビューにかこつけて話を聞いちゃおう、ぐらいの感じで、遊ばれたんだ、きっと。さっさと忘れよう。
さて、ガンダムのアムロの「行きまーす」の声で、チャンピオンシップがスタート。司会はその声の主、古谷徹氏。審査員は漫画家の永井豪氏ら4名。世界9か国から集まった11組22人のコスプレイヤーたちに各3分ずつ、パフォーマンスの時間が割り当てられる。
コスチュームのレベルが非常に高いだけでなく、見せ方に工夫が凝らされ、客席からどよめきが何度も上がった。中国代表は演出がすばらしく、最後は血しぶきに見立てた赤い紙ふぶきを舞わせた。タイ代表はナイフを持って、スピード感ある格闘演技。日本代表Aはガンダムのメカ姿でがちゃがちゃと動き回り、ライトセイバーを銃に持ち替え、最後は頭から蒸気を噴射。日本代表Bは3分の舞台でベルサイユの薔薇の衣装を次から次へと早替わり。
優勝したのはブラジル。「天使禁猟区」より、背中に大きな翼を背負った2人の天使が戦うパフォーマンスを演じてくれた。息がぴったり合って、音楽も迫力があって、よかった。しかし、このイベントの意義は、勝敗を決することよりも、参加者どうしの交流にあると思う。去年もそうだったけど、みんな言葉の壁を越えて、すぐに仲良くなっちゃって、勝ち負けには全然こだわらないそうで。それを聞くとなんだか嬉しい。
タイ代表の2人が、ステージから私を見つけて手を振ってくれた。思わず大きく両手を振り返したけど。……俺が目立つじゃないかー。
8:30pmに終了。まだ新幹線で帰れる時間だったが、せっかく指定席が取れていたので、夜行の快速「ムーンライトながら92号」で帰る。
●全国放送され、「見たよ」攻撃
8月8日(火)、私がテレビに出てたとMABOから知らせが来た。MABOは、去年の12月に、旅行ガイド「ロンリープラネット」のテレビ版の収録でご一緒したコスプレイヤー。TBSの「2時ピタッ」という2:00pからの一時間番組で全国放送されちゃったらしい。MABOも映ったそうだ。ゴールデンウィーク中に上海で中国予選があり、そのときにゲストコスプレイヤーとしてステージに立っており、その模様が放送されたそうで。図らずもまた同じテレビ番組に出たことになる。
私は、コスプレイヤーを撮っているところから始まり、単独インタビューの模様がずいぶん長く映ってたらしい。私は見てないけど、TBSさん、あんなの放送しちゃってよかったのでしょうか? 苦情は来ませんでしたか?
8月11日(金)〜13日(日)のコミケでは、ずいぶん「見たよ」攻撃に遭った。2日目、国際展示場駅から東京ビッグサイトに向かって歩いていると、見覚えのあるお兄さんがビラを配っている。池袋の乙女喫茶"Cougar"の見目麗しいウェイター、鏡(かがみ)さんだ。声をかけると、向こうもすぐに気がついて、「テレビ見ました」と意表をつく攻撃。
うぎゃ〜〜〜!!!
乙女喫茶の美麗なウェイターさんが、美麗とは対極の私の姿をテレビで見てたって、なんか間違ってないかい?
ああ、数奇な俺の人生。
【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
目指せ、カリスマカメコ! いや、目指さんでよいから〜。イタリアからコスプレイヤー2人が来て、土曜はコミケの後で寿司、月曜は日本庭園で個人撮影してから天ぷら、火曜は池袋をご案内してナンジャタウンで餃子。明後日は紗有羅と再びデート。もう一回「ぼくの夏休み」やっていいですか?
< http://www.geocities.jp/layerphotos/
>
7月30日(日)、仕事はまだあと一週間あるが、デジクリが夏休みに入って開放感の週末。こういうときは怠りなくオタク市場動向調査のフィールドワーク。女性のオタク向けの店がひしめく池袋へ。「アニメイト」や「K-BOOKS」がある通りは「乙女ロード」と呼ばれ、周辺には執事喫茶(メイド喫茶の女性向け版)やBL喫茶(男装の麗人がウェイター)などが続々とオープンしている。一人で乗り込んでいく勇気はないので、「乙女」を一人召喚。早い話が、情報収集にかこつけたデートである。
紗有羅とは去年の8月に愛知万博で知り合った。ゴンドラの乗り口で、待ち行列が折り返し折り返し、10列ほどの四角い塊をなしている中で、私の4〜5列前に真っ白なドレスを着た、若くて美しい女性がカートを引いて並んでいるのがひときわ目立ち、列がのろのろと進むにしたがって近づいたり離れたりするのをずっと目で追っていた。
世界コスプレサミットの開演前、ステージ前の特別席に招待されたコスプレイヤーが周辺に集まっている。その中に先ほどの人を再発見。「これが私のご主人様」のメイド、沢渡瑞穂の姿になっている。さっそく声をかけて撮らせてもらう。長野県から来た高校3年生だそうで。25歳年下だ。
以来、細々とながらメールのやりとりが続いていた。卒業後、東京に出てきて服飾学校に通うようになったので、ぜひ会いたかったのだが、なかなか機会がなく、ほぼ一年ぶりの再会である。
こういうとき私は、どこぞの巨大掲示板に「ヘルプ求む」などと書き込み、人々のアドバイスにしたがって脱オタしていくようなヘタレなことはしない。カジュアルなシャツの裾をジーパンの中に入れ、背中には夢のいっぱい詰まった汚いリュック。20年来の秋葉系スタイルでビシッとキメて行った。
紗有羅はゴスロリ姿で現れた。パニエで膨らませた黒のスカートは自作だそうで、3段になっていて、それぞれの裾にフリルがひらひらとついている。ほぼ黒ロリなんだけど、首に首輪が巻いてあるあたりがゴスである。鎖がついていて、もう一端は輪になって、自身の左手首に巻いてある。その一端を私がもらって、左手で持つ。右手は彼女の左手とつないでみる。よしっ。傍目にもお似合いのカップルと映ることだろう。
通りすがりに「乙女喫茶」なる店を見つける。店名は"Cougar"。
< http://www.otomecafe.com/47224975/
>
入るとカッコいい男性ウェイター2人が迎えてくれる。1人はちょっと抜けてて可愛い感じだし、もう1人は見目麗しく、ゴスな女装で原宿を歩いたりするが、男性だと気づかれることはまずないそうである。女性向けゲームに詳しく、乙女たちと話が合いそうである。我々とはヴィジュアル系バンドのことで話が合い、大いに盛り上がる。シャズナのイザムが男性的なイメージで復活したのを喜び合ったり。ゆっくり話しができて、楽しめた。
メイド喫茶「ワンダーパーラーカフェ」も初めて入ったけど、非常にいい。
< http://wonder-parlour.com/
>
雰囲気が上品。コミック「エマ」の感覚。3人いたメイドさんの衣装は、裾丈やヘッドドレスなどがそれぞれに違えてあるが、コンセプトは、19世紀ヨーロッパ風の本格的なメイド。ロングのメイド服が見れたのが嬉しい。リッチなご主人様の気分。場所柄もあって、女性のお客さんが多い。
他に、スーパードルフィーのVolks(ボークス)のショールームを見たり、ナムコナンジャタウンを回ったりして、ベタベタ、ラブラブな一日であった。最寄駅まで送り、改札口の手前でキスして別れる。あ、キスすんのも8年8か月ぶりだなー。……ってな話を読者の方々が読みたいかどうか、心許ないのですが、今回は「ぼくの夏休み」ってことで。
●今年の世界コスプレサミットは報道陣がいっぱい
翌週末、8月5日(土)、6日(日)は名古屋で世界コスプレサミットが開かれた。初日は去年と同じく大須の商店街をパレード。2日目は場所を栄の「オアシス21」に移して、チャンピオンシップ。参加国は去年よりも2か国増えて、9か国になった。今年から外務省が後援するようになり、優勝者には外務大臣賞が贈呈される。去年に比べて報道陣がどっと増えた。
初日のパレードは3:30pmから。朝の新幹線で東京を発ち、午後から大須を下見。町全体がお祭りで、すごい人出。往き交う人々の姿の多彩さは、下町と原宿を混ぜこぜにしたよう。オタクの街でもあり、「グッドウィル」というパソコンとアニメ関連グッズの店舗があり、館内と周辺にメイド喫茶が(亜流も含め)3軒もある。
パレード前、コスプレカフェ「L@yers cafe コモック」で参加者の交流会が行われている。部外者は入れないのだが、たまたま涼をとりに下の階に降りてきているコスプレイヤーがいて、話しかけてみると、タイからの参加者だった。NanさんとAntさん。この日は「天誅」というゲームで合わせ。翌日のチャンピオンシップでは「鬼武者4」の合わせで出るそうで。
パレードの出発点である大須観音にコスプレイヤーが50人ほど集まると、撮ろうとする人でごった返した。その中には主催のテレビ愛知のカメラクルーの他にも、メジャー紙の腕章をつけた報道記者がうじゃうじゃ。私も混ざって撮る。列が動き始めると、前方の商店街の両脇はすでに黒山の人だかり。それがまばらになるところまで走り抜け、撮る場所を確保。
通りすぎるパレードを定点から撮っていると、半分ぐらい撮り逃してしまう。そこで、大半が通りすぎたところで、裏の道へ回り、走ってパレードを追い越し、先頭に出られたところで、また撮る。報道カメラマンたちもそうしている。走る、走る。猛暑の中を走る。脚立持って走る。
さっきのタイのコスプレイヤーも見つけることができて、手を振り合う。万松寺の身代わり不動明王前に海外からのコスプレイヤーが勢揃いしてキメポーズ。写真撮影タイム。私は、端っこながら、最前列に場所を確保することができた。身を投げ出して寝っ転がって撮ったりと、こっちも派手に。
●チャンピオンシップではテレビ取材受ける
翌日のチャンピオンシップも、去年に引けをとらない盛り上がりだった。「オアシス21」は吹き抜けの地下広場で、地上階からもステージを見下ろせる。さらに上方に、巨大な楕円形のガラスのひさしが、宙に浮いたように据えつけられ、上を水が流れている。
開演は6:15pmだが、午後から延々とリハーサル。この日も晴天で、暑い。5:00 pmに開場になると、350席ほどの客席があっという間に埋まり、周囲に同数以上の立ち見の人垣ができた。開演までの間、たくさんの報道陣が、客席のコスプレイヤーたちに手当たり次第に取材している。
私も客席後方のスペースで、カメコる。「ちょびっツ」の「ちぃ」のドレス姿の方を撮り終えた瞬間、後ろからテレビの取材班がすっと近づいてきた。カメラを向けられ、女性レポーターからインタビューを求められた。TBSテレビだそうで。え? カメコまで取材する? 実は私が撮っている間も撮られていたのだが、気がついていなかった。応じると、「プロですか?」「歳は?」「どちらから?」「職業は?」「撮った写真の使い道は?」等々、いろいろ聞かれ、真面目に受け答えした。
コスプレの原動力はキャラへの愛にある、カメコはそのがんばりに報いるべきもの、という自説もしっかりと主張した。なぜか緊張せず、すいすい言葉が出た。だけど、ひとつ後悔。TBSは「ローゼンメイデン」を放送した局なんだから、脳内妻の真紅のことも自慢しておけばよかった。キャラへの愛とはこういうもんだという好例になったはずだ。
まあ、しかし。私の姿なんて全国のお茶の間に流す価値ゼロだから、どうせボツよ。変わった人がいるから、インタビューにかこつけて話を聞いちゃおう、ぐらいの感じで、遊ばれたんだ、きっと。さっさと忘れよう。
さて、ガンダムのアムロの「行きまーす」の声で、チャンピオンシップがスタート。司会はその声の主、古谷徹氏。審査員は漫画家の永井豪氏ら4名。世界9か国から集まった11組22人のコスプレイヤーたちに各3分ずつ、パフォーマンスの時間が割り当てられる。
コスチュームのレベルが非常に高いだけでなく、見せ方に工夫が凝らされ、客席からどよめきが何度も上がった。中国代表は演出がすばらしく、最後は血しぶきに見立てた赤い紙ふぶきを舞わせた。タイ代表はナイフを持って、スピード感ある格闘演技。日本代表Aはガンダムのメカ姿でがちゃがちゃと動き回り、ライトセイバーを銃に持ち替え、最後は頭から蒸気を噴射。日本代表Bは3分の舞台でベルサイユの薔薇の衣装を次から次へと早替わり。
優勝したのはブラジル。「天使禁猟区」より、背中に大きな翼を背負った2人の天使が戦うパフォーマンスを演じてくれた。息がぴったり合って、音楽も迫力があって、よかった。しかし、このイベントの意義は、勝敗を決することよりも、参加者どうしの交流にあると思う。去年もそうだったけど、みんな言葉の壁を越えて、すぐに仲良くなっちゃって、勝ち負けには全然こだわらないそうで。それを聞くとなんだか嬉しい。
タイ代表の2人が、ステージから私を見つけて手を振ってくれた。思わず大きく両手を振り返したけど。……俺が目立つじゃないかー。
8:30pmに終了。まだ新幹線で帰れる時間だったが、せっかく指定席が取れていたので、夜行の快速「ムーンライトながら92号」で帰る。
●全国放送され、「見たよ」攻撃
8月8日(火)、私がテレビに出てたとMABOから知らせが来た。MABOは、去年の12月に、旅行ガイド「ロンリープラネット」のテレビ版の収録でご一緒したコスプレイヤー。TBSの「2時ピタッ」という2:00pからの一時間番組で全国放送されちゃったらしい。MABOも映ったそうだ。ゴールデンウィーク中に上海で中国予選があり、そのときにゲストコスプレイヤーとしてステージに立っており、その模様が放送されたそうで。図らずもまた同じテレビ番組に出たことになる。
私は、コスプレイヤーを撮っているところから始まり、単独インタビューの模様がずいぶん長く映ってたらしい。私は見てないけど、TBSさん、あんなの放送しちゃってよかったのでしょうか? 苦情は来ませんでしたか?
8月11日(金)〜13日(日)のコミケでは、ずいぶん「見たよ」攻撃に遭った。2日目、国際展示場駅から東京ビッグサイトに向かって歩いていると、見覚えのあるお兄さんがビラを配っている。池袋の乙女喫茶"Cougar"の見目麗しいウェイター、鏡(かがみ)さんだ。声をかけると、向こうもすぐに気がついて、「テレビ見ました」と意表をつく攻撃。
うぎゃ〜〜〜!!!
乙女喫茶の美麗なウェイターさんが、美麗とは対極の私の姿をテレビで見てたって、なんか間違ってないかい?
ああ、数奇な俺の人生。
【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
目指せ、カリスマカメコ! いや、目指さんでよいから〜。イタリアからコスプレイヤー2人が来て、土曜はコミケの後で寿司、月曜は日本庭園で個人撮影してから天ぷら、火曜は池袋をご案内してナンジャタウンで餃子。明後日は紗有羅と再びデート。もう一回「ぼくの夏休み」やっていいですか?
< http://www.geocities.jp/layerphotos/
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