Otaku ワールドへようこそ![40]ブロガーは販促の戦力になるか
── GrowHair ──

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スカイライン神話 1 (1)11月20日(月)、日産自動車がスカイラインの12代目にあたる新型車を発表した。それ自体は特別のことではないが、今回画期的だったのは、銀座の本社ギャラリーにて、ジャーナリスト向けの発表会に引き続き、ブロガーだけを100人ほど招待しての発表会を催したことである。

これは、多分どこのメーカーも思いつかなかったということではなく、考えはしたのだけれど、裏目に出るリスクを考えると恐くて実行に踏み切れなかったのだと思う。まずは日産の思い切りのよさに拍手を送りたい。

先陣を切った者の常として、成否の行方に注目が集まるのは当然の成り行き。これをてこに、今後、ブロガーは販促の戦力として定着していくのだろうか。


●企画するほうも恐かったに違いない

日産は約2年前、ティーダというコンパクト車の販促でいち早くブログを活用して話題を呼んだ。当初は2か月間の期間限定の予定で立ち上げたブログだったが、今も続いている。そのまずまずの成功を踏まえ、一歩進める形で、今回のブロガー向け発表会に踏み切ったのであろう。
< http://blog.nissan.co.jp/TIIDA/
>

さて、このブロガー起用大作戦、吉と出るか、凶と出るか。大雑把に言って、3つのシナリオが考えられる。シナリオその1、大成功。ブロガーが本音の部分でスカイラインをほめたたえ、それを参考にして購買を決める人が多く、結果として売り上げが伸びる。シナリオその2、裏目。ブロガーにけちょんけちょんにこき下ろされ、製品のイメージが下がり、売り上げが落ちる。シナリオその3、スカッと空振り。ブロガーが大した記事を書かず、あるいは購買層がブログを参考にせず、売り上げにはさしたる影響なし。

成否を左右する要因は3つあると思う。要因その1、ブロガーの実力。知識量、批評眼に裏打ちされ、的確な表現力をもってブログが書けるかどうか。これなしに、思いばかり突っ走るにまかせてほめたりけなしたりしても、言葉の重みに欠け、読み手の信頼は得られないだろう。要因その2、ブロガーの評価内容。結局良いのかダメなのか。どこがそうなのか。多くのブロガーの意見が一致する点があれば、それは一般の人々の商品イメージや購買欲をリードする評価につながっていきそうである。要因その3、ブログの影響力。読み手がどれほどいて、ブログをどの程度参考にするか。

企業側が一番恐れているのは、プロはだしの豊富な知識をもった「濃ゆ〜い」マニアが微に入り細にわたり競合製品と比較検討し、「結論。まだまだだね」のようにズバッと斬り捨て、読み手はすっかり説得されてしまい、それが広まって評判として定着していく、というシナリオだろう。

だからといって、ブロガーを餌で手なずけようとしたり、否定的な意見を封じ込めようとしたりといった恣意的なことをすれば、後々噴出するトラブルの種をまくようなものである。今回、日産は、ブログ検索のテクノラティで、キーワード「スカイライン」を入れてヒットしたブログの上位100名の運営者に招待状を送ったそうで、ほめてるブロガーだけをご招待、なんて小賢しいことは一切していない。あるブログでは、「我々は呼ばれたというよりかは出頭させられて『文句ばっか言ってんじゃねぇ!』と説教されるんじゃないかと思ってた」と言っているほどである。

また、日産のウェブサイトのスカイライン公式ブログからはすでに60個ものトラックバックが張られているが、その中には思いっきり酷評しているのもある。とかく企業というものは、ネガティブな評判に対して神経質になりがちなものだが、それだけに、日産の清濁併せ呑む覚悟のよさにはさわやかさを感じる。根拠のない酷評は言った側の信用を下げるだけで、製品イメージにさしたる影響を与えないので心配には及ばず、一方、根拠のある酷評は謙虚に聞くべきなのだから、こういう開かれた姿勢は大変よいと感じるのである。
< http://blog.nissan.co.jp/SKYLINE/archives/2006/11/post_1.html
>

もうひとつ、やりづらそうだと感じたのは、ブロガーと向き合う姿勢、つまり、ジャーナリストとみるのか、お客様とみるのかを決めづらいという点である。前者とみるならば、情報が何よりの価値なので、専門知識豊富なエキスパートを揃えて臨むのがよく、後者とみるならば、おいしい食べ物を振舞い、パフォーマンスを演じて楽しんでいただき、お土産をお持ち帰りいただくという、おもてなしをするのがよい。今回、きっと迷っただろうが、いちおうジャーナリストと同等の扱いを貫いたのは、私はよかったと思う。けど、中にはパフォーマンスや食べ物を期待する声も聞かれた。

●とか何とかいいつつ、行ったのは私ではなく...

そもそも私はブログやってないし。日産から招待状が届くはずもなく。職場で右隣に座っている直江雨続(なおえあめつぐ、もちろんペンネーム)君がその栄誉に浴している。職場はクリエイター系とは縁もゆかりもなく、堅〜いエンジニア系であるが、まわりにはやけにオタクが多く、しかもそれをひた隠しにしなくてはいけないという雰囲気もなく、まあ、オタクの楽園である。上司の胃がどこまでもつか、心配ではあるけれど。

雨続君は、私の右脳となって働いてくれている20代の若手。住む場所を決める第一条件は図書館に近いこと、というくらいの読書家で、歴史小説やライトノベルを中心に読む。漫画やアニメに詳しい正統派オタクだが、車オタクでもあり、フィギュアスケートオタクでもあり、サバゲもちょっとやったりする。

頭の回転は早いし、仕事ぶりも悪くないが、どこかおちゃらけたところがあり、入社1年目にして、「今日は遅く来たので、その分早く帰ります」と言い残してさっさと帰っていったときは、こいつ、だんだん俺に似てきたぞ、と頭を抱えたもんである。学生時代からの彼女がいて、これがなんと、3次元で、しかも動くのである。まあ、天下無敵の腐女子のようであるから、お似合いと言えよう。スカイライン発表会の翌々日、11月22日(水:いい夫婦の日)に無事入籍している。

そんな彼の運営する「直江雨続の嵐を呼ぶブログ」は、軽いギャグがふんだんに散りばめられた、テンポのよい文章が満載である。今回の件に関しては、招待メールに半信半疑なところから始まって、4本書いている。
< http://ametsugu.no-blog.jp/
>

それもさることながら、事前にGT4で歴代のスカイラインの運転感覚を体験しておくという、予習を済ませてから臨んだのは、あっぱれである。GT4は実際の車やサーキットの詳細なデータがインプットされたドライビングシミュレータで、テストドライバーも練習に利用しているほどリアルにできている。このレポートを見ると、歴代のスカイラインのイメージの劇的な変化がよく分かるし、雨続君の車ヲタっぷりもよく分かる。
< http://ametsugu.net/GT/gt4_skyline.html
>

●説明員はそうそうたるエキスパートたち

そういうわけで直接見てきていないので、ブログの寄せ集め情報であるが、当日は、呼ばれた100人のブロガーの約9割が参加したという盛況ぶりで、自由見学時間には、内容の濃い会話があちこちで展開していた模様である。8:00pmにスタート、まず、マーケティングダイレクター加治慶光氏が登場、今回の「日産初」の試みであるブロガー向け発表会を開催するに至った経緯などを語った。次に、開発責任者の大澤辰夫氏がこの新型スカイラインのコンセプトや特長などについて、説明した。先代より車高を2センチ下げ、車幅を2センチ広げたこと、新開発のV6エンジンを搭載したこと、ボディ強度を大幅にアップしたことなど。

それから、CMを4本上映。野球のイチロー選手と俳優の渡辺謙氏が起用されている。その後は自由見学と質疑応答の時間。説明員の方々は実際にスカイラインの開発に携わっており、付け焼き刃じゃない説明が可能だそうで、そういうエキスパートと直接話ができる機会に恵まれたブロガーは至福のときを過ごせたに違いない。今回のセダンに続いて、来年秋にはスカイラインのクーペの新型が発表される予定だそうで、自分好みのクーペにならないかと下心を抱いて、デザイン担当者を必死に説き伏せにかかるブロガーもいたようで。

説明員として異彩を放っていたのは、リカちゃん人形。今回の発表会はタイアップ企画なのだそうで、本年度タカラトミーに入社して広報・IR部に配属された香山リカさんが、特別研修生として日産に出向しているということで、けなげに見習い説明員をしており、リカちゃんと名刺交換するブロガーが何人もいた。また、NHKやテレビ東京が取材に来ていた。

●ブログのレポートは玉石混交、賛否両論

発表会から1週間が経ち、日産のブログには、参加者のうち約20名が、参加レポートへのトラックバックを張っている。ただの日記から、嘗め尽くすような論評まで、玉石混交。高く評価する声もあれば、酷評もある。

まず、多くのブロガーたちが違和感を唱えていたのは、歴代のスカイラインのイメージからの乖離である。かつてのスカイラインは、スポーツカーというコンセプトを前面に押し出し、他車とは一線を画するツッパリっぷりが若者受けした。ところが、先代くらいから他車と大差ない形に落ち着いてきて、家族向けの普通の車になりつつある。「一目でスカイラインと分かるオーラがなくなった」、「同じ名前で呼んで欲しくない」という否定的な意見もあったが、一方、「スカイラインは大人になった」と肯定的に捉える向きもあった。奇をてらって注目を引くのをやめて、実質的な性能向上に注力するようになった、ということだろう。

また、北米市場でのシェア拡大を狙うあまり、日本人受けしない方向へ走っているという批判もあった。スカイラインは国内よりも海外で売れ行き好調で、売り上げの40%がアメリカ、国内の売り上げは全体の10%にすぎない(北米では、上位のフーガとともにインフィニティと名前を変えているが)。そのため、ボディーのどっしりとした形状などは、日本人よりも北米の好みを反映させたとみられ、「スカイラインに名前を借りたインフィニティ」と評されたりしている。

新開発のエンジンは、「7,500回転/分まで軽く滑らかに吹け上がり、高出力でレスポンスが良い」、「左右完全対称吸排気システムを採用し、濁り音のないエンジンサウンドを実現」とうたっていて、これは好評。あまりに好評すぎて、上位のフェアレディーZのオーナーから文句が出ているほどである。試乗したら、自分の車よりもよく走る、と。

総合すると、尖っても凹んでもいない車、つまり、大きな冒険はしていないが、これといって見劣りする点もない、バランスのよい車。コストパフォーマンスがよく、お買い得、ということのようである。

●ブロガーの地位向上につながるか

雨続君は「各社続々とブロガーを新車発表会に招待するような世の中になることを祈りたい」と言っているが、私も、そうなれば面白いと思う。かび臭い部屋でいろんなものに埋もれてくすぶり続けていた一介のオタクが、ある日、情報発信者として価値を認められ、社会の中でも割と高いところに置いてもらえるって、まるでシンデレラではないか。(うっとり)

ただし、そうなるかどうかの鍵は、ブロガー自身が握っているように思えてならない。単なる日記や感想文の域から一歩踏み出して、読み手が頼りにしたくなる情報や、メーカーが一目置くような論評が発信できるようになれるかどうか。そのためには「好き」が高じて「馬鹿」と言われるくらいののめり込みようも必要だろう。

また、仮に、目に見える形での売り上げ向上に貢献しなかったとしても、メーカーとユーザーとの間のコミュニケーションのツールとしてブログを活用し、次の代の製品開発に生かしていくという方向性も考えられる。さしあたり、この新型スカイラインのブロガー起用大作戦が大コケしないことを祈って、見守りたい。

ところで。私は全くの車音痴。運転免許すら持ってないし。大八車からクレーン車まで、車という車は全部同じに見え、カッコいいも不細工もまるで見分けがつかない。で、ご質問のある方は、右脳のほうへどうぞ。
< http://ametsugu.net/
>

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
宇宙のステルヴィア OPテーマ - 明日へのbrilliant roadカメコ。かつては行きつけだったメイド喫茶に久々に行ったら、浦島太郎状態。その日はメイドではなく、コスプレ。元作品が分からないコスの店員さんがいて、聞くと「宇宙のステルヴィア」という答え。「うっ、知らない」。「一般の方はあまりご存知ないかと思います」。いてててて...。ついに、一般人呼ばわりされてしまったか。やばい、精進せねば。
< http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/stellvia/
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by G-Tools , 2006/12/01