Otaku ワールドへようこそ![51]鳥取の中国庭園と砂丘でコスプレ
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5月12日(土)、13日(日)と、鳥取県の中国庭園「燕趙園(えんちょうえん)」でコスプレイベントが開かれ、北海道から九州、四国まで全国から74名のコスプレイヤーが参加した。日本最大の中国庭園という、格好のロケーションを求めて遠征してくるほどの気合いの入ったコスプレイヤーたちは、衣装の作りこみようも並ではなく、色彩の豊かさと装飾の細かさがそれはそれは見事、あたかも庭園に命を吹き込むかのようであった。

初日の夜には交流会が、二日目の午後にはコスプレコンテストが開かれて、コスプレイヤー同士すっかり仲良くなり、終始和やかな雰囲気に包まれた。「コスプレ部」のスタジャンや中国服を着たスタッフが園内を回ってコスプレイヤーたちに話しかけ、おしゃべりに花が咲いたのも楽しかった。

二日目の終わりには、別れが名残り惜しくて泣いた人がスタッフにもコスプレイヤーにもいたという。帰ってきてからも、みんな口々にいいイベントだったと言い、11月の再会を今から楽しみにしている。


●和歌山がきっかけで鳥取へ

鳥取くんだりまでカメコりに行くことにしたのは、芋づるのような経緯からであった。去年の夏コミで、宝塚のベルばらの華やかなコスをしていた汐音さんに声をかけて撮らせてもらったのがきっかけで個人撮影の話が進み、10月には秋バラの咲くバラ園で撮らせてもらえた。

3月25日(日)に和歌山のポルトヨーロッパで開かれたコスプレイベントには、事前に行くという知らせを受けていて、私も行ってきた。汐音さんと仲のよい万鯉子さんも行くと聞いていて、現地で会ったときに、長々と立ち話。そのときに、万鯉子さんから、5月には鳥取に行くという話を聞いて、じゃ、私も行きます、という話になったのであった。

万鯉子さんは、去年の世界コスプレサミットで蝶子さんとのコンビで国内予選を勝ち抜き、8月に名古屋で開かれた本戦の舞台に上がっている。各国の予選を通過した9ヶ国からの代表がコスプレ世界一を競い合い、万鯉子さん・蝶子さんのコンビは宝塚のベルばらコスで2位を獲得している。いわば、日本を代表するコスプレイヤーのひとりである。

燕趙園でのイベントは去年の9月に第一回が開かれていて、そのときのコスプレコンテストでは、万鯉子さんたち四人のチーム「裏天竺」が優勝している。今回は第二回になるが、審査員として参加とのこと。

何回か撮らせてもらったことはあったが、和歌山のときまでゆっくり話す機会がなかった。去年の冬コミでは万鯉子さんが「のだめカンタービレ」の千秋、蝶子さんがのだめをやっていたが、私は撮らせてもらっておきながら気づいてなくて、千秋はものすごい美形の男性かと思っていた。

●いずれにしても遠いけど

東京から鳥取まで行くには、夜行列車、夜行バス、飛行機などの手段がある。鳥取から西に40kmほどのところに倉吉という町があるが、そのひとつ手前の松崎駅から徒歩で行けるところに燕趙園がある。東郷湖の湖畔にあり、近くには東郷温泉や羽合(はわい)温泉がある。

20:30品川発の夜行バス「キャメル号」で行くと、翌朝8:00に倉吉に着く。22:00東京発の特急列車「サンライズ出雲」に乗り、上郡、鳥取で乗り換えると、8:19に松崎に着く。客車を機関車が牽引する、いわゆるブルートレインではなく、薄い赤紫色の電車なのがちょっとつまらない。けど、寝台料金なしで乗れる「ノビノビ座席」はお得。構造は二段寝台と同じく、片側の窓際に通路があり、横向きにのびのびと寝られるようになっている。ただ、寝台の代わりに座敷のようになっていて、固いけど。

朝6:00東京発の新幹線「のぞみ」に乗り、新大阪、姫路で乗り換えると、12:29に倉吉に着く。7:10羽田空港発の飛行機で行くと、8:20に鳥取空港に着き、そこからバスに乗ると、9:20ごろ松崎に着く。私はこれで。万鯉子さんたちも同じ便だった。バスの乗客約20人のうち、15人ほどがコスプレイヤーであった。

●華やかに和やかに

真・三國無双 究極音盤9:30ごろ燕趙園に着くと、やはり行くと聞いていた、水無瀬紅(こう)さんに会う。水無瀬さんは、一昨年の秋ごろ、都内の日本庭園での個人撮影で、「遥かなる時空(とき)の中で」のコスで撮らせてもらっている。ノビノビ座席で一番乗りの到着だったそうで、すでに今回の相方のTomoeさんとともに「三国無双」の陸遜と甘寧の姿になっている。

燕趙園に入って全景をざっと眺め渡し、「これはいい」と嬉しくなった。広々とした園内に、中国風の門があり、回廊があり、池があり、橋があり。どこに立って、どっちを向いても絵になる。広さの割に人がそれほど多くないので、背景に無関係な人を入れないようアングルで苦労することもほとんどなく、のびのびと撮れる。そう言えば、ここはテレビドラマ「西遊記」のロケ地にもなったところだったっけ。

場所柄、多く見かけたのは、三国無双、彩雲国物語、十二国記、西遊記などのコスであった。初めて会ったコスプレイヤー同士でも、すぐに仲良くなっている。同じ作品のコスだったり、中国の歴史という共通の話題があったりということもあるだろうが、鳥取まで遠征してきたという「本気」のオーラを放つ仲間同士という共感もあるのだろう。初日の6時から開かれた、コスプレイヤーたちの交流会も和やかな雰囲気だったらしい。

二日目の午後にはコスプレコンテストが開かれ、9チームがエントリーした。審査員長は鳥取大学地域学部の野田教授。審査員はみな中国服かコスプレで。客席には湯梨浜町の町長と副町長の姿も。やはり中国服で。

コンテスト参加者のパフォーマンスはどれも面白かったが、特に、一歳の娘さんを孫悟空に仕立て上げた家族チーム「だんな!! 一座」は抱腹絶倒ものだった。抱え上げるお母さんはきんと雲役。娘さんは、当然筋書き通りに演じてはくれず、舞台から逃げ去ろうとしたりと突拍子もない行動に走るのだが、父親は動じず、あたかも予定通りだったかのように、アドリブ、アドリブで取り繕うのが可笑しくて可笑しくて。

ゲーム「真・三国無双」の周瑜、孫策、孫権、陸遊に扮したチーム「不動峰」は、よくスーパーなどで食料品をのせてラップで包んで売っている何の変哲もない白いプレートを、もったいつけて一万円で売ろうとする芸(テレフォンショッキングのパロディー?)で会場を沸かせ、優勝を獲得した。ついつい芸に目を奪われてしまったが、衣装の美しさも格別であった。

審査結果の集計中に万鯉子さんたちのチーム「裏天竺」のパフォーマンス。「西遊記」の孫悟空、沙悟浄、猪八戒、三蔵法師に扮し、賞金を奪い合う妖怪たちを師匠がたしなめる寸劇。役者揃いである。台詞がスムーズ、表情が生き生き、立ち回りもきれい。模範演技と言えよう。コンテスト参加者も含めてみんな、舞台度胸がよく、ギャグのセンスがよく、演じるのが上手い。非常に楽しかった。

二日目終了後にはスタッフの打ち上げがあり、バス待ちのコスプレイヤーたちも招き入れられたらしい。「この時間がずっと続いてくれたら」と感極まって泣く者もいたらしい。これほどいい思い出を残すコスプレイベントを私は聞いたことがない。次回、11月を心待ちにしている。

●封印してたはずの趣味が...

余談ながら、一日目の夕方、倉吉駅で列車を眺めていて、ディーゼルエンジンのガランガランブオウという音を聞くともう矢も盾もたまらず、衝動乗り。時刻表をチェックして、一時間ほどで往復できる浜村まで。二両編成の一両目の後ろのドアから乗って整理券を引き抜き、前のドアから降りるときに運転手さんに料金を支払う方式。車掌さんはいない。

線路の継ぎ目を車輪が通過するガタンゴトンがなつかしい。さっきまでいた中国庭園を横目に松崎駅を過ぎると19:00を回るが、日没後の薄暗がりでも遠くまでよく見え、広がる田園風景が美しい。すぐに山裾が迫ってきて、トンネルに入ったり、山林地帯を走ったり。

浜村駅は、窓口はあっても閉まってる無人駅。駅前には噴水の水受けの部分だけのようなものがあり、すり切り張られた水が周囲から流れ落ちていく。薄暗がりに目が慣れると、湯気が立っていて、温泉と分かる。足洗い場もある。駅舎の中の壁には詠み人知らずの川柳が六首ばかり掲げてある。
例えば、こんなの。
  酒タバコやめたあの人先に逝く
  借家でも自宅待機と言うのかな
なんか物悲しいユーモアですね。

二日目の夕方は、二両編成のディーゼル特急「まつかぜ」で米子まで。途中駅全部通過で30分ほど。単線を時速120kmで快走。米子で引き返すつもりが、0番線に停車中の、側面に「ゲゲゲの鬼太郎」のねずみ男がでかでかと描かれた一両編成の列車を見ては、もう自制心がきかず、またまた衝動乗り。境線の終点境港(さかいみなと)は水木しげるゆかりの地である。

車内の天井には、等身大のねずみ男が描かれている。途中ですれ違った列車は鬼太郎だった。各駅には妖怪の別名がついている。駅名板にはイラストとともに妖怪名が書かれ、下にカッコして小さく本名が書かれている。「べとべとさん」(大篠津)駅で反対から来た列車に乗り換えた。運転手兼車掌さんから呼び止められたら「え? 私の姿が見えるんですか?」ととぼけてやろうと思っていたが、見逃してくれた。はなから妖怪だと思われてたとか?

●鳥取砂丘を笑いの渦に

翌日、5月14日(月)は、鳥取砂丘へ。万鯉子さんたちがそこでコスプレ個人撮影をするとあらかじめ聞いていたので、一瞬たりとも迷わず会社を休んで。私は鳥取県に足を踏み入れること自体、今回が初めてで、行く間際までまったく地理が分かっていなかったが、鳥取砂丘は鳥取駅の北東方向、バスで20分ほどのところにある。8:43倉吉始発、京都行きの特急「スーパーはくと」(「因幡の白うさぎ」にちなんだ名前か?)で、鳥取駅まで30分。途中駅全部通過。

砂丘って、広めの砂浜ぐらいのものかと想像していたので、バスがずんずん山を登っていくのにびっくり。峠を越えるのかと思いきや、頂上が「砂丘センター」だといい、にわかには信じられなかった。でっかい砂の山だ。そこで万鯉子さんたちと落ち合う。

前日と同じ、西遊記のコス。リフトでなだらかな傾斜を砂丘へと下る。リフトで戻ってくる人たちとすれ違うわけだが、みんな大笑い。すれ違うまではにこにこ笑ってるくらいで耐えているが、後ろへ見送ってからは腹をよじってヒィヒィ笑ってる人たちもいる。そりゃ、三蔵法師が孫悟空と沙悟浄と猪八戒を引き連れてリフトで下りてきたら、幻覚でも見たかと思うわな。後ろに乗ってる私もつられて大笑い。

砂丘でも人気者になっていた。写真を撮っていく人、多数。「今回の旅行で一番面白かった」と言っていく人もいた。影がびーっと伸びる夕方まで居たかったが、帰りの飛行機の時間が迫り、私だけ先においとま。17:50鳥取空港発の最終便で羽田へ。三日間を振り返り、よかったぞ、なんかすごくよかったぞ、とカメコの幸せを噛みしめながら帰途についた。

帰って最初にしたことは、ジーンズを脱いで逆さに。ケツの両ポケットから砂がさーっと流れ落ち、靴脱ぎ場が砂丘になった。

鳥取の写真はこちらからどうぞ〜。
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さすらいのカメコ。今はコスプレが旬の時期。これから数週間にわたり、カメコとしての私がどんどん「予約」されていっている。このコラムもしばらくはカメコ話が続くと思います。よろしくおつきあい下さいませ〜。