[2336] 「何でも屋」にされている私

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<Excelの書類をDVDにするとテレビで見られんの?>

■音喰らう脳髄[42]
 ネズミ翔ける
 モモヨ

■Episode of ガテン系デザイナー[9]
 「何でも屋」にされている私
 相子達也

■ローマでMANGA[6]
 日本行き
 midori


■音喰らう脳髄[42]
ネズミ翔ける

モモヨ
< https://bn.dgcr.com/archives/20071218140300.html
>
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今年最後の原稿なのでつい気張ってしまったが、どう気張ったところで現実は『偽』の一年、泥のような一年であることに変わりはなく、それだけじゃない。ここにきて『偽』に『銃』が加わった。いや惨状を数えていればきりがない。

むしろ、何かいいことを数えるべきかもしれぬが、それも思い当たらない。結局、『そんなの関係ねぇ』一年だったのか……。だから忘れてしまえばいい、わけでもない。

年金の問題が象徴的だが、根本的に、根底から物事を再構築、再検証していかなければならないものがあちこちに見える。いわゆる、役人と政治家がぐるになって国民を騙しつづけた果ての残骸である。こうしたものが見え、そして私達が息をし続ける以上は、目をそむけていい問題ではない。目をそむけているだけではやすまないのだ。

この冬、東京下町に住む私の生活圏内で、また一つ、古くから経営していた工場がなくなった。経営者夫婦は、工場を閉めて、近所のアパートに引っ越したというが、今年になってからこうして自宅などを売らざるを得ない世帯がやたらと多い。税金の重圧があり、そのうえに国も役人もあてにならない、そんな気分が頑張る気をそいでしまうのであろうか。

いずれにしても私たちは生きる。そして、私たちの目に映る事象が惨憺たるものと見えれば、それは、私たちそれぞれに課せられた宿題なのであろう。見えたものを一つ一つ考え、対処していく、私にはそれしかできないが、それでいい。とにかく、どんなに暗い世であっても地上を生きていくことである。

来年の干支はネズミ。
小さくてもいい。
とにかく走りつづけるのみである。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/
>

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■Episode of ガテン系デザイナー[9]
「何でも屋」にされている私

相子達也
< https://bn.dgcr.com/archives/20071218140200.html
>
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「くわしいんでしょ? 直してよ」取引先で良くPCサポートみたいなことを頼まれます。文字化けやプリンタが認識されないなどのよくあるケースから、明らかに修理に出したほうがいいようなものまで。「何でも屋」にされた私は「はい、いいですよ」と気楽に引き受けて後で後悔します。

「ショートカットをダブルクリックしても開けないんだ」
それサーバー上のファイルですから、ノートPCをネットワークにつないでください。

「どのパソコンからでもインターネットにつながらないんだよ」
どれどれ、確かにつながらない。PCからルーターにはアクセスできるので回線の問題か? とケーブルモデムを覗くと電源ケーブルが抜いてあります。「雷が鳴ったから抜いておいた」と奥さん。ご苦労様です。

「このノートからFAXが送れなくなっちゃったんだけど」
電話ケーブルはつながってますよ……ね………そこEthernetポートなんですが。

「いつもウイルスなんとかの期限切れどうのこうのって出てくるけど?」
だから、更新してくださいって言ったじゃないですか半年くらい前に……(あれからずっとほうっておいたのか)

「パソコンの動きがすごい遅いんだよ」
そんだけ書類開いてたらQuadコアでも太刀打ちできないと思いますよ。

「CDってどうつくるんだっけ? あ、焼くって言うのか?」
あなたが持ってるのはDVDですから。しかもRWですから。

「Excelの書類をDVDにするとテレビで見られんの?」
そりゃすげーな。出来たらね(笑)

「ちょっといい?」
 うわ、あちこちから呼ばれ始めたぞ。長居は禁物だぞ。
「プリンタにジャムなんとかって出てる」紙づまりです。
「デジカメの電池が切れてるみたいよ」充電してください。
「スキャナどこにあるの?」横にある山のようなファイルの下です。
「コンセントが足らないんだよ」掃除機のコンセント抜いて。
「キーボードが汚れちゃって」お掃除どうぞ。手も洗ってね。
「モニタの文字が読めない」メガネ、メガネ。
「PCが入ってた段ボールをさぁ」段ボールは月曜日です。
「この書類、コピーとってくれない」「あ、電話出て」従業員じゃないんですが……。
「電磁波で死にそう」
「ウチの娘にいい相手はいないかね?」
「そろそろ用紙が切れるんだけどさ」私がキレますよ?

脱力トラブルにさんざん振り回されたあと、重い足をひきずって帰路につきます。ちゃんと請求書は出すのでいいんですけど。

トラブルといえば「iPhotoのライブラリを消しちゃったんだけど」という依頼。Macを触るなよー、そのまますぐもって来て。iBookの内蔵HDDが足らず、ライブラリを外付けHDDに保存していたので、それをそのまま預かってデータ復旧です。今回使ったのはData Rescue II
< http://www.igeekinc.com/products/datarescue2.html
>
FBIが犯罪捜査でも使っているというソフト。おお、なんかカッコいいな。

スペシャルエージェント相子は早速スキャン開始だ。「消去したファイルをスキャン」で数時間後、ほとんどのファイルが復活しました。ファイル名が連番になってしまうので、もう一度ライブラリを整理しなければならないのがツライけど、大事な写真が戻って一安心。

スキャンした後に、救い出したファイルを保存する別ディスクが必要になるので注意。救い出せるファイルタイプはほとんどのものに対応しているし、メディアもフラッシュメモリやデジカメ、iPodからBoot Campのボリュームまで対応。製品のCDから起動することもできます。もしもの時のために一本用意しておきましょう。たいてい悪あがきして、最悪の結果になることが多いですから(経験者談)。

●現場報告 お役所の予算合わせの現場

残念なことに、構造物の設計によっては明らかに自然破壊になる現場もあります。よく見ると、色々な生き物の棲む川をそっくり掘り返して全部コンクリートにしたり、原生林に近い森を壊して道路を作ったりします。

一度壊してコンクリートの護岸にして、生き物を少なくしてからまたそれを壊してホタルが棲めるような川に作りかえたりするんですから、何というムダでしょう。現場の人間も、一体なにをやっているんだろうって気になります。しかも数か月の工事期間中、自然豊かな場所でディーゼルエンジンを一日中全開で作業するわけですから、ほとんど暴力です。

どうしてそんな工事がお役所から発注されるのかはわかりません。たぶん色々な理由があるのでしょうが、施工する業者は適当な理由に納得して工事をするしかないのです。工事の方法を変えたいと思っても、工事を受注した段階で施行方法に基づいた見積りを出しているわけなので、発注者の設計は余程のこと、がないと変更になりません。ましてや施工業者が勝手に変えることなどできないのですから。

もう何十年もそんなことをしてきたので、あちこちに意味不明の構造物がたくさん出来てしまいました。護岸といいながら、すぐ下流では堤防が古いままで増水の時に崩れたり、細い山道の先に舗装されて側溝・歩道付きの8メートル道路があったりと、みっともないったらありゃしない。予算合わせの現場が多くでると、環境や生活と辻褄のあわない構造物だらけになるのです。

子供のころクワガタを捕りに行く小さな森がありました。周りは一面田んぼでなにもありません。小高くなった森まで、自転車ですごく時間がかかった記憶があります。そこも現在、森は公園になって隣に福祉施設ができ、周りは住宅地になってしまいました。もうクワガタも捕れないし、小川でザリガニも捕れません。車に乗るようになったので、そこも近くに感じるようになりました。残しておけばいいってわけではないのは分かっています。でもそこまでやらなくてもいいんじゃないかと思います。

私は直接重機でドカーンと豪快に自然を壊してきました。今は直接壊しませんが、間接的に壊しています。間接的というのは、その深刻さが実感できないということです。

「究極のエコロジーは人類滅亡」が私の持論ですが(笑)、せめて子供が「まいったなぁ」と言いながらも、それなりに生活していけるくらいの未来を残さなければいけないと、とりあえず節電。

【あいこたつや】aitatz@gmail.com
モンスターペアレントなんて聞いて「まーたなんでも名前つけて分類かい」と思っていたら、居ましたよ、子供が行ってる学校にモンスターが。モンスターどもの理不尽な要求や言動よりも、問題なのはモンスターに育てられる子供です。無神経・無遠慮・社会性なし・礼儀知らず、こんな親に育てられておかしくならないのは奇跡としか言いようがないです。子供の言動や行動がおかしくなっている元凶は「親」です。アニメやゲーム、映画やマンガのせいではありません(TVはあえて書きませんよ)。
< http://www.ggrafix.jp/
>

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■ローマでMANGA[6]
日本行き

midori
< https://bn.dgcr.com/archives/20071218140100.html
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11月を休んでしまったのは日本にいたからだ。そうなのだ。だから、MANGA工房もお休み。それでも「イタリア」と「日本」と「マンガ」の三題から離れていたわけではなかった。第二回目体験留学のための日本行きだったから。今回はそのお話。

今回の体験留学はテーマが二本立てだった。その話を始める前に、フラッシュバックで日本へ出発する前のローマへちょっと来てください。ビュン!

●10月末のローマにネコノアシがやってきた

学校の教務課長ジョルジャが「二人でイタリア人の作家を日本へ紹介するエージェンシーを作らない?」と言い出した。ちょっと前なら数々の困難を数え上げて拒否しただろうけど、なんだか歯車が動いている気がしている昨今なので、困難があるならそれを乗り越える方法を探ればいいだけ……と楽観して「やろうよ!」と返事をした。

ジョルジャはイタリアのマンガ世界の中で生活しているので、マンガ家をたくさん知っている。知識としてではなくて、ナマ身の漫画家をよく知っているのだ。私は講談社海外支局からナマ身の編集者を知っているし、漫画事情も知っている。何よりも日本語を知っている。この二人の知を組んでイタリアと日本の橋にならなくては世間様に申し訳ないではないか!!

10月末のコミックスフェアが終わるのを待って、用事から解放されてエージェンシーを設立。物理的な事務所はこれからね。とりあえず学校を住所とする。エージェンシーの名前……「橋になる」ことを含んだ、イタリア語でも日本語でも発音しやすいもの。うーーん。

デジクリが縁で知り合った川井拓也さんという人がいる。今はデジハリの教授もされている。
< http://gs.dhw.ac.jp/teacher/new_details/
>

川井さんが作った会社の名前が「ヒマナイヌ」。この名前がいたく気に入っていた。覚えやすいし意外な感じがいい。インスパイアを受けて、日本人が好きな「ネコ」を使おうよ。しなやかで鋭敏な感じもいい。

いろいろネコネコ言ってる間に、話を聞いていたジョルジャのダンナで漫画家のサベリオが、ボールペンで湾曲した体を持ったネコの絵を描いて「neko no asi」と付け足した。Hはイタリア語では発音しないので、「橋/Hashi」をH抜きで書いてしまったのだ。

「それいいじゃない! ハシじゃなくてアシ。ネコの手も借りたいというし」というわけで決まり。「コミックスエージェンシー・ネコノアシ」の発足だ。

ジョルジャと私が知っているイタリア内外の日本に興味がある作家に声をかけて、画像を集め、カタログを作った。と、ここまでが11月半ばのローマ。そして、そのカタログと留学生を連れての日本滞在20日間、ということになったわけ。

●体験留学

今年の体験留学生は二人。ナポリ出身ローマ校のトンマーソ(もっぱらトーマスと呼んだ)と、ミラノ出身フィレンツェ校のアレッシオ。陽気なナポリのイメージとは裏腹に、トーマスは控えめでおとなしい。絵がすごくうまい。マンガに対するモチベーションが非常に高い。家を助けて子供の頃から働きながら学校へ通ったそうだ。そんな大変さを超えて、なおかつ、将来の保証がないマンガへの道を求め続けている22歳。

アレッシオは32歳。一度社会人になってから「やっぱり漫画家になりたい」とマンガ学校へ通った。他の生徒より10歳は年くっている。アレッシオもモチベーションが高い。

昨年同様、東京アニメーター学院での授業は、デジタル・コミック、スクーリーントーン、キャラクター、イラストレーション科の課題、アニメーション科のデッサンという内容だった。

二人が持って来た作品集を見せる度に「わあ!」の声があがる。ストーリーよりも絵の完成度で見せるヨーロッパ方式だから、各コマが独立したイラストのようで、日本の記号化したマンガの描き方に慣れた目には、描き込み度が卓越して見える。

縁を頼って講談社のモーニング編集部や、海外支局時代に築いた縁故を頼って、エス編集部を訪れる。
< http://www.asukashinsha.co.jp/s/
>

二人の作品集の他に「ネコノアシ」のカタログも見せて、生まれたばかりのエージェンシーに栄養を与える。

エス編集部の天野氏は海外に興味をお持ちなので、四時間もかけて丁寧に作品集とカタログを見て話をしてくださった。

やはり海外支局時代に知り合った谷口ジローさんも、里帰りの報告をすると、夕食に誘ってくださる。お忙しいだろうに、本当にありがたい。漫画家志望者にとって、プロの仕事場訪問は大きな刺激になるはず。学生とネコノアシを連れてお邪魔すると、編集者を紹介してくださった。すぐにどうにかなるという具体的な話にまではならないけれど、ネコノアシの日本へのアプローチに関するサジェスチョンをいただいた。

Mixiで知り合ったBD(ベーデー・フランスのマンガ)を研究するグループと交流会を設けて、現役漫画家さんや編集者や大学の先生とも出会った。コンテンツ制作配信の会社の方とも知り合って、事務所に訪問したりした。
< http://www.toenta.co.jp/
>

授業以外にも実のある日本滞在だった。そうそう、早稲田にある「現代マンガ図書館」で、幼い頃読んでいた貸本に再会したのは予定外の嬉しいハプニングだった。館長の内記さんは元貸本屋経営者で、特にマンガに力を入れていたそうだ。絶え絶えの昭和50年代60年代のマンガ本を買い集めていらっしゃる。普段は公開しないという書庫を見せていただいた。天国だ!

こうして、学生もネコノアシも栄養をもらううち、それが訪れた。

●それマル

それは東京アニメーター学院での最後の授業の11月30日のことだった。授業の一環として、ごく近所にある「少年画報社」の編集部を訪ねた。「ヤングキングアワーズ」の副編集長の具体的な編集者の仕事の話の後、各自持って来た作品を見てもらう時間になった。アレッシオとトーマスのところに編集長自ら一番に来てくれた。トーマスの作品集を見て、

「こういったアクションはウチの雑誌に合うので、まず30ページくらいの読み切りを描いてみませんか?」

ええっ?

編集長の言葉を訳すと、トーマスの顔が赤くなって、額に血管が浮かんだ。1月の始めにネームを見せてもらえませんか、というかなり具体的な話で、血管の浮かびもうなづける。アレッシオの作品も、携帯配信のショートに使えそうだとのこと。

去年のティーナの時は、絵柄が違うせいもあっただろうけど、ガイジンは問題にしてない様子だったのに、この一年でこの違い。嬉しい誤算だ。

トーマスの作品がアワーズに載れば、日本の漫画界にとっても異例なことだし、イタリアの漫画界にとっても快挙だ。イタリアマンガが日本に通用する! ネコノアシの出番も多くなろうというもの。

ああ、どうしよう! 夢の実現か?!

・今回の来日メンバーなど
< https://bn.dgcr.com/archives/20071218140100.html#photo
>

・トーマス
< http://www.ombra-tomas.blogspot.com/
>
< http://www.kelevracanerabbioso.blogspot.com/
>
< http://myspace.com/tomas_art
>

・アレッシオ
< http://www.scarrabocchio.blogspot.com/
>

ネコノアシのサイトはこれから。

【みどり】midorigo@mac.com
約三週間の里帰りは去年同様忙しかったぁ。東京にいるとあちこちで面白い展覧会にぶち当たって、見たいものが増える。当然全部は見られない。鳥獣戯画展だけはどうにか組み込んだ。日曜だったので人がいっぱいで、一番有名なウサギとカエルの相撲場面がある巻物(正式名称・鳥獣人物戯画絵巻 甲巻)はほとんど見られなくて残念。人の頭越しに見た感じでは、後世に名を残すものって、それだけの完成度を持ってるなという印象を持った。「鳥獣人物戯画絵巻 丁巻」では投石の軌跡や勝絵絵巻(室町時代)のおなら合戦での屁の軌跡などの効果線がすでにあった。人の表情も豊かで、マンガの先祖といわれる戯画って思ったより子孫に近いんだ。

里帰り中は「娘」をした。朝起き出すと母がいそいそと「何食べてく? パンもご飯もあるわよ。あ、お餅にしてあげよか?」と世話を焼いてくれる。それが心地よくて、お腹が空いてなくてもちゃんと朝ご飯を食べた。体重、二キロは増えた。

イタリア語の単語を覚えられます! というメルマガだしてます。
< http://midoroma.hp.infoseek.co.jp/mm/magazine.html
>

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■編集後記(12/18)

使ってみたい武士の日本語・クライアントが約束の日までにギャラを支払えないという。それを初めて聞かされた時は「異なこと(また妙なことを)」「ひらに(何卒お願いします)」と応じていたが、それもたんに事務手続きの怠慢が原因であると知って、『何を言うか!』と叫びたてたい怒りを抑えてクールに「これはしたり(これは驚いた)」「曲げて(なにがなんでも)」とお願いしたが、言を左右にするので、「物申す(抗議することがあるぞ!)」と言いたいのをさらにこらえて、「手もと不如意」なので「ひらに(何卒お願いします)」と頭を下げる。ここで「手もと不如意(ちょっと当座の持ち合わせが……)」は正しい用法ではないが、期日までに振り込んでいただけないと家計が大変なのですよ、というイメージである。感情的にならず、執拗にくいさがった結果、特例で(?)数日遅れで受け取ることができたが、まるで社会保険庁みたいないい加減なクライアント様であった。なぜ、古い言葉を使ったのかというと(実際には使いません。たとえです)、野火迅「使ってみたい武士の日本語」(草思社、2007)を読んだからだ。この本は、武士の決まり文句、春夏春秋が薫る言葉、武家社会の言葉(しきたり)、武家社会の言葉(義務)、剣術の醍醐味を伝える言葉、行動・しぐさを表す言葉、人物を評する言葉、酒と色を語る言葉、の7章160余語で構成される。一語一頁、藤沢周平らの時代小説を引用し、軽妙に解説していておもしろい。筆者はテレビで再放送「水戸黄門」を眺めていた折、悪臣が居直るセリフ「これはしたり。慮外者が、いかなる証拠があって悪事と言うか」を聞いて、くだんの侍言葉を正しく現代語できる人は滅多にいないはずだ、しかし一般大衆に支持され続けるのはなぜだ、という閃きを得てこの企画を立てたようだ。ここで紹介される「武士の日本語」の多くは、やせ我慢を素にした品格に支えられる「極上の日本語」である。気に入った言葉と現代語訳を書き出して、愛想がないと言われるわたしのメールで使ってみたい。(柴田)

・日曜日はもう一人のバレエの先生の舞台を観に行った。人情コメディもので、男性も舞台の上にいる中、先生は男役を演じる。少女歌劇団の男役スターというまんまな役。駆け落ちした貧乏だけど明るい夫婦や貧乏神のいる中、全身スパンコールな先生が登場。先生が大げさなポーズを決める度に客席は爆笑。おいしすぎる。ここの劇団の舞台は、テンポから台詞から動きから何もかも計算つくされていてこなれている。観客を取り込むのがうまい。さすがは商業演劇だなぁと思う。芸達者、踊り上手、歌上手な人たち。貧乏してても夢みよう、人生はショウ、人間にはそれぞれ役割があり、それを楽しもう、阿呆(大阪で言うところの阿呆。馬鹿ではない)になろうというのがテーマだった。/お金貰えるのいいなぁ。お客さんだけじゃなくて同業者らからも質問来るぞ。あっ、古籏さんに泣き付いたことあった〜。笹川さんにも。あの時はありがとうございました!(hammer.mule)
< http://www.doutonbori-gokuraku.com/kageki/info.html
>  これ


photo
使ってみたい武士の日本語
野火 迅
草思社 2007-09-22
おすすめ平均 star
star意外と面白い(^o^)

時代小説用語辞典 サムライの日本語 日本語でどづぞ―世界で見つけた爆笑「ニホン」誤集 (中経の文庫 や 2-1) 日本人が忘れてはいけない美しい日本の言葉 (プレイブックスインテリジェンス) 幕末下級武士の絵日記―その暮らしと住まいの風景を読む

by G-Tools , 2007/12/18