電子浮世絵版画家の東西見聞録[28]南大門焼失に思う
── HAL_ ──

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2008年2月10日、ソウルの中心でもあった崇礼門(スンネムン 通称南大門)が焼失した。たった一人の愚かな男により、ソウル最古の建物と言われる610年の歴史を呆気なく失ってしまった事が非常に悲しい。

ソウルは北の北岳山、仁王山、南の南山、東の駱山に守られ、その稜線に沿って造った壁は全長は約18km、外敵から都市を守るための出入り口として南大門、東大門、西大門、北大門を作りました。

西大門は西方中国からの侵略に備えたもので、独立門と名前を変え再建されています。40年間閉ざされていた北大門は2006年に開放されたばかり、東大門と南大門は市中央にあるため市民に親しまれてきた文化財です。


私がはじめてソウル市を訪れた時には、南大門は閉ざされたままで入ることは許されず外から眺めるだけでしたが、北大門と同じ2006年、周囲に緑地を作り一般公開されたので、公開後は私もその広場で身体の疲れを取ったものです。その南大門は、現存する木造建造物で最古のもので、1395年に建築を始め3年の歳月をかけ完成させたそうです。

こうした文化財が崩れ落ちる姿を、ほぼオンタイムで映像として見ることが出来るようになったのは良いことなのか、どうなのか。情報の速度が速ければ速いほど間違った情報も同時に配信されるおそれがあり、火災時、混乱した韓国では一部のネット上で「日章旗を付けたショッピングバッグを持った日本人を見た」という声まであったそうです。

翌日には放火犯が逮捕されましたが、もし逮捕に時間がかかると国際的にも不安定な状況が巻き起こったのではないかと思います。外敵から守る門を自ら焼いてしまうことになるとは、韓国人のダレも想像しなかったでしょう。それだけ平和になったのでしょうか。

国際情勢はともあれ、この南大門焼失事件を知った時、私が思い浮かべたのは「法隆寺」です。これは金堂壁画の模写のために使われた電気座布団から出火し焼損した事件ですが、このおかげで日本の文化財保護のための法律や条令が出来、文化財防火デー(私の誕生日1月26日なのです)が作られました。

韓国は日本同様木造の建造物が多くあるにもかかわらず、中央の大きく有名な宮殿はともかく、地方にある広く大きすぎる水原の建造物内は監視する人も見られず、城門内で煙草を吸うのも自由な状況です。

この南大門も例に漏れず、二階部分は公開されていないにもかかわらず、監視カメラの死角にはしごをかけ上り下りするホームレスもいて、酒を飲んだり寒い時には空き缶ランプを使って暖をとる姿も見られたと聞きます。

このような悲しいことが再び起きないよう、韓国でも文化財に対する法整備が行われる事を切に望みます。それにしても、この火災による韓国ソウルの人々の悲しみ方は、日本人の私達から見ると奇異に映ります。日本で文化財が焼失した時には白装束を着た人々が集まり、献花して行くのでしょうか。

南大門はソウルに行く人は必ず訪れると言っていいほどおなじみの門で、私達も毎回その姿を見ています。釜山など韓国南側地方からのアクセスはソウル駅から入ると北東に位置し、南大門市場のランドマーク的存在です。南大門から歩いても行ける距離に明洞、市庁、ちょっと足を伸ばせば仁寺洞や光化門までと広がります。現在でもまさに門の役割を果たしている場所なのです。

今回の事件によりはじめて知ったのが、門の真下から見上げる丹青を使った龍の図です。これは見ておきたかった、残念。南大門は存在自体があまりにもポピュラーなので、観光するという気持ちが全く起こりませんでしたが、こういった身近の所にも見るべきものがある歴史のある街なのですね。次回はもっと細かなところにまで目を向けて観光してみようと、あらためて感じた今回の事件でした。返す返すも残念でたまりません。


公開前の南大門


雪の南大門市場(昨年3月)

【HAL_】横浜在住アーティスト hal_i@mac.com
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by G-Tools , 2008/03/10