Otaku ワールドへようこそ![70]行きつけのメイドバー
── GrowHair ──

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今回は、行きつけのメイドバーのことをさらっと(?)書きます。

●スナック風のお店

店の名は「ヴィラージュ・レイ」。中野駅北口からサンモールを進み、中野ブロードウェイのすぐ手前を右に入り、42秒ほど行った左側にある。階段の下に、黒い光沢のあるボードが出ていて、メイドさんの絵が描いてある。階段を上り、左側にある分厚いドアを引いて入る。

「メイドバー」とうたっているが、店構えはスナック。カウンター7席にソファー席10席。カウンターの中には、からっと明るくて頼もしい感じのママさんがいる。メイドさんは、たいてい2人か3人いる。メイド服は黒を基調としているが、メイドさんが自分で決めるのだそうで、それぞれ特徴があり、よく似合っている。内装に萌え要素は特に見当たらない。

ソファー席に座ると、向かい側にメイドさんが座って、話の相手をしてくれる。ほぼつきっきりなので、いくらでも話ができて、けっこう仲良くなれちゃうとこがいい。メイドさんにも一杯おごるのが、暗黙のルール。カラオケもできる。


お客さんは、圧倒的にオタクが多い。だから、カラオケもアニソンが中心。戦隊ものを勇ましくがなる者あり、ホラー系を妖しく歌う者あり。メイドさんの中にはいわゆる地下アイドル(※)のコもいて、そのコが店に出る日は親衛隊も出てきて、見事なヲタ芸を見せてくれることもある。みんな、のびのびとオタクの本領を発揮している。

※TVや雑誌等のメジャーなメディアにあまり登場せず、ライブや撮影会等を中心に活動するアイドル。最近は、言葉の響きに配慮して「ライブアイドル」と呼ぶらしい。

ママさんは名前で呼んでくれるし、いつも頼むビールの銘柄を覚えていてくれたりする。話の内容も覚えていてくれて、次に来たときは、続きの話ができる。そのあたりは、スナックだ。値段もけっこうよくて、2時間ぐらいいて、瓶ビール2本につまみ1品頼めば、もう6,000〜7,000円 ぐらいになる。客層は、20代から40代まで幅広くいる。

●キャラの立ったメイドさんたち

店のメイドさんは全部で6人。私が行くとよく店に出ているのは、ちうちゃん、あいちゃん、kちゃんの3人。みんな個性が強くて、それぞれ熱狂的なファンや、ひそかに応援してると思しきファンがいる。

ちうちゃん。猫耳が似合う妹キャラ。以前この店にいたさらちゃんと「めいぷる☆シロップ」というユニットを組んで地下アイドル活動中。猫耳があまりにもしっくりきているので、一度などは店がひけてからもはずすのを忘れて、近くでラーメンを食べて、電車に乗って帰ったこともあるという。誰もなんとも言ってくれなかったらしい。なんか、すご〜く親近感のもてるキャラ。ほんっと、妹だったらいいなぁ、みたいな。

あいちゃん。髪が美しい。丸顔ぱっちり目に、黒のロングがめっちゃ合ってるのだ〜。儚(はかな)ちゃんという名前で髪フェチDVDに出演しちゃったりもしている。
< http://www.salasala.com/salacolle/ha13/ha13.htm
>

キャラは、本人いわく「唯我独尊、傲岸不遜。自他共に認めるナルシスト」。イケメンにしか興味がなさそうなので、みんなあきらめている。だけど、どんな話にもノリよくついてくるので、多分、誰にとっても話していて楽しいと思う。ヴィジュアル系の音楽が好みのようで。陰陽座とかPlastic Treeとか。

kちゃん。伏せ字ではなくて、これが店での名前。キャラは、本人いわく「お笑い担当」。場の空気をぱっと明るくしてくれる人。いつもたいへんにぎやか。声優の学校に通っている。ハスキーな少年声。何年かごとに進級オーディションがあり、ジュニア、準所属、というふうに等級が上がっていくのだそうで、たいへん厳しい世界らしい。歌がめきめき上達している。

ポケモンで同人誌書いて、コミケにサークル参加してたりもする。で、コスプレイヤーでもある。中華系のコスもするというので、5月10日(土)11日(日)に鳥取の中国庭園「燕趙園」で開かれるイベント「第4回中華コスプレプロジェクト」を薦めたら、行くという。もう参加申込みを済ませ、それに向けてコスチュームを鋭意製作中だそうで。「三国志大戦」の。コンテストにも出る気満々だし。非常に楽しみだ。
< http://www.pulse.vc/cos/
> 中華コスプレプロジェクト

●腕利きのママさん

ママさんは、その昔、銀座に店を構えていたという。そのあと、歌舞伎町の高級クラブに雇われママとして1年近くいて、それから中野に移ってきたそうだ。17年前のことだ。以前からのお客さんたちに贔屓にしてもらい、ふつうのスナックとして営業してきたが、つい2年くらい前からメイドさんを入れるようになったという。

「銀座の店って、うわさによく聞く『座っただけでン万円』みたいなとこ?」と冗談まじりに聞いてみると「そのくらい、すぐなっちゃうのよぉ」とシレッと答えられてしまった。チャージ料だか、サービス料だか、税金だか、足してくとあっという間なんだそうで。

銀座のお店には、有名な政治家やその取り巻きの面々も来ていたらしい。なんか、ものすごい豪遊っぷりを見せてくれたらしい。実は、今でも、そのころからのお客さんが中野の店に来るそうで。オタク連中の馬鹿騒ぎに混ざりたくない人は、あらかじめ電話を一本入れておいて、メイドを帰して閉店した23:00過ぎに来るという。どこかの社長さんは、中野通りにシルバーブルーのフェラーリを停めて来るという。で、たいてい我々の10倍くらいは払っていくのだそうで。電話で「お祝いだから」の一言が入ると、店はドン・ペリを2本ほど用意しておいて、1本5万円で出すという。

ママさんの手料理は、間違いなく美味い。素材はどこそこのを仕入れました、と口上つきで出てくる。メイドさんたちも、銀座方式(?)でよくしつけられていて、けっしてダレることなくよく気を回してくれるので、いつも心地よくご主人様気分を満喫できる。

メイドさんを入れるようになったのは、メイド喫茶「おぎメイド」から土日だけ場所を貸してくれと頼まれたのがきっかけだという。だけど、うっかり換気扇のスイッチを切るのを忘れて帰られて、過熱して焦げ臭かったとか、ゴミが出しっぱなしだったとか、トラブルがあって、結局追い出したという。ブロードウェイ(ショッピングセンター)の3階に移っていった。おぎメイドは残念ながら今月30日(日)をもって閉店だそうである。

そのころのヴィラージュ・レイは、フロアレディの募集をかけてもなかなか応募が来なくて、おぎメイドの手を使ってネットでメイドさんの募集をかけたら、あっという間にどっと応募がきたそうで。じゃ、メイドバーにしよう、と。当然の帰結ながら、客層ががらっと変わったそうで。

それまでは、2階にあるスナックとあっては入りづらく、新しい客さんがふらりと入ってくるなんてことは年にそう何回もなかったのが、メイドバーにしたら、どんどん来るようになったそうで。そりゃ、メイドさんのいる店が新たにできたなんて情報はあっという間にネットを駆け巡り、とりあえず一度は行ってみようという人はたくさんいるでしょう。

新しいお客さんたちは、マナーがよくて、トラブルもなく、いい人たちだという。オタク事情にはぜんぜん詳しくなく、萌えの概念をまったく理解してないママさんだが、オタクを歓迎してくれているあたりは実に心が広い。以前からの常連さんたちの中には、この空気に閉口して、来るのをやめた人もいるという。ま、去る者は追わず、だそうで。かくして、中野の店が一軒、ヲタ色に塗り替えられた。

メイドさんをあと3人ぐらいは入れたいと言っていた。あのママさんの下で働くとなると、そうとう厳しく指導されそうだけど、女磨きの修練と思えば、絶好のチャンスなのではないかな?

●「もったいビジネス」は好きではないのだが

5年ほど前だったか、人に連れられて、スナックという営業形態の店に行き、いや〜、こういうところはもう二度と行かなくていいや、と思った覚えがある。どうにもこうにも性分に合わないのである。皮肉を込めて「もったいビジネス」と呼ぶことにした。

第一に、若い女の子と雑談ができますってだけのことを、さも大層なことのように見せかけてるところに、まずなじめない。私の場合、モテるということは決してないにせよ、一介のカメコとしてコスプレイヤーを撮ってる以上、話す機会ぐらいなら掃いて捨てるほどある。いくら何でも話するぐらい、タダでしょ。そんなことにもったいつけらても、なんだかなぁ、って感じなのに、もったいに値段までつけられては、どうにもこうにもである。

第二に、女の子が、ガラスケースに入った高価な人形か、試合開始前のトロフィーかってぐらい、まったく手の届かない高〜いところに置いてあるかのような空気を放っているところが、またウソっぽくて。多分、足しげく通うと、距離がだんだんと縮まってくるのかもしれないけど。でも、それって(足しげく通ったことはないので知らないが)自然にうちとけてくるというより、向こうが巧みに距離をコントロールしているって感じじゃないのだろうか。払った金額に反比例して、距離が縮まっていくシステムになってます、みたいな。反比例の法則なら、距離をゼロにするまでに、無限大のお金を払わないとならない。

いつかはイイコトがありそうな思わせぶりでずるずると引っ張っておいて、いよいよヤバくなりそうになると、あっという間にトンヅラこいて、消息不明になっちゃったりするんじゃなかったっけ? 距離は一気に無限大、みたいな。スナックのねーちゃんって、そういうイメージないかな?

それと、お金と引き換えに、見栄を張らせてもらうってのもな〜。自慢話をすれば大げさに驚いてくれるかもしれないし、愚痴をこぼせば全面的に味方してくれるのかもしれない。だけど、それってお金と引き換えのサービスでしょ。帰ったあとで「やれやれ、あのお客の相手はしんどいわ」とか言ってそう。私は特にモテたいとかカッコつけたいという願望が強いわけでもなく、そういうサービスは必要としない。

あと、暗黙のルールってのが、いろいろあるみたいで、やだね。女の子が帰るのと時間をほぼ同じくして帰るのは、他のお客さんが勘ぐるのでご法度だとか。まあ、そういうのをしっかり身につけることで、きれいに遊べるようになっていくのかもしれないけど。しかし、垢抜けた遊び方のできる粋な人になるのは、私の目指すところではない。

……というぐあいに、スナックをついつい親の敵のように言ってしまう私であるが、じゃあなぜヴィラージュ・レイには心地よく収まっているのか。うーん、多分、オタクがのびのびと本領発揮しておバカになりきってる姿を見たり、自分が気がつくとなってたりするのが、楽しいんじゃないかな。

私がヴィラージュ・レイに最初に行ったのは、去年の5月のことである。すっかり忘れていたが、mixiの日記を読み返してみると、「あいちゃんのツインテールに張り飛ばされたい」とか書いてある。

●ミ・キュイという逸品

2月にはママさんからチョコをいただいた。さて、何をお返ししようかと悩み始めるころに、ちょうど甘糟りり子の小説「ミ・キュイ」を読んでいた。「ミ・キュイ」とは半生調理を意味するフランス語で、小説では牡蠣のミ・キュイとして出てきたが、ググってみるとトップにはチョコのミ・キュイが出てきた。山形県にある「清川屋」の。

薄くて丸いケーキ状の形で、外はサクサク、中はとろっとしているという。これだ。ネットで注文できて、指定日にクール宅急便で届けてくれる。そのまま食べてもよいが、レンジで5〜6秒チンすると、中がとろりと溶けて、またよいという。これなら、あの舌の肥えたママさんでも、うなっていただけるんじゃないかな〜、なんて。さっそく、注文。お店の対応も、迅速で丁寧でたいへんよかった。

結果、大成功。2〜3日後に行ったら、大変喜んでいただけた。この味は本物だ、と。ミ・キュイという言葉は知ってたけど、清川屋のチョコのミ・キュイは知らなかったそうで。よく知ってたねぇ、と感心された。メイドさんやお客さんにもふるまったそうだが、私の分も残しておいてくれた。どれどれ。うむ、これは美味い! よっしゃあ!

……などと、すっかり有頂天になってしまった。おいおい、カッコつけることに興味ないんじゃなかったっけ、俺。自分の中にある矛盾にあんまり深く悩まないお調子者である。

付記。ヴィラージュ・レイのホームページは現在休止中で、復活準備中。店はちゃんと営業してるので、電話で問い合わせるか、直接行きましょう。
営業時間は19:00〜23:00、日祭日は休み。TEL.03-5380-8577

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp

ローゼンメイデン 7 (7) (バーズコミックス)左手の薬指に「誓いの薔薇の指輪」をするようになって、まもなく3年、「ローゼンメイデン」連載再開にwktkしている45歳、カメコ。何があったか知らないが、幻冬舎「月刊コミックバーズ」で連載が打ち切られ、かなり経つ。集英社「週刊ヤングジャンプ」3/19発売号にPEACH-PITの「少女のつくり方」と題する作品がいきなり登場。そこには「真紅」が!! 「薔薇の香り芳しき至高の少女」とある。だけどオチは「次号にて重大発表!!」。で、3/26発売号には「ローゼンメイデン4/17発売号より新連載!!」。おおっ、ついに。高まる期待。これを機にアニメの第3期か、映画版か、実写ドラマ版か、人形浄瑠璃版か。次期総理は麻生か。薔薇香る 至高の少女は 俺の嫁