電子浮世絵版画家の東西見聞録[36]「Jazz香る・版画展」
── HAL_ ──

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●お祭り騒ぎの「個展」開催

「東西見聞録」の頭に付いている「電子浮世絵版画家」これが本業の私です。私は基本的に日本で言う個展は行いません。企画展のみを目標にしてきました。でも、過去一回だけ愛犬の死によって触発された創作をまとめ、レンタルギャラリーで個展を開催しました。「愛犬達の肖像版画展」です。

銀座などの有名ギャラリーの一部は別として、日本ではギャラリーを期間だけお金で買って、誰でも個展を開催できます。同じギャラリーで、芸術作品でも、工芸作品でも、学生の遊びでも、すべてひっくるめて個展です。イラストレーターやデザイナーの、取引先へのアプローチとして活用している事務所などもありますが、ほとんどが身内のお楽しみで終わってしまいます。



「愛犬達の肖像版画展」は、いつもお世話になっている企業さんの協力を仰ぎ、お祭りとして開催しました。パーティーも開催期間の真ん中の日の、休日前を狙って開催し、多くの友人を招きました。ギャラリー運営の方にも、こんなに沢山の人が集まったことはなかったとビックリされるほどの人数が集まり、その集団の一部は日中から始めたにもかかわらず、その日会場を閉めるまで居座り、最後は酔っぱらいの集団と化し、それでも飽き足らない10人ほどの人たちと二次会に繰り出しました。

昔から人を集め我が家で飲み会をすることが好きで、10年以上前になりますが毎年クリスマスパーティーを開催し、当時で最大20人以上の客をもてなしたことがあります。パーティーの準備は前々日から始まり、買い出し、仕込み、料理と手作り感いっぱいです。まだ友人達も若く、ビールのケース、日本酒、ウイスキー、ワイン、シャンパン等々がゴロゴロするのは当たり前、それでも足りずに、宴もたけなわに買い出しに走ったことも何度かあります。

「愛犬達の肖像版画展」は、この時のことを彷彿とするかのような賑わいでした。これは家の近所にあるギャラリーだから出来たことです。しかし、今回の個展会場は「清澄白河」にあります。当然、料理を作って運ぶことなどは一切出来ません。もちろん企画展ですので、馬鹿なお祭り騒ぎをやる気はないのですが、どうなるかは分かりません。




●今度はギャラリーの「企画展」

通常のレンタルスペースの個展と、企画展の差を理解していない方もおられると思いますが、企画展とはギャラリーからのお声掛けにより実現します。もちろん、展示会場に関する費用は発生しません。だからといって、作家にお金が全くかからないわけではなく、お声掛けしていただいたからには、それなりの準備と成果をもたらさなくてはならないのです。

私の場合は平面作品なので、中身だけ見せるならぺらぺらのスチレンボードに貼って出品することは出来ます。しかし、それはお土産品を古新聞で包んで渡すようなものです。中身に見合った額を用意し、礼を尽くしてお客様に見ていただきます。私は、常から作品は額装してお見せするのが礼儀だと唱えています。額装は作品にとって正装に他なりません。

今回の展示作品の内容ですが、ほとんどが旧作品です。手持ちの作品のJazzの香りのする大判作品の一部を展示します。もちろん、新作もありますので作品の制作年による流れを見ていただくことも一興でしょう。私が「電子浮世絵版画家」として長年活動し続けている事はご存じの方もいるとは思います。古来より、版画というものはその時代の最新技術を使って創られてきました。

版画は凸版画、凹版画、孔版画、平版画に分けられています。電子版画の場合は、電子データであるため直接的な版はありませんが、そのデーターを元に出力機が用紙に吹き付けていくので平版画として位置づけられるでしょう。版を制作する過程において、電子データであることの利点はいつでも他の数値に置き換えることが出来るということでしょう。そして、制作その過程すら記録しておくことも出来ます。だからといって、全てが可能なわけではありません。入力装置や出力装置によって、最終的な画作りが変化してしまいます。それをコントロールする目が必要になります。

「Jazz香る・版画展」は、Artist HAL_が手がけるミクストメディアを使用した版画展です。私が1999年から描き始めた、Jazzミュージシャンをテーマにした大判作品群の一部を展示します。作品はアカデミックな作風の中に、常に独自の表現によるトリッキーではない新鮮さを付け加えた、他に類を見ないミクストメディア表現を築き上げたと自負しています。作品は時を超えた存在として、未来にまでも斬新さを持ち続けます。

ミクストメディアとは、作品制作の核を担うApple Machintosh、入力装置としてのWACOM Tablet、描画ソフトCOREL Painter、EPSON MAXARTなどの最先端技術や、従来のキャンバス、筆と絵の具など、ひとつの作品の中に異なる素材、道具をミックスして新しい作品として作り上げる版画制作を言います。是非この機会に私の電子版画作品を御覧になり、Jazzの香りを楽しんでいただければと思います。

Jazz香る・版画展
< http://hal-i.com/ex/jazzkaoru.html
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会期:5月27日(火)〜6月8日(日)11:00〜18:00 最終日16時
オープニングパーティー5月27日(火)19:00〜21:00
会場:SAKuRA GALLERY(東京都江東区常盤2-10-10 TEL/FAX:03-3642-5590
< http://kiyosumi-gallery.sakura.ne.jp
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