電子浮世絵版画家の東西見聞録[50]ゲリラ豪雨から秋の味覚へ
── HAL_ ──

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●ゲリラ豪雨

普段は家にいる事が多く、特に8月中はほとんど外出予定はなかったのですが、たまぁの外出日は夕方以降の約束が多くなり、そういう時に限って不安定な天気予報。一度は駅に降り立ったとたん大粒の雨がボツボツと降り始め、打ち合わせ予定の場所までは徒歩で行くしかなく、歩き始めるとその大粒の雨が絶え間なくなり、もう約束まで時間もなく、雨宿りする事も出来ず、傘をさして歩く事15分。打ち合わせ場所にたどり着いた時には、傘の生地を通り抜け身体中に降り注いだ雨が着ていたシャツを絞れるほどに濡らし、ジーンズの裾は膝までずぶ濡れ状態。

打ち合わせ中、シャツは椅子にかけておいただけで乾き、ジーンズもまあまあの乾燥具合でしたが、靴の中で波打っていた雨水は乾くすべもなく、そのまま次の待ち合わせ場所へ持ち越し。

また、別の日は打ち合わせまで時間があったのですが、改札を出て目の前は、風、豪雨、雷。この日は傘も持たずに出かけたので、商店の軒先伝いに雨をしのいで銀行へと立ち寄りたいと考えましたが、通りを渡るべき道は橋を持たない河川となり、目の前に深々と水をたたえ、対岸の目前にある目的地にはたどり着けず。この日は仕方なくコンビニで傘を買う。



とまあ、ゲリラに打ち負かされる日々が続いておりました。そんなときに見たテレビでは、ウェザーニュースが情報を流していました。このウェザーニュースでは「実況天気」というサービスを5年前から開始、携帯電話から送られてくる一般市民の情報を元に、1時間先まで10分ごとの天気予報をするとの事。情報が集まれば集まるほど、正確に予報が可能になると言うわけです。今年はこれに頼りたくなる夏の天気ですね。
< http://weathernews.jp/observation/
>

でも、考えてみれば昔の自然の中で生きている日本人には、天気を予測する能力はあったのですよね。ツバメが低く飛ぶと天気が悪くなるとか、朝虹がかかると雨になるとか、星が瞬くと風が出るとか。いわし雲が出ると雨が近いとか。様々な言い伝えはあらためて考えてみると理にかなっている事ばかりです。いわし雲は巻積雲の事、上空が湿ってくると出てくる雲です。鱗雲ともいい、秋の空の代表格。「うろこ雲」「いわし雲」「さば雲」はどれも秋の季語になっています。

この雲を私は「うろこ雲」と呼ぶ事が多いのですが、深く澄みきった青い空に高く掛かる「うろこ雲」は私の心に爽やかな未来を予感させるイメージを残し、いつまで見ていても飽きの来る事がありません。夏の海の上に高くそびえ立ち、白よりも白く光り輝く入道雲も男らしい力強さを感じさせ大好きですが、秋の「うろこ雲」「筋雲」を見ている時は気持ちが静まります。でも、どちらの雲も雨を呼ぶ雲、天気が崩れる前兆です。

●目黒の秋刀魚

さて、秋の魚といえば、鯖でも鰯でもなく、誰からも「秋刀魚」という名前が出てくると思います。目黒の秋刀魚は古典落語の噺の一つですが、本当に脂の乗った良い秋刀魚は、塩焼き、蒲焼き、最近ではお刺身まで、どんな料理をしても美味しく食べられますよね。噺の「目黒の秋刀魚」は「空腹時に食べたから美味しかった」という説もありますが、目黒で食べたものが本当に美味しかったらしいですね。

これは、当時大きな魚市場があった芝浜で塩を振られた秋刀魚を、行商が徒歩で2〜3時間の距離にある目黒に運ぶと、塩焼きにしてちょうど美味しい味加減になるという事から話が出来たようです。今回は、そんな秋刀魚の骨まで食べられる「秋の味覚」をお楽しみ下さい。

●秋刀魚の筒煮



骨のある魚は、美味しいけれど骨を抜いて食べるのが面倒。そんな貴方に最適な、秋のアイテムです。この筒煮は骨まで柔らかくなり、丸ごと食べられるので、面倒くさがり屋の私の大好物です。朝の食卓に一切れの筒煮が出るだけで大満足。贅沢を言えば、これに松茸ご飯でもあれば秋は一気に身体に染み渡ります。今年は中国産が早いので早速頂きましたが。

秋刀魚は近年輸送状況が良くなったので新鮮な物が入手でき、刺身で食べられるということは、青魚好きにはたまらない事と思います。しかし、作り方が非常に簡単で、ある程度保存の利く筒煮を是非試していただきたいと思います。

味付けは、いたってシンプルです。臭み抜きの生姜にニンニク、そして鷹の爪、味付けは醤油のみで作ります。まずは、まな板に新聞紙を広げます。これはまな板に匂いが付きにくくなることと、作業の後そのまま捨てられるので便利なのです。その上に秋刀魚を広げ頭と尾部分を落として、ブツブツと四つ切りにします。今の時期の秋刀魚は塩焼きにして内蔵ごと食べるのが美味しいのですが、筒煮には内臓は邪魔なので、箸で突きだしてしまいます。そのあと、しっかり水洗い。


最近の秋刀魚は、内臓に鱗をはらんでいる事が多くなっています。これは網で一網打尽にする漁ならではの事で、網の中で暴れた秋刀魚はお互い身体が擦れ合い鱗を落とし、その落ちた鱗を飲んでしまうらしいのです。スーパーの魚屋さんでは、大きめの入れ物に水を張り沢山の秋刀魚を入れて売っていますが、水に鱗が浮いていたり、身体の鱗がはげている秋刀魚がある場合は、塩焼きではなくこの料理方法にすれば美味しくいただけます。

筒切りになった秋刀魚を鍋底に平らに広げるように敷き並べ、先に用意した生姜のスライス、叩いたニンニク、鷹の爪を入れます。そして酒と水をかぶるくらいにひたひたに。辛いのが好きな場合は鷹の爪を増やすと良いです。
この料理は塩分控えめで、秋刀魚の味を最大限に引き出す事が持ち味なので、醤油は少なめにして下さい。ちょっと塩気が足りなく感じた場合は、鷹の爪を多くすると良いですよ。私はちょっと多めの鷹の爪が大好きです(今回はこの写真の量に醤油大さじ5杯)。

あとは、ゆっくり、コトコトと煮詰めていくだけです。水分がほとんどなくなったところで完成。骨まで柔らかくなり、ピリッと鷹の爪が利いた、ご飯にとても良く合う総菜になります。

【HAL_】横浜在住アーティスト hal_i@mac.com
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