電子浮世絵版画家の東西見聞録[74]後藤元洋さんのロケ-2、新鮮な海老をつかった二品
── HAL_ ──

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●写真家・後藤元洋さんのロケ取材-2

前回、日ノ出町のスーパーマーケット「食品館あおば」の事務室に行ったところまでのお話でした。そこでは、まったく決裁権などありそうもない中年男性に引き合わされ、撮影許可を得るためにこちらの事情を話すと「はぁ?」と言いながら奥へ入ってしまったのです。それから数十秒が経ちました、奥から戻ってきた彼は、私に名刺を差し出します。そうです、日本社会では名刺を渡されたら名刺を返す、これが一般常識なのです。

名刺には「食品館あおば 関内駅前店 店長」と書かれています。そして名刺の彼の口から出されたのは「お客様の邪魔になりませんか?」という問いかけです。そうです、お客様は神様なのです。もちろん、こちらは絶対客に迷惑をかけたりするわけがありません。むしろ「ちくわ」を購入するお客様でもあるわけです。この店は絶対に良い店です。人に優しい店は、商品に対しても優しい配慮が成される店です。関内にお出かけの際は、是非「食品館あおば」に立ち寄りましょう。事務的に対応する日ノ出町スーパーとは大違いです。日ノ出町の人も、お隣の駅まで歩いて行くときっといいことがありますよ!

話はちょっとずれましたが、いよいよ後藤さんのインスタレーションとも言うべき作品制作に取りかかります。カメラを回す時が来たのです。「食品館あおば」は地下にあり、一階には別の複数店舗が入っています。取りあえず入り口はエスカレーターでしょう。ということで、エスカレーターを降りるところから、儀式とも言える「ちくわ」購入がはじまります。



昨今、プライバシーの保護が厳しく叫ばれる時代です。店内ではなるべく他のお客様が映り込まないような配慮も必要です。人をよけながら、避けながら、カメラで後藤さんの動きを追っていきます。後藤さんはおでん種売り場の前で立ち止まります。そして、棚に並べられたおでん種の中の十数本の「ちくわ」の中から、後藤さんに呼びかけてくる「ちくわ」が現れるまで待つのです。

様々な種類の、包装されたちくわが棚にあります。一本ずつ手にとってはみるものの、何も話しかけてくれない「ちくわ」は丁寧に棚に戻します。同期する「ちくわ」が現れないまま、棚の前に正座し、頭を垂れる後藤氏。数分が過ぎ、突然一本の「ちくわ」が後藤さんの手の中に飛び込んできました。後藤さんはその「ちくわ」を手に、他の「ちくわ」達に向かって礼をしてから、レジを抜け店の外に出て行きます。

後藤さんにとって写真は常に「記念写真」だと言います。自分が子供の時代に、写真を撮るということは、特別のことだったと語ります。「歴史的に写真は本来ハレ(儀礼や祭り等の非日常)の日に撮るもので、最近のようにケ(普段の生活、日常)を撮るものではない。ケには興味がないんです」と言いいます。そして、今この瞬間は特別な出会いのあった時なのです。

「ちくわ」と後藤さんのセルフポートレイトは、「ちくわ」と彼とのある意味群像でもあると言えます。彼は頭で判断することを止めて、身体で考え始めた瞬間、目の前にある「ちくわ」という個体が、「ちくわ」という名前から遊離をはじめ、彼の言葉では「すべてがどろどろに溶けた。いったい目の前にあるこの物体は何だろうかと考える間もなく『ちくわ』は口にくわえられることを欲し、私は答えるように『ちくわ』を口にした。」そう、その瞬間こそ日常ではないハレの日、ハレの時であり、ハレの日の自然な行為として、記念写真の撮影が始まったのです。

この後、関内にあるZAIMへ向かいます。それも、「ちくわ」に導かれて。元々桜木町で取材するはずだった撮影は、自然と関内へ、そしてZAIMへと向かわされたのです。それには大きな意味がありました。もちろん、そんなことを私は知るよしもありません。

この「食品館あおば」において「ちくわ」を手を取る光景、そしてZAIMに向かう訳は、是非ボヘミアンでお楽しみ下さい。
< http://bohemian.jp/
>

◇本日のお薦めYouTube Music──Elvis Costello
(エルビス・コステロ 1954年8月25日─)
< http://www.elviscostello.com/
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ミュージシャンは皆そうであるとは思うが、この人は本当に音楽が好きで好きでたまらないのではないかと思っている。ビートルズに影響を受けたコステロは、大衆的なセールス中心の音楽に迎合することなく、明るくポップなメロディーラインの中で皮肉たっぷりの歌詞を添えている。いかにもイギリス的なサウンドが時代を超え変化し続け、記憶に残る。

Veronica - Elvis Costello(Veronicaは記憶障害に直面した老婆の名前です)
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Elvis Costello 1st TV Appearance
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ELVIS COSTELLO "Radio Radio"
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●新鮮な海老をつかった二品

一年中出回っている海老、中華にも洋風にも和風にも、様々な料理に対応する万能とも言える食材です。地球上、海のそばにある都市で海老を知らない街があるのでしょうか。もしかして、食材として世界で一番ポピュラーな存在なのかもしれませんね。そんな海老は、ほんのちょっとした火加減でやわらかくも固くもなり、長時間加熱すると味までが損なわれてしまいます。新鮮な海老を手に入れ、ちょうど芯の部分に火が通ったくらいのほどよい火加減をコントロールするには、経験を積み重ねていくしかありません。

今回は、その火加減が比較的簡単に出来、その一品だけで豊かな気持ちにさせてくれる「海老のオーロラソース和え」と「豚肉団子の甘酢あん」をご紹介します。

○海老のオーロラソース和え

《材料》下処理したエビ16尾から20尾、塩・胡椒少々、片栗粉大さじ2、パプリカ、ピーマン、レタス
《オーロラソースの材料》マヨネーズ大さじ3、ケチャップ大さじ2、おろしにんにく1片分、胡椒少々
《料理法》海老は殻をむき背わたを抜いて、片栗粉または塩をまぶして丁寧に洗い臭みをとります。きれいになった海老の水気を拭き取り、塩、こしょう、日本酒を少々ふり、片栗粉をまぶします。海老、パプリカ、ピーマンも素揚げし、オーロラソースで和えるだけで出来上がりです。素揚げは比較的火の通り方が安定するので、作りやすい料理です。

○肉団子の甘酢あんかけ

《材料》豚ミンチ250グラム、長ネギ半本、ショウガひとかけ、ニンニク1片、塩・胡椒、片栗粉大さじ2、五香粉、パプリカ、香菜または三葉
《料理法》豚肉のミンチに香味野菜のみじん切り、調味料をしっかり混ぜ込み、一口大の肉団子を作ります。そのまま油で揚げて甘酢で和え、香味野菜を散らして出来上がりです。どちらも油を使った料理ですから、一緒に作るといいですね。

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◇Macで楽しいタブレットデッサン:Painterワークショップ
< http://www.apple.com/jp/retail/ginza/
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タブレットはintuos 4、そしてPainterはXIと、どちらも最新版のご紹介です。今回はデジタルデッサンのプロローグ的な進行ですが、最新のデジタルペイント状況をお楽しみ下さい。

日時:5月11日(月)19:00〜20:00【本日】
会場:Apple Store, Ginza
内容:Mac、タブレット、Painterを使った、デッサンの描き方を学べるワークショップです。絵画の基礎的訓練という部分を離れて、Macらしく気軽に楽しくデッサンする方法を実演を交えてご紹介します。講師はSound Drawingや3D絵本の出版などで幅広く活動する、Artist HAL_が務めます。
協賛:(株)WACOM/COREL(株)/デジタルハリウッド

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◇ボヘミアン特別番組 5月12日(火)20:00〜
「HAL_とみるくのお絵かきしちゃうぞ!」をライブ放送します。
参加者は見るだけではなく、チャット参加も出来ますので是非ご参加下さい。

絵を描くって楽しい事、それを忘れていませんか!! 上手いとか下手とか関係ない!! 子供の頃にかえったつもりで、楽しくデジタルお絵かきを楽しんじゃおう。
「Artist HAL_」と声優「加乃みるく」のバトルペインティングトークは、タブレットとPainterを使った楽しいお絵かき特訓する番組です。さらに後半は、視聴者リクエストに応え、その場でキャラクターを作ってしまおうと言うおまけ付きです。

【HAL_】横浜在住アーティスト hal_i@mac.com
Web < http://homepage.mac.com/HAL_i/
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