Otaku ワールドへようこそ![129]かわいいと 百遍言われ そうかしら──デザフェスでまた はっちゃける私
── GrowHair ──

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人生のたいていの悩みはセーラー服を着ると吹っ飛んじゃう。悩んでるのが馬鹿馬鹿しくなってくるっちゅうか。一条の外光すら差さない暗いトンネルの中を歩むような閉塞的な日常にうんざりしてきたら、ばーんと自分を解放してみるのがいい。セーラー服は特効薬。脳内モルヒネがドバドバと分泌される。

11月6日(土)、7日(日)には東京ビッグサイト西ホールで「デザインフェスタ32」が開催された。プロ・アマ交えて約8,500人のアーティストが出展し、2日間の来場者数は5万4千人にのぼる。私のセーラー服姿は1万人ぐらいには見られたかな、という気がする。

今回は、三つ編みにしたヒゲに、リボンがついた。たいへん好評で、会期中ずっとモテモテ。1日に軽く100回ぐらいは「かわいい!」と声がかかった。恐ろしいもので、人間、100回言われると、すっかり暗示にかかるものらしい。私、女子高生。自分でも思ってたけど、やっぱりかわいいんだわ。認めてもらえてうれしいわん。ノリノリなのがポーズや表情に反映されて、5月のときよりは、だいぶん写真写りがよくなっているはずだ。時には「セーラー服、似合う」と言ってもらえたりもした。

片足をぴょこんと上げたりなんかしたもんだから、翌日は背筋が筋肉痛に。ちょっとした二日酔いの気分。酒、飲んでないんだけど。アイドルって、大変だわ〜。



●乙女喫茶でリボンをプレゼントされる

10月30日(土)には、池袋の乙女喫茶Cougarでハロウィーンパーティがあった。店長のアメフラシ氏の知り合い関係で店を借り切ってのイベントなので、一般のお客さんとかち合ってビビられるということはない。私はもちろん、いつもの制服で参加。

アメフラシ氏とは、'05年4月22日(金)に秋葉原のメイド居酒屋「ひよこ家」で知り合っている。仕事で外出した帰りに寄ったら、たまたま近くにいたお客どうしで意気投合したのである。翌々月の6月11日(土)には、アメフラシ氏の率いるチームに混ぜてもらい、サバゲを体験させてもらっている。

アメフラシ氏は、最近、自主制作映画に出演しているそうである。なんでも、頼まれて拳銃の構え方を指導しているうちに、出演してみてはどうかと監督さんから声がかかったとかで。その関係で、ハロウィーンパーティには企画・脚本担当の方も来ていた。中尾鼎(かなえ)さん。実は、Cougarでの内輪パーティは、前回9月23日(木)にあり、そのときにお会いしていた。今回は私の三つ編み用にと、リボンを持ってきてくれたのである。それを、ありがたくデザフェスでも活用させてもらった。11月24日(水)には映画のロケが予定されていて、そのときは私も写真を撮らせてもらえる話になっている。

11月24日(水)には映画のロケが予定されていて、そのときは私も写真を撮らせてもらえる話になっている。

●おバカなセーラー服老人

東京ビッグサイトの西ホールで「デザインフェスタ32」が開催されている間、東ホールでは、(株)リクルート主催の「リクナビ★LIVE」が開催されていた。臨海線の国際展示場駅から会場まで、リクルートスーツに身を固めた'12年卒業予定の学生たちがすごい数、ぞろぞろと向かっていた。スーツの背中の裾にバッテンの糸がついたままだったり。

コミケの光景を見慣れている私には、パラレルワールドに飛ばされたかのようなシュールな感覚だった。真面目そうな人の大集団がビッグサイトに向かってるって、なんだかコメディみたい。誰がどっちのイベントへ向かっているのか、一目で分かる。これを見たら、東ホールへおちょくりに行きたい気持ちがわいてきた。東の2階には、食事のできるお店が並んでいて、そこはイベントに無関係な人が行っても問題ないはずだ。

一様にダークグレーのスーツを着た若者の大集団の中にセーラー服を着たじいさんがぽつんと混ざり、平然とメシを食ってたら、そうとうシュールな光景になるに違いない。でも実は私も同類、ひとつの会社に勤めて23年目になる真面目なサラリーマンなのだ。その会社は1万人以上の従業員を擁し、年間の売り上げは1兆円を上回る。多くの学生が目指している姿かもしれないという皮肉。まったく、人生どこにどんな落とし穴が待ち受けているか、分かったもんじゃない。そんな説教をしてやりたい衝動が...。

まあ、なんとか思いとどまったけど。後でリクナビのウェブサイトで調べたら、やっぱ私の勤め先の人事のおじさんたちも来てるではないか。あぶねえ、あぶねえ。

さて、デザフェス会場のほうは、外国人が多かった。1割ぐらいか。出身国を聞いてみると、アメリカ、イギリス、スコットランド、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、イスラエル、プエルトリコなど、多岐にわたっていた。ヒゲをダリのようにくるりと固めてる外国人がいた。"mustache wax"という商品があるそうで、日本では製造・販売していないので、海外から取り寄せているのだという。

私のヒゲ三つ編みも相当なインパクトだったようで、お互いに「負けた」、「負けた」と言い合ってしまった。また別のところでは"truly awesome"と声がかかった。直訳すれば「真に畏敬の念を起こさせる」、意訳すれば「まことにすばらしい」ということで、外国人にもウケがよかった。

西ホールの中央の吹き抜けの広場では、ステージが設けられ、かなり見応えのあるパフォーマンスが繰り広げられていたが、それとは別に、ほとんど路上パフォーマンスに近いノリで、自分のブースで小規模に歌ったり楽器演奏したりする人たちもいた。歌ってるオニイサンの近くを通りがかると、「おお、すごい!」とかなんとか、声をかけてくれた。

で、こっちは立ち止まり、踊るってほどでもないけど、リズムに合わせて軽くくねくね、ひょこひょこしてみた。そしたら、人が面白がっていっぱい集まってきた。みんな大笑いしてる。いい客寄せになったかと思ったが、肝心の本人が、笑って歌えない。「無理です」と敗北宣言。周囲、爆笑。あー、じゃましてごめんよー。

「パンツも女性用なのですか」と聞いてきた人がいた。いい質問だ。ついついサービス精神が出て、スカートの脇の裾を引き上げて、チラッと見せちゃった。いちおう紺のオーバーパンツを穿いて覆い隠しているけど、その下は、一日目はピンクの縞パン、二日目はピンクの小粒の水玉。どちらもコットン100%、前には小さなリボンがついていて、割と気に入ってる。確か、セシールの通販で買ったのだった。このときは一日目。ついでにオーバーパンツの裾も引き上げて、下の縞々をチラッと。「本格的ですねぇ」、「はい、がんばってます」。

●全部ひっくるめて壮大なアート作品

東京ビッグサイトというひとつのファシリティの東ホールと西ホールとで「リクナビ★LIVE」と「デザインフェスタ」とが同時開催されている、それ全部をひっくるめて壮大なアート作品のように見えてくる。まったく異質な2つの空間が、観念的には互いを否定しあっているようでありながら、現実の空間においては平和に共存している。

真面目で、型にはまって、お互いに牽制しあい、均質的で、元気のないニッポン。ノリノリで、型破りで、あらゆる方向へ発展的で、個性的で、とてつもないエネルギーが発露するニッポン。どっちも、ニッポン。

東への参加が目的だったが、ついでにということで、リクルートスーツのままデザフェスを見て回る人がけっこういた。その中には、かつて出展者としてデザフェスに参加したことがあるという人がいた。それなら逆の表敬訪問もアリだったか。西への参加者のアホなやつがセーラー服のまま東の2階で食事して帰ってきたりするのを思いとどまったことをもって、この壮大なアート作品は画竜点睛を欠いていたかもしれない。惜しいことをしたかも。

サラリーマンとは、コスプレ+お芝居なり。サラリーマンとしての天性の資質をもって任ずる人などいない。みんな場に合わせた保護色でわが身を守っているにすぎない。それは、趣味のサークルであれ、スポーツのチームであれ、同じことなのかもしれない。現代においては、住んでいる地域でコミュニティが形成されるのではなく、場所の制約を飛び越えて、目的別・関心別のコミュニティがたくさんできている。ネットでつながっていることもあれば、オフラインのイベントやクラブ活動で集まることもある。

人はたいてい複数のコミュニティに属し、それぞれで場の空気に合わせて自分の人格のごく一部だけを表出して、ひとつのキャラを演じる。異なる場では異なるキャラを演じる。演じられたそれぞれのキャラ間の人格的齟齬が指摘されることは、めったにない。情報のほとんどは、コミュニティ内で流通して完結し、壁を超えて複数のコミュニティに流れていくことが起きづらいからだ。

余談だが、結婚式は特別。「丸裸にされた気分だ」と言った新郎がいた。それぞれのコミュニティの仲間によるスピーチで、彼の演じてきたキャラのバラしあいが起きるのだ。それはさておき。

バラバラなコミュニティの総体として、現代社会がある。情報流通がセグメンテーション化されている。今回の東と西はそれを象徴し、模式化しているかのようだ。今後、情報流通のセグメンテーション化がますます進むのか、あるいは、どこかの時点で決壊が起きるのか。後者のような予感がするのだが、断言はできない。

●ベーシックインカムのこと、補足

前回、ベーシックインカムについて書きましたが、これについて、N様からメールでコメントを頂戴しました。ベーシックインカムの基本的な原則は、「最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で支給する」ことにあり、特に「無条件」であることが特徴のようです。

反対論者がその理由として提示する「フリーライド(タダ乗り)」の問題に対して納得の得られるような理論付けをするためには、「労働の義務を果たしてもらう方向へと結びつけられるような形の支援」が望ましく、「雇用創出策や職業トレーニングとセットになってなきゃならないか」と私は考えたのだが、それだと「無条件」ではなくなり、ベーシックインカムとは別の制度になってしまいそう、とのことでした。

な、なるほど。このあたり、勢いで書いてしまい、勉強不足のところがありました。どうもすみません。「ベーシックインカム=セーフティネットと誤解されている方が増えているみたいなので」とのことで、私がその誤解が広がるのに加担してはまずいので、取り上げました。そう言えば、去年の暮に山根さんちで忘年会があったとき、武さんがしきりに「福祉ではない」と強調するのをほとんど睡魔に負けながら、聞いてたっけ。

さて、それを踏まえた上で、あらためてベーシックインカムを考えてみると、賛成でも反対でもないような気がしてきた。斬新で思い切った考え方だという点では魅力を感じるけど、どうなるか分からなすぎて、恐くて実現には踏み切れないんじゃないかな〜、と。

最低限の生活は保障されるという安心感を土台にして、失敗を恐れずにいろんなことにチャレンジしていけるのはいいことだし、それによって産業が発展すれば、国の歳出を補って余りある歳入が見込まれるのかもしれないけど。でも、歳出は約束で、歳入は見込み、というのは、ちょっと危なっかしくないかな。タダ乗りされて、意欲の向上に結びつかなかったら、国が滅びるぞ。人生を自分で終わらすことができないから、自然に終わるのをただ待ってよう、という消極姿勢な人って、実は意外とたくさんいるんじゃないか、って気も。

......考え始めると際限なくなりそうなので、もう少し基礎的なところをちゃんと理解した上で、またこの話題に戻ってくるかもしれません。

●ご案内:銀座の画廊で人形の展示、ふたつ

前回も告知しましたが、人形作家の吉村眸さんの個展「the ivory gate」が銀座のGallery 156で開かれます。去年の12月に同じ画廊で人形作家10人の作品と私の撮った写真を展示する「臘月祭」を開催しましたが、それを見に来てくださったことで、吉村さんと知り合いました。案内状の写真は私が撮らせてもらっています。

吉村眸 人形彫刻展 the ivory gate
会期:2010年11月19日(金)〜11月28日(日)11:00〜19:00 最終日17:00
会場:Gallery 156(東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F)
< http://www.kino19.com
>

さて、その「臘月祭」、今年もやります。「臘月祭010」。「臘月」とは12月のこと。なので必然的に開催時期は12月。去年以上に意欲的な姿勢で準備を進めています。統一コンセプトの下に、全体的な空間作りをしよう、と。そのコンセプトとは「発狂して変死した写真家の部屋が、そのまま廃墟になりました」。面白そうでしょう?

今週末20日(土)、21日(日)は北海道へ行って、青木萌さんの人形を撮ります。さ、さ、寒そう〜。がんばります。

臘月祭010 ドヲル&フォト エキシビション
会期:2010年12月13日(月)〜12月23日(木・祝)11:00〜19:00 会期中無休
会場:Gallery 156(東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F)
< http://www.kino19.com
>
< http://www2s.biglobe.ne.jp/%7Emidoti/GrowHairDM01 >
< http://www2s.biglobe.ne.jp/%7Emidoti/GrowHairDM02 >

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp

カメコ。ネット通販の楽天市場に「コッペリア」というバレエグッズとルームウェアのお店があって、コットンネグリジェの「レイシースワン」がとてもいい。ネグリジェというより、白ワンピに近い。上品で清楚なかわいらしさに抗しきれず、けっこうなお値段したけど思い切って買っちゃったのが去年の9月。すごく気に入ってて、よく着て寝てる。

やはり綿100%のネグリジェで「フェアリー」という商品もあって、これもかわいい。ふわっとしてて。この商品には購入者からのレビューが3件寄せられているが、そのうちの1件は、30代の男性から。「自分用」にチェック入れてるし。「デザインが可愛くて購入を決めました」と。同じ病を感じる。これを載せちゃうショップも度量大きいわ〜。

で、今度はコットンパジャマの「スウィート」を購入。3色の中から、淡いピンクの。前回、スペースの関係で書けなかったのが、この話。私も負けじとレビューを書いてみた。載った載った、わーい!
< http://item.rakuten.co.jp/coppelia/10000122/
>

9月26日(日)には、人形作家・松本潤一さんの作品を原っぱで撮らせてもらいました。人形作家さんも、被写体の人形も、撮影者も男、という、割とめずらしいシチュエーション。写真は "Japanese Gay Art" のウェブサイトに掲載されています。見ると、ほんっっっとに男の子が好きなんだなぁ、というのがよく伝わってきます。撮影者のクレジットもありがたく入れてもらってますけど、残念ながら私はそっちのほうの趣味、ありません。
< http://www.japanesegayart.com/?p=1374
>

11月13日(土)は、APEC開催に伴う厳戒態勢の監視の目をかいくぐり、横浜の「港の見える丘公園」で八裕沙さんの人形をゲリラ撮影。APECって、パシフィコ横浜でやるとは知らなかったのだ。決して怪しい者ではありません。帰りがけ、「横浜人形の家」に立ち寄ろうと歩道橋を渡っていたら、下の道を白バイに先導されて大きな車が走り抜けて行きました。

横浜人形の家も、15:30ごろ着いたら、16:30までは一般入場できないとのこと。詳しくは教えてくれなかったけど、きっと会議の間、要人の奥様方が市内観光をしていて、ここにも立ち寄ったに違いない。

人形を撮ってる姿など、私が被写体の写真はこちら。
< http://picasaweb.google.com/Kebayashi/xUfqJL#
>