[3032] 震災は、予知できなかったのか?

投稿:  著者:


《「Untitled!!!!!!!!」みなさん、ありがとう》

■明日もデザインで食べていこう![13]
 イベント「Untitled!!!!!!!!」報告
 秋葉秀樹

■境界線の歩き方[03]
 インテリア ガイガーカウンター
 出渕亮一朗

■データ・デザインの地平[05]
 震災は、予知できなかったのか?
 薬師寺 聖

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■明日もデザインで食べていこう![13]
イベント「Untitled!!!!!!!!」報告

秋葉秀樹
< https://bn.dgcr.com/archives/20110418140300.html
>
───────────────────────────────────
お久しぶりです、秋葉です。
2011年4月3日、関西のWeb/IT系勉強会やコミュニティが終結して、行ったイベント「Untitled!!!!!!!!」。
< http://m2.cap-ut.co.jp/un/
>

参加費は無料で、自分の決めた金額を募金箱に入れて、集まったお金は全額日本赤十字に寄付するというもの。僕が所属する合同会社かぷっとは運営をさせていただきました。参加者320名、出演・関係者も合わせると約350名が集まったことになります、この業界でこれだけの人数が集まるイベントはなかなかないと言われています、ありがとうございます。

集計金額は674,282円という報告がありましたが、実はあれから寄付を申し出ていただいた企業さんがあって、70万円超えているらしいです。個人で出していただいたお金、企業で出していただいたお金。額は様々でもこれだけの人が集まるととてもパワーを感じます。

やっぱりこんな時にこういうことをやると「不謹慎」とか言う人いますかね?開催の挨拶のときに言ったんですが、被災地の方から感謝のメールをいただいた内容に「不謹慎といわず楽しんでください」とありました。その方からノベルティが送られてくることに。正直悩んでいた僕は自分が情けないなあ、と思ったんです。それがキッカケで思いっきりやることにしましたよ。

公式サイト< http://m2.cap-ut.co.jp/un/
>では、写真を見ていただいたらわかりますが、各出版会社さんから書籍をたくさんいただいたんです。これ、全部バザーとして定価より安く手に入り、それが全額募金箱に入るシステムです。出版社の方にも感謝しないとですね。

タイムテーブルです、珍しくオンタイムで進行しました。

10:30 開場
11:00 開演/オープニング
11:05 『日本Android会関西支部 チャリティーアイディアソン、ハッカソンの結果』/杉本札彦 15分
11:25 『モバイルファースト』/谷拓樹 15分
11:45 『Webデザイナーが作る初めてのiPhoneアプリ』/石本光司 15分
12:00 休憩 30分
12:30 『写真の力。』/おかだよういち 15分
12:50 『実践的ウェブデザインツールの使い方』/vanillate 15分
13:10 『いま、HTMLでできること』/村岡 正和 15分
13:25 休憩 15分
13:40 『伝える技術』/森和恵 15分
14:00 『海外の素晴らしいFireworks拡張機能10選』/丸山章 15分
14:20 『jQueryこれだけは』/徳田和規 15分
14:35 休憩 15分
14:50 『ちょっと知られてないCSS3の落とし穴』/秋葉秀樹・とみたちひろ 15分
15:10 『Dropboxで堅牢な作業環境を構築してみる』/宇都宮正宗 15分
15:30 『ソーシャルパワー(仮)』/ミキチョクシ 15分
15:45 エンディング
16:00 終演/フリータイム 60分
17:00 閉館(完全撤収)

つまり全員15分という短い時間でプレゼンをするということなので、これが結構難しいのです。なかなかまとめきれなくて、直前になってセッション内容を変えた出演者もいるくらいです。まあ、分からなくもないなあ。以下、ざっと見た感想です。

●日本Android会関西支部 チャリティーアイディアソン、ハッカソンの結果──杉本札彦

実はこの記事を書いている日曜、杉本さんとちょっとお会いしたんですが、最近仲良くさせてもらっている会社の社長さんです。日本Android会関西支部長を務めていて、株式会社ブリリアントサービスの代表取締役。名だたる大手企業を相手にシステム開発を行っている会社です。

内容は、日本Android会関西支部でチャリティによるハッカソンを開催したそうです。ハッカソンとは「ハック」+「マラソン」の造語らしく、開発者(だけではないが)が集まってみんなでアイデアを出し合い(これをアイデアソンというらしい)そのチームが決めた仕様のアプリケーションを作るというイベントらしいです。

実は僕は一度だけ「ハッカソン」に参加しました。ろくにプログラムも組めない僕ですが、彼らはデザイナーの力を欲しがっている、という杉本さんの言葉通り、ハッカソンはプログラマーのためのイベントではないんです。なぜなら、アプリケーションは人が使います、そのためのUIデザインが出来る人がいないで、そもそもハッカソンは成り立つのか?

杉本さんの話を聞いていて僕はNoだと思いました。デザイナーは最近金額面で安く扱われ過ぎです。でも最近アップルのプロモーションとか、スマートフォンならソニーとか、デザインがもたらすビジネス効果に気づき始めている企業が徐々に増えつつあります、そして成功例もあります。

そんなことをしっかり見据えた自称「組み込み屋」である杉本さんは、僕らデザイナーを大事にしようと考えてらっしゃるのは、デザインがビジネスを左右することを見据えているからなんでしょうね。こんな人がもっと開発やビジネスの現場で、世の中にデザインの大事さを訴えるといいのにな、と思います。

最後に僕にアタマをさげて「力になってほしい」と言ってくださった杉本さん。出来ることだったら、よければいくらでも! そんな気持ちです。

●モバイルファースト──谷拓樹

谷さんは最近著書を発表しました。「HTML5+CSS3で作る魅せるiPhoneサイト」という書籍です。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4899772750/cssnite-22/
>

彼のセッションタイトル「モバイルファースト」という名の通り、iPhoneやAndriod端末を前提としたWebサイト制作の優位性というか、重要性の話。印象的だったのは災害時の情報を伝えるためのサイトの例が挙がっていたけど、ほとんどテキストベースで装飾を削ぎ落とした見た目。これがWebデザインだと思った。ほとんどガラケーのような見た目、でも立派なデザインだと思う。情報を伝えるため、そのシチュエーション、環境、障害など考慮した結果、最善のデザインだと評価出来ます。彼のフォローアップは公式サイトで見ることができます。

●Webデザイナーが作る初めてのiPhoneアプリ──石本光司

石川から来ていただいた石本さん。HTMLとCSSとJavaScriptでiPhone OS/Androidのネイティブアプリを作れる開発環境「Titanium Mobile」。実機のカメラなどをJavaScriptで呼び出すということも可能にするらしいです。

本来ネイティブアプリといえば、Objective-CやJavaといった言語で作られるらしいのですが、Webアプリを作るようにJavaScriptに慣れている方なら、iPhoneで割と人気のカメラアプリも自作出来るというもの。実際石本さんは、合コンでモテるために猫耳を合成出来るカメラアプリを作ったらしい。そんなことしなくてもモテそうなくらい男前なのだが。

●写真の力。──おかだよういち

写真って言葉の通り、「真実を写して伝えるもの」という言葉の意味があるが、おかださんによると、それはある意味正しく、ときには間違いだということ。同じものを撮った写真でも、明るさ、アングル、あるいはそのとき聞いてる音楽(BGM)などによって、被写体は同一なのに、捉えられ方が変わってくる可能性があるってこと。

おかださんが伝えたかったことって何だろう? 今回の震災で、崩壊した建物だけの写真と、そこにたたずむ人が映っている写真とでは、我々の感情が移入しやすく、時として正しい判断すら出来ないこともなきにしもあらず、写真とは真実を過小にも過大にも受け止めさせてしまう力に惑わされない判断力を僕らは身につける必要があること、それを教えてくれたのは写真家であるおかださんだから説得力もあるように思えました。

●実践的ウェブデザインツールの使い方──vanillate

その日に初めてお会いしました、vanillateさん。天性というか適正というか、人前で話すときに思うこと。知識だけあればいいわけではなく、大勢の人の前で安心してプレゼンで伝えるために「声の温度」ってとても大事だと思います。大きすぎてもうるさいだけ、小さすぎると眠くなるし、早口だと、もうどうでもよくなって早く終わってほしいし。

僕も人前でプレゼンすることはあるけど、ただ単に正しいことをしゃべるとか、ただ技術を教えるとかそんなのプレゼンじゃない。相手に納得してもらってモチベーションを高める、さらにはしゃべる人のことを好きになってしまう。そんな人って実はそうそういないと思います。とくに技術系のセミナーとかではそれができている人はまずいない。

で、彼女は若くしてその才能というか、素質に恵まれた一人かもしれないなと思わせるトーンを持っているように思えます。内容はデザインツールの話でしたが、さすがに15分では伝えきるのも難しいかな? と。もっと時間があればオモイッキリやって欲しい、またいずれ、スピーチをお願いしたいと思ったスピーカーさんでした。こういったセミナーは初登壇だったらしいですが、頑張ってくれました! 彼女の人気のUSTREAM番組「vanitalk」もよろしく!< http://vanitalk.net/
>

●いま、HTMLでできること──村岡正和

震災直後1.5時間で、災害時に役立つ音声読み上げアプリを作った男。実は僕とよく一緒にセミナーでセッションをやっている同士みたいなものです。彼は非常にアツく、HTML5の話題などは話しだしたら止まらない人で、最近では僕がブレーキ役。本業は開発者ですが、明るいひとです。

テキストを音声に変換するサービスを利用して、オーディオファイルを生成させ、HTML5 audio要素を使ってスマートフォンでも聞くことが可能なアプリを披露。さらにjQuery mobileのデモでは、一切制作者はJavaScriptを書かずに、ある一定の横幅までウインドウを縮めると! 今まで普通にPCサイトのレイアウトだったのが急にiPhoneサイトの外観に変身! 色々できるんだなあ、と。

最後に彼は会場に向かって「Yes, We Can!」と声を張り上げ、会場のみんなにも「みんなで言いましょう」と呼びかけ「Yes, WeCan!」と言わせていた、カッコいいぜ。

●伝える技術──森和恵

森さんは、通常のお仕事でもお世話になっている方で、講師業としては大先輩なのです。どんなことを話してくれるのかと思いきや、「伝え方」。なるほど、彼女の経験と丁寧な進行のやり方を見ると、これはなかなかこんな場で聞けないほどの内容。「クレーム」とはチャンスであり、彼女なりの顧客獲得術などもクレームを逆利用しちゃうってほどの芯の強さで貫いてきた説得力がありました。

●海外の素晴らしいFireworks拡張機能10選──丸山章

とにかく会場から「へ〜」という声が聞こえたのはこのセッション。丸山兄さんは鳥取在住、この日のために自腹で駆けつけてくれた。Fireworksの機能拡張ってこんなにいっぱいあるんだな、と知らしめられました。便利そうなものや、入れ過ぎで不具合が起こりそうな点など丁寧にデモを交えて教えてくださいました。

自分としてはどうだろう? 20年もPhotoshopを使っているだけに、以降は気持ちが切り替わらないとむずかしいかもしれません。丸山さんがデモをしてくれたのは便利そうですね。でも慣れ親しんだ環境と、別環境で便利機能だったらどうするだろう。僕ならやっぱりPhotoshopでつくっちゃうんだろうなあ。

●jQueryこれだけは──徳田和規

実はこのイベントを構想したときに、真っ先に彼が浮かんできたんです。そして彼に直接電話したくらい、最近は書籍も執筆したりして、その分かりやすさに定評のある彼の今回のプレゼンは、jQueryのハマりやすいポイント。

jQueryのことで調べものをしたら、必ずと言っていいほど彼のブログを見たことがある人ばかりでしょう。< http://5509.me/
>
例えばこれ
$(function (){})
よりも
jQuery(function ($){
})
という使い方をお薦めしています。WordPressなどを使っていると他のJavaScriptライブラリとバッティングする事があるらしいので気をつけておきましょうとのこと。

●ちょっと知られてないCSS3の落とし穴──秋葉秀樹・とみたちひろ

僕らです。CSS3について以下の3テーマ
・box-shadowのベンダープレフィックスは必要か?
・Webkitブラウザ系は文字のアンチエイリアスが存在?
・transform: matrix()の5、6番目の引数には通常は単位をつけては動作しないが、Firefoxだけ、pxなどの単位を入れないと期待通りの変形ができないというやつです。あ、CSS3の3Dtransformを使っているので、見れるのはSafariだけに限定ですが、< http://cap-ut.co.jp/un20110403/
> というHTMLでできたスライドで確認してください。

●Dropboxで堅牢な作業環境を構築してみる──宇都宮正宗

タイトルが直前日に変わりました。彼なら最初からそうしとけば良かったのに、というタイトルでした。「Flash Builderことはじめ」になりました。
正直僕はActionScriptで開発するにしてもFlash IDEのみ使っていました。ところが、Flash IDEだと、カスタムクラスを作った時に、コードが自動補完されないバグがイヤになり、つい最近からFlash Builderにしました。所々使いこなせていない機能が満載なので、僕にとってはありがたいセッションでした。

今もあるお仕事でFlashの開発をやってますが、もうFlash Builderでコードを書いた方が楽な気がしてきました。これはモチベーションなんでしょうね。

●ソーシャルパワー(仮)──ミキチョクシ

X JAPANのギタリスト、hideさんの13回忌を目前にメモリアルイベント「ミュージカル"Pink Spider"」のtwitter連動サイトを作ったミキさん。セッション内容はソーシャルのパワーを使って、震災で中止したミュージカルをファンの声によって再び実現させたエピソードの紹介。

そしてこないだ、ミキさんと一緒に神戸公演を見に行きました。感動しました。正直見てみないとわからない感動でしたね。全曲知っている曲なのでウレシかった。TRANSTIC NERVEのTAKAさんの歌唱力は相変わらず。ゲスト(?)にLUNA SEAのJさんも出演していた。

いや〜盛り上がった。その翌日、僕は楽器屋に行ってギターの歪み系エフェクターを衝動買いしていた。ロックって気持ちだよね!

と、脱線しそうだけど、素敵なイベント、みんながいたからできたイベントでした。関わってくれたすべてのみなさん、ありがとうございました!!!!!!!!

補足:!マークが8個あるのは、日本が八州で構成されているという意味から付けました。

【あきば・ひでき】テクニカルディレクター・デザイナー
hidetaro7@gmail.com
< http://www.akibahideki.com/blog/
>

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■境界線の歩き方[03]
インテリア ガイガーカウンター

出渕亮一朗
< https://bn.dgcr.com/archives/20110418140200.html
>
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2011年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖地震発生、翌日、福島第一原発の事故が伝えられる。ついにその日が来たか! と私は長年部屋に飾ってあった、サバイバルプレートの電源を入れた。

Survival Plateは、「原発が事故ったとき」、「核戦争が起こったとき」用のインテリアとして部屋に飾れるガイガーカウンターをコンセプトとした、疑似商品、サウンドアート作品である。1990-91年制作。

ガイガーカウンターが必需品となった時、単なる計測器ではなく、時計のようにインテリアとしてお洒落に部屋に飾ることもできるデザインであるべきだと考えたのだ。デザインは古い大時計をイメージしてみたのだが、完成品を人に見せると西洋の棺桶のようだと指摘された。そのつもりではなかったが、確かにそうも見えた。

センサーとして実物のガイガーカウンターを使用している。ガイガーカウンターの回路は秋葉原の秋月電商に電子工作キットが確か数千円で売っていた。ただ、放射能に反応しますというだけの作品では、ちょっとコンセプチュアルアートというかプロセスアート(概念芸術)すぎるので、超音波距離測定器を使って、作品の前に手をかざして動かすと、ガイガーカウンターぽいガガガ...みたいな(あくまでもイメージなのですが...)サウンドを出す機能も組み込んだ。

まあ、テルミンのようなものです。これを、私はSuper Sonopathy System(超音波感応機)と名付けた。

1991年8月に渋谷の道玄坂上にあった貸店舗を借りて、Bazaar Bizarre(バザー・ビザール)というグループ展を行った。コンセプトとしては、このサバイバルプレート+SSSの他、架空の商標であるCATDOG製の自作楽器、及び友人たちの作品を展示即売するというものだった。

サバイバルプレート+SSSは、ものによって、サバイバルプレート、SSSの機能の組み合わせがいろいろあったが、大4作品、小2作品を出品した。

1992年1月には当時TBSで放映されていた、「三宅祐司の天下御免ね!!」にこの作品を2点かついで出演した。これは視聴者が自分のアート作品を持ち込み、審査員に値段をつけてもらうという趣向のバラエティ番組だった。あの伝説のイカ天(イカすバンド天国)、その後のエビ天(視聴者の映像作品紹介番組)に続く番組だ。

この時は、CATDOG Process Art Inc.という架空の企業名で、知り合いと二人組で出演したのだ。その彼は、すぐ後にソニーコンピューターエンターテインメントで仕事を始めたのだが。この時、審査員に付けられた値段は最高40万円ぐらいだったかな。

ガイガーカウンターはガイガー管というもので放射線を感知する。1分間に何回放射線を感知したかという数値、CPM(count per muinit)を単位とする。自然状態でも放射線はあるので、2〜15CPM位はあるらしい。最近よくニュースで聞くシーベルトという単位は、放射線の人体への影響度を考えたものだ。

CPM値に0.00833をかけると、マイクロシーベルト/時になるそうだ。たとえば、20CPMは0.1666マイクロシーベルト/時。政府が最近訂正した年間被爆限度量は、20シーベルト=20,000マイクロシーベルト=2.283マイクロシーベルト/時=274CPM。

この計算であっているかどうかは保証できないが、1分間にガイガーカウンターが274回も反応するのは、ちょっと直感的にヤバい感じがするのだが......。

放射能が怖いのは、それを感知できないからよけい疑心暗鬼になってしまうからだろう。生物はまだ放射線に対するセンサーを持っていない。危険であっても、いやな臭い、いやな味、変な音、不気味な見かけといったものがないのだ。放射能=放射性物質は物質なので、もしかしたら臭いぐらいはあるかもしれないが。

政府などの発表は何か今ひとつ信用できないところもある。自分で実際に放射線を測定できれば、もう少し安心できるのではないだろうか。20年前にアートとして考えた作品は、今考えると結構、商品としていけるような気がしてきた。嬉しくない話だけど。

参考:
Survival Plate / Interior Geiger-Muller Counter
<
>
*サバイバルプレートで超音波距離測定機をセンサーとして、疑似的なガイガーカウンターの音を出してみたものです。放射能に反応している訳ではありません。

Survival Plate(Mini) / Interior Geiger-Muller Counter
<
>
*ミニ版の映像。こちらは実際にガイガーカウンターを動かしています。何事もない時はこのくらいのんびりした反応のようです。

【CATDOG】三宅裕司の天下御免ね!!
<
>
*Super Sonopathy Systemを持ってCATDOG Process Art inc.としてTV番組出演(1992)

ガイガーカウンターによる放射線測定
< http://park30.wakwak.com/%7Eweather/geiger_index.html
>
*東京都日野市のガイガーカウンタによる放射線量を10分おきに計測

【出渕亮一朗】ryoichiro.debuchi(a)gmail.com
コンピューターグラフィックス、インタラクティブアート分野のアーティストグラフィックス分野のプログラマー
< http://www.debuchi.com
>

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■データ・デザインの地平[05]
震災は、予知できなかったのか?

薬師寺 聖
< https://bn.dgcr.com/archives/20110418140100.html
>
───────────────────────────────────
ようやく復旧が始まったばかりの東日本大震災。未曾有の大災害であるにもかかわらず、なぜ、多少なりとも事前に注意を喚起することができなかったのでしょうか?

それは、複数の予知情報を集約して公開する、広く周知されたシステムが、我が国には存在していなかったからではないかと、私は考えています。

●今もとめられる、複数の予知情報の統合

地震予知には数々の方法があり、学術機関だけでなく、多くの団体や個人が独自の研究に励んでいます。有名なものの一つに、NPO法人大気イオン地震予測研究会e-PISCO < http://www.e-pisco.jp/
> があります。この団体では、イオン濃度の観測結果を軸に、市民メンバーから報告される宏観異常現象(動物、気象、家電製品などにみられる地震発生前の異常現象)を公開しています。ところが、東北地方東部には、大気イオン濃度の正規測定点はありません。そのため、東北エリアの予知については、宏観異常現象頼みになります。

その宏観異常現象のリストは、PISCOのWebサイト開設当初、SVG(※1)で描画された日本地図上に表示されていました。それを閲覧するには、Adobe社のSVGビューアが必要でした。

ところが数年前、Adobe社が突然SVGビューアのサポートを中止。宏観異常現象の地図上表示のページは事実上、閲覧不可能となりました。しばらく表示できない状態が続くと、ユーザーの足も遠のきがちになります。筆者も、その一人です(比較的古くからの市民メンバーです)。

比較的最近になって、PISCOでは、一部のSVG部分をビットマップ画像に切り替えたようですが、もし、SVGビューアのサポートが継続されていたなら、どのような経過をたどっていただろうかと考えます。東北の市民メンバーが増えていたかもしれませんし、そうではないかもしれません。今回の地震前に、掲示板に投稿された2件の報告(オーロラに関する報告と、2日前の地震の仙台管区気象台の発表)以外にも、何か情報が報告されたかもしれません(現在、同サイトでは、事後報告を受け付けています)。

では、PISCO以外に、宏観異常現象を公開したブログやTweetはなかったのでしょうか? 私は震災後に、イルカの座礁を、msnのニュース記事で知りました。予知を研究する学術機関、団体(※2)、個人は数多く存在します。たとえば、宏観異常、地下水、太陽活動、ラドン濃度、耳鳴り、発生周期など、さまざまです。それらをすべてチェックすれば、もっと多数の情報を得られるかもしれません。

そこで考えてしまうのは、情報の統合についてです。ポータルサイトのような大それたものは必要ありません。ただ、さまざまな予知情報を統合して提供するシステムがあったなら、多少なりとも被害の軽減につながったのではないかと思うのです。

●予知データの標準化と公開の方法

各機関や個人が蓄積・管理しているデータベースの構造は、一様ではありません。それらの中から予測発生年月日や、予測マグニチュードといったデータを抽出して統合するには、共通のデータ・デザインに基づいてデータを標準化し、XMLおよびcsv形式で公開する必要があります。

公開さえできれば、あとは、プログラマ有志が、データを再利用するアプリケーションを構築し、一般住民が利用しやすい形で提供するでしょう。もちろん次のような基本的な機能は、すべて実装されることでしょう。

・データの一覧表示。クリックして特定の予知の詳細情報の表示。
・データの検索。地域、年月による絞り込み検索。
・マグニチュード、年月、の昇順/降順ソート。

公開用データの標準化の方法としては、次の4つが考えられます。

(A)各機関の扱うデータのうち、汎用性があり共通化できる部分に対してのみ、メタデータを付加する。メタデータが付加されていない部分は、アプリケーションの側で走査をスルーする。
(B)汎用性があり共通化できる部分を抽出し、管理情報として、追加しておく。管理情報とコンテンツにデータの重複を許可する。
(C)汎用性があり共通化できる部分を抽出し、標準化された構造の別ファイル、あるいは別のXML木を生成する。
(D)ヒトの手を介する。登録フォームに各情報提供者が一日一回、入力する。

このうち妥当な方法は、手間はかかりますが、(D)です。
(A)あるいは(B)あるいは(C)の自動化には、情報提供者が増える都度、
手間も予算もかかってしまい、現実的ではありません。

(D)の方法で登録する情報としては、次の6種類が考えられます。

(1)管理者情報(誰が情報を提供しているか)
名称、予知方法、主宰者名、情報提供日時、ホームページURI、連絡先メールアドレス(非表示)。

(2)時間(いつ発生するか)
年月日時分。いつ頃〜いつ頃まで、といった幅のある情報です。

(3)場所(どこで発生するか)
情報入力ページの地図上に、情報提供者の位置を始点とし、予測した方角へと、線を引くようなUIを実装します。ユーザーは、情報提供者からの複数の線の交わった部分、あるいは囲まれたエリアの情報を参考にすることができます。

(4)規模(どのくらいの大きさか)
考えられるマグニチュードを集約して、平均値、最小値、最大値を提供します。

(5)状況(何が発生するか)
具体的な数字で示される被害状況や、被害のイメージです。

(6)発生の確率(どの程度の割合で発生する可能性があるか)
確率を5段階評価で登録します。平均を★(星マーク、Rating Control)でランキング表現すると、ユーザーが判断するうえでの参考になるでしょう。

これらの情報が提供されれば、ユーザーは、独自の判断で、備蓄を確認したり、避難に備えることができます。

また、これらのデータを蓄積して、実際の地震情報と関連付けることにより、将来的な防災への利用が期待できるかもしれません。ただし、提供された情報を参考にしたうえでの判断と行動の結果に対する責任は、すべてユーザーが負うものでなければなりません。

●予知の精度を高める、欠落情報の補完

我々は、とかく一情報提供者に、前述の(1)〜(6)のすべての予知情報をもとめます。もし、「何が発生するか」はおおよそ予知できていても、「いつ発生するか」は季節程度で月日の特定には至らず、「どこで発生するか」は分かっていないとなれば、そういった情報提供者については「予知はできていない」と判断してしまいます。
挙句、各情報提供者ごとの情報が、それぞれ完璧ではないからという理由で、地震予知そのものを「不可能である」と思いがちです。

しかしながら、原発震災まで含めて「何が起こるか」の詳細を知りえた個人の情報と、「いつ発生するか」のアタリを付けた団体の情報、イルカや鳥の宏観異常現象を見て「どこで発生するか」を特定した個人の情報が結び付けば、予知の全体像が浮かび上がるのではないでしょうか。

地震は予知できないのではなく、完全ではない、あちらこちらの欠落した予知情報が、ネット上にバラバラと存在し、点と点をつなぐシステムがないために、5W1Hが明らかになっていないだけなのかもしれません。

その点、標準化されたデータが公開されるならば、アプリケーション側でそれらを集約し、各提供者の情報を補完し合い、ひとまとまりのデータとして表示することができます。

予知データの標準化と公開は、これまで発信してこなかった個人からの情報を吸い上げる意味でも有効でしょう。

一部情報を知りえた個人が、ブログやTwitterなどで情報を公開しようとしても、情報提供への感謝だけでなく、情報掲載を責める声も同時にあがることが考えられ、公開する勇気はなかなか持てないものです。完全ではない情報でも公開可能なシステムがあれば、発信しやすくなります。

それらのひとつひとつは、小さな情報かもしれません。が、それらを吸い上げ統合することによって、予知精度の向上を見込むことができるのではないでしょうか。

なお、こういった試みは、情報提供者側にもメリットがあります。部分的な情報を持ちながら、それが完全でないために公開することができず、挙句、災害が発生すると、その個人は、勇気を出しておけば、一人や二人は助かったのではないかという後悔の念にさいなまれるようになります。人的被害が大きければ大きいほど、多数の人を見殺しにしたのでは、という激しい贖罪の意識を、一生引きずるようになります。予知データの標準化と公開は、このような予知に取り組む個人の心的負担を軽減させることにもつながります。

●データ標準化、実施に向けての課題

どのような企画でも、青写真を描くことよりも、実施の方が何千倍も難しいものですが、この件に関しても、企画の実施には、多数の課題があります。

データ・デザイン、Webサーバーの構築と管理・運用、データベース構築、データ登録/公開用アプリケーション開発、といった一連のシステム構築には、とりたてて技術的に克服しなければならない課題はありません。また、手間と費用がかかるのは初回だけで、一度構築すれば、フレームワークのバージョンアップに伴うメンテナンスだけで済みます。

問題になるのは、データ提供側の作業負担と、データ精度の保証です。

まず、データの著作権の問題、データ提供者の転載許可の問題が考えられます。また、フォームへの登録は、情報提供者にとって手間のかかる地道な作業であり、大きな負担となる恐れがあります。いくら国民のためとはいえ、日々の無償奉仕を期待することは難しいと思われます。

かといって、無作為に自己申告で情報を受け付ける仕組みでは、情報の精度が維持できなくなります。ユーザーには情報の真偽を確かめる術がなく、風説飛び交う事態になりかねません。

特に難しいのは、夢などの予知による情報提供です。科学が証明したためにヒトが存在しているわけではなく、ヒトが存在し科学がそれを証明しようとしているのであって、科学でまだ証明できていないからといって否定してよいものではないのでしょうが、情報提供者として認定するかどうかの明確な基準を設けることは不可能でしょう。

信頼できる情報提供者の認定、各機関や個人に根回しをしてコンセンサスを得て、確実な登録をしていただくことに同意を取り付け、情報提供者の個人情報も管理していく作業は、ITエンジニアには手に余る作業です。これは、公共機関か、公的な色彩を帯びた団体の仕事です。

データは日々蓄積されていきます。標準化を先送りにすればするほど、それぞれが蓄積している貴重なデータは、再利用不可能な独自データとなってしまいます。標準化されていないデータが、点在するサーバに蓄積され続ける愚は避けるべきです。早急な取り組みが望まれるところです。

平穏無事な社会を維持していくためには、そのバックエンドに、プログラムから処理しやすく、バグを引き起こしにくい構造のデータ・デザイン、その構造に則って蓄積される信頼性あるデータが必要なのです。

※1 SVGは、HTML 5とともに再び脚光を浴び始めています。Microsoft社のVML、RIAのデザイン言語であるXAMLも、SVG同様、XML言語で記述されたベクターグラフィックスの仕様です。

※2 宏観異常を対象とする公的なものには、次の2つがあります。
・関西サイエンスフォーラム
「地震前兆情報の利活用に関する調査・研究と提言(第1次報告書)」
< http://kansaidoyukai.or.jp/Default.aspx?tabid=158
>
「地震前兆情報の利活用に関する調査・研究と提言(第2次報告書)」
< http://kansaidoyukai.or.jp/Default.aspx?tabid=159
>
・静岡県地震防災センター「バーチャルライブラリー 宏観異常現象」
< http://www.e-quakes.pref.shizuoka.jp/shiraberu/higai/koukan/
>

※防災対策の参考にご利用ください。
・緊急時持ち出し品リスト(筆者の独断による)
< http://sei.seindesign.net/emergency/info.htm
>
・非常時に備えての、情報の保管および持ち出し方法(ITエンジニア向け)
< http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/2011/04/post-e7d9.html
>

※Microsoft社の、Webの未来をフロントエンドから取り上げるカンファレンス「MIX11」(4/12〜4/14)では、HTML5やCSS3、Silverlight、Internet Explorer、Windows Phoneについて、多彩なセッションが繰り広げられました。
< http://www.visitmix.jp/
>

【薬師寺聖/個人事業所セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/
>
ブログ < http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/
>
PROJECT KySS < http://www.projectkyss.net/
>
< infosei@seindesign.net >

ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードの間を彷徨っている、四国の個人事業主。科学技術や医療・福祉分野のXML案件の企画デザインに実績があり、コラボレーションユニットPROJECT KySS名義で、XML、RIA、.NETに関する書籍や記事、多数。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev
(Oct 2003-Sep 2011)

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■編集後記(4/18)

・あれ以来、なんとなく気が晴れない日が続くが、こんなときは痛快な時代小説を読むに限る。和田竜の「忍びの国」は、「のぼうの城」の面白さを体験したにもかかわらず、なぜか単行本を見逃していた。文庫になって、児玉清の大絶賛解説を読んだら、もう読まずにはいられない。半日で一気に読破。第一次天正伊賀の乱を背景に、織田信長の次男・信雄とその家臣が伊賀の忍びと激闘を重ねるというストーリーだが、背景は史実、超絶技の忍びはフィクション、それが巧みにミックスされて、嗚呼なんというおもしろさだ。児玉清はそれを「奇想天外さとリアリティの巧妙なる羽交い締め技、絶妙な搦み技の連続」と書く。著者は「鼻につかない程度に史料を入れたのは、あまり出来すぎていて読者から架空ではないかと思われる恐れがあったので、史実として書いたということを分かってもらうため」とインタビューで応えている。信雄が伊賀に攻め入り惨敗したという史実や、伊賀国の構造やすべて銭次第という忍びたちの生態も史料から引くから説得力満点だ。また多彩な登場人物のキャラ立ちもみごと。主役は百地三太夫の配下で伊賀一の腕を誇る無門、この男の魅力といったら。なぜ天正伊賀の乱が起きたのか、なぜ銭にならぬ祖国防衛戦に忍びが結集したか、その構想のみごとさといったら。リアリティのないテレビドラマ「JIN-仁-」「江」なんかあっさり一蹴されるわ。(柴田)
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・出崎統氏のご冥福をお祈りいたします。皆が名作という宝島を見た事が無い。どこかでやってくれないものだろうか。/hideのミュージカル観たかったんだよな〜。hideのソロ曲やサポートメンバーが好きだった。/ガイガーカウンターが! なんという......。/イルカの座礁のニュースは見ていた。温泉地の話なども。でも地震へはまったく結びつかなかった。/「ゆれくるコール」だけはインストールした。/洗面所に置いている電波時計。福島のものしか受信しない古いもので、停波で今は普通の時計になっている。これが受信しなくなってから気になったのが、10年ぐらい前の電池切れBaby-G。なんとなく電池の品番をメモしてみたら、たまたま家電量販店の電池コーナーに行くことがあって購入。電池交換を紹介しているサイトの似たようなモデルのページを見ながら、自分で入れ替えてみたら、九州からの電波も受信できるモデルだったので、ちゃんと動いた。ベルトも交換しようと探したみたが、純正品は製造中止になっていたわ。(hammer.mule)
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>  ゆれくるコール
< http://jjy.nict.go.jp/
>  停波
< http://www.mr-coo.com/battery/casio/casio.html
>  参考にした
< http://blog.livedoor.jp/himasoku123/archives/51618630.html
>
「すべての言語の起源が解明される」
< http://karapaia.livedoor.biz/archives/51995296.html
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「トヨタのガラス職人の技が光るCMが凄い」
< http://blog.livedoor.jp/himasoku123/archives/51618508.html
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「ドコモのCMを外国人が大絶賛」メイキングも素敵。
< http://www.invisi.jp/
> < http://www.drill-inc.jp/
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木琴の制作会社「インビジブル・デザインズ・ラボ」のサイト
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